【獣医師監修】犬に紅茶を飲ませては絶対ダメ!カフェイン中毒の症状から飲んでしまった時の対処法まで解説

【獣医師監修】犬に紅茶を飲ませては絶対ダメ!カフェイン中毒の症状から飲んでしまった時の対処法まで解説

犬に紅茶は絶対NG!カフェイン中毒の症状や、誤って飲んでしまった時の対処法を解説。体重別の危険な摂取量目安や、ティーバッグ誤食のリスク、自宅でやってはいけないNG行動も紹介します。愛犬の命を守るための正しい知識を確認しましょう。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

犬に紅茶を飲ませてはいけない

マグカップを抱えて毛布に包まる犬

犬に紅茶を与えることは、非常に危険なため絶対に避けてください。紅茶には犬の健康を害する成分が含まれており、人間のように安全に代謝することができません。

特に体の小さい犬では、ごく少量の紅茶でも深刻な中毒症状を引き起こすことがあります。また、紅茶を日常的に少量ずつ摂取した場合でも、長期的に体調を崩すリスクがあります。

紅茶は、人間にとってはリラックス効果があると一般的に認識されていますが、犬にとっては神経系や循環器系への負担が大きく、命に関わる重大な健康被害につながることがあります。

犬の体はカフェインを迅速に排出できないため、症状が現れるまでに時間差が生じることも多く、飼い主が気づかないうちに症状が悪化する場合もあります。

「少し舐めただけ」などと油断せず、紅茶を絶対に与えないよう徹底してください。

紅茶に含まれる危険な成分

紅茶が入ったポットとカップ

紅茶には、犬の体に悪影響を及ぼす成分が複数含まれています。特に犬の健康を脅かす主な成分はカフェインですが、ほかにも微量ながらテオブロミンやシュウ酸も含まれています。

それぞれの成分によって犬の体に与える影響が異なりますので、飼い主が成分ごとのリスクを理解しておくことが大切です。

カフェイン

紅茶に含まれるカフェインは、犬の中枢神経や心臓に強い刺激を与え、興奮、不整脈、心拍数の増加などの症状を引き起こします。

犬はカフェインを分解する力が弱く、体内に長時間留まるため、人間に比べて少量でも中毒になりやすいことが特徴です。

テオブロミン

紅茶にはチョコレートの毒性成分として知られるテオブロミンもごく微量含まれており、カフェインと同じメチルキサンチン誘導体として作用します。

摂取量自体は少ないですが、カフェインとの相乗効果で心臓や中枢神経系への刺激が強まり、中毒症状を悪化させるおそれがあります。

シュウ酸

紅茶に含まれるシュウ酸は、カルシウムと結合してシュウ酸カルシウム結石の原因になる可能性があります。

少量を一度摂取しただけで結石ができるわけではありませんが、長期間または頻繁に摂取を繰り返すことで、尿路結石の発症リスクが高まる場合があります。

犬が紅茶を飲んだときの対処法

スマートフォンに前足で触れている犬

犬が誤って紅茶を飲んだ場合は、迅速かつ適切な行動が愛犬の健康や命を守る上で非常に重要になります。

特にカフェインは犬の体内での吸収が早いため、様子を見るのではなく、すぐに適切な対応をとる必要があります。正しい対処方法を理解し、落ち着いて行動しましょう。

動物病院へすぐ相談する

犬が紅茶を飲んだ、あるいはその疑いがある場合は、直ちに動物病院へ連絡し、獣医師の指示を仰ぎましょう。

夜間や休日の場合は、地域の動物救急病院や24時間対応可能な獣医療機関に連絡してください。自宅での経過観察は避け、すぐに専門家の判断を得ることが大切です。

病院に伝えるべき情報を整理する

動物病院に連絡した際は、犬の犬種と現在の体重、飲んだ紅茶の種類(ストレート、ミルクティー、茶葉そのものなど)、摂取した時間やおおよその摂取量をできる限り具体的に伝えましょう。

これらの情報を明確に伝えることで、迅速な診察と処置につながります。

自宅で吐かせるのは危険なのでNG

誤飲した紅茶を吐かせようと、塩やオキシドールを飲ませるといった自宅での催吐処置は絶対に行わないでください。

食道や胃粘膜を傷つけたり、高ナトリウム血症、誤嚥性肺炎など深刻な合併症を引き起こしたりする可能性があります。吐かせる処置は獣医師の管理下でのみ行うことが安全です。

ティーバッグを飲んだ場合は至急受診

紅茶だけでなく、ティーバッグそのものを飲み込んでしまった場合は腸閉塞を起こすリスクがあるため、非常に緊急性が高まります。症状の有無にかかわらず、速やかに受診してください。

犬が紅茶を飲んだときに現れる症状

飼い主になでられながら横向きに倒れている犬

犬が紅茶を飲んだ場合、主に紅茶に含まれるカフェインが原因でさまざまな症状が現れます。症状の出方や重症度は、犬の体重や摂取量、個体差によって異なります。

症状の経過や特徴を把握し、異変に気づいたらすぐに動物病院へ連絡してください。

初期症状

紅茶を飲んだ犬は、まず嘔吐や下痢、大量のよだれといった消化器症状を起こすことが多くあります。

また、部屋の中を歩き回る、怯えたような行動をとる、吠え続けるなどの落ち着きのなさや、浅く速い呼吸(パンティング)なども初期に見られる症状です。

末期症状

中毒が進むと、全身の震え(振戦)、筋肉の硬直、ふらつき、激しい痙攣(けいれん)発作などの神経症状が現れます。

さらに心拍数の急激な増加(頻脈)や不整脈が起こり、呼吸困難や意識障害に陥ることもあり、緊急治療を要する状態になります。体温の異常な上昇も起こり得ます。

症状が出るまでの時間

紅茶のような液体として摂取されたカフェインは吸収が早く、摂取からおよそ30分~2時間以内に症状が現れ始めるのが一般的です。

ただし食事と一緒に摂取した場合や、茶葉などの固形物が胃内にある場合は吸収が遅れ、数時間後に症状が現れることもあります。そのため摂取後しばらくの間は厳重な注意が必要です。

犬にとって危険な紅茶の摂取量の目安

木の器とスプーンに盛られた紅茶の茶葉

犬が紅茶に含まれるカフェインで中毒を起こす量は、体重1kgあたりおよそ20mgが目安とされています。40〜50mg/kgでは重度の症状が現れ、約140mg/kg前後では致死的になる可能性があります。

紅茶のカフェイン量は抽出条件によって変動しますが、一般的な抽出液100mLには20〜30mgのカフェインが含まれるとされています。

以下は、一般的な小型犬〜中型犬が危険ラインに達する紅茶量を、30mg/100mLを基準に算出した目安です。あくまで概算であり、犬の体調・年齢・基礎疾患によって危険性は大きく変わります。

犬種(体重例) 中毒の危険量(20mg/kg) 紅茶の量(目安)
チワワ(2kg) 約40mg 120〜150mL(コップ1杯弱)
トイ・プードル(4kg) 約80mg 240〜300mL(コップ1.5杯程度)
柴犬(10kg) 約200mg 600〜750mL(コップ3〜4杯)

計算上、ある程度まとまった量を飲まなければ危険ラインに到達しないように見えますが、これは「平均的なカフェイン量」で算出した場合の値です。

実際には商品や抽出時間の違いでカフェイン量が増えることもあり、小型犬は一口だけでも症状を起こすことがあります。また、体調不良時や心臓疾患をもつ犬は、より少ない量でも深刻な中毒を起こす可能性があります。

そのため、「一口なら大丈夫」という判断は非常に危険です。犬には紅茶を一切与えず、誤飲しないよう日常的な管理を徹底することが重要です。

犬にとって危険な紅茶を含む製品

お皿に切り分けられた紅茶のシフォンケーキ

犬が注意すべきなのは、紅茶そのものだけではありません。紅茶の成分が含まれた加工食品や菓子類もカフェインを含んでいるため、誤って摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があります。

具体的な食品としては、紅茶のシフォンケーキやパウンドケーキ、紅茶クッキー、紅茶ゼリー、紅茶アイスなどがあります。特に茶葉がそのまま使われているケーキ類はカフェイン濃度が高くなりやすく、少量でも犬の健康に悪影響を及ぼします。

また、ロイヤルミルクティー味のチョコレートなど、紅茶とココア成分を組み合わせた食品には、カフェインに加えてテオブロミンも含まれ、より重篤な症状につながります。

さらに、これらの製品には犬に好ましくない砂糖や脂肪分なども多く含まれており、誤食事故のリスクは一層高まります。

愛犬が口にすることのないよう、人間用のお菓子や飲料などは犬の届かない場所に保管し、食事やお茶の時間は犬を近づけないなどの注意を日頃から徹底しましょう。

紅茶の茶葉やティーバッグにも注意が必要

紅茶の茶葉が入ったティーバッグ

犬が紅茶そのものだけでなく、抽出前の茶葉やティーバッグを誤って口にすることにも注意が必要です。特に茶葉にはカフェインが濃縮されており、少量でも急激な中毒症状を引き起こす恐れがあります。

また乾燥した茶葉は胃の中で水分を吸収し膨張するため、犬の消化管を刺激し、嘔吐や下痢、重篤な中毒症状につながることもあります。

さらにティーバッグごと飲み込んでしまった場合、袋に使われている紐や金属製の留め具(ホッチキスの芯など)、不織布などの異物が腸閉塞を引き起こす可能性があります。腸閉塞は生命の危険もあり、最悪の場合は外科的な手術が必要になります。

使用後のティーバッグは犬の届かない蓋付きのゴミ箱にすぐに捨て、未使用の茶葉も密閉して保管してください。嗅覚が鋭い犬はゴミ箱を漁ることもあるため、キッチンへの侵入防止策を講じるなど日常的な対策を行い、誤飲事故を未然に防ぐことが重要です。

まとめ

飼い主が手に持つカップを下から見つめる犬

犬にとって紅茶は危険な飲み物であり、絶対に与えてはいけません。特に含まれるカフェインは、犬の神経や心臓に悪影響を及ぼし、最悪の場合は命に関わる症状を引き起こします。

ティーバッグや茶葉そのものはさらにカフェイン濃度が高いため、厳重な管理が必要です。万が一犬が紅茶やその製品を口にした場合は、自宅での催吐処置などは行わず、すぐに動物病院に連絡してください。

犬が届く範囲に紅茶を含む食品を置かないよう、日頃から注意し、事故を防ぐための環境作りを徹底しましょう。

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