犬ににんにくは絶対にNG!与えると命の危険も…
にんにくは犬に絶対に食べさせてはいけない食材です。滋養強壮のイメージから人間にとっては健康的な食材ですが、犬にとっては赤血球を破壊する有毒な成分を含んでおり、命に関わる危険な中毒症状を引き起こす可能性があります。
加熱したにんにくやガーリックパウダーなどの加工品も同様に危険であり、決して与えてはいけません。
犬がにんにくを食べると現れる主な中毒症状
犬がにんにくを摂取すると、含まれている「有機チオ硫酸化合物」という成分が赤血球を破壊し、様々な中毒症状を引き起こします。症状は食べてすぐには現れず、24時間から数日経ってから見られることも多いため注意が必要です。
「溶血性貧血」による中毒症状
- 歯茎や舌の色が白っぽくなる
- ぐったりする
- 運動を嫌がる
- 呼吸が速くなる
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる症状)
溶血性貧血とは、赤血球が通常よりも早く破壊されてしまうことで起こる貧血状態のことです。酸素を運ぶ役割を持つ赤血球が減少するため、体内の細胞が酸素不足に陥ります。これにより、歯茎や舌の色が白っぽくなる、元気がなくぐったりする、運動を嫌がる、呼吸が速くなるなどの症状が見られます。
さらに進行すると、破壊された赤血球の色素によって黄疸(おうだん)と呼ばれる皮膚や白目が黄色くなる症状が現れることもあります。
溶血性貧血が進行した場合の「重篤症状」
- 呼吸困難
- 赤色や茶褐色の尿(血色素尿)
溶血性貧血が重度にまで進行すると、全身の酸素不足から呼吸困難に陥ることがあります。また、破壊された赤血球に含まれるヘモグロビンが尿に排出されることで、赤色や茶褐色の尿(血色素尿)が出ることもあります。
これらの症状が見られる場合は極めて危険な状態であり、命に関わるため、一刻も早い治療が必要です。
「胃腸の粘膜刺激」が原因の症状
- 嘔吐や下痢
- よだれを大量に流す
- 腹痛
- 食欲がなくなる
- ぐったりして動かなくなる
にんにくの成分は胃腸の粘膜を刺激するため、嘔吐や下痢、よだれを大量に流す、お腹の痛みといった消化器症状を引き起こすことがあります。食欲がなくなることも多く、ぐったりして動かなくなる様子が見られる場合もあります。
犬がにんにく中毒になる量はどのぐらい?
犬がにんにく中毒を起こす量には個体差がありますが、一般的な指標を知っておくことが重要です。しかし、これから説明する量に満たないからといって安全であるとは決して考えないでください。
中毒を引き起こす可能性のある具体的な量
生のにんにくの場合、犬では体重1kgあたり15g〜30gのにんにくを摂取すると中毒症状が現れる危険があると言われています。
例えば、体重5kgのトイ・プードルや豆柴などの小型犬の場合、75g以上のにんにくが危険な量に相当します。にんにくひとかけらが約5gとすると、15かけら以上が一つの目安となりますが、これはあくまで計算上の数値です。
少量でも継続的な摂取は危険
一度に大量に食べなくても、少量ずつ継続的に摂取することで中毒症状が引き起こされる「慢性中毒」にも注意が必要です。
飼い主が良かれと思って手作りフードに少量混ぜ続けるようなケースは非常に危険です。犬種や年齢、健康状態によっては、ごくわずかな量でも重篤な症状につながる可能性があるため、「少量なら大丈夫」という考えは絶対にしないでください。
犬がにんにくを誤食した場合の応急処置
愛犬がにんにくを食べてしまったことに気づいたら、パニックにならず、落ち着いて行動することが重要です。家庭での誤った対処はかえって犬を危険に晒す可能性があります。
まずは落ち着いて状況を確認する
まずは飼い主が冷静になり、「いつ」「何を」「どのくらいの量」食べたのかを可能な限り正確に把握してください。にんにくそのものなのか、餃子やパスタソースといった料理の一部なのか、商品のパッケージが残っていれば成分表示などを確認し、情報を整理しておきましょう。
自己判断で吐かせようとしない
インターネット上には塩や過酸化水素水(オキシドール)を使って吐かせる方法が紹介されていることがありますが、絶対に真似しないでください。
無理に吐かせようとすると、吐いたものが気管に入り誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こしたり、食道を傷つけたりする危険性があります。特に塩を大量に与えることは、それ自体が塩中毒という別の深刻な事態を招くため大変危険です。
すぐに動物病院へ連絡する
状況を確認したら、自己判断で様子を見ずに、ただちに動物病院へ連絡してください。夜間や休日であっても、救急対応している病院を探して指示を仰ぎましょう。
電話では、「犬種、体重、年齢」「食べたもの、量、食べた時間」「現在の犬の様子」を正確に伝えることが、その後のスムーズな診断と治療につながります。
動物病院での診療内容や治療の内容
動物病院では、飼い主からの情報と犬の状態に基づき、必要な検査と処置を迅速に行います。どのような治療が行われるかを知っておくと、少しでも落ち着いて対応できるでしょう。
問診と身体検査
まずは飼い主から誤食した状況を詳しく聞き取り、犬の体重測定や体温測定、聴診、視診など全身の身体検査を行います。歯茎の色や呼吸の状態などを確認し、全体的な状態を把握します。
催吐処置(さいとしょち)
食べてからあまり時間が経っておらず、犬の状態が安定している場合、獣医師の管理下で安全な薬物を注射して胃の中のものを吐かせる「催吐処置」を行うことがあります。これにより、毒性成分が体に吸収されるのを最小限に抑えます。
活性炭の投与
催吐処置の後や、催吐処置が適切でないと判断された場合に、医療用の「活性炭」を投与することがあります。活性炭は、消化管内に残っている毒素を吸着し、便と一緒に体外へ排出させる効果が期待できます。
点滴治療や血液検査
脱水症状の改善や、体内に吸収されてしまった毒素の排出を促進するために、点滴治療(静脈内輸液)を行います。また、貧血の進行度合いや肝臓、腎臓などの内臓機能に異常がないかを確認するため、定期的に血液検査を行い、状態をモニタリングします。
輸血
溶血性貧血が重度にまで進行し、命の危険が迫っている場合には、他の健康な犬の血液を輸血する治療が必要になることもあります。
犬のにんにくの誤食を防ぐ予防方法
中毒は、起きてしまってからでは愛犬に辛い思いをさせてしまいます。日頃から誤食が起こらない環境を整えることが何よりも大切です。
人間の食べ物を与えない習慣をつける
犬の健康を守るための最も基本的で重要なルールです。食卓やキッチンで調理している最中に、人間の食べ物を「おすそわけ」する習慣はやめましょう。一度与えてしまうと犬は食べ物をねだるようになり、誤食のリスクを高めます。
にんにくや玉ねぎ類の保管場所を見直す
にんにくや玉ねぎ、長ネギといったネギ類の野菜は、犬が簡単には近づけない場所に保管しましょう。床に近い場所や開いている棚は避け、扉の閉まる戸棚や冷蔵庫の中など、安全な場所で管理することが重要です。
調理中の誤食に注意する
料理中にうっかりにんにくのかけらなどを床に落としてしまうことはよくあります。犬が素早く口にしてしまわないよう、すぐに拾うことを徹底してください。可能であれば、調理中は犬をキッチンに入れないようにゲートなどで仕切るのも有効な対策です。
ゴミ箱の管理を徹底する
にんにくの皮やハンバーグの残りなど、犬にとって魅力的な匂いがするゴミを漁ってしまう事故は後を絶ちません。犬が簡単に開けられないよう、必ず蓋つきのゴミ箱を使用しましょう。キッチンの外や別の部屋など、犬の生活スペースから離れた場所にゴミ箱を置くのも良い方法です。
まとめ
にんにくは、犬にとって命を脅かす危険な食材です。加熱や加工をしてもその毒性は消えず、少量でも継続的に摂取すれば重い中毒症状を引き起こす可能性があります。愛犬が万が一にんにくを食べてしまった場合は、自己判断で様子を見たり、危険な方法で吐かせようとしたりせず、すぐに動物病院に連絡し、指示を仰いでください。
日頃からにんにくの保管場所やゴミ箱の管理を徹底し、人間の食べ物を与えない習慣をつけることで、悲しい事故を未然に防ぐことができます。正しい知識を持つことが、大切な家族である愛犬の命と健康を守ることに繋がります。