犬に玉ねぎを食べさせてはいけない理由
犬に玉ねぎを与えることは、場合によっては命にかかわるほど危険な行為です。玉ねぎには犬の体内に入ると赤血球を破壊する有毒な成分が含まれており、中毒を引き起こすことがわかっています。
この毒性成分は加熱しても消えることはなく、玉ねぎそのものだけでなく、玉ねぎを使った料理や加工品なども犬にとって危険です。
犬に有害な成分「有機チオ硫酸化合物」」
玉ねぎには「有機チオ硫酸化合物」という毒性成分群が含まれています。
具体的には sodium n-propylthiosulfate(チオ硫酸プロピルナトリウム)など複数の有機チオ硫酸化合物があり、これらの成分が犬の体内に取り込まれると、赤血球を破壊する酸化作用を引き起こします。
赤血球が破壊されると、全身の細胞や組織に酸素を届ける能力が著しく低下し、犬は危険な状態に陥ります。
加熱調理でも玉ねぎの毒性は消えない
玉ねぎに含まれる毒性成分は加熱によっても分解されません。ハンバーグやスープ、カレー、煮汁など、玉ねぎのエキスが含まれている料理もすべて中毒の原因となります。
人間の食べ物を「少しなら大丈夫」と安易に与えることが、犬にとって取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
玉ねぎの加工品やネギ類全般もすべて危険
生の玉ねぎだけでなく、オニオンパウダー、乾燥玉ねぎ、玉ねぎの皮、ドレッシングやソース類など、あらゆる形態で中毒の危険があります。
また、ニンニク、長ネギ、ニラ、らっきょうなど、ネギ類全般に同様の毒性があるため、これらの食材も絶対に犬に与えないよう注意してください。
犬が玉ねぎを食べた場合に現れる症状
犬が玉ねぎを食べると、有害成分が赤血球を徐々に破壊するため、症状はすぐには現れず、多くの場合は摂取後12~72時間ほど経ってからはっきりと現れます。
症状の進行具合は犬の体格や摂取した玉ねぎの量によって異なりますが、はじめは軽い症状でも、数日経って重症化する場合もあるため注意が必要です。
嘔吐・下痢などの早期症状
玉ねぎを食べた直後の数時間~1日以内には、嘔吐や下痢、食欲不振、よだれが多く出るといった消化器症状が見られることがあります。
ただし、この初期症状が現れない場合もあり、無症状だからといって安心することはできません。
歯茎の蒼白や黄疸が見える貧血症状
赤血球の破壊が進むと、犬は酸欠状態となり「溶血性貧血」を起こします。
具体的には、歯茎や舌の色が白っぽく蒼白になる、呼吸が浅く速くなる、脈拍が速くなるなどの症状が現れます。また、黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)やふらつきなどが見られることもあります。
赤茶色の尿は重度中毒のサイン
中毒が進むと、尿の色が赤茶色や濃い褐色になる「ヘモグロビン尿」が見られる場合があります。これは破壊された赤血球の成分が尿中に排泄されている状態であり、極めて危険なサインです。
この症状が見られた場合は緊急事態ですので、すぐに動物病院での治療が必要です。
動けない・呼吸が苦しい場合は命の危険
玉ねぎ中毒が重症化すると、犬はぐったりして動かなくなり、呼吸困難を起こすことがあります。
明らかに元気がない、動きが鈍い、横たわったまま立ち上がらない、という状態は緊急性が極めて高く、直ちに動物病院で治療を受けなければ命に関わります。
犬にとって危険な玉ねぎの摂取量の目安
犬が玉ねぎ中毒を引き起こす量には個体差がありますが、体重1kgあたり15〜20g程度の玉ねぎで症状が現れる可能性が高いと報告されています。
特に小型犬の場合は、ごく少量でも重い症状を引き起こす危険性があります。また、一度の摂取量が少なくても、継続的に玉ねぎ成分が入った料理の煮汁などを口にすると、慢性的に中毒が進むこともあります。
以下に体重別の目安量を表で示しますが、これはあくまで参考値であり、少しでも食べた場合は油断せずに動物病院への相談が必要です。
| 犬の体重 | 危険な玉ねぎの量(目安) | 玉ねぎのおよその大きさ・量 |
|---|---|---|
| 2kg(超小型犬) | 30〜40g | 玉ねぎ1/6~1/5個程度 |
| 3kg(小型犬) | 45〜60g | 玉ねぎ1/4~1/3個程度 |
| 5kg(小型犬) | 75〜100g | 玉ねぎ1/2個程度 |
| 10kg(中型犬) | 150〜200g | 玉ねぎ中1個程度 |
| 20kg(中~大型犬) | 300〜400g | 玉ねぎ中2個程度 |
犬種や体質、年齢、健康状態によっては、ここに記載した量よりも少ない摂取量で中毒症状が出る場合もあります。
さらに加熱した玉ねぎやそのエキスも危険であり、どのような形態であっても犬にとっては有毒であることを理解しておく必要があります。
犬が玉ねぎを食べたときの対処法
もし犬が玉ねぎを食べてしまった場合は、飼い主さんが落ち着いて迅速に対処することが重要です。
玉ねぎ中毒は症状が出ていなくても体内で赤血球が破壊される恐れがあるため、自己判断で様子を見ることなく、すぐに獣医師に連絡して指示を受けることが最優先です。
まず動物病院に連絡する
愛犬が玉ねぎを食べた(または食べた可能性がある)ことが分かったら、すぐにかかりつけの動物病院、または夜間・休日対応の救急病院に電話をかけて指示を受けてください。
その際、獣医師には犬の体重、食べた時間、摂取した玉ねぎの形態(生、加熱、加工品など)とおおよその量、現在の犬の状態(症状の有無)を具体的に伝えると、適切な対応が可能になります。
自力で吐かせる行為は厳禁
玉ねぎを食べた犬に対して、自宅で塩やオキシドールなどを使って無理に吐かせることは非常に危険です。塩分中毒や誤嚥性肺炎などの重篤な二次被害を引き起こすリスクが高いため、絶対に行わないでください。
催吐処置が必要な場合は、動物病院にて獣医師が安全な方法で行います。
病院で受ける可能性のある治療
動物病院では、摂取後の経過時間や犬の状態に応じて催吐処置や胃洗浄を行います。その後、玉ねぎの有毒成分を吸着するための活性炭投与や、毒素の排出を促す点滴治療が実施されます。
貧血が進行している場合には、酸素吸入や輸血が必要になることもあります。
受診時に持参すると良いもの
動物病院を受診する際は、犬が口にした玉ねぎの残り、料理や加工食品のパッケージなどを持参すると、診察や治療がスムーズに進みます。
獣医師が正確な診断を行うために重要な手がかりになりますので、可能な限り準備しておきましょう。
犬が玉ねぎを誤食しないための予防策
犬の玉ねぎ中毒は飼い主の予防意識と家庭内の管理によって防ぐことができます。日常生活の中で少し工夫をするだけでも、愛犬の安全性は格段に高まります。
以下の具体的な対策を徹底して、玉ねぎの誤食リスクを最小限に抑えましょう。
キッチンを立ち入り禁止
調理中は玉ねぎの破片や調理中の料理が床や低い位置に落ちる可能性があります。キッチンエリアへの侵入を防ぐため、ペット用ゲートや柵を設置するなどの物理的対策をとることが最も効果的です。
玉ねぎ類は高所・密閉で保管
玉ねぎ、ニンニクなどネギ類は犬が届かない高さの棚や冷蔵庫に必ず収納しましょう。買い置きの袋を床に置いたままにしないなど、収納場所にも十分な注意を払うことが大切です。
残飯とゴミは確実に管理する
食事後の残飯や調理時に出たゴミを犬が漁らないように、蓋つきのゴミ箱を利用し、犬が簡単に開けられない場所に置く工夫をしましょう。鍋やフライパンに残った玉ねぎ入りの料理も、食後すぐに片付けるよう心がけてください。
人の食べ物を与えない習慣をつける
普段から人間の食べ物を犬に与える習慣があると、誤食事故のリスクは高まります。家族全員で「犬にはドッグフードや専用のおやつ以外与えない」というルールを徹底することで、犬が玉ねぎを含む料理を口にするリスクを軽減できます。
家庭菜園は犬が入れないようにする
庭やベランダなどで玉ねぎやネギ類を栽培している場合は、犬が自由に立ち入れないように柵を設置するなど厳重に管理をしてください。
特に土中にある球根を掘り出して食べてしまう事故も多いため、栽培場所周辺への犬の立ち入りを禁止する対策を徹底しましょう。
拾い食いしないよう日頃から訓練する
犬が散歩中や自宅で床に落ちた食べ物を口に入れないよう、日常的に「待て」や「出せ(ちょうだい)」などの基本的なしつけを行うことが有効です。これにより、万が一玉ねぎが落ちていても、飼い主がすぐに止めることが可能になります。
まとめ
玉ねぎは犬にとって非常に有害な食材です。少量でも玉ねぎに含まれる有機チオ硫酸化合物が赤血球を破壊し、貧血や重篤な症状を引き起こす可能性があります。
加熱調理された玉ねぎや玉ねぎエキスが含まれる料理、ネギ類全般にも同じ危険があるため注意が必要です。もし犬が玉ねぎを食べてしまったら、症状の有無にかかわらず速やかに獣医師に相談し、自己判断で吐かせることは絶対に避けてください。
日頃から玉ねぎの保管や残飯処理を徹底し、犬が誤食しない環境を整えることが愛犬の健康を守るために最も重要です。



