犬はイクラを食べてもいいの?
残念ながら、イクラは愛犬に食べさせることをおすすめできない食品です。何故おすすめできないのか…それは、一般に流通しているイクラが味付けされた加工品であることに由来します。
イクラそのものは、青魚の約1.5倍のDHAやEPA(動脈硬化を防いだり免疫力を上げる効果のある栄養素)、豊富なビタミン・ミネラル・タンパク質を含んだ、栄養価の高い食材です。
また、犬に与えて問題のある成分が含まれているわけでもありません。しかし、私たちが普段口にするイクラは、長期の保存がきくように醤油漬けや塩漬けにされたものが一般的です。
そのため、人が食べるような感覚で犬に与えてしまうと、思いがけず塩分過多になってしまう危険性があるのです。少量なら食べても問題ないとはいえ、愛犬の体格や年齢等によって、摂取可能な塩分量はまちまちです。
愛犬が摂取可能な塩分量を算出し、安全な量を食べさせるのならいいのですが、「このくらいだったら食べても平気だろう」という飼い主の目分量で与えるのは危険を伴うため、注意が必要な食品だと言えます。
犬がイクラを食べることをおすすめできない理由
前述した通り、食用に加工されたイクラは、塩分過多の面から愛犬の食事には不向きと言えます。
とはいえ、イクラそのものには豊富な栄養源が含まれているのだから別に構わないのでは…と思われる方もいらっしゃるでしょう。何故そこまで愛犬に与えるのに注意が必要なのか、具体的に述べていきます。
過剰な塩分摂取による病気のリスク
犬に過剰な塩分を摂取させてしまうことは、心疾患のリスクに繋がります。
多量の塩分(ナトリウム)を体内に入れることで、体が塩分濃度を薄めようとし、犬は大量の水を飲むようになります。そうやって水分を大量に取り込んだ結果、体内の血液量も増加してしまい、増加した血液を循環させるため心臓に余計な負担がかかってしまうのです。
健康で若い犬でもリスクを伴うのに、もし、体の機能が衰えているシニア犬や、元から心臓病などの持病を抱えた犬に塩分を余計に与えてしまうと、最悪の場合命に関わる危険性があります。
犬はもともと汗をかかないため、体外に出ていくナトリウム量が人と比べてもはるかに少ない生き物です。消費する塩分が少ない分、摂取する塩分量も少量で構いません。(目安として、成犬1kgあたり50mgのナトリウムが適正量であると言われています。)
人にとっては少量の塩分でも、犬にとっては危険であることを理解しておきましょう。
高コレステロールによる病気のリスク
塩分と並んで気をつけるべきなのが、コレステロール値です。適正量のコレステロールは、犬の細胞膜維持という生命活動に必須の成分ではありますが、塩分同様とりすぎには注意が必要です。
イクラには100g中に約480mgと多量のコレステロールが含まれており、過剰摂取によって高脂血症を引き起こす危険性があります。
また、イクラに含まれる大量の脂質は、おなかの調子が悪い犬やシニア犬にとって、消化不良を引き起こす原因にもなります。
食物アレルギーの危険性
魚卵アレルギーや、鮭アレルギーなどの魚介アレルギー持ちの犬がイクラを食べてしまうと、皮膚に痒みを伴う炎症が出たり、下痢や嘔吐など消化器系疾患の症状が出てしまう危険性があります。
症状の程度は犬によってまちまちですが、重症化する場合アナフィラキシーショックを起こしてしまうこともあり、命を落とす危険性もあります。
偏食に繋がる危険性
塩味の濃いイクラの味付けに慣れてしまうと、普段のドッグフードでは物足りなくなってしまい、薄味のものを受け付けなくなる危険性があります。
味付けが濃い=塩分や脂質などが多い食事になってしまうため、犬が濃い味志向の食事ばかり求めるようになるのは、健康面から見てあまりよいことではありません。
イクラに限った話ではありませんが、人が食べることを見越して味付けられた食事を犬に食べさせるのは控えましょう。
犬が誤ってイクラを食べてしまった時の対処法
机の上に夕飯用のイクラを出しておいたら、いつの間にか愛犬に盗み食いされていた!…といったように、意図せずに愛犬がイクラを食べてしまう可能性もあるかと思います。
犬が届く範囲には置かないようにするなどして、そういった事故を未然に防げるのがベストではありますが、万が一の時はどのように対応すべきなのでしょうか。
大量摂取した場合は動物病院に相談を
見るからに大量のイクラを食べてしまっている場合には、動物病院に連れていき、医師の判断を仰ぐようにしてください。
過剰な塩分摂取が病気のリスクを伴うことは前項でも述べた通りですが、体内の塩分濃度が急激に上昇することで、食塩中毒を引き起こす危険性があります。
食塩中毒は、犬の体重1kgに対し、おおよそ2~3gの塩分摂取で発症する恐れがあり、約4gの塩分摂取になると致死量に値すると言われています。中毒を起こすと、下痢や嘔吐、大量に水を飲む、食欲低下などの症状が見られます。
一般的ないくらの塩分量は、100gあたり2.3g程と言われていますが、「うちの子10kgあるし、このくらい食べただけならまあ大丈夫かな」などといった自己判断で様子を見るのは大変危険です。
上述の塩分量はあくまで目安であり、犬種や年齢、コンディションによるところもあるため、必ず病院に相談しましょう。
数粒程度であれば、暫く様子を注視する
誤って床に落としてしまったイクラ数粒を犬に食べられた場合など、ほんの少量の摂取であることが確実な場合には、おうちで暫く様子を見てもいいでしょう。
下痢や嘔吐がないか、ぐったりしていないか、やけに水を飲もうとしていないかなど、普段の様子と比べてみて、明らかな異常が感じられた場合にはすぐに病院に連れて行くようにしてください。
ただし、愛犬がアレルギー体質であったり、持病を持っていたりする場合には、ほんの少量の摂取であっても、思いがけず重篤な症状に繋がる危険性があります。
この場合には、イクラの誤食を確認した時点ですぐに病院に相談するようにしてください。
まとめ
イクラそのものには、犬の体にとっても有益な栄養素が多く含まれているため、愛犬につい与えたくなりがちです。
しかし、人用に味付けされた料理を犬に与えるのがあまりよくないのと同様、加工されたイクラの過剰な摂取は、愛犬の体にとってむしろ害となってしまう恐れがあります。
ただ、愛犬に色々なものを食べさせてあげたい、おいしいものを一緒に食べたい、という飼い主心もあるかと思います。
どうしても愛犬にイクラを食べさせたいときには、いつも食べているドッグフードに軽くトッピングしてあげるくらいの気持ちで、ほんの少量食べさせる程度に留めておきましょう。
また、たとえ一度に食べる量が少なくても、継続して食べ続けることで塩分が蓄積される恐れがあります。月に一回など、食べさせるときは間を置くように気をつけてくださいね。