犬が節分の豆を食べないほうがいい理由
節分は古くから伝わる行事の一つです。中国から伝わった「追儺(ついな)」という災いを祓う儀式が由来になったとされ、江戸時代には風習として定着したと言われています。
季節の変わり目には邪気(鬼)が入りやすいと信じられており、そのお祓いとして行われてきました。諸説ありますが、魔を滅ぼす「魔滅(まめ)」という意味から豆を使うようになったとされ、大豆や地域によっては落花生が用いられています。
多くの地域で豆まきに用いられている大豆は良質なたんぱく源で栄養があり、ドッグフードにも用いられる健康に良い食べ物です。中毒になる危険性も低く、大豆が含まれている食べ物を食べて危険な状態になることは、アレルギーを除いてほぼありません。
しかし、与える際には非常に注意すべき食べ物なのです。それでは、なぜ節分に用いる豆類を食べないほうがいいか、理由について説明します。
煎り大豆は犬の消化不良を招きやすい
煎り大豆には、オリゴ糖という糖類が多く含まれています。オリゴ糖には、腸内環境を整えるなどの効果があります。
また、消化・吸収されにくいため、カロリーが低いという利点があります。しかし一方で、一度に大量に摂取すると消化不良を起こすという弊害があります。
場合によっては、大豆がそのまま便に混ざって排出されたり、吐く原因となってしまうことがあるので、一度に大量に摂取するのは危険です。
特に食べることが好きな犬種を飼っている飼い主さんは、目を離した隙に愛犬が盗み食いをしていた、ということがないように、保管場所には十分気を付けてくださいね。
地域によっては、煎り大豆ではなく、落花生を使う場合もありますが、落花生も注意が必要です。落花生は約50%が脂質でできており、不溶性食物繊維も多く含むため、消化不良や下痢になりやすい食べ物なのです。
大豆アレルギーの症状が出ることもある
大豆はアレルギーの原因となる可能性のある食べ物です。
よく見られる症状としては皮膚の痒みがあります。食べ物が原因で痒みを感じている場合には、顔や背中、肛門周囲をしきりに足で掻く、舐めるといった行動が見られます。また、嘔吐や下痢など、消化器症状がみられる場合もあります。
大豆が含まれるものを食べた後にこれらの行動や症状がみられたら、アレルギーの可能性があるので、獣医師に相談しましょう。
子犬や小型犬は喉や腸が詰まるリスクがある
煎り大豆は乾燥していて軽いため、誤嚥しやすい形状をしています。そのままの状態で飲み込んでしまった場合、喉や腸で詰まるリスクがあります。例えかみ砕いて小さくなったとしても、煎り大豆は水分を含むと膨らみやすいため、注意が必要です。
煎り大豆の危険性は近年、子どもの窒息や誤嚥の事故のニュースで聞き、知っている方も多くいらっしゃると思います。煎り大豆などの硬い豆やナッツ類は誤って気管に入ると窒息の恐れがあり、5歳未満の子どもには食べさせないようにと消費者庁が注意喚起をしていますが、危険なのは人間の子どもだけではありません。
人間の子どもと同じように、咀嚼機能が未熟な0歳の子犬や体が小さく、消化管も細い小型犬は詰まるリスクが特に高いので、注意しなければなりません。また、咀嚼機能が衰えている老犬も与えるのは控えたほうがよいでしょう。
煎り大豆だけでなく、殻付き落花生にも注意が必要です。殻付きのまま使用していて、それを食べた場合には、殻によって喉や腸にさらに詰まりやすくなります。
腎臓や心臓の悪い犬は体調悪化の心配がある
大豆にはカリウムが多く含まれています。カリウムは体に必要な栄養素ですが、腎臓や心臓が悪い犬は摂取量を注意すべき栄養素です。
慢性腎臓病では、カリウム排泄が困難になるため、血中のカリウム濃度が高くなり、高カリウム血症に陥る危険性があります。
心臓病を罹患している場合には、カリウムを摂取すべき場合と制限すべき場合があります。カリウムの値は心臓の収縮に影響を与える非常に重要な栄養素のため、愛犬がどちらの状況なのか獣医師に確認し、制限すべき場合には控えましょう。
生の大豆は絶対に与えてはいけない
生の大豆には「トリプシン・インヒビター」と呼ばれる物質が入っています。これは犬に対して毒性が強く、膵臓から分泌されるトリプシンという酵素の働きを阻害します。その結果消化不良や下痢を起こす危険性があるのです。
加熱することでこのトリプシン・インヒビターは不活化されます。節分に使用することが多い、市販の煎り大豆は加熱してあるので心配はいりませんが、ご自身で準備される際には、柔らかくなるまで十分煮るなど注意が必要です。
犬と節分の豆まきを安全に行うための注意点
煎り大豆の危険性についてお話しましたが、豆まきを愛犬と楽しめないわけではありません。それでは、次は愛犬と楽しい一時を過ごすために必要な、豆まきを安全に行うための対策についてご紹介します。
豆まきの最中は犬にケージや別室で待っていてもらう
物理的に隔離し、豆まきをした際に床に落ちた豆類を食べないようにする方法です。ケージや別室で待っていてもらうことで、愛犬が豆類を食べてしまうことを防ぎます。
豆まきが終わった後は掃除をし、豆類が床に残っていないことを確認してから愛犬を部屋に戻しましょう。
しかし、この方法では愛犬は何ももらえないため、楽しくないかもしれません。待機中か豆まき終了後に、愛犬にもおやつかフードを少量あげるなど配慮してあげましょう。
犬も豆まきに参加する時は節分豆の代用品を使う
豆まきも一緒に楽しみたい場合には、豆類の代わりに、犬が食べても大丈夫なもので豆まきをしましょう。例えば、いつも愛犬が食べているドライフードや、犬用ボーロなどのおやつを使用する方法があります。
しかし、フードやおやつであっても、たくさん食べるとカロリーオーバーになるなどの問題があるため、豆まきに使用する量には注意しましょう。何粒くらい使用するか事前に検討してから、投げ始めると良いですね。
小袋入りの豆を使用する
基礎疾患や肥満気味のために、ごはんやおやつに制限のある犬の場合には、小袋入りの豆を袋ごと使用すると安心です。袋ごと投げるので、豆まきの雰囲気は楽しみつつ、豆類を食べられる心配がありません。
しかし、この方法は愛犬が包装ごと食べてしまわないか注意が必要です。愛犬が食べることが大好きで、何でも口に入れてしまう性格の場合にはおすすめできません。
犬の届かないところに投げる
日ごろから愛犬が入らないようにペット用のゲートによって仕切られたスペースがある場合は、そこに向かって豆を投げるという方法です。
スペースが狭い場合に、豆をその範囲内に入れるのは難しいかもしれませんが、ゲートによって仕切られているため、愛犬に落ちた豆を食べられる心配がありません。また、実際に豆を投げているので、豆まきの雰囲気も十分に楽しめます。
飼い主の見ているところで数粒与える
どうしても節分用の豆を与えたい場合には、飼い主さんの見ているところで、量は数粒程度にしましょう。そして、食べている最中はもちろんですが、食べ終えたあとも、いつもと様子に変化がないか観察し、異変がある場合にはすぐに動物病院を受診しましょう。
煎り大豆や落花生が直接毒になるわけではないので、「何粒なら大丈夫」とか「約何粒で致死量になる」というような量はありません。しかし、与えすぎは禁物です。愛犬の様子を見ながら、少量ずつ与えましょう。
豆まき以外にもある!犬と節分を楽しむ方法
愛犬と一緒に豆まきをすることを難しく感じ、がっかりしてしまった飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、節分の楽しみ方は豆まき以外にも様々なものがあります。
ここでは、愛犬と一緒に楽しむことができる方法について紹介します。
節分をイメージしたおもちゃで遊ぶ
節分が近くなると、恵方巻や鬼のこん棒をモチーフにした犬用おもちゃが販売されています。おもちゃを使って、引っ張り合いっこなど一緒に遊んでみてはいかがでしょうか。
飼い主さんに遊んでもらうのは大好きだと思うので、おすすめの方法です。
被り物などのコスプレをして楽しむ
洋服などを嫌がらない場合は、鬼をイメージした被り物や洋服を愛犬に着せて、一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
全身コーディネートできるものや、被り物だけのものなど、様々な種類があります。そのため、愛犬の嫌がらない範囲でできるコスプレを選んで、楽しむことができます。
飼い主さんとお揃いのコスチュームで記念撮影したり、わんちゃん仲間とみんなでコスプレをしながら節分パーティーをするのも、良い思い出になりますね。
犬用の恵方巻を準備し、恵方巻を一緒に楽しむ
犬が食べても大丈夫な食材を用いて恵方巻を作ってあげるのも良いですね。特に愛犬の好き嫌いが多い場合には、市販のものではおいしくないと感じて食べてくれない可能性もあります。インターネットで検索すると様々な犬用恵方巻のレシピが掲載されているので、愛犬の好みに合わせて作ることができます。
手作りが難しい場合には、市販のものが手軽に利用できて便利です。
近年、様々な種類、値段の犬用の恵方巻が販売されています。愛犬の好みにあった恵方巻を選んであげるのも楽しいですね。
人間用の恵方巻は犬にとっては体調不良の原因となってしまう場合がありますので、必ず犬用に作られたものを与えましょう。
まとめ
今回は、年に一度の行事である節分を愛犬と一緒に楽しむ方法を紹介しました。
節分は注意すべきこともありますが、豆まき、恵方巻、コスプレなど、様々な方法で楽しむことができるイベントです。年に一度の伝統行事を、今年は愛犬と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
ユーザーのコメント
女性 福はうち~
50代以上 男性 ten
猫は豆が撒かれたところで何も興味を示しませんでしたが、犬はボール投げとでも思ったのでしょうか、大興奮で豆が入ったパックを拾いにいっては届けてくれました。
たしかに記事にあるようにボーロなど犬が食べても安心なもので行うのは良いアイデアですね。しかし犬が夢中で食べ続けるでしょうから、急いで掃除をしなくてはいけません。やはり犬はケージでしばらく待機してもらうのがいちばんですね。
女性 シュナ