【獣医師監修】犬は黒糖を食べても大丈夫?肥満のリスク・注意点や与える量の目安などを徹底解説

【獣医師監修】犬は黒糖を食べても大丈夫?肥満のリスク・注意点や与える量の目安などを徹底解説

犬は黒糖を食べても大丈夫?中毒性やメリット、与えていい適量を解説します。少量ならミネラル補給になりますが、肥満や虫歯のリスクには注意が必要です。黒糖パンやかりんとうなど、誤食しやすい加工品の危険性についても詳しく紹介します。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

犬は黒糖を食べても大丈夫?

ダイニングテーブルに顎をのせて正面を見つめる犬

結論として、犬は黒糖を少量であれば食べても問題ありません

黒糖には犬が中毒を起こすような成分は含まれておらず、誤って口にしたとしても直ちに健康被害が出るリスクは低いでしょう。

しかし、黒糖も砂糖の一種であり、高カロリーで糖質が非常に多いため、犬に積極的に与えるのは避けるべきです。摂りすぎれば肥満や歯周病の原因にもなります。黒糖は粘着性が高く口の中に残りやすいため、歯石や歯垢の蓄積を招く恐れがあります。

白砂糖との違いは精製度で、黒糖はサトウキビの成分がそのまま残っているため、ミネラルやビタミンが微量に含まれます。

ただし、犬にとっては栄養よりも糖質によるデメリットの方が大きく、健康のためにあえて与える必要はありません。与えるとしても、特別な時に少量のおやつ程度に抑えるのが理想的です。

特に糖尿病や腎臓、心臓に疾患のある犬は、黒糖が健康を害する可能性もあります。愛犬の健康状態に応じて、事前に獣医師に相談することをおすすめします。

黒糖に含まれる栄養素

木の器とテーブルに置かれた塊状の黒糖

黒糖は、精製された白砂糖に比べてサトウキビ由来の栄養素が多く含まれているのが特徴です。

犬が摂取しても問題のない栄養素もありますが、実際に与える量はごく少量であるため、これらの栄養素が犬の健康維持に大きく役立つほどではありません。

ここでは代表的な栄養成分とその特徴について説明します。

カリウム

黒糖には、白砂糖にはほとんど含まれないカリウムが100gあたり約1100mgと多く含まれています。カリウムは体内の余分な塩分を排出し、細胞機能を調節する重要なミネラルです。

ただし、腎臓や心臓に疾患を持つ犬が多量に摂取すると、高カリウム血症のリスクがあるため注意が必要です。

カルシウム

黒糖には100gあたり約240mgのカルシウムが含まれています。カルシウムは骨や歯の形成や神経伝達をサポートします。

犬は体重あたりで人間よりも多くのカルシウムを必要としますが、実際に与える黒糖の量はごく少量であるため、カルシウム源としての期待は限定的です。

鉄分

黒糖には100gあたり約4.7mgの鉄分が含まれ、血液中のヘモグロビン生成を助けます。

しかし、黒糖の摂取量は微量であるため、貧血予防などの栄養補給として実質的な効果を期待するのは難しく、あくまで補助的な位置づけです。

ビタミンB群

黒糖には、糖質の代謝を助けるビタミンB1、B2、B6などのビタミンB群が含まれています。

ただし含有量は微量で、通常の摂取量では健康への明確なメリットが得られるほどではありません。日常的に摂取する栄養源として考える必要はありません。

黒糖には以上のような栄養素が含まれていますが、犬の栄養バランスは基本的にドッグフードで十分満たされるため、黒糖の栄養価を過大評価せず、嗜好品としてごく少量与える程度にとどめておきましょう。

犬が黒糖を食べるメリット

芝生の上を走って遊ぶ2頭の犬

黒糖の主成分であるショ糖は体内で速やかに分解されるため、少量なら素早いエネルギー補給に役立ちます。ドッグランや散歩などで激しく運動した後の軽い疲労回復を助けることがあります。

また、黒糖特有の甘く香ばしい香りが犬の嗅覚を刺激するため、食欲が低下している犬やフードに対して好みが偏っている小型犬などに、ごく少量トッピングすると食いつきが良くなる場合もあります。

さらに、黒糖には白砂糖に比べて天然由来のミネラルが微量に含まれているのも特徴です。普段の食事が十分であれば大きな補給効果は期待できませんが、砂糖類の中では比較的体への負担が軽い甘味料として、特別な時に少量使う程度ならメリットがあると言えるでしょう。

犬に黒糖を与える際の注意点

体重計の上に乗って伏せている犬

黒糖は高カロリーで糖質が多いため、頻繁に与えると肥満や生活習慣病を引き起こす可能性があります。特に肥満は関節や心臓への負担を高めるため、おやつとして与える頻度を厳しく管理しましょう。

また、黒糖は粘着性があり歯に付着しやすいので注意が必要です。犬は口内環境の特性上虫歯になりにくいですが、糖分が長く残ると歯垢や歯石が溜まり、歯周病の悪化につながります。与えた後は水を飲ませるなど、口の中に糖分を残さない工夫が必要です。

さらに、腎臓や心臓に疾患を持つ犬に与える場合も注意が必要です。黒糖に含まれるカリウムが負担となる恐れがあるため、療法食を食べている犬や投薬治療中の場合は、事前にかかりつけの獣医師に相談してください。

犬が黒糖を含む製品を食べても大丈夫?

レーズン入りの黒糖蒸しパン

黒糖入りの加工品は、犬にとっては避けるべきものがほとんどです。これらの食品は黒糖以外にも脂肪分や添加物が多く含まれているため、犬が摂取すると健康リスクが高まります。

たとえば黒糖パンにはバターやマーガリンなどの脂質が多く、肥満や消化不良を引き起こす可能性があります。またレーズンなど犬に有害な食品が入っていることもあり、誤食には注意が必要です。

黒糖かりんとうは油で揚げられているため非常に高脂肪で、膵炎や消化不良の原因になります。また砂糖を大量に含んでいることから、絶対に犬に与えないようにしてください。

黒糖蒸しパン黒糖まんじゅうも推奨できません。これらの食品は柔らかく食べやすいですが、膨張剤や保存料など犬にとって望ましくない添加物を含むことがあります。ごく微量でも与える場合は添加物がないかよく確認してください。

軽い食感の麩菓子(ふがし)も黒糖でコーティングされており、小麦由来の成分が主体です。小麦アレルギーのリスクがある犬には特に避けるべきですし、糖分が予想以上に多く含まれるため、わざわざ犬に与える必要はありません。

犬用に作られた製品以外は、原則として与えないのが安全です。人間用のお菓子を誤食した場合や、異常が現れた際は速やかに獣医師に相談してください。

犬に与えてもいい黒糖の量

粉末状の黒糖をスプーンですくっている様子

黒糖を犬に与える場合は、ごく少量に限定することが大切です。

具体的には、1日に摂取する総カロリーのうち、おやつ全体を10%以下に抑えるという一般的な目安がありますが、黒糖のような高糖質のおやつは、さらに少なくする必要があります。

理想的には、おやつ全体を5%以下に抑え、そのうち黒糖が占める割合はごくわずかにしましょう。

体重3kgの小型犬であれば、黒糖の1日あたりの上限目安は0.5g程度(小さじの4分の1未満)です。これは「舐めさせる程度」や「爪の先ほど」の非常に少ない量です。中型犬や大型犬でも、この割合を参考に少量に抑えます。

特に子犬や老犬、また糖尿病や肥満傾向、膵炎など持病を抱えた犬には、黒糖を与えること自体を避けるのが安全です。健康な犬でも、初めて与える際は微量から始め、アレルギーや消化不良がないかを確認してください。

黒糖は栄養的に必須な食材ではありません。与える場合は特別なごほうびとして位置付け、頻繁に与えることは避けましょう。

まとめ

空の食器の前に座って上を見上げる犬

犬は黒糖を少量食べる程度なら中毒の心配はありませんが、高糖質・高カロリーのため、与え方には細心の注意が必要です。

微量なミネラルや栄養素も含まれますが、あくまで嗜好品として位置付け、栄養補給を目的に与える必要はありません。特に肥満や歯周病、糖尿病、膵炎などのリスクを抱えている犬には推奨できません。

また黒糖を使った人間用の製品には脂肪分や添加物が多いため、犬には与えず、万が一食べた場合には獣医師に相談しましょう。

健康な犬であっても、「舐めさせる程度」のごく少量を、特別なごほうびとして慎重に扱うことが愛犬の健康維持につながります。

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