加熱処理したエビなら犬に与えても問題はない
犬には、エビやカニなどの甲殻類は与えてはいけないという話しをよく耳にしますが、実は、エビは犬が食べても大丈夫な食品なのです。ただし、すべての場合でOKというわけではありません。
エビは、ビタミンB1を分解するチアミナーゼという酵素を多く含んでいます。犬は、体内でビタミンB1作ることができませんので、生のエビを食べると、チアミン欠乏症(ビタミンB1の欠乏により引き起こされる病状)になる危険性があります。
しかし、チアミナーゼは熱に弱く、加熱すれば活力を失いますので、加熱されているエビであれば、犬も食べることができます。
エビを与えることによるメリット
エビを犬に与えることによって次のようなメリットが得られます。タンパク質
犬にとってタンパク質と言えば一番重要といっても過言ではない栄養素の一つですよね。エビにはタンパク質が豊富に含まれながらも低脂肪なので、犬に与えやすいです。ビタミンB12
ビタミンB12には血液を作る役割があり、貧血の予防効果などが期待できます。ビタミンE
ビタミンEには抗酸化作用があり、細胞のダメージを防ぐ役割や、老化防止を期待できます。タウリン
タウリンには肝機能改善効果や血糖値を抑える効果があると言われています。加熱処理したエビを犬に与える際の注意点
加熱したエビであれば、犬が食べてもチアミン欠乏症にはなりませんが、加熱さえしてあればそれで良いのかというと、そうとばかりは言えません。
加熱処理したエビでも、犬に食べさせるときには、いくつか注意しなければならないことがあります。次に、加熱処理したエビを犬に与えるときの注意点を挙げてみました。
エビの量はトッピング程度にする
エビには、タンパク質や犬の健康に欠かせないビタミンB12、ガン予防に効果のあるキチンキトサンなど、多くの栄養効果の高い成分が含まれていますので「加熱した少量のエビを時々食べさせる」という場合は、特に問題ありません。
しかし、エビやカニなどの甲殻類は、消化しにくい食品ですので、食べすぎると消化不良を起こして、下痢や嘔吐の原因になります。
また、少量でも、毎日食べさせているうちに、知らぬ間に過剰摂取となり、ある日突然エビアレルギーを発症するということがあります。
加熱処理したエビでも、犬に食べさせるときは、フードにトッピングする程度の少量にとどめ、毎日食べさせるなど長期的に与えるのは控えましょう。
さらに、健康な犬が、エビを少量食べた程度であれば、チアミン欠乏症になることはほとんどありません。しかし、栄養が偏っている犬や、病気の犬、食事の摂取量が少ない犬は、注意する必要があります。
人間用に加工されたエビは与えない
加熱してあるエビでも、エビの天ぷら、エビフライ、エビマヨなどは、犬に食べさせてはいけません。脂質が多く含まれているので、下痢や肥満の原因になってしまいます。
また、人間用に加工されたエビを犬に与えるのもやめましょう。人間用の加工食品は、塩分を含み味が濃く匂いも強いので、犬は食べたがりますが、調味料や添加物が含まれていることも多く、犬の健康を害する恐れがあります。
犬用の食品に、エビを含んだふりかけや、えびせんなどのおやつも市販されていますので、どうしても食べさせたい場合は、犬用の食品を与えるようにしましょう。
犬用の食品でも、必ず原材料を確認し、与える量や頻度を考えて食べさせるよう心がけることが大切です。
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エビの殻は与えない
エビの殻や尻尾は、硬いので人間でも消化不良をおこしやすく、食べないことが多い部分です。犬は、食物をあまり噛まずに丸呑みする習性があるため、エビの殻や尻尾を食べると消化不良を起こし、胃腸に負担がかかってしまいます。
また、尻尾などの形状や硬さから、喉に刺さる、口の中を傷付ける、などのことも考えられますので、犬にエビを食べさせるときは、あらかじめ殻や尻尾など硬い部分を取り除いておく必要があります。
アレルギーに注意する
犬が、エビを少量しか食べていないのに下痢を起こした場合は、アレルギーの可能性があります。
エビやカニなど甲殻類のアレルギーの原因は、トロポミオシンというたんぱく質であると考えられていますが、トロポミオシンは熱に強く、加熱しても変質せず、アレルギーを起こします。
アレルギーには、すぐに反応が出る「即時型過敏症」と、24~48時間後に反応が出る「遅延型過敏症」がありますので、犬にエビを食べさせた後は、犬の様子をよく観察しておくことが大切です。
アレルギーを起こすと、下痢、嘔吐、皮膚の痒み、震え、目の充血など、さまざま症状が出ますが、喉に浮腫が起こると、呼吸不全に陥り急死することもありますので注意が必要です。
さらに、エビにアレルギーのある犬の場合は、たとえ少量であってもアナフィラキシーショックを起こしてしまうこともあります。
アナフィラキシーショックとは、全身に症状が現れる深刻なアレルギー反応で、ほとんどの場合、アレルゲンを摂取してから1時間以内に起こります。
嘔吐や下痢が続く、失禁、痙攣、顔面の腫れなどの他に、血圧低下によるショック症状や呼吸困難が見られ、最悪の場合、命を落としてしまうこともあり大変危険です。
甲殻類のアレルギーは、アナフィラキシーショックが起こりやすいので、アトピーやその他何らかのアレルギーがある犬には、エビは絶対に食べさせないように充分注意することが必要です。
犬が生のエビを食べるとどうなる?
- 下痢、嘔吐をする
- アレルギー症状が出る
- チアミン欠乏症を引き起こす
- ふらつく
- 痙攣(けいれん)する
- 眼振(知らず知らずのうちに目が動いてしまう)
- 浮腫む(むくむ)
犬が生のエビを食べると、アレルギー症状や、消化不良による下痢や嘔吐などを引き起こします。エビを食べた後に、犬の元気がなくなり食欲が低下している場合は、チアミン欠乏症の可能性があります。
チアミン欠乏症は、神経症状が特徴で、元気がなくなる、食欲の低下、ふらつく、などの症状が現われた後、心臓の心室肥大や徐脈(心拍がゆっくりになる)が起こります。
そのまま放置すると昏睡状態に陥り、最悪の場合、生命に関わる恐れがありますので、これらの症状が見られた場合は、早急に動物病院で診察を受ける必要があります。
上記のような症状が現われなかった場合でも、時間が経ってから何らかの症状が現われる場合もありますので、犬が生のエビを多量に食べてしまった場合は、動物病院で診察を受けておくことをおすすめします。
犬が生エビを食べたときの対処法
生のエビは、犬にとっては危険な食物です。犬が、生のエビを食べてしまった場合は、量の多少に関わらず、細心の注意を払っておく必要があります。
犬が生のエビを食べてしまったときの、具体的な対処法をみていきましょう。
犬の様子をよく観察する
犬が生のエビを食べても、すぐに症状が現われるとは限りません。
遅延型のアレルギーなど、時間が経ってから、何らかの症状が現われる場合もありますので、何の症状も現われなかった場合でも、しばらくの間は犬の様子をよく観察しておくことが大切です。
動物病院に連絡する
犬の様子に少しでも異変を感じた場合は、早急に動物病院に連絡し、獣医師の指示を仰ぐことが大切です。その場合、いつ食べたのか、食べた量はどのくらいか、現在はどのような状態か、などを正確に伝える必要があります。
また、動物病院で診察を受けるときには、犬の嘔吐物や便があれば、持参するようにしましょう。
動物病院ではどんな処置・治療がおこなわれる?
動物病院での処置や治療は、状況によりさまざまですが、食べてすぐの場合は、食べたエビを吐かせる処置(催吐処置)がおこなわれます。
また、消化不良を起こしている場合は、整腸剤や下痢止めなどの薬を使用します。嘔吐や下痢がひどい場合は、脱水を防ぐために、点滴が使用されることもあります。
アナフィラキシーショックを起こしている場合は、ショック状態を改善させるための治療が薬などを使って施されます。
まとめ
犬にとって危険な成分であるチアミナーゼは、生のエビ以外にも、生のイカやタコなどの軟体類や、貝類、カニなどの甲殻類にも含まれていますので、加熱処理をしていない魚介類や甲殻類なども、犬に与えてはいけない食物だといえます。
エビには、健康効果の高い成分がたくさん含まれていますが、どうしても犬に食べさせなければならないという食品ではありません。
犬にエビを食べさせる場合は、よく加熱し、殻などを取り除いたものを細かく刻み消化しやすくしたものを、少量、時々与える程度にとどめておきましょう。