犬は昆布を食べても大丈夫!
犬は昆布を食べても問題ありません。しかし、昆布をはじめとした海藻類は、食べ過ぎると消化不良を起こすことがあるため、その与え方や量には注意が必要です。
昆布は、栄養学的にも疲労回復や便秘解消など、健康に良いとされている食材ですが、それらは犬にとっても良い効果が期待できるのでしょうか?
昆布にはβカロテン・ビタミンk・ビタミンCなどのビタミン類が豊富に含まれています。このビタミン類よりも含有量が多いのが「ミネラル」です。ミネラルにはヨウ素がたっぷり含まれており、少量なら問題ありませんがたくさん摂取しすぎると健康面でトラブルが起こります。昆布は、普段のドッグフードに少量トッピングする程度がおすすめです。またトッピングして与える際には、細かくカットする、フードプロセッサーで粉末状にするなど犬が食べやすいように加工してください。
犬に食事やおやつを与える際の基本的なルールとして、「人間と同じ味付けをしているものを与えない」ということも忘れてはいけません。人間用に味付けされたものは塩分がたくさん含まれています。昆布を犬に与える際は、無塩のものを選ぶようにしてください。
詳しい内容は以下の記事内で説明しているので、愛犬に昆布を与えたいと思っている飼い主さんはぜひ参考にしてください。
犬が昆布を食べることで期待できる健康効果
ビタミン
- 皮膚や被毛の健康を維持、視力に関与、抗酸化作用(βカロテン)
- カルシウムの骨への沈着やコラーゲン生成を促す、血液凝固に必須(ビタミンK)
- 抗酸化作用(ビタミンC)
昆布には、βカロテン、ビタミンK、ビタミンCなどのビタミン類が含まれています。
なかでも含有量が豊富な「βカロテン」は皮膚や被毛の健康を維持したり、視力(特に暗い中での視力)にもかかわり、抗酸化作用にも効果が期待されています。
「ビタミンK」は、犬が腸内細菌によって合成できる成分でもありますが、それだけでは必要量を満たせず、食事からの摂取が推奨されている成分です。ビタミンKは体内では肝臓に貯蔵され、タンパク質の代謝や、骨へのカルシウム沈着などにも必要なビタミンです。
その他にも、血液凝固(血液が固まる過程)や、様々な酵素が活動するためにも必要な成分です。また昆布には、ビタミンCも含まれています。
ミネラル
- カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどが豊富
- ヨウ素を多く含む
昆布に含まれる成分のなかでも、その含有量が多いのがミネラルです。
昆布には、カリウムやカルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれていますが、なかでもヨウ素の含有量はあらゆる食品の中でもトップです。
ヨウ素(ヨード)とは、甲状腺ホルモンの原料であり、体内に不可欠な栄養素です。他にも細胞が活動したりエネルギーの代謝などにも関係しています。
しかし、ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料である一方で、過剰摂取によって逆に甲状腺機能低下症を引き起こす原因ともなりますので、過剰に摂取しないことが重要です。
水溶性食物繊維
- 免疫力アップ
- 血栓予防
- 血中コレステロールの吸収抑制や血圧を低下させる効果
- 便秘解消
昆布のヌルヌルした成分には、水溶性食物繊維の一種であるフコイダンやアルギン酸などが豊富に含まれています。
フコイダンは人では、免疫力アップや血栓予防などの効果が期待されています。近年では、同様の効果を期待してフコイダンを含有した犬用サプリメントも販売されています。
アルギン酸には、血中コレステロールの吸収を阻害したり血圧を下げる効果や、便秘解消などが期待できると言われています。ちなみにこれらの成分は、わかめやモズクなどの海藻類にも含まれています。
フコキサンチン
- 抗酸化作用
- 抗腫瘍作用
- 抗炎症作用
- 脂肪燃焼効果
フコキサンチンとは、カロテノイドと呼ばれる色素の一種であり、昆布をはじめとした、ひじきやわかめなどの褐藻類(かっそうるい)にのみ含まれている成分です。
このフコキサンチンは、抗酸化作用や抗腫瘍作用、抗炎症作用など様々な効果を期待して研究が進んでおり、フコキサンチンを含むサプリメントも増えています。
昆布に含まれている栄養や成分には、免疫力アップや肥満予防など、体質そのものを改善する効果が期待できるものも多く、生活習慣病予防にも役立てることができそうですね。
ただし、これらの効果は人でのものや研究段階のため、犬での効果はこれからの研究に期待したいところです。
犬が食べてもいい昆布の量
一般的に、犬に主食以外の食べ物を与える際の目安量は「一日に必要なカロリー量の10~20%以内」といわれています。
ただし、カロリーをベースにしたこの量をもとに昆布を与えてしまうと、体重が数kgの小型犬にも数十gの昆布を与えても良いことになり、それではヨウ素の過剰摂取になってしまいます。
犬に昆布を与える時は、あくまで少量をフードにトッピングする、または昆布出汁をかける程度にしておきましょう。
昆布を大量に与えたり、少量でも毎日継続して与えることは避けてください。ヨウ素の過剰摂取によって、逆に甲状腺機能低下症を招いたりすることになります。
昆布そのものに犬の健康を害する成分は含まれていないものの、犬にとって消化しにくい食材であることや、栄養素が豊富に含まれていることから、過剰摂取による栄養バランスの崩れに注意しなければなりません。
適量については、犬の体質や体の大きさ、日頃食べているフードなどによっても異なりますので、様子を見ながら調節するようにしましょう。昆布はあくまでもトッピングに少量を、という範囲におさめておくことを忘れないようにしましょう。
この機会に、普段食べているフードの栄養素と愛犬の体質に合わせて補給したい栄養素について改めて確認してみるのもいいかもしれませんね。
犬への昆布の与え方
調理方法
- 煮込んで柔らかくして、食べやすい大きさにカットする
- ミキサーで粉末状にして、フードにふりかける
- 昆布から出汁を取って、出汁をフードにかける
乾燥した硬い昆布を、そのまま犬に与えるのはやめましょう。犬の口内や喉を傷つける恐れがあります。
また、噛み砕かずに飲み込んだ場合、胃の中で昆布が水分を吸って膨らみ、胃に停滞したり食べ物の通り道を塞ぐ恐れもあります。
犬に昆布を食べさせる時は、ミキサーで粉末状にしたり、細かく刻んで煮込むなどして、愛犬のフードにトッピングしましょう。
調理が面倒な場合は、無塩昆布を一晩水に浸しておくだけで作ることができる「昆布水」を愛犬用の出汁やスープ、水分補給に利用するのもおすすめです。ただし日常的に昆布水を利用するのは控えた方が良いでしょう。
生昆布や素干し昆布など、使用する昆布に合わせて調理方法を選ぶのも良いですね。
昆布は無塩のものを与える
重要なのは、塩分が多く含まれていないものを選ぶことです。一言に昆布といってもその種類は加工によって様々なので、無塩のものを選んでおくと安心です。
市販されている粉末や顆粒の昆布だしには、塩分が多く含まれていることが多いため、事前にしっかりと確認してください。
人間用に加工された昆布は与えない
人間用に加工された佃煮、おしゃぶり昆布などは与えないようにしましょう。砂糖や醤油など味付けされているため、塩分や糖分の摂り過ぎにつながってしまいます。
とろろ昆布は、製品によってははちみつや砂糖や食塩などが含まれており、それらの摂り過ぎも犬には良くないため注意が必要です。しっかりと原材料を確認し、それらが含まれていないことを確認してから、少量与える程度にしてください。
犬に昆布を与える際の注意点
与えすぎによる消化不良に注意
昆布は、人間であっても大量に摂取すべきではない食材とされています。
犬が毎日摂取したり、一度に大量に摂取したりすることで、ヨウ素やその他のミネラルの過剰摂取となり、かえって健康に害を及ぼす可能性もあります。
また、大量摂取は、豊富に含まれる食物繊維によって嘔吐や下痢が引き起こされる原因にもなります。犬に昆布を与える際には、摂取量に十分に注意してください。
持病のある犬には与えない(尿路結石・甲状腺など)
昆布はミネラルやヨウ素、ビタミンKなどの含有量が高いため、尿路結石や甲状腺などの持病がある犬に与えるのは控えたほうが良い食材です。
犬では稀ですが、甲状腺機能亢進症がある場合にはヨウ素を多く摂る、ビタミンKが肝臓に貯蔵されることによって、肝臓に負担が掛かるなどの可能性もあるためです。
どうしても昆布を与えたいという場合は、かかりつけの獣医師に相談してみてください。
アレルギーによる体調の変化に注意
人間と同じように、犬も食べ物アレルギーを起こす可能性があります。
昆布によるアレルギーは人でも稀なようで、犬での報告はこれまでのところないようですが、アレルギーではなくても体質に合わないこともありますので、初めて愛犬に与える時は、必ず少量ずつ様子を見ながら食べさせるようにしてください。
吐く、便が緩くなる、皮膚が赤くなる、かゆくなるなどの症状が現れた場合は動物病院を受診しましょう。
まとめ
犬に昆布を食べさせる時の効果や、注意点についてご紹介しました。昆布には旨味成分のグルタミン酸も含まれていますので、フードの食いつきが悪い場合にトッピングしてみるのも良いでしょう。
ただし、ヨウ素をはじめとしたミネラルの過剰摂取には注意しなければなりません。マグネシウムも多く含まれていますので、過去にストラバイト結石を発症したことがある愛犬には、昆布を食べさせるのは控えておくか、ほんの少量をたまに与える程度にしましょう。
犬でのストラバイト結石・結晶の原因はマグネシウムの大量摂取だけが原因ではありませんが、結石の材料となるものをわざわざ多く摂取することもないでしょう。
心配な場合には、かかりつけの獣医師に相談するようにしてください。
フードによってミネラルやヨウ素の含有量は異なりますので、今一度、愛犬にとって必要な栄養素、補給したい栄養素の量について調べてみるのもいいかもしれませんね。
与える量や、ご紹介した注意点には十分に気をつけて、愛犬の健康のサポートを考えていきましょう。
品種によって多少の違いはありますが、乾燥昆布には100gあたり200mgものヨウ素が含まれています。
ドッグフードにおける適切なヨウ素含有量はフード1kgあたり1mgとされており、それと比較しても昆布にいかに多くのヨウ素が含まれているかお分かりいただけると思います。
体重1kgあたり775μgのヨウ素を含む食事を45日間食べていた子犬で甲状腺機能低下症と骨の発育の異常が見られたとの報告もあります。
また、人間においても昆布水を長期にわたって飲用していたりダイエット目的でとろろ昆布を多く食べることについてはヨウ素の過剰摂取となる恐れがあり、注意喚起がされているようです。
《参考論文》
Castillo VA, Pisarev MA, Lalia JC, Rodriguez MS, Cabrini RL, Márquez G. Commercial diet induced hypothyroidism due to high iodine. A histological and radiological analysis. Vet Q. 2001 Nov;23(4):218-23.
https://doi.org/10.1080/01652176.2001.9695117