犬にあさりを食べさせても大丈夫?
貝類の中でも家庭で使われることが多いあさりは、うまみも抜群で、犬にとってもおいしそうな匂いにつられてしまう食材の1つです。
犬の胃腸にとって魚介類は消化が得意でない一面がありますが、あさりに関してのみ言えば、与え方とあげる量に気を配れば基本的に問題はないことがほとんどです。
また、あさりの栄養価から期待できる健康効果もあると言われているため、愛犬の体に合う食材かどうか興味がある飼い主さんは、これから紹介する点に注意しながら試してみてください。
あさりはビタミンBやタウリンが健康に良い
あさりをあげる時には、愛犬の健康に良い成分にも目を向けてみましょう。
あさりには、貝類の中でも最も多く「ビタミンB12」が含まれています。
このビタミンB12は赤血球の形成に大きく関わっているため、貧血を予防する役割を果たしてくれます。
また、アミノ酸の1種「タウリン」も豊富です。
元々犬は体内でタウリンを合成することができますが、肝臓機能の強化、コレステロール値を下げる働きなどを持っていて、体の酸化(老化)を抑える抗酸化作用もあるため、老犬期のわんちゃんにはおすすめの栄養素と言えるでしょう。
他にも、あさりを始めとした貝類には、うまみ成分となる「コハク酸」が含まれていることが有名で、あさりを茹でた時の汁だけでもスープとしての風味が増し、食欲が落ちがちな老犬のご飯に加えると、水分補給だけでなく、ご飯の食いつきアップにつなげることもできますよ。
犬にあさりを食べさせるときの量は?
人があさりを調理して食べる時、あさり自体は小さめの貝類なので、1人につき10個以上を一度に食べることもよくありますね。
しかし、ドッグフードを食べている犬の場合は、
- あくまで「おやつ」「トッピング」にあたる
- 食べ慣れない食材を与える時は消化機能が追いつかないことがある
- あさりを食べることは必ずしも必要ではない
ということは意識して、1回にあげるあさりの量を調整してあげる必要があります。
また、1個当たりのカロリーは少なくても、それが積み重なると、体が小さい犬にとっては肥満につながっていく可能性も。
どんな犬種であっても、まずは2~3個程度の少ない量を細かく切って、その後消化不良による軟便・下痢・嘔吐につながることがないか確認してあげましょう。
- ドッグフードが主食の犬にとって、あさりは「おやつ」「トッピング」のため少量を与えよう
- あさりは貧血対策肝臓の機能強化抗酸化対策におすすめ
- あさりのうまみ成分を活用すれば、愛犬の食欲アップにもつなげやすい
犬にあさりを与える時の注意点
あさりは愛犬にとって嬉しい栄養素を含む反面、食べさせ方を間違ってしまうと、人為的な体調不良につながってしまうリスクがあります。
せっかくのおいしい食材も、動物病院に行かなければいけない事態になってしまえば本末転倒ですね。
愛犬がおいしく、健康に問題なく食べるには、あさりをどのように下処理・調理すれば良いのかを知った上であげましょう。
生のあさりは与えない
生のあさりには、「チアミナーゼ」というビタミンB1を破壊する酵素が含まれているため、ビタミンB1欠乏症(チアミン欠乏症)を引き起こす可能性があります。
ビタミンB1欠乏症を発症した動物は、
- 体が重く感じる疲労感
- 筋力の低下や歩行異常
- 眼振瞳孔散大
- 痙攣発作
などを発症し、きちんと治療をしなければ昏睡状態や死に至ります。
そのため、あさりを生のまま食べさせることは必ず避けなければいけません。
ちなみにこのチアミナーゼは、加熱することで破壊されるため、茹でたあさりではチアミナーゼを心配する必要はありません。
また、魚介類では食中毒の原因となる腸炎ビブリオが発生しやすく、あさりを始めとする二枚貝の消化管に蓄積しやすいとされています。
これも加熱によって対策することができるため、愛犬にあさりを与える時は、必ず十分に火を通すことを意識しましょう。
ペット栄養学会誌「禁忌食(その4)ー魚介類(チアミナーゼ)」左向・大島
水洗い・砂抜きの下処理は必ず行う
あさりを調理する前には、真水であさりを洗い、砂抜きを行いましょう。
流水で洗うことによって、あさりの表面についた腸炎ビブリオなどを洗い流し、死んだあさりをチェックすることができるため、人も犬も不純物を摂取しないための予防策になります。
中にはあさりそっくりの石が購入したパックの中に混入していたという笑い話のような事例もあるため、きちんと確認する意味でも手で触って貝の状態を確認することが必要です。
また、あさりを食べたことがある人なら体験したことがあるかもしれませんが、きちんと砂抜きをしないと、あさりが吸い込んでいる「ジャリッ」とした砂を愛犬が飲みこんでしまうことになります。
もちろん砂は犬の胃腸では消化できませんので、砂抜きが必要です。
あさりを購入したら新鮮なうちに食べる
貝類は全般的に傷みが早い食材です。
特に購入・採取してからはすぐに調理するように心がけたいものですね。
もしもすぐに食べられない!という場合は、一度に下処理・加熱して、冷凍保存したものを少しずつ使うことがおすすめです。
貝殻部分は必ず避ける
あさりの硬い貝殻は、犬の胃腸では消化することができません。
子犬や小型犬が誤飲してしまった場合、細い消化管に詰まって閉塞してしまう可能性もあるため、必ず取り除いてから身の部分のみを与えるようにしましょう。
犬は飲みこめる大きさであれば、噛まずにそのまま丸飲みしてしまう傾向が強い動物です。
貝殻の形そのままで食べた場合は、獣医師に相談するようにしてください。
そして、あさりのみそ汁など、人が食べた後の貝殻を脇に避けて置いておくと、良い匂いにつられた愛犬がうっかり食べてしまったり、ゴミ箱からあさって食べてしまうケースもあります。
食卓やキッチンの近く、ゴミ箱スペースには十分配慮し、愛犬が貝殻部分を食べてしまわないよう注意してくださいね。
持病がある(あった)犬は獣医師に相談
現在持病を抱えていて、「療法食」と呼ばれる病気のための特別な栄養バランスを考慮して作られた食事を愛犬が食べている場合は、必ず獣医師に相談してからあげるようにしてください。
あさりを食べることによって摂取する栄養素の割合が変化し、病気の種類によってはせっかくの療法食の効果を消してしまうことになりかねません。
特に、あさりに多く含まれるミネラルのバランスが影響しやすい心臓病・腎臓病・尿石症などを抱えている犬は、その時の体調や状況によっては病状を進行させることもあるため、注意が必要です。
犬に与えてはいけない貝類
あさりやホタテなどは与え方や量に注意すれば愛犬の健康に影響を及ぼすことは少ないですが、貝類の中には犬に与えてはいけない貝類も存在します。
その種類とは、人でもよく食べられることがあるもので、
- アワビ
- サザエ
- ツブ貝
- トリ貝
- 赤貝
など、犬にとって毒性を含んでいるものもあるため、必ず愛犬の食事からは避けてください。
また、あさりでも「貝毒」の情報には特に目を配っておく必要があります。
二枚貝と呼ばれるあさりも含まれる生物は、海水中のプランクトンを餌として生きていますが、時に有毒なものを食べて、それが体内に蓄積した結果、人や動物が食べた時に、「麻痺性貝毒」や「下痢性貝毒」を発症することが確認されています。
貝毒の原因となる有毒プランクトンは春に発生するものがほとんどのため、潮干狩りシーズンを直撃することも。
近年は検査体制が整い、市販のもので発生した事例はありませんが、この貝毒は加熱しても変化しないため、いただきものや潮干狩りで採取したあさりなどは特に、各自治体の貝毒発生状況を確認した上で食べてくださいね。
日本経済新聞「貝毒に注意 大阪湾で例年より毒性強く、瀬戸内海でも確認」
- あさりは加熱下処理したものを細かくカットして与えよう
- 貝類は傷みやすいため、入手したらすぐに下処理調理して食べきるか冷凍保存する
- あさりが関わる貝毒の発生もあるため、潮干狩りなどで採取したものは要注意
犬にあさりを食べさせるときの与え方
ここからは、実際にあさりを愛犬に食べさせる時の与え方をお伝えします。
手順に沿って調理してみてくださいね。
あさりの下処理をする
あさりの下処理としての水洗い・砂抜きは以下の手順で行いましょう。
- 流水(水道水)で手であさり同士を擦り合わせるようにして洗う
- 網つき(ザル付き)の平らなバットを用意し、あさりを重ならないように並べる
- 500mlの水に大さじ1杯(15g)の塩を入れ、海水とだいたい同じ濃度の3%食塩水を作る
- あさりが少し顔を出す程度の、ひたひたになるくらいの食塩水をバットに入れる
- アルミホイルや新聞紙をバットの上にかぶせて2~3時間放置する(潮干狩りで採ったものは半日~1日程度かける)
- 砂抜きしたあさりを30分~1時間程度水からあげて置いておく
あさりが容器の中で2重3重に重なってしまうと、上に乗ったあさりが砂を吐いているのに、下のあさりがそれを吸い込んでしまって完全に砂抜きできない時があるので注意しましょう。
バットに網を重ねておけば、吐いた砂がそのまま下に落ちて再吸入を防いでくれるので便利です。
また、水温が20℃程度で暗い環境の方があさりが活発になって砂を吐きやすいと言われています。
冷蔵庫だと水温が低くなりすぎて、あさりの活動を阻害してしまい、砂を吐いてくれないことがあるので気をつけておきましょう。
最後に水からあげるのは、あさりが吸い込んだ余分な塩水を吐き出させるためです。
塩分調整のためにもぜひ行ってくださいね。
十分に加熱する
あさりの下処理が終わったら、加熱調理を行いましょう。
あさりのうまみをしっかりと引き出すなら、お鍋に水を入れて、火をつける前にあさりを投入し加熱していくと、おいしいスープを取ることができます。
お湯が沸騰してからあさりを投入すると、身が硬くなりすぎて消化しにくくなる可能性があるため注意しましょう。
より風味よくするために、茹でている最中に出る灰汁はしっかりと取り除きながら加熱してあげてください。
また、人用に昆布なども併せて入れて出汁をとる人もいますが、ミネラルの含有量が高まって愛犬の体には過剰になってしまう可能性もあるので、人用と犬用は分けて調理することをおすすめします。
殻を取り除き細かく刻む
貝類の消化が得意ではない犬にとって、あさりの身の部分をそのままの状態でたくさん食べると、下痢や嘔吐などの消化不良を起こしてしまう可能性があります。
愛犬用に与えるあさりは、よく噛まずに飲みこんでしまう犬の食性を考慮して、貝殻を取り除いた状態の小さな身でも、包丁で細かく刻んでからあげるようにしましょう。
あさりのおすすめレシピ
あさりの身だけやゆで汁を活用するだけでも、わんちゃんたちにとってはおいしそうな匂いに食欲がそそられるものです。
しかし、せっかくならあさりの栄養素を高める食べ合わせがあれば、ぜひ活用したいものですよね。
ビタミンCを多く含む野菜であるトマトやブロッコリーは、鉄分などのミネラル成分の吸収率を高めてくれます。
また、きのこ類のビタミンDはカルシウムの吸収を手助けしてくれると同時に、あさりのうまみ成分との相乗効果でさらにおいしさがアップすることも。
きのこはそのままだと消化しづらいため、あさりと同じく細かく刻んであげることをおすすめします。
今回は、あさりを使った犬用レシピを集めてみました。
ちょっと特別な日の手作り料理・トッピング用のスープとして活用してみてくださいね。
犬用あさりを使用するのもおすすめ
「あさりの風味は魅力的だけど、下処理や加熱調理がきちんとできているか不安…」という飼い主さんは、すでに加工された犬用あさりを活用してみるのも良いでしょう。
フリーズドライシリーズ あさり 16g
すでに茹でてあるあさりをフリーズドライにして、保存食にした1品。
乾燥したままを細かく刻んで使用するも良し、お湯で戻したものを刻んで他の食材と合わせるのも良しという使い勝手の良いあさりの商品です。
素材そのまま 焼きあさりチップス 10g
調理するのが大変!という時には、おやつとしてチップス状になったあさりをあげるのもおすすめです。
あさりなので1つ1つが小さいですが、さらに細かく割ることでふりかけのような使い方もでき、パリパリとした食感がわんちゃんにとっては楽しいものとなりそうです。
- 砂抜きは水の塩分濃度温度水量照明に注意して行う
- 水から加熱してあさりのうまみ成分をしっかりと抽出する
- 愛犬の消化機能と食性に配慮して、細かく刻んでから与える
まとめ:愛犬の手作りご飯に上手くあさりを活用しよう!
あさりのスープがかもし出す香りは、愛犬にとって「食べたい」という気持ちを増してくれるものです。
しかし、ドッグフードを食べている犬であれば、あさりはどうしてもあげなければいけない食材ではなく、消化不良のリスクを思うとお腹が弱い子であれば避けた方が良い食材とも言えます。
また、普段がドッグフードで、手作りご飯を食べ慣れていない犬にとってみれば、水分量の違いや栄養バランスの急な変化から、急な胃腸炎を発症する可能性もあります。
あさりをあげる時は愛犬の体調を見ながら無理をせず、おやつやサプリメントといった感覚からあげてみると良いでしょう。
貝類の調理には十分注意を払いながら、愛犬の「おいしい!」と引き出してあげてくださいね。