犬の貧血にいい食べ物
貧血とは血液中のRBC(赤血球数)、Hb(ヘモグロビン濃度)、PCV(血球容積)と呼ばれる数値が正常値よりも低い状態のことを指します。
犬が貧血になる時には様々な原因がありますが、貧血になることで体の中で栄養や酸素がうまく運べなくなったり、臓器に十分な血液を巡らせることができなくなるため、重度の貧血は命に関わります。貧血の原因によっては、食べ物によって体の中で血を作るためのサポートを行ってあげられることも。
まずはそれがどんな時かを知り、また、貧血を起こしている時にいいと思われる食べ物をピックアップしてみましょう!
貧血に食事療法が有効なのはどんな時?
犬に貧血が起きるのは、
- 自分の体の中で血液がうまく作れない
- 自分の免疫で血液を壊してしまう
- 外から入ってきたものによって血液が壊されてしまう
- 出血で自分の体から血液が出ていってしまう
- 栄養バランスが崩れて血液を作るための成分が足りない
といったことが原因です。
こういった犬の貧血の多くは重度な症例も多く、命の危険を伴うことも!
この中で食事療法がサポートとして活用されるのは、栄養面で血液を作るための材料が足りない時で、その他の場合はそもそもの体の治療を行わなければ貧血の数値は改善できません。
犬で「総合栄養食」を食べている場合、基本的には血液を作る元になる
- 鉄
- ビタミンB(葉酸、コバラミン)
などが不足することはありません。
しかし、手作り食を食べていたり、妊娠中の母犬では胎子に栄養を回す分で自分に必要な量が足りず貧血になっていることがあります。また、老化によりさまざまな病気を発症するリスクが高まる老犬では、がんなどの病気が原因で食事をとることができなかったり、気づかないうちに体内で慢性的な出血が起こって貧血になることも。
こういった時には食事によるサポートがさらに必要になります。
貧血を改善する栄養素
栄養バランスの乱れによって貧血が起きている時には、食事内容を見直してあげることはとても大切です。
重視するべきなのは鉄分をはじめとする「ミネラル」と「ビタミンB群」。
特に鉄は赤血球のヘモグロビン、筋肉のミオグロビンを作るための大事な材料で、これが不足すると赤血球が作れず、各器官や筋肉に酸素を運搬できません。栄養不足などで鉄が不足したために起こる貧血を、「鉄欠乏性貧血」と呼びます。
また、ビタミンB9の葉酸や、ビタミンB12のコバラミンも正常な赤血球を形作るために必要な栄養素です。葉酸は妊娠中に胎子のDNAの合成などで多く必要になるため、通常の成犬用ごはんをいつも通りあげているだけだと母犬は葉酸不足になりがち。貧血だけでなく、胎子の先天的な病気にもつながるため、注意が必要です。
鉄とビタミンB9・B12を多く含む食材
鉄分を多く含む食べ物で代表的なのは、
- レバー、牛肉
- 赤身の魚(カツオ、サバ、ブリ、サンマなど)
といった食材で、特にヘム鉄と呼ばれるものは吸収力が高い鉄分です。
生レバーは細菌・寄生虫感染のリスクがあるため、ゆでたり焼いてから加熱してあげましょう。
新鮮な牛肉の場合は生のままでも大丈夫です。
対して、鉄分は豊富でも非ヘム鉄を多く含む場合は、それ単体では吸収力が低め。
- 青菜類(小松菜、ほうれん草、ブロッコリーなど)
- 海藻類
に代表されます。
犬はビタミンCを体の中で作ることができますが、プラスアルファで鉄と一緒に取ると、鉄の吸収を促進してくれ、ビタミンEと共に抗酸化成分として働いてくれます。そのため、鉄分は豊富だけど非ヘム鉄と呼ばれる吸収力が低い食べ物は、ビタミンCと一緒に取ると良いでしょう。
ほうれん草をあげる時には結石の原因になる「シュウ酸」が気になる所ですが、通常はゆでた後に水で洗えばほとんどの犬では問題ありません。もしも過去にシュウ酸カルシム結晶尿などの病歴がある犬の場合は、念のため避けておきましょう。
また、ビタミンB9も
- レバー
- 青菜類
などに多く含まれているため、鉄分を取る時に一緒に摂取できることが多いです。
ビタミンB12は、動物性食品に含まれるため、レバーや魚介類に豊富に含まれます。
魚介類で代表的なのは、
- あさり
ですが、生のままでは犬にとってビタミンB1を吸収阻害する酵素を含んでしまうため、必ず加熱してからあげましょう!
犬の貧血に悪い食べ物
貧血にいい食事もあれば、逆に犬にとっては貧血を引き起こしてしまう食べ物もあります。犬にとって以下の食材が引き起こす貧血は「溶血性貧血」と呼ばれ、体の中の血を壊してしまうもの。
代表的なのは、
- 玉ねぎ
- ネギ
- にんにく
- ニラ
などの「ネギ類」です。
こういった食材に含まれる有機チオ硫酸化合物が犬にとっては中毒物質であり、赤血球の中の酸素を運ぶ役割を持つヘモグロビンを壊してしまうことがわかっています。また、同時に含まれるアリプロピルジスフィド(有機硫黄化合物)という成分が、物質の吸収を促してしまうことから中毒症状を起こしやすくなるとも言われています。
こういったネギ類であれば、たとえ煮汁の中に溶け込んでいても、ハンバーグのように細かくして加熱されていても、中毒物質は軽減されません!丼、コロッケ、カレー、すき焼きなど、ネギ類を使用するおいしいごはんはいっぱいありますよね。手作り食や、うっかり人の食卓で犬がつまみ食いをしてしまった時には、上記のような食材が含まれていないか注意してみましょう!万が一食べてしまった場合は、できる限り早めに動物病院へ行き、催吐処置などを行うことが必要です。
玉ねぎ中毒が起こるかどうかは、その犬の感受性によって大きく左右されます。「ちょっとなら大丈夫じゃないの?」と思う飼い主さんもいますが、時にはすき焼きの煮汁をわずかになめただけでもダメな子もいます。
一度溶血性貧血が起こってしまえば、原因物質の除去を行った後は、再び血が作られるまで対症療法で待つしかありません。そのため、「そもそも口にしない」という選択をしていた方が安全です!
犬の貧血改善に役立つおすすめ商品をご紹介!
「食材だけで貧血の改善が見込めない時」または「ドッグフードにプラスして治療として栄養素をしっかり取り込みたい時」には以下のような栄養補助食品が使われることがあります。
ペットチニック犬猫用30mL
商品情報
ペットチニックは鉄・銅・ビタミンB群をバランスよく補給できるリキッドタイプのビタミン、ミネラルサプリメントです。
鉄・銅・ビタミン群をバランスよく配合した貧血に対するサプリメントです。
リキッドタイプで味もおいしく作られているので、そのままあげても良し、ごはんにかけても良しという愛犬にもあげやすい商品。
キャップ部分が量を計れるスポイト状になっているため、投与する時にもわざわざシリンジやスプーンを用意せず、洗い物も出ないため便利ですよ。
FCVリキッド犬猫用30ml
メーカー違いでペットチニックと同じようなタイプなのがFCVリキッドです。
こちらもあげる時にキャップに付属したスポイトで量が計れる液体タイプ。
国産で、こちらも味はおいしくつくられているため、あげやすいサプリメントです。
ヘモテクト犬猫用60錠
商品情報
鉄は吸収性に優れた水溶性の鉄原料を使用し、アミノ酸豊富なプラセンタ様物質とビタミンB群をバランス良く配合したワンちゃん、ねこちゃんに鉄、銅、ビタミンB群を補給するための栄養補助食品です。
リキッドタイプが苦手な子には、錠剤タイプの貧血対策サプリメントもあります。
こちらも鉄・銅・ビタミンB群をバランスよく配合しているため、食事を一度にたくさん食べられないという子にはぴったりです。
湿気に弱いので、一度開封したら早めに使いきるか、密封して保管する必要があるため注意してくださいね。
この3つのサプリメントは主に動物病院で処方されています。愛犬の貧血に悩んでいる時には、こういったサプリメントが今の愛犬に有効かどうか、獣医さんに確認してからあげてくださいね。
犬の貧血サプリメントのおすすめを解説しています。犬の貧血の予防対策に良い犬の貧血サプリや、症状、その他犬の貧血サプリメントに関する情報をまとめました。
犬の貧血が食べ物で改善しない場合
食事だけでは改善しない貧血には、愛犬自身の免疫システムや、腫瘍や腎臓病などの病気が大きく関わってきます。
この場合は早急に対処しないと命に関わる急性のものもあるため、
「なぜ貧血が起こっているのか」
という原因追及は必ず行いましょう!
貧血が起こる原因
貧血には「再生性貧血」と「非再生性貧血」の2種類があり、血球計算(CBC)で貧血の度合いを数値で見たり、顕微鏡で血球成分の観察をして赤血球の再生像があるかないかをチェックします。
再生性貧血の場合は、何らかの原因によって血が壊されたり(溶血)、出血することで貧血することが主な原因です。この場合、原因を取り除きながら血液が再び体の中で作られるのをサポートしつつ待つことになります。
ただし、溶血や出血のスピードが速い場合が多いので、重度の貧血時には輸血という選択が必要になることも。
代表的な原因には、
- 免疫介在性溶血性貧血
- 腫瘍の破裂
- バベシア症などの溶血性貧血を引き起こす感染症
- 交通事故などによる外傷(臓器の損傷や体の表面からの大量出血)
などがあります。
対して非再生性貧血の場合は、骨髄で新しい血球成分が上手に作れない状態です。
進行は緩やかなものが多いですが、対策もせずに放っておくと、貧血が重度になっていきます。
- 骨髄疾患、非再生性免疫介在性貧血
- 慢性的な炎症や感染、腫瘍による貧血
- 慢性腎不全による腎性貧血
- 鉄欠乏性貧血(栄養不足、消化管内寄生虫による粘膜への攻撃など)
などが代表的です。
腎臓から出される造血ホルモン(エリスロポエチン)が、治ることはない慢性腎不全によって作られる量が減ったりと、貧血からの回復が難しい例も。
これらの食事療法だけでは治まらない貧血の原因に対しては、過剰になった免疫システムを投薬することで抑えたり、手術によって出血を止めたり、それぞれの病気に合わせた治療法が取られます。
急きょ輸血が必要になった場合には、人のような輸血医療ネットワークが整っていない病院が多いため、あらかじめ健康診断で血液型を調べたり、かかりつけの病院が輸血医療に対応しているかをぜひ確認しておいてくださいね。
貧血の症状
愛犬に貧血が起こっていないかどうかは以下のような症状が出ていないかを見てみましょう!
- 歯茎の粘膜が白い
- すぐに疲れて動けなくなる
- 元気がない
- ふらついている、立てない
- 呼吸が荒い
- 赤、もしくは橙色の尿
- ねばついた黒色の便
体の中で出血や血が壊される現象があれば、便や尿の中に混じって排泄されることがあります。また、酸素は赤血球の中のヘモグロビンとくっついて移動するため、貧血になると息切れしやすくなり運動量も減っていきます。
貧血は重度になればなるほど日常生活に支障をきたすため、早く対処することが大切です。また、治療しなければ最後は死に至る病気も多いのが特徴です。
最初にどれだけ早く治療が開始できるかが重要な病気でもあるため、こういった症状が見られたらすぐに動物病院へ診察を受けに行きましょう!病気の原因に合わせて、食事療法やサプリメントを使って愛犬の体をサポートしてあげてくださいね。