ディアハウンドとは
- 犬種名:ディアハウンド(Deerhound)
- 別称:スコティッシュ・ディアハウンド
- 原産国:イギリス(スコットランド)
- 大きさ:大型犬
- 体高:オス 76cm以上/メス 71cm以上
- 体重:オス 約45.5kg/メス 約36.5kg
- 被毛:硬く粗いラフコート
- 毛色:ダーク・ブルー・グレー、グレー、ブリンドル、イエロー、サンディー・レッド、レッド・フォーンなど
- 性格:穏やか、優しい、愛情深い、友好的、独立心がある
- 寿命:8~11年
ディアハウンドは、スコットランドを原産とする大型のサイトハウンドです。優れた視力で獲物を見つけ、高い走力を生かして追跡する猟犬として発展してきました。
ジャパンケネルクラブや国際畜犬連盟では「ディアハウンド(DEERHOUND)」という犬種名が用いられています。
一方、アメリカンケネルクラブでは「スコティッシュ・ディアハウンド(Scottish Deerhound)」と呼ばれていますが、いずれも同じ犬種を指します。
かつては主にシカ猟で活躍しており、英語の「deer(シカ)」と「hound(猟犬)」が犬種名の由来です。
現在は家庭犬やショードッグとしても飼育されていますが、サイトハウンドとしての高い身体能力や追跡本能は受け継がれています。
日本では飼育頭数や繁殖例が非常に少なく、日常的に見かける機会はほとんどありません。
子犬の販売情報も限られているため、迎える際には国内外の犬種団体や信頼できるブリーダーを通じて、十分な情報を集める必要があります。
ディアハウンドの性格
ディアハウンドは、穏やかで優しく、家族に対して愛情深く接する犬種です。堂々とした外見に反して、家庭内では落ち着いて静かに過ごす傾向があります。
人に対して友好的で、強い攻撃性を示すことは少ないとされています。一方で、猟犬として自ら判断して行動してきたため、独立心があり、ややマイペースな一面も見られます。
また、動くものを追いかけようとする本能が残っているため、猫や小動物との暮らしには注意が必要です。子犬の頃から社会化を進めた場合でも、個体差を見ながら慎重に接触させることが大切です。
ディアハウンドの特徴
ディアハウンドは、長い脚と引き締まった胴体、深い胸を持つ大型のサイトハウンドです。
全体的な体型はグレーハウンドに似ていますが、より大きく骨量があり、全身を覆う硬く粗い被毛によって力強く野性味のある印象を与えます。
頭部は細長く、耳は小さく後方へ折りたたまれる形をしています。尾は長く、先端に向かって細くなるのが特徴です。大柄でありながら動きは軽快で、優雅さと力強さを兼ね備えています。
ディアハウンドの大きさ
ジャパンケネルクラブの犬種標準では、理想的な体高はオスが76cm以上、メスが71cm以上とされています。理想的な体重は、オスが約45.5kg、メスが約36.5kgです。
体重だけを見るとさらに重い大型犬もいますが、ディアハウンドは脚が長く、体高が非常に高いため、実際の数字以上に大きく見えます。
オスはメスよりも骨格がたくましく、頭部や胴体にも力強さが表れやすい傾向があります。
ディアハウンドの被毛タイプ
ディアハウンドの被毛は、硬く粗い手触りを持つラフコートです。胴体や首、四肢の毛はワイヤー状で、長さは7~10cmとされています。
胸部や腹部、頭部の毛はやや柔らかく、口元にはひげのような毛が生えています。耳の毛は短く、ほかの部分よりもなめらかです。全身の被毛が均一ではなく、部位によって長さや質感が異なります。
ディアハウンドの毛色の種類
ディアハウンドの毛色は、ダーク・ブルー・グレーや濃淡のあるグレーが代表的です。そのほか、ブリンドル、イエロー、サンディー・レッド、レッド・フォーンなども認められています。
胸元や足先にわずかな白い斑が入ることがありますが、広い範囲に白が入るものは好ましくないとされています。また、犬種標準では黒一色は毛色として挙げられていません。
ディアハウンドの価格相場
ディアハウンドは日本国内での繁殖例や販売数が非常に少なく、一般的な犬種のように安定した価格相場は形成されていません。
そのため、国内で迎える場合の価格は、ブリーダーや子犬の血統、月齢などによって個別に提示されるのが一般的です。
海外で案内されている子犬の生体価格は、1,000~2,500米ドル程度がひとつの目安です。日本円に換算すると、16万~41万円に相当します。
ただし、これは海外で販売される子犬そのものの価格であり、日本国内で迎える際の総額ではありません。
海外から輸入する場合は、生体価格とは別に航空輸送費、輸送用クレート代、健康診断や各種証明書の発行費用、検疫手続きに伴う費用、輸入代行業者へ依頼する場合の手数料などがかかります。
犬の大きさや出発国によって費用が変わるため、総額が生体価格を大きく上回る可能性もあります。
そのため、ディアハウンドの価格を検討する際は、海外における生体価格の参考値として捉え、実際の購入費用や輸入費用についてはブリーダーや輸入代行業者へ個別に確認することが大切です。
ディアハウンドのブリーダーを探す方法
ディアハウンドのブリーダーを探す場合は、まずジャパンケネルクラブの犬種情報やドッグショーの出陳記録、国内の犬種クラブなどを手がかりにします。
子犬の販売サイトだけでなく、ディアハウンドの飼育者やハンドラーに問い合わせることで、繁殖予定のあるブリーダーを紹介してもらえる場合があります。
すぐに子犬が見つからない場合は、海外の公認ケネルクラブやディアハウンドの犬種クラブが公開しているブリーダー紹介窓口を利用する方法もあります。
希少犬種のため、問い合わせから迎え入れまで長期間待つ可能性も考えておきましょう。
候補となるブリーダーが見つかったら、親犬と子犬の飼育環境を見学し、親犬の性格や健康状態を確認します。
ワクチン接種や健康診断だけでなく、親犬が心臓検査や遺伝性の出血性疾患に関する検査を受けているかも確かめてください。
血統書の発行団体、引き渡し時期、契約内容、健康上の問題が見つかった場合の対応、迎えた後の相談体制についても事前の確認が必要です。
実際の飼育場所や親犬を見せない、健康検査の質問に答えない、購入を急がせるといった相手から迎えるのは避けましょう。
海外から迎える場合は、日本の動物検疫所が定める条件を満たす必要があります。
マイクロチップの装着や狂犬病予防注射、抗体検査、到着前の届出などに時間がかかるため、購入契約を結ぶ前に輸入条件と日程を確認しておくことが大切です。
ディアハウンドの飼い方
ディアハウンドを飼うには、大きな体を無理なく動かせる生活空間と、毎日十分に運動できる環境が必要です。室内では体を伸ばして休める広さを確保し、床には滑りにくいマットなどを敷いて転倒を防ぎましょう。
脚が長いため、食器や水入れは犬が無理な姿勢にならない位置へ設置します。寝床には、体全体を支えられる大きさとクッション性のあるベッドが適しています。
また、暑さが厳しい時期は運動する時間帯や室温にも配慮が必要です。夏は早朝や日が沈んだ後に散歩し、室内ではエアコンを使って過ごしやすい環境を整えてください。
体格に合う車載用クレートや安全装備を用意し、動物病院への通院方法もあらかじめ決めておくと安心です。庭で過ごさせる場合は、飛び越えや脱走を防げる高さと強度を備えたフェンスを設置しましょう。
ディアハウンドの運動量
ディアハウンドは走る能力が高く、毎日十分な運動を必要とします。成犬では、散歩や自由運動を合わせて1日合計2時間程度がひとつの目安です。
ただし、必要な運動量は年齢や体調によって異なるため、犬の様子を見ながら調整してください。
散歩では一定の速度で歩くだけでなく、においを嗅ぐ時間や速歩を取り入れると、心身の刺激になります。安全な場所で走らせる機会を定期的に設けることも大切です。
自由運動は、周囲を頑丈なフェンスで囲まれたドッグランなどで行います。動くものを追う本能があるため、囲いのない公園や河川敷、公道などでリードを外してはいけません。
成長途中の子犬に長距離を走らせたり、過度なジャンプや急旋回を繰り返させたりすると、発達中の体へ負担がかかります。子犬期は短い散歩や遊びを複数回に分け、成長に合わせて徐々に運動量を増やしましょう。
ディアハウンドのしつけ方
ディアハウンドのしつけは、子犬の頃から人やほかの犬、生活音、車での移動などに慣れさせることから始めます。体が大きくなる前に、日常生活で必要なルールを身につけさせることが重要です。
特に、リードを強く引かずに歩くこと、人へ飛びつかないこと、飼い主の合図で立ち止まることなどを優先して教えましょう。
呼び戻しの練習も必要ですが、追跡本能をしつけだけで完全に抑えることは困難です。屋外ではリードを使用し、安全な囲いの中でのみ自由に走らせてください。
繊細で穏やかな性質を持つため、大声で叱ったり、力で押さえつけたりする方法は適していません。望ましい行動をした直後に褒め、ごほうびを与えながら、家族で一貫したルールを守ることが大切です。
成犬になってから引っ張りや飛びつきが習慣になると、安全に制御するのが難しくなります。対応に不安がある場合は、大型犬やサイトハウンドの扱いに詳しいドッグトレーナーへ早めに相談しましょう。
ディアハウンドのケア方法
被毛のお手入れは、週に数回のブラッシングを目安に行います。硬く粗い毛には枯れ葉や小枝などが絡みやすいため、散歩後は全身を確認し、付着した汚れを取り除いてください。
シャンプーは頻繁に行う必要はなく、被毛の汚れやにおいが気になるときに行います。洗った後は毛の内側までしっかり乾かし、皮膚に赤みや湿疹などがないか確認しましょう。
耳は小さく折れた形をしているため、汚れや赤み、においがないか定期的に確認します。耳掃除をしすぎると皮膚を傷つけることがあるため、見える範囲を優しく拭く程度にとどめてください。
そのほか、歯磨きや爪切りも日常的なケアとして必要です。爪が伸びると歩き方に影響するため、床に爪が当たる音が目立つ前に整えます。
体が大きくなってからも安全にケアできるよう、子犬の頃から口元や足先、耳などに触れられることへ慣らしておきましょう。
ディアハウンドの寿命と病気
ディアハウンドの平均寿命は、8~11年が目安です。ただし、寿命には個体差があり、遺伝的な体質や生活環境、病気の有無などによっても異なります。
健康を維持するためには、適正体重を保ち、年齢や体調に合った食事と運動を続けることが大切です。定期的に健康診断を受け、歩き方や食欲、呼吸の様子など、日頃の変化にも注意しましょう。
元気がない、足をかばう、運動を嫌がる、咳が続く、お腹が急に膨らむといった異変が見られた場合は、早めに動物病院を受診してください。
ディアハウンドのかかりやすい病気
ディアハウンドでは、骨肉腫、拡張型心筋症、胃拡張・胃捻転症候群などに注意が必要です。
骨肉腫は骨に発生する悪性腫瘍で、足の腫れや痛み、跛行などが主なサインです。拡張型心筋症では心臓の働きが低下し、疲れやすさ、咳、呼吸の乱れ、失神などが見られることがあります。
胃拡張・胃捻転症候群は、胃がガスなどで膨らみ、ねじれることがある緊急性の高い病気です。
吐こうとしても吐けない、お腹が膨れる、落ち着きがなくなる、よだれが急に増えるといった症状が見られた場合は、直ちに動物病院を受診してください。
また、ディアハウンドには、血液が固まりにくくなる第VII因子欠乏症や、手術後しばらくしてから出血が起こる遅発性術後出血の遺伝的素因を持つ個体もいます。
手術や処置を受ける際は、犬種特有の出血リスクについて事前に獣医師へ伝え、必要な検査を相談しましょう。
ディアハウンドの歴史
ディアハウンドは、スコットランドで古くからシカ猟に用いられてきた猟犬です。
その起源は明確には分かっていませんが、古代の大型ウルフハウンドから分かれ、シカを追うのに適した犬へ改良されたと考えられています。
スコットランド北部では、少なくとも1000年ほど前から大型のサイトハウンドによるシカ猟が行われていました。
ディアハウンドは優れた視力と走力を生かし、広大な土地でアカシカを追跡する役割を担っていたとされています。
中世にはスコットランドの王侯貴族や有力な氏族から高く評価され、所有者の地位を象徴する犬としても扱われました。非常に価値の高い犬とされ、貴族への贈り物として用いられることもあったと伝えられています。
その後、銃器を使った狩猟の普及や、スコットランドの社会・土地制度の変化によって、ディアハウンドがシカ猟で活躍する機会は減少しました。
18世紀から19世紀にかけては頭数が大きく減り、一時は存続が危ぶまれたこともあります。
19世紀になると、犬種を守ろうとする愛好家によって計画的な繁殖が進められ、現在につながる姿が整えられていきました。
現在はかつてのような猟犬としてではなく、家庭犬やショードッグとして世界各地で受け継がれています。
まとめ
ディアハウンドは、スコットランドでシカ猟犬として発展してきた大型のサイトハウンドです。長い脚と深い胸、硬く粗い被毛を持ち、力強さと優雅さを兼ね備えています。
性格は穏やかで愛情深い一方、動くものを追う本能が残っているため、屋外ではリードや安全なフェンスによる管理が欠かせません。
迎えるには、広い生活空間、毎日十分に運動できる環境、大型犬を安全に扱うためのしつけが必要です。日本では繁殖例が少なく、子犬の価格や入手時期は個別に確認することになります。
また、骨肉腫や拡張型心筋症、胃拡張・胃捻転症候群、出血性疾患にも注意が必要です。犬種の特性と生涯に必要な費用や環境を理解し、十分な準備を整えてから迎えましょう。



