柴犬の平均寿命はどれくらい?
柴犬の平均寿命は13歳~16歳とされています。
2023年にアニコム損害保険が公表した『家庭どうぶつ白書』によれば、日本国内における柴犬の寿命中央値は14.7歳で、全犬種の中でも比較的長寿な犬種であることが分かります。
また、英国での大規模調査(2024年 Scientific Reports)でも「犬種内では体格が小さいほど長寿である傾向」が明らかになっており、小型~中型に分類される柴犬が比較的長生きする理由の一つと考えられています。
他の小型犬と比較した寿命
日本で人気のある小型犬種であるトイ・プードルやチワワの平均寿命は14歳~16歳程度と報告されています。日本犬保存会の基準では、柴犬は雄38~41cm、雌35~38cmの体高をもつ「小型犬」に分類されます。柴犬はしっかりとした体格を持ちつつも、小型犬種と同等の長寿を享受できる恵まれた犬種と言えるでしょう。
柴犬の長寿記録
柴犬限定の公式なギネス世界記録はありませんが、日本国内では稀に20歳を超える柴犬も報告されています。特に有名なのは柴犬系雑種の「プースケ」で、26歳8ヶ月(1985年~2011年)という記録でギネスに認定されています。
豆柴の平均寿命
近年人気がある「豆柴」など小さいサイズの柴犬の寿命も、基本的には一般的な柴犬と同程度(13歳~16歳)とされています。
ただし、「豆柴」という呼称はジャパンケネルクラブ(JKC)では犬種として正式に認められていません。無理に小型化した個体では遺伝的疾患や体質の弱さを抱える可能性もあるため、健康な豆柴を迎える場合は信頼できるブリーダーから健康情報や血統に関する十分な説明を受けることが重要です。
オスとメスでの寿命の違い
犬全般に共通する傾向として、メスの方がオスよりもわずかに長生きするという報告があります。2024年の英国の研究によると、犬全体での中央値はメス14.3歳、オス13.8歳となっていました。
この差は避妊手術による子宮や卵巣に関連する病気のリスク軽減などが影響している可能性がありますが、個々の健康管理や生活環境の影響も大きいため、性別だけで寿命を予測することは困難です。
老化が始まる年齢
柴犬をはじめとする小型犬は、一般的に7歳前後からシニア期(高齢期)に入ると考えられています。この頃から徐々に老化の兆候が見られ始めますが、早期から健康管理に努めることで、健康寿命を延ばすことが可能です。
柴犬に現れる老化サイン
柴犬は7歳頃からシニア期に入り、徐々に老化に伴う変化が現れてきます。愛犬が快適で健やかなシニアライフを送れるように、飼い主さんが早めに老化のサインを見つけ、適切に対応することが大切です。
顔周りの白髪が目立つようになる
老化が最初に分かりやすく現れるのは外見の変化です。口の周りや眉毛、顔の周囲に白い毛が増えてきます。これは人間の白髪と同じく自然な加齢現象です。
目の水晶体が白く濁って見える
加齢に伴い、柴犬の目の水晶体が白く濁って見える場合があります。この現象のうち「核硬化症」と呼ばれるものは生理的な加齢変化で、通常視力への影響はほとんどありません。一方、「白内障」は病的なもので、進行すると視力が徐々に低下していきます。目の濁りが気になる場合は、早めに動物病院を受診するのが安心です。
毛艶がなくなり、皮膚が乾燥しやすくなる
年齢と共に、被毛のツヤやハリが失われ、毛並みがパサつくようになります。また、皮膚の水分保持力も低下し、乾燥して弾力がなくなり、小さなイボやできものができやすくなります。
寝る時間が増え、散歩を嫌がることもある
以前よりも睡眠時間が明らかに長くなる、大好きだった散歩を嫌がったりする場合は、体力や関節の衰えが原因の可能性があります。また、段差の上り下りを避けたり、ゆっくりと歩くようになった場合も関節の痛みを抱えているかもしれません。片足を浮かせる、時々スキップのような歩き方をする場合は、特に注意が必要です。
食事量が減り、硬いフードを嫌がるようになる
食欲が以前より減ったり、特に硬いフードやおやつを避けるようになるのは、歯周病や口腔内トラブル、消化機能の衰えが関係している可能性があります。口の中を痛がったり、口臭が気になる場合は歯周病が疑われるため、動物病院で診察を受けましょう。
耳が遠くなり、呼びかけに反応しにくくなる
聴覚の衰えが進むと、名前を呼んでも反応が鈍くなったり、背後から近づいても気づかないことが増えます。また、視力の低下が進むと、夜間や慣れない場所で物にぶつかったり、不安そうな様子を見せたりする場合があります。愛犬が安心できるように生活環境を整え、動きやすくなる工夫をするとよいでしょう。
老化のサインは個体差があるため、小さな変化でも見逃さず、少しでも気になったら動物病院で相談することが大切です。
柴犬の寿命を延ばすための生活習慣とケア
柴犬が健康で長生きするためには、日々の生活習慣と飼い主さんによるケアが重要な役割を果たします。若いうちから適切な習慣を身につけておけば、愛犬の健康寿命を延ばすことができます。
シニア期は低カロリー・高タンパク食がおすすめ
柴犬のライフステージごとに適した食事を与えることが大切です。成長期の子犬は筋肉や骨を作るために高タンパク・高カロリーなフードを与え、活発な成犬期には適度なカロリーと栄養バランスを考えたフードを選びましょう。
ただし、持病によっては腎臓への負担を軽減するために低たんぱく食に切り替えたり、より効率よく栄養を吸収できるような高カロリー食に切り替える必要がある場合もあります。かかりつけの獣医師と相談しながら、全身状態によってフードを選択しましょう。
特にシニア期に入ったら肥満を予防するため低カロリーで、筋肉量を維持できるよう良質なタンパク質を多く含んだシニア犬用フードに切り替えることがおすすめです。
シニア期は短めの散歩を複数回に分けて行う
柴犬は元々猟犬で、運動欲求が高い犬種です。成犬期までは適度な運動量を維持するため、毎日十分な散歩を心がけましょう。シニア期になると体力が衰え始めるため、一回の散歩を短めにし、回数を増やすなど、愛犬の負担を減らした運動量の調整が必要です。適切な運動は筋力の維持や認知症予防にもつながります。
毎日の食事と散歩は同じ時間に
柴犬は規則正しい生活習慣を好みます。毎日の食事や散歩の時間を一定に保つことで生活リズムが整い、ストレスの軽減にもなります。また、シニア期に入ると新しい環境に適応しにくくなるため、なるべく環境変化は避けて落ち着いた日常を保つことが理想的です。
毎日のケアが皮膚病の予防になる
柴犬の被毛は「ダブルコート」と呼ばれる二重構造のため、換毛期には特に大量の抜け毛が発生します。毎日のブラッシングは被毛の健康を維持するだけでなく、皮膚の血行促進にもつながり、皮膚トラブルの予防にも効果的です。
歯周病予防には毎日の歯磨きが有効
歯周病は多くの犬が抱える健康問題です。米コーネル大学の調査によると、3歳以上の犬の約80%が歯周病にかかると言われています。
歯周病は口内の痛みを引き起こすだけでなく、細菌が血流を介して心臓や腎臓などの重要な臓器にも悪影響を与える恐れがあります。子犬の頃から歯磨き習慣を身につけ、毎日のケアを継続しましょう。
シニア期は半年に1回健康診断が推奨
柴犬が7歳を超えシニア期に入ったら、半年に一度は動物病院で定期健康診断を受けましょう。AAHA(米国動物病院協会)のガイドラインでもシニア犬には半年に一度の健康診断を推奨しています。血液検査や尿検査、レントゲン検査で早期に病気の兆候を見つけ、早期治療につなげることが健康寿命延長の秘訣です。
定期的なワクチン接種を
狂犬病の予防接種は日本の狂犬病予防法により法律で義務付けられています。その他にも混合ワクチンで感染症を防ぐことができますので、獣医師と相談のうえ適切な時期に接種しましょう。
滑りにくい床材や段差対策がシニア犬のケガを防ぐ
柴犬が年齢を重ねると筋力や関節が衰え、滑りやすい床での転倒や段差の昇降が難しくなります。室内ではカーペットやジョイントマットなど滑り止めになる素材を敷き、ベッドやソファの昇降にはスロープや踏み台を設置すると安全です。
静かな空間と適度な距離感を保つ
柴犬は元々自立心が強く、シニア期には特に静かで落ち着いた環境を好みます。騒々しい環境や過度な干渉はストレスとなり、体調を崩す原因にもなります。適度な距離を保ちつつ、穏やかなコミュニケーションを心がけることが柴犬の安心感につながります。
柴犬がかかりやすい病気と予防策
柴犬には遺伝的に発症しやすいとされる病気がいくつか存在します。健康寿命を延ばすためには、これらの病気に対する理解を深め、早期発見・早期治療を心がけることが大切です。ここでは柴犬が特にかかりやすい病気と、その具体的な予防策を詳しくご紹介します。
アトピー性皮膚炎
柴犬はアトピー性皮膚炎を発症しやすい犬種として知られています。この病気はハウスダストや花粉、特定の食物などに対するアレルギー反応によって強いかゆみが生じます。頻繁に体を掻く、舐め続けるなどの症状が見られたら注意しましょう。予防策としては、室内を清潔に保つことやアレルゲンとなる可能性のある食材を避けることが有効です。また、症状が現れた場合は早めに獣医師の診察を受け、適切な治療を開始しましょう。
膝蓋骨脱臼(パテラ)
膝蓋骨脱臼(パテラ)は、柴犬にもよく見られる病気です。これは後ろ足の膝にある膝蓋骨(お皿の骨)が正常な位置からずれてしまう病気で、歩行中に突然スキップのように歩いたり、足を浮かせたりする症状が特徴です。
予防するためには、肥満にならないよう適正体重を維持し、フローリングなど滑りやすい床にはマットなどを敷いて滑り止め対策を行いましょう。異常な歩き方や痛がる様子が見られたら、整形外科的な検査や治療が必要です。
認知機能不全症候群(認知症)
柴犬のシニア期に特に注意したいのが認知機能不全症候群(犬の認知症)です。これは加齢に伴い脳の機能が低下し、昼夜逆転、徘徊、排泄の失敗など、行動に変化が現れる病気です。
予防には毎日の散歩や知育玩具を使った遊びなど、適度な刺激を与えることで認知機能の低下を遅らせることができます。また、生活リズムを一定に保つことも効果的です。
甲状腺機能低下症
柴犬の中年期以降に比較的よく見られるのが甲状腺機能低下症です。これは甲状腺ホルモンの分泌が不足してしまう病気で、元気がなくなる、体重が増える、毛が左右対称に薄くなるなどの症状が現れます。
予防法として確立されたものはありませんが、中年以降は定期的な血液検査で早期発見し、症状があれば不足したホルモンを薬で補う治療を開始することで、良好な状態を維持できます。
外耳炎
柴犬は耳が立っているため、垂れ耳の犬種よりは耳のトラブルが少ないとされていますが、アレルギーなどが原因で外耳炎を発症することがあります。頭を頻繁に振る、耳から異臭がする、耳垢が増えるなどの症状が見られたら注意が必要です。
予防策としては、日頃から耳の中をチェックし、汚れが気になる時は見える範囲をやさしく拭き取るだけに留めましょう。耳の奥まで無理に掃除するとかえって症状が悪化することがあるため、深い部分のケアは獣医師に相談してください。
柴犬の健康を守るには、これらの病気を正しく理解し、日常的なケアと定期的な獣医師によるチェックを欠かさないことが最も重要です。
まとめ
柴犬の平均寿命は13~16歳と比較的長寿ですが、飼い主の日々のケアによってさらに健康寿命を延ばすことが可能です。7歳頃から現れる老化の兆候を見逃さず、適切な栄養管理や運動量の調整、定期的な健康診断を続けることが重要です。
また、柴犬が特にかかりやすい病気への予防知識を身につけ、毎日のブラッシングや歯磨き、環境整備を徹底しましょう。何より大切なのは、愛犬との穏やかなコミュニケーションです。日々触れ合い、変化に気づくことが愛犬の健康につながります。