優しい犬とは?
これから犬を家族に迎えようと考えている方にとって、「優しい犬」は理想的なパートナー像の一つではないでしょうか。一般的に「優しい犬」とは、人や他の犬に対して友好的で、攻撃性が低く、落ち着きがあり、しつけがしやすい傾向のある犬を指すことが多いでしょう。
ただし、攻撃性やしつけのしやすさは犬種の傾向だけでなく、個体差や育った環境によっても大きく左右されます。そのため、犬を選ぶ際は犬種の特性だけに頼らず、個々の性格や生活環境も十分に考慮することが重要です。
優しい犬種10選
ここでは、比較的穏やかで飼いやすいとされる犬種を、体のサイズ別に分けてご紹介します。ただし、犬の性格には個体差があることを念頭に置き、あくまで犬種選びの参考としてください。
室内向け!優しい小型犬4種
小型犬は日本の住環境にも適しており、人気の高い犬種が多くいます。
トイプードルトイプードルは、その賢さと人懐っこさから、日本でも常に人気上位の犬種です。明るく活発な一方で、飼い主の気持ちを察するのが得意で、愛情深い一面も持っています。被毛は抜け毛が少なく、伸び続ける巻き毛のため、定期的なトリミングが必要です。
犬種名の「プードル」はドイツ語の「pudeln(プデルン:水が跳ねる、水中でバチャバチャ泳ぐ)」が語源とされ、もともとは水鳥猟の回収犬として活躍しました。なお、原産地はフランスとされることが一般的です。
非常に賢く訓練性能が高いですが、賢いがゆえに甘やかすとわがままになることもあるため、子犬の頃から適切なしつけが大切です。また、遺伝的に膝蓋骨脱臼(パテラ)などの関節疾患リスクがあるため、定期的な健康診断をおすすめします。
シーズーシーズーは穏やかでフレンドリーな性格で知られ、小さな子供や他のペットとも比較的上手に付き合える犬種です。元々はチベットの寺院で飼われていた歴史があり、中国の宮廷でも愛されました。人懐っこく、愛情表現も豊かですが、少々頑固な一面もあります。
短頭種のため呼吸器系のトラブルが起こりやすく、夏場の温度管理や体重管理に注意が必要です。また被毛が長いため、毎日のブラッシングなどのお手入れも欠かせません。目や耳の感染症にもかかりやすいので、こまめなケアが必要です。
パグパグは、その愛嬌のある表情と陽気で優しい性格が魅力の犬種です。人が好きで、家族と一緒にいることを何よりも喜びます。名前の由来には諸説あり、ラテン語の「握りこぶし」を意味する「pugnus(プグヌス)」にちなむ説や、英語で「猿のような顔」を意味する「pug」に由来する説もあります。
比較的おっとりとしており、無駄吠えも少ない傾向にありますが、いびきをかきやすく、暑さ寒さに弱いといった短頭種特有の注意点があります。肥満による呼吸器疾患のリスクもあるため、体重管理には特に気をつけましょう。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルキャバリアは、その名の通り騎士道精神を思わせる優雅さと、人懐っこく穏やかな性格を兼ね備えた犬種です。 イギリスのチャールズ2世に愛されたことでも知られています。非常に愛情深く、飼い主と一緒に過ごすことを好み、他の犬や子供に対しても友好的です。
運動も好きですが、激しい運動は必要とせず、家庭犬として非常に飼いやすいでしょう。遺伝的に心臓疾患を抱えやすい傾向があるため、定期的な健康チェックが推奨されます。
初心者でも飼いやすい優しい中型犬3種
中型犬は、小型犬よりも体力があり、大型犬ほど広い飼育スペースを必要としないため、アクティブな家庭にも人気です。
ブルドッグブルドッグは、いかつい外見とは裏腹に、非常に穏やかで愛情深い性格の持ち主です。忠誠心が強く、飼い主家族に対して深い愛情を示します。
元々は牛と戦う「ブル・ベイティング」という競技のために改良された犬種ですが、その闘争的な性質は19世紀の法規制と愛玩犬への改良繁殖を経て、現在ではほとんど見られません。
おっとりとしていて無駄吠えも少ない傾向にありますが、頑固な一面もあるため根気強いしつけが必要です。また、暑さに非常に弱く、皮膚疾患や呼吸器系のトラブルも多いため、特に夏場の温度管理と健康管理が重要になります。
ビーグルビーグルは、陽気で好奇心旺盛、そして人懐っこい性格で知られる犬種です。元々はウサギなどの小動物を狩る猟犬(セントハウンド)として活躍し、スヌーピーのモデルとしても有名です。家族に対して愛情深く、子供ともよく遊びます。
猟犬としての本能から食いしん坊で、拾い食いや大きな声で吠えること(要求吠えや警戒吠え)がありますが、吠えを抑えるには適度な運動と嗅覚を使った遊びでストレスを発散させることが有効です。また、椎間板疾患や耳の感染症にもなりやすいため、日常のケアが必要になります。
サモエド「サモエドスマイル」と呼ばれる微笑んでいるような表情が特徴的なサモエドは、非常に友好的で穏やかな性格の犬種です。
シベリアのサモエド族と共に暮らし、そり犬や番犬など多目的に活躍していました。個体差はあるものの比較的攻撃性が低く、人や他の犬に対しても社交的です。
賢く、しつけも入りやすいですが、豊かなダブルコートの被毛は定期的なブラッシングが欠かせません。暑さに弱いだけでなく、股関節形成不全や糖尿病などの遺伝疾患リスクもあるため、信頼できるブリーダーから迎えることと定期的な健康診断が推奨されます。
ファミリーに最適な優しい大型犬3種
大型犬は、その大きな体と優しい心で、多くの家庭に安らぎを与えてくれます。
ゴールデンレトリバーゴールデンレトリバーは、その賢さ、温厚さ、人懐っこさから、世界中で家庭犬として絶大な人気を誇る犬種です。人と一緒に作業することを喜びとし、盲導犬やセラピードッグとしても活躍しています。「レトリーブ(retrieve)」とは「回収する」という意味で、水鳥猟でハンターが撃ち落とした鳥を回収する役割を担っていました。
非常に賢く訓練性能が高いですが、大型犬なので子犬の頃からしっかりとしたしつけと十分な運動が特に重要です。また、股関節形成不全などの遺伝的疾患にも注意し、定期的な健康診断を行うことをおすすめします。
ラブラドールレトリバーラブラドールレトリバーも、ゴールデンレトリバーと並んで非常に人気の高い大型犬で、賢く穏やか、そして非常に友好的な性格です。カナダのニューファンドランド島が原産で、漁師の手伝いをする犬として活躍していました。盲導犬や警察犬、災害救助犬など様々な分野で能力を発揮しています。
活発で遊ぶことが大好きなため、毎日の十分な運動が欠かせません。また食欲旺盛で肥満になりやすく、関節疾患や皮膚アレルギーにも注意が必要です。食事管理や日常の健康チェックを定期的に行いましょう。
バーニーズ・マウンテン・ドッグバーニーズ・マウンテン・ドッグは、スイス原産の大型犬で、がっしりとした体格と温厚で献身的な性格が魅力です。元々は農場で荷車を引いたり、家畜の番をしたりする作業犬として活躍していました。家族に対して非常に愛情深く、特に子供に対して寛容であると言われています。落ち着きがあり、物静かな面もありますが、家族と一緒にいることを好みます。
大型犬特有の股関節形成不全など遺伝的疾患に注意が必要なため、信頼できるブリーダーから迎えることが大切です。暑さに弱いほか、大型犬の中では平均寿命が比較的短め(7〜9年前後)といわれており、日頃から健康管理をより徹底することが求められます。
優しい犬を育てるしつけと環境づくり
犬種が持つ特性に加えて、育て方や環境が犬の性格形成に大きな影響を与えます。ここでは、愛犬を優しい子に育てるためのしつけと環境づくりのポイントをご紹介します。
子犬期から始める社会化トレーニング
「社会化トレーニング」とは、子犬が人間社会や他の犬との関わり方を学ぶための重要なプロセスです。一般に生後3週齢ごろから16週齢前後までの期間を「社会化期」と呼び、この時期に様々な良い経験をさせることで、将来的に恐怖心や警戒心が少なく、穏やかで社交的な性格を育むことができます。
《社会化期に経験させたいことの例》- 家族以外の人(子供、大人、高齢者など)に優しく触ってもらう。
- 他の穏やかな犬と、安全が確保された環境で短時間挨拶させる。
- 掃除機やドライヤー、車の音など、日常生活で発生する様々な音に慣れさせる。
- 首輪やリード、クレートなどに慣れる練習をする。
- 様々な場所(公園の入り口、静かな道、ペット可の店先など)を短時間経験させる
- 優しい犬ってどんな子?おすすめ犬種10選と穏やかに育てる秘訣
重要なのは、子犬にとってポジティブな経験になるよう配慮することです。無理強いしたり、怖がらせたりすると逆効果になることもあります。子犬のペースに合わせて、少しずつ新しい環境や刺激に慣らしていきましょう。
ストレスを抑える環境設計と生活リズム
犬も人間と同じようにストレスを感じます。過度なストレスは問題行動や攻撃的な行動を引き起こす原因となります。愛犬が安心して過ごせる環境を整え、安定した生活リズムを提供することが、優しい性格を育むうえで非常に大切です。
《ストレスを抑える環境づくりのポイント》- 犬が安心して休める自分だけの場所(クレートやベッドなど)を用意する。
- 騒がしい場所や人の出入りが激しい場所を避け、静かで落ち着ける場所に寝床を設置する。
- 食事や散歩の時間をできるだけ一定にし、規則正しい生活リズムを作る。
- 毎日の散歩や遊びの時間を十分に確保し、エネルギーを発散させる。
- 長時間のお留守番はできるだけ避け、必要な場合はペットカメラや自動給餌器を活用し、事前に練習しておく。
犬は環境の変化に敏感です。引っ越しや家族構成の変化があった場合は、特に注意深く様子を見て、安心感を与えられるように心がけましょう。
「褒めるしつけ」で優しい性格を伸ばすコツ
犬のしつけにおいて近年主流となっているのが、良い行動を褒めたりご褒美を与えたりして行動を促す「ポジティブトレーニング」と呼ばれる方法です。
《褒めるしつけのコツ》- 犬が望ましい行動をしたら、間髪入れずに褒める。タイミングが重要です。
- 褒め言葉は明るく優しい声で一貫したものを使う(例:「いい子!」「グッド!」)。
- おやつをご褒美にする場合は、犬が喜ぶ特別感のあるものを少量用意する。
- 犬が失敗しても叱ったり罰を与えたりしない。望ましくない行動は無視するか、他の行動に誘導する。ただし、危険を伴う行動は直ちに制止し、安全を確保した上で望ましい行動に誘導しましょう。
- トレーニングは短時間で集中して行い、犬が飽きないように工夫する。
この方法は犬に恐怖心や不安を与えず、楽しく学習意欲を引き出します。飼い主との信頼関係を深めながら犬の優しい性格を自然に伸ばすことができます。しつけで困ったときは、ドッグトレーナーなど専門家への相談もおすすめします。
まとめ|個性を理解して愛犬を家族に迎えよう
「優しい犬」との出会いは、私たちの生活に大きな喜びと癒しをもたらします。しかし、犬種や見た目だけでなく一頭一頭の個性を理解し、動物愛護法が定める終生飼養の責任を果たすことが何より大切です。生涯にわたり愛情と責任を持ち、家族としての絆を築いてください。