犬が長芋を食べても大丈夫?
結論から言うと、犬は適量であれば長芋を食べても大丈夫です。ただし、生ではなく、必ず加熱したものを与える必要があります。
長芋は栄養豊富で犬の健康維持にも役立ちますが、生のままや皮付きで与えると口のかゆみや消化不良を引き起こす恐れがあります。
なお、「山芋」と「長芋」は同じ意味で使われることがありますが、正確には「山芋」とは自然薯(じねんじょ)や大和芋、そして長芋などの総称であり、長芋はその一種です。
自然薯や大和芋は長芋より粘りが強く、刺激もやや強めですが、犬に与える際の基本的な注意点はほぼ共通しています。本記事では、スーパーなどで一般的に手に入りやすく、比較的刺激の少ない長芋を中心に説明します。
いずれの場合も、犬の体調や個体差に注意しながら、適切な処理方法と量を守って与えることが重要です。
長芋に含まれる栄養素
長芋は水分が豊富な根菜ですが、犬の健康維持に役立つ栄養素も含まれています。ここでは特に注目される長芋特有の成分やその働きについて詳しく解説します。
水溶性食物繊維
長芋の「ぬめり」には、水溶性食物繊維のほか、動物の粘液成分であるムチンに似た性質を持つ糖タンパク質(ムチン様物質)が含まれています。これらは消化管の粘膜保護や善玉菌のエサとなり、犬の腸内環境の改善に役立ちます。
レジスタントスターチ
長芋には難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)が豊富に含まれています。消化吸収されにくい性質があるため、血糖値の急激な上昇を抑えることに役立ちます。加熱すると一旦減少しますが、冷めると再形成されるという特徴もあります。
消化酵素アミラーゼ(ジアスターゼ)
アミラーゼ(ジアスターゼ)はでんぷんを分解し、消化を助ける酵素です。長芋に豊富に含まれていますが、70℃以上で加熱すると失活するため、加熱調理後にはほぼ働きを失います。
カリウム
長芋にはミネラル成分のカリウムが豊富に含まれています。カリウムは余分なナトリウム(塩分)を排出し、体内の水分バランスを調整することで、犬の筋肉や神経の正常な機能維持に貢献します。
ビタミンB群・ビタミンC
長芋にはビタミンB群やビタミンCが含まれています。ビタミンB群はエネルギー代謝を助ける働きがあり、ビタミンCは抗酸化作用を持ち、犬の健康維持を間接的にサポートする可能性があります。
犬に長芋を与えるメリット
- 腸内環境の改善
- 便通の改善・便秘予防
- 血糖値の安定
- 体内の塩分調整サポート
- 満腹感の持続
- 消化負担の軽減
長芋を犬の食事に適量取り入れることで、腸内環境の改善や消化のサポートが期待できます。長芋に含まれる水溶性食物繊維やムチン様物質は、善玉菌の働きを促し、便の状態を安定させるのに役立ちます。
また、難消化性でんぷんであるレジスタントスターチは、ゆっくり消化されるため血糖値の急激な上昇を抑える効果があり、食事の満足感も持続しやすくなります。
さらに、適度なカリウムは体内の余分な塩分の排出を助け、体液バランスを整えるというメリットもあります。特に便秘気味の犬やお腹の調子が不安定な犬に対し、少量を定期的に与えることで健康維持の一助となるでしょう。
犬に長芋を与える場合の量の目安
犬に長芋を与える際は、1日の主食(ドッグフード)から得るカロリーの10%以内に抑えることが目安です。
栄養豊富な長芋ですが、多量に与えると消化不良や肥満の原因となるため、あくまで少量を週に1〜2回程度、おやつやトッピングとして与えるようにしましょう。
以下の表は、犬の体重ごとの加熱した長芋の1回あたりの目安量を示したものです。犬種はあくまで参考とし、個体の体格や健康状態を基準に量を調整してください。
| 犬の体重 | 目安量(加熱後) | 犬種の例(参考) |
|---|---|---|
| 約3kg | 5g程度(小さじ1杯) | チワワ、タイニー・プードル等 |
| 約5kg | 5〜10g程度(小さじ1〜2杯) | ミニチュア・ダックス、ポメラニアン等 |
| 約10kg | 15g程度(大さじ1杯) | 柴犬、フレンチブル等 |
| 約20kg | 30g程度(大さじ2杯) | ボーダーコリー、中型犬ミックス等 |
子犬や高齢犬の場合は、この目安よりさらに少量から与え始めるなど、慎重に調整してください。
犬に長芋を与えるときの注意点
長芋は適切に与えれば犬にとって安全で有益ですが、与え方や体調によってはトラブルの原因になることもあります。愛犬に長芋を与える際には、以下のポイントに特に注意してください。
生や皮付きの長芋はかゆみを起こすおそれがある
生の長芋や皮の近くにはシュウ酸カルシウムという針状の結晶が含まれており、口の周りや粘膜に刺激を与えて強いかゆみや痛みを起こすことがあります。必ず皮を厚めにむいて、加熱調理後に与えるようにしましょう。
初回は少量から与えてアレルギーを確認
長芋は犬によってアレルギー反応を引き起こす可能性があります。初回はごく少量を与え、24〜48時間程度、皮膚のかゆみ、発赤、嘔吐、下痢などの異常がないかを慎重に観察してください。異常が出た場合は獣医師に相談してください。
与えすぎは消化不良や肥満につながる
長芋は適量を守らず与えすぎると、消化不良による下痢や便秘、さらにはカロリー過多による肥満の原因になります。あくまで食事のアクセントやトッピングとして少量を与えるよう心がけてください。
粘りが強すぎると犬が食べづらくなる
加熱した長芋でも強い粘り気が残ると犬が食べにくく感じることがあります。細かく刻む、すりおろして少量のお湯やフードの煮汁で伸ばすなどして、適度に粘りを抑える工夫をしましょう。
腎臓病や結石のある犬には与えない方が安全
特に腎臓病のある犬の場合、長芋のカリウムが負担になる可能性があります。また、尿路結石(特にシュウ酸カルシウム結石)の既往歴がある犬も注意が必要です。持病がある犬に長芋を与える場合は、必ずかかりつけの獣医師に相談してください。
まとめ
犬に長芋を与えること自体は問題ありませんが、安全に与えるためには「必ず加熱する」「皮は厚めにむく」「与える量は少量」の3点を徹底する必要があります。
長芋の粘り成分や難消化性でんぷんには犬の腸内環境や消化をサポートするメリットがある一方、生や皮付きの状態では口のかゆみを引き起こすリスクがあります。
また、持病がある犬はカリウムやシュウ酸カルシウムが健康上の負担になることもあるため、事前に獣医師の確認が必須です。愛犬の体質や体調に合わせて、食事のアクセント程度に少量を与えましょう。



