【獣医師監修】犬にミネラルウォーターを飲ませても大丈夫?水道水との違いや安全な選び方を解説

【獣医師監修】犬にミネラルウォーターを飲ませても大丈夫?水道水との違いや安全な選び方を解説

愛犬にミネラルウォーターを与えても良いか解説。基本は「軟水」を選びましょう。「硬水」は尿路結石のリスクを高める可能性があります。安全な市販品の選び方から水道水との比較、飲ませてはいけない水まで詳しく紹介します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

犬にミネラルウォーターは与えても大丈夫?

水が入った器の横に伏せている犬

結論から言うと、犬にミネラルウォーターを与える場合、「硬度が低い軟水」であれば基本的に問題ありません。

犬は必要なミネラルを食事から十分に摂取しているため、水からさらにミネラルを多く摂取すると、体内のミネラルバランスが崩れ、腎臓や泌尿器系に負担をかける可能性があります。特に硬水はカルシウムやマグネシウムを多く含んでいるため、日常的に与えることは避けましょう。

また、腎臓や泌尿器に疾患のある犬や、高齢犬などは体質的に影響を受けやすいため、与える前に獣医師に相談することをおすすめします。

犬が飲んでも良いミネラルウォーターの種類

屋外でペットボトルからミネラルウォーターを飲む犬

犬に与えるミネラルウォーターを選ぶ際は、「硬度の低い軟水」を選ぶことが大切です。

硬度とは水1リットルあたりに含まれるカルシウムとマグネシウムの量を示した数値で、日本では硬度100 mg/L以下の水が一般的に軟水とされています(WHO: 世界保健機関の基準では60 mg/L未満)。

国内で販売されているミネラルウォーターの多くは軟水ですが、硬度が高めの海外製品も多いため、購入時には必ずラベルの表示を確認してください。

具体的には硬度20〜60 mg/L程度の国産ミネラルウォーター(い・ろ・は・す、サントリー天然水など)が安心して与えやすい例です。また、海外製品ではボルヴィックなども比較的硬度が低く、犬に適した水として挙げられます。

犬にミネラルウォーターを与える際の注意点

水が入った器のそばに伏せたまま上目遣いをしている犬

犬にミネラルウォーターを与えるときには、軟水であることに加えて、いくつか気をつけたいポイントがあります。犬の健康状態や飲ませ方によっては、適切とされる水でも思わぬトラブルにつながる可能性があるためです。

結石体質の犬には硬水NG

柴犬、シーズー、ミニチュア・シュナウザーなど、尿路結石(尿石症)を発症しやすい犬種や過去に尿路結石と診断された犬の場合は、硬度が高い水を与えることは避けましょう。

硬度の高い水に含まれるカルシウムやマグネシウムが結石形成を促す要因の一つと考えられており、日常的な摂取はリスクを高める可能性があります。

ペット用でも硬度チェックは必須

市販の「ペット用ミネラルウォーター」と表示されている商品でも、硬度が犬に適しているとは限りません。人間用と同じようにパッケージの成分表示を確認し、硬度が100 mg/L以下の軟水であるかどうかを確認してください。

水はこまめに交換し新鮮さを保つ

水を器に入れたまま長時間放置すると、犬の唾液や汚れが混ざり細菌が繁殖します。飲み残した水は、最低でも朝夕の2回は交換し、できれば都度新鮮な水を用意するよう心がけましょう。

器も清潔に保ち、細菌繁殖による体調不良を予防してください。

水道水が飲めていれば切り替え不要

現在、犬が問題なく水道水を飲んでいる場合、あえてミネラルウォーターに切り替える必要はありません。健康上の理由や水道水を嫌がる場合など、明確な理由があるときのみ検討するとよいでしょう。

犬に飲ませてはいけない水とは

ジュースや炭酸水を入れたグラスが並んでいる様子

犬にとって安全な水もあれば、健康にリスクをもたらすために飲ませるべきではない水もあります。犬の健康を守るためには、以下のような水を避けることが大切です。

硬度の高い硬水

カルシウムやマグネシウムを豊富に含む硬水(エビアンやコントレックスなど)は、人間には健康的であっても犬には適していません。

継続的に摂取すると尿路結石のリスクが高まり、内臓に負担をかける可能性があります。日常的に飲ませるのは避けましょう。

自然の水(川の水、雨水など)

散歩中の水たまりや川の水、雨水には寄生虫(エキノコックスなど)や細菌、化学物質が含まれている恐れがあります。

犬がこれらを摂取すると、下痢や嘔吐をはじめ深刻な健康被害を引き起こす可能性があるため、飲ませないよう注意してください。

温泉水

人間が飲用できる温泉水であっても、犬にとってはミネラルが多すぎます。犬の内臓に過度の負担を与える恐れがあるため、温泉水は与えないようにしましょう。

フレーバーウォーターやジュース

人間向けのフレーバーウォーターやジュース、清涼飲料水には多量の糖分や添加物が含まれており、肥満や虫歯の原因になります。

特に、人工甘味料の「キシリトール」は犬にとって猛毒であり、少量でも命に関わる場合がありますので絶対に与えてはいけません。

炭酸水

炭酸水自体に強い毒性はありませんが、多くの犬は炭酸の刺激を嫌がります。飲むと胃腸にガスが溜まり、不快感を感じることがあります。獣医師の特別な指示がない限り、積極的に与える必要はありません。

犬にとってミネラルウォーターと水道水、どちらが安全?

水道の蛇口から食器に注がれる水を見つめる犬

犬の飲み水として、ミネラルウォーター(軟水)と水道水はどちらも基本的に安全であり、健康上の問題はありません。ただ、それぞれにメリットや注意点があるため、状況や犬の好みによって選ぶことが大切です。

日本の水道水は非常に厳しい水質基準をクリアしており、衛生面では安心して犬に飲ませることができます。塩素(カルキ)臭が気になる場合は、容器に汲み置きして数時間置くか、一度沸騰させて冷ました「湯冷まし」を与えることで臭いを取り除くことができます。

ただし塩素の消毒効果がなくなるため、汲み置いた水はこまめに交換するようにしましょう。一方でミネラルウォーター(軟水)はカルキ臭がなく飲みやすいですが、品質を保つためにコストや手間がかかります。

犬が水道水を嫌がらず健康上問題がない場合は、特に切り替える必要はありません。どちらを選ぶ場合でも、新鮮で清潔な状態を保つことが最も重要です。

まとめ

ガラスの器に入った水を飲んでいる犬

犬に与える水は基本的に硬度の低い軟水か、日本の水道水であれば安全です。

硬水はカルシウムやマグネシウムを多く含んでおり、日常的に与えると尿路結石のリスクを高める可能性があるため避けましょう。市販のミネラルウォーターを選ぶ場合は、硬度が100 mg/L以下の国産品を目安に選ぶと安心です。

また、水道水は日本国内で厳しい基準をクリアしているため、犬に飲ませても健康上の問題はありません。

散歩中の水たまりや川の水、温泉水、ジュース類、人工甘味料入りの飲料などは、寄生虫や細菌、過剰なミネラル、糖分、犬にとって有害な成分を含んでいることがあるため絶対に与えないでください。

犬の健康状態や好みを考慮しながら、常に清潔で新鮮な水を用意してあげることが大切です。

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