犬はくるみを食べても大丈夫?
犬はくるみを食べることが完全に禁止されているわけではありませんが、いくつかの注意点があります。
スーパーなどで一般的に売られている、いわゆる普通の「くるみ」であれば、ごく少量を安全に管理された状態で与える限り、深刻な問題は起こりにくいとされています。しかし、与える場合には種類や状態に注意が必要です。
まず気をつけたいのは、一般的な食用のくるみ(英語名:English walnut)は犬に少量なら与えても比較的安全ですが、特殊な品種である黒くるみ(ブラックウォールナッツ)については、犬に有害な成分が含まれており、絶対に与えてはいけません。
くるみを愛犬に与える際は、正しい知識を持ち、安全管理を徹底する必要があります。
犬に与えてはいけない「くるみ」
市販のナッツ菓子や調味料で加工されたくるみ(塩味、甘味、チョコレート、キシリトール入りなど)は健康上の問題が発生するため絶対に避けましょう。
特に黒くるみ(ブラックウォールナッツ)は、普通の店舗でほとんど見かけることはありませんが、一部のハーブ専門店や通販で入手可能です。黒くるみには犬に有害な成分が含まれており、摂取すると中毒症状を引き起こすリスクがあるため、犬には絶対に与えないでください。
また、カビが生えたり湿気たりしたくるみは、カビ毒(アフラトキシン)という非常に強い毒素を含む可能性があり、肝臓や神経系に深刻な影響を与えます。こうしたくるみは、犬には絶対に与えないようにしましょう。
犬がくるみを食べるときの栄養的なメリット
くるみにはオメガ3脂肪酸(特にα-リノレン酸)が豊富に含まれていますが、犬の場合、α-リノレン酸から健康効果の高いEPAやDHAへの変換効率は低いため、魚油のような大きな健康メリットはあまり期待できません。また、ビタミンEやミネラルといった栄養素も含まれていますが、あくまで他の安全な食材でも補える成分です。
そのため、くるみを栄養補助食品と考えるよりは、風味づけやご褒美としてごく少量に限定し、主食とは切り離して考えることが推奨されます。
犬にくるみを与えるときのリスクと注意点
くるみを犬に与えることには、栄養面でのメリットがある一方、注意が必要なリスクも伴います。与える場合には必ずそのリスクを正しく理解し、安全に与えるためのポイントを守りましょう。
高脂肪による肥満や膵炎のリスク
くるみは脂肪分が多く、高カロリーな食べ物です。少量でもエネルギー量が高いため、頻繁に与えたり、与える量が多すぎると肥満の原因になります。
また、脂質の多い食事は犬にとって膵炎を引き起こす可能性もあります。膵炎は激しい腹痛や嘔吐を伴う深刻な疾患で、特に過去に膵炎を患ったことのある犬や、高齢犬、肥満傾向にある犬では注意が必要です。
窒息や消化管損傷のリスク
硬いくるみの殻や大粒のままのくるみは、小型犬や子犬の場合、のどや食道に詰まり窒息を起こす可能性があります。また、殻や硬い粒のまま食べさせると消化管を傷つける恐れもあるため、必ず細かく砕くか、ペースト状にすることが安全です。
カビや酸化したくるみによる中毒の危険性
古いくるみや湿気たくるみには、目に見えなくてもカビが発生している場合があります。このカビから生じる毒素(特にアフラトキシン)は、肝臓に深刻なダメージを与える危険性があります。くるみは新鮮な状態のものを使い、異臭や変色がある場合は絶対に与えないようにしましょう。
食物アレルギーの可能性
犬はくるみを食べることによってアレルギー症状を起こすことがあります。初めて与える場合はごく少量から始め、皮膚のかゆみ、嘔吐、下痢などの異変がないか注意深く観察しましょう。
犬に与えてよいくるみの適量や目安
犬にくるみを与える場合、安全性を守るためには適量を厳格に守る必要があります。基本的には1日の総カロリーのうちおやつ分は10%以内に抑えるという原則を守り、適量を超えて与えないことが重要です。
体重別にみた1日の適量
くるみは1gあたり約6. 5kcalと高カロリーです。一般的に売られている半割れのくるみ1粒(約2g)は約13kcalに相当します。この数値を基に、犬の体重別の1日あたりの目安量は以下のようになります。与える量はあくまでも上限として考え、それ以下に抑えるのが理想的です。
- 小型犬(約5kg):くるみ1/4粒程度(約0.5g)
- 中型犬(約15kg):くるみ1/2粒~1粒程度(約1~2g)
- 大型犬(約30kg):くるみ1粒~2粒程度(約2~4g)
子犬やシニア犬への与え方の注意
子犬は消化器官が未成熟のため、くるみのような脂肪分の高い食べ物を与えるのは避けた方が無難です。シニア犬の場合も、消化機能が衰えているため、一般的な目安量より少なめにするか、健康状態に不安があれば与えないという選択も考えましょう。
与える頻度や適したタイミングの目安
頻繁に与えることは避け、週に1~2回程度の頻度にしましょう。与えるタイミングは、食後のおやつやトレーニングのご褒美として少量を与えるのが適しています。また、くるみを与える場合は、その分主食を若干減らすなど、1日のカロリー摂取量が増えすぎないように調整することが大切です。
犬がくるみを誤食したときの症状と対処法
犬が飼い主の意図しない形でくるみを食べてしまうことがあります。くるみを誤食した場合、まず飼い主は慌てず、犬の状態を冷静に確認することが大切です。誤食の量やくるみの種類、殻の有無や状態によっては、緊急の対処が必要になることがあります。
誤食後に現れる可能性のある症状
くるみを誤食すると消化器系への影響がよく見られます。主な症状として、嘔吐や下痢、食欲の低下、腹痛などが挙げられます。元気がなくなったり、背中を丸めてじっと動かなくなったりする場合も注意が必要です。
また、窒息のリスクがある大きな塊や殻を飲み込んだ可能性がある場合には、喉やお腹に痛みを訴える様子や呼吸が苦しそうな様子が見られることもあります。
自宅でできる応急処置のポイント
飼い主が行うべき応急処置は、無理に吐かせないことです。自宅で塩水などを飲ませることは症状を悪化させる恐れがあるため絶対に避けましょう。
犬が休める静かな場所を用意し、それ以上の飲食は控えさせます。食べたくるみの種類、量、状況を正確に把握し、記録しておくことが重要です。
動物病院に急いで連れていくべき症状
以下の症状がある場合は緊急性が高いため、すぐに動物病院に連絡しましょう。
- 繰り返す激しい嘔吐や下痢
- ぐったりして動けない
- けいれん、震え、ふらつきなどの神経症状
- 呼吸困難や呼吸が早い
- 殻や大きな粒を飲み込んだ可能性が高い場合
病院に行く際には、食べたくるみの残りやパッケージ、便や吐物の情報を持参すると獣医師の診断がスムーズに進みます。
まとめ
犬にくるみを与えること自体は絶対に禁止されているわけではありませんが、与える際には慎重な管理と注意が必要です。一般的に流通している普通のくるみを、ごく少量かつ細かく砕いた状態で与える場合に限り安全性が保たれます。
ただし、高脂肪による肥満や膵炎のリスク、窒息、カビによる中毒などの危険も伴います。黒くるみや加工品は絶対に避け、くるみを与える場合は犬の体重に応じた量を守り、異変があればすぐ動物病院に相談するよう心掛けましょう。