ボーダーコリーの毛色は何種類ある?
ボーダーコリーは非常に豊富な毛色バリエーションを持つ犬種です。犬種の登録を管理するジャパンケネルクラブ(JKC)では、ボーダーコリーの毛色について「あらゆる色が許容される(Any colour is permissible)」と規定しています。
ただし、「体の大部分がホワイトで占められる個体は好ましくない」とも明記されており、これは過剰なホワイトが遺伝的な健康リスクに関連するためです。
JKCでは固定した毛色パターンを厳密には規定していませんが、一般に日本国内で広く認識されているカラーは十数種類に及びます。
代表的な毛色の種類
JKCおよびFCI(国際畜犬連盟)の規定では、先述したとおり「あらゆる色が許容される」と規定されているため、様々な毛色の種類が公認とされています。
日本国内でのボーダーコリーの代表的なカラーは、ブラック&ホワイト、ブルーマール、レッド&ホワイト、チョコレート&ホワイト、ブルー&ホワイト、トライカラー(3色構成)、セーブルなどがあります。
これらのカラーは遺伝子の複雑な相互作用によって決定され、基本的な色素の濃淡や分布が異なることで多彩な外見が生まれています。
公認外(ミスカラー)のカラーは?
ボーダーコリーには、血統書の発行自体は可能ですが、ドッグショーの審査において大幅な減点または失格とされる「ミスカラー」と呼ばれる毛色があります。
主に、「体のほとんどがホワイトで覆われた個体」が該当します。これは毛色そのものが健康や資質の低さを意味するわけではなく、ショーでの基準上の基準です。
ただし、耳や目の周りまでホワイトが広がっている個体では、遺伝的な問題として聴覚障がいのリスクが高まるため、注意が必要です。
ボーダーコリーの毛色が多彩な理由
ボーダーコリーの多彩な毛色は、主に「ユーメラニン(黒〜茶系)」と「フェオメラニン(赤〜黄系)」という2つの色素を作る遺伝子と、その色素を薄めたり模様を作り出したりする修飾遺伝子の組み合わせによって決定されます。
特にブラックやレッドを決める「B遺伝子座」、色素の希釈を司る「D遺伝子座(ダイリュート)」、斑模様を作る「M遺伝子座(マール)」などが知られており、これらの遺伝子が複雑に作用しあうことで数多くの毛色パターンが誕生しています。
ボーダーコリーの人気毛色ランキング
ボーダーコリーの多彩な毛色の中でも、特に一般的に人気が高く、国内のブリーダーやペットショップでよく選ばれている毛色があります。
ここでは市場での流通傾向や飼い主からの関心度の高さをもとに、代表的な人気カラーを5つ取り上げ、それぞれの特徴や魅力、一般的な価格相場をご紹介します。
1位:ブラック&ホワイト
ブラック&ホワイトはボーダーコリーを代表する最も一般的な毛色です。光沢のある黒色の被毛に、顔の中央(ブレーズ)、胸元、四肢の先端、尾先がホワイトで彩られます。
スタンダードなカラーゆえ安定した人気があり、価格も他のカラーに比べやや手頃な25~40万円程度が相場です。
2位:ブルーマール
ブルーマール(Blue Merle)は、灰青色の地色に不規則な黒色の斑点模様が入った独特なカラーです。個体ごとに模様が異なるため、自分だけの特別な一頭を求める方から人気を集めています。
希少性もあり、平均的な価格帯はやや高めの35~60万円程度です。
3位:レッド&ホワイト
レッド&ホワイト(Red & White)は茶系と白が組み合わさった、柔らかく親しみやすい印象のカラーです。ブラック&ホワイトの黒色部分が茶系に置き換わった配色が基本で、家庭犬としての人気が非常に高く、相場は30~45万円程度で推移しています。
4位:チョコレート&ホワイト

チョコレート&ホワイト(Chocolate & White)は濃厚なブラウン系カラーと白が調和した毛色です。落ち着きのある印象を与えるため、特に大人の飼い主に好まれる傾向があります。
価格相場は30~50万円前後で安定しており、長く愛されているカラーです。
5位:ブルー&ホワイト
ブルー&ホワイト(Blue & White)は、ブラックの色素がダイリュート(希釈)遺伝子によって薄められ、青灰色になった独特のカラーです。
その希少性から市場での流通数が少なく、特別感を求める飼い主に支持されています。価格も35~55万円程度と高めに設定されています。
ボーダーコリーの毛色と性格の関係
ボーダーコリーの毛色と性格に関連性があると考える方もいますが、現時点では毛色によって性格が決まるという科学的な根拠は示されていません。
ブラックやブルーマールなど毛色ごとに性格や気質が異なるという話は、個々の飼い主の体験談や印象論に基づくものであることが多く、行動遺伝学や動物行動学の研究でも、毛色と性格を直接的に結びつける強いエビデンスは得られていません。
犬の性格や行動特性は主に遺伝的要素(親犬の気質)、幼少期の社会化体験、飼育環境、トレーニング方法などの影響を受けて形成されます。したがって、どの毛色のボーダーコリーであっても、この犬種に共通する「賢さ」「活動的で意欲的」「人との協調性が高い」という基本的な性質を持っており、毛色だけで性格を推測することは困難です。
愛犬を迎える際には、毛色ではなく犬自身の個性、親犬の気質や飼育環境など、より直接的な要素に注目することが、望ましい関係を築くために重要となります。
ボーダーコリーの珍しい毛色(レアカラー)
ボーダーコリーには、一般的に知られる定番カラーとは異なる、非常に希少で珍しい毛色(レアカラー)があります。
これらのカラーは遺伝的な要因で出現率が低く、独特の美しさや魅力から注目されていますが、その希少さゆえに遺伝的リスクを伴うこともあります。
ここでは特に珍しい毛色と、それに関連する注意点をご紹介します。
チョコマール
チョコマール(Red/Chocolate Merle)は、チョコレート&ホワイトの地色にマール遺伝子が作用し、薄いブラウンに濃いチョコレート色の斑模様が現れる美しいカラーです。
暖色系の色合いが魅力的で人気も高い一方、市場で見かけることは少なく希少価値が高いです。
ライラック
ライラック(Lilac)はチョコレートの色素がさらに希釈(ダイリュート)され、淡い紫がかった灰色を呈した極めて珍しい毛色です。別名「イザベラ」とも呼ばれ、複数の希釈遺伝子の作用が必要なため、繁殖数が少なく入手が非常に難しいカラーです。
ホワイトが優勢な個体
体の大半がホワイトで覆われ、特に頭部や耳周辺にも広くホワイトが見られる個体は、色素細胞の不足により生まれつきの聴覚障がいリスクが高まることが知られています。
これはボーダーコリーに限らず他犬種でも共通してみられる現象であり、迎える際は健康状態や遺伝背景の十分な確認が不可欠です。
「ダブルマール」に要注意
最も注意が必要なのが「ダブルマール」と呼ばれる毛色です。両親ともマール系のカラーで交配を行った場合、マール遺伝子を2つ受け継ぐ可能性があり、子犬が死産となる割合(約25~30%)が高く、さらに生存した場合でも視覚や聴覚に深刻な障がいを抱えるリスクがあります。
こうした交配は倫理的に問題があるとされ、責任あるブリーダーは避けるべきとされています。
まとめ
ボーダーコリーの毛色は豊富で、人気のブラック&ホワイトから希少なチョコマールやライラックまで多彩なバリエーションがあります。
ただし、マール系やホワイトが優勢な個体では遺伝的な健康リスクが高まるため、見た目の好みだけでなく、遺伝的背景や健康状態にも注意を払う必要があります。
また、毛色と性格の直接的な関係を示す科学的根拠はなく、個体差や育った環境が性格に大きく影響します。迎える際には毛色にこだわりすぎず、犬の個性や健康、ブリーダーの倫理観を重視することが大切です。