イギリスにおける電子首輪の規制
2023年4月イギリスのイングランドにおいて、犬に遠隔で電気ショックを与えることができる電子首輪の使用禁止が動物福祉法に制定されました。電子首輪の禁止は2024年2月1日から施行されます。
イギリス(United Kingdom)は連合王国であり、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国で構成されています。
今回の電子首輪禁止はイングランドでの法律です。ウェールズでは既に13年前から電子首輪が法律で禁止されていますが、スコットランドでは法律による規制はありません。
ヨーロッパの他の国ではドイツやデンマークなど、2023年1月にはフランスも電子首輪を含む嫌悪刺激のための道具が法律で禁止されています。
「フランスで、嫌悪刺激を与える首輪などを禁止する法案が可決」
https://wanchan.jp/column/detail/36946
イギリス全土を統括する世界最古の畜犬団体である『ザ・ケネルクラブ』や英国王立動物虐待防止協会は、長年にわたって電子首輪を禁止するキャンペーンを続けており、電子首輪禁止の決定について「動物福祉のための歴史的瞬間」と述べています。
これらの団体はスコットランド動物虐待防止協会と連携して、今後はスコットランドでの同様の規制を設けるための運動を続けるとのことです。
電気ショックを与える首輪が好ましくない理由
電子首輪は半径3.5km以内で遠隔操作によって、犬の首に電気ショックを与えることができます。ショックは1回につき最大11秒間です。
イギリスでは犬の飼い主の20人に1人が電子首輪を使用しているとも言われており、イギリス全土で50万頭の犬が電気ショックから解放されることになります。
電気ショックも含めて嫌悪的な刺激を使って罰を与える方法は、犬にとって苦痛であるだけでなく、トレーニングの効果も低く犬に長期的な心理的悪影響を及ぼすことも、数々の研究によって明らかになっています。
これはイギリス最大の犬保護団体ドッグズトラストのリサーチチームによる研究結果です。
「嫌悪刺激を使うトレーニング方法は犬から希望を奪うという研究結果」
https://wanchan.jp/column/detail/29721
こちらはイギリスのリンカーン大学が、プロによる電子首輪を使ったトレーニングと、同じくプロによる報酬ベースのトレーニングの効果を比較した調査結果です。
「報酬ベースの犬のトレーニングは罰を使うよりも効果的という研究結果」
https://wanchan.jp/column/detail/22143
電子首輪禁止に反対する人々
ザ・ケネルクラブや動物保護団体からは歓迎の声が聞こえる電子首輪禁止のニュースですが、このニュースに怒りを訴えている人々もいます。
イギリスの全国牧羊協会は電子首輪禁止について、「非常に無責任だ」と怒りのコメントを発表しています。イギリスでは2023年初頭から、飼い犬による羊への襲撃が増えていることが報告されています。
イギリスでは(牧羊犬以外の)犬が羊を追いかけた場合、羊の持ち主が犬を射殺する権利が認められています。
また、犬の飼い主には1000ポンド(約17万円)の罰金が課せられます。このような事態を避けたい飼い主の中には、電子首輪を使っている人も少なくありません。
スコットランドでは全農地の55%が羊の飼育、または羊と牛の混合飼育に当てられているそうですので、これがスコットランドでの電子首輪禁止が遅れている理由のひとつだと思われます。
羊農家の方からすれば、大切に育てた生活の糧でもある羊が殺傷されるリスクが高くなるのですから憤るお気持ちはもっともだと感じます。
羊の放牧地の近くでは犬をオンリードにすれば良いことなのですが、そのようなアクションを取らず、人間にとって手軽なツールを使おうとする無責任な飼い主が犬に苦痛を与えているとも言えます。
無責任な飼い主の存在が他の人々の生活を脅かし、それが他の飼い主や犬に不自由を強いることになる例のひとつでもあります。
まとめ
イギリスのイングランドにおいて、2024年2月1日から犬の首に電気ショックを与える電子首輪の使用禁止の法律が制定されたという話題をご紹介しました。
電子首輪自体は日本では馴染みの薄いものですが、電子首輪を含めた嫌悪刺激を使ったトレーニングは、犬にとって苦痛であるだけでなく効果の低いものだということは多くの方に知っていただきたいと思います。
《参考URL》
https://www.thekennelclub.org.uk/shockcollarsbanned
https://www.mirror.co.uk/news/uk-news/electric-shock-dog-collars-banned-29840359