報酬ベースの犬のトレーニングは罰を使うよりも効果的という研究結果

報酬ベースの犬のトレーニングは罰を使うよりも効果的という研究結果

電子首輪を使った嫌悪ベースのトレーニングと食べ物を使った報酬ベースのトレーニングを比較する研究結果が発表されました。犬と暮らす全ての人にご紹介したい内容です。

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できないことに罰を与えるか、できたことに報酬を与えるか

電子カラーを付けた犬

犬のトレーニングの方法は色々ありますが、常に論争になりがちなのが「嫌悪ベース(できない、従わない時に罰を与える)」か「報酬ベース(できたことに報酬を与える)」のどちらが効率が良いかというものです。

この度、イギリスのリンカーン大学の研究者が電子カラー(リモコンで電気ショックが加えられる首輪)を使ったトレーニングと報酬ベースのトレーニングを比較するリサーチの結果を発表しました。

「電子カラーはコマンドに従わない犬のトレーニング手法として効果的で、経験豊かなプロのトレーナーに依頼するよりも効率的である」という説があります。

一方で、電子カラーのような嫌悪を与えるトレーニング方法は動物福祉を損なうリスクがあることも分かっています。

このリサーチでは上記のことが検証されています。

よく似た問題を持つ犬たちを3つのグループに分けてトレーニング

走り寄ってくる犬

リサーチには63匹の犬が参加しました。犬たちは全員がオフリードの時の呼び戻しができないとという問題を抱えていました。

犬たちは各グループ21匹ずつの3つのグループに分けられて、全員が5日間で上限150時間のトレーニングを受けました。3つのグループはそれぞれ違うトレーニング方法を使用しました。

電子カラーグループ

電子首輪の使用に熟練した、電子カラーのメーカー指定のドッグトレーナーによる、コマンドに従わなかった時に軽い電気ショックが与えられる嫌悪ベースのトレーニング方法。
犬たちは事前に電気刺激への感受性が検査されている。

混合グループ

電子カラーグループと同じトレーナーによって、電子カラーを使わないでトレーニングされる。トレーニング方法は報酬ベース(食べ物)と嫌悪ベース(リードを強く引くなど)の混合タイプ。

報酬グループ

ポジティブ強化方法を用いるプロのドッグトレーナーによる、コマンドに従った時に食べ物が与えられる報酬ベースのトレーニング方法。

3つのグループのトレーニングの成果の評価方法は次のようなものでした。

  • 「来い」「座れ」のコマンドにどのくらい速く反応したか
  • 犬が反応するまでに、トレーナーが何回コマンドを発声したか
  • 犬が10秒以内にコマンドを実行しなかったことが何回あったか

3つのグループのトレーニング成果の違い

トレーニング中の女性と犬

5日間のトレーニングを終えた後、3つのグループ全てが犬に「来い」と「座れ」の2つのコマンドを教えることに成功しました。

しかし上に挙げた3つの評価方法と、トレーニング風景を観察した時に、3つのグループにははっきりとした違いがありました。

  • 報酬グループは他の2グループよりも、トレーニングに費やした時間が短かった
  • 報酬グループでは犬がコマンドに反応する時間が他の2グループよりも有意に速かった
  • 報酬グループではトレーナーがコマンドを発声する回数が少なかった
  • 犬が10秒以内にコマンドに反応しなかった回数は3グループで大きな差はなかった
  • 混合グループでは、他の2グループよりもハンドサインが多く使われていた
  • 電子カラーと混合グループでは、犬を軽く押さえて座らせるなど犬の体への接触が見られた

これらの違いを総合すると、電子カラーによる電気ショックやリードを引くという嫌悪を与えるトレーニング方法よりも、食べ物という報酬を与える方法の方が短い訓練時間で犬の素早い反応を得られるということが分かりました。

できない時に罰を与えるよりも、できた時に報酬を与える方が効率よくトレーニングができるということです。

効率の面だけでなく、報酬ベースのトレーニング方法では犬の福祉や犬と人間の関係が損なわれるというリスクもありません。

まとめ

トリーツを見て舌舐めずりする犬

電子カラーを使った嫌悪ベースのトレーニング方法と、食べ物を使った報酬ベースのトレーニング方法の成果を比較したリサーチ結果をご紹介しました。

電子カラーは日本ではあまり馴染みのないツールですが、リードへのショック、大きな声や音といった嫌悪刺激を使った方法と同じだと考えられます。

これら嫌悪刺激を使う方法は「理想的ではないのかもしれないが効率がよく即効性がある」と考える人も少なくありません。しかしこのリサーチ結果からは、食べ物を使った方法の方が効率よく短い時間でトレーニングができることが明らかになっています。

そして何より、犬と人間の信頼関係が損なわれるリスクがないという大きなメリットがあります。これから犬を迎えようと考えている方、愛犬のトレーニング方法またはトレーナーを探している方はぜひこのリサーチ結果を頭に置いておくことをお勧めします。

《参考URL》
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2020.00508/full

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