トリュフ犬とは?
トリュフ犬とは、その名の通り「トリュフを探す犬」のことをいいます。
トリュフは「世界三大珍味」のひとつで「キッチンのダイヤモンド」といわれるほど、高級で人気の高い食材です。産地は主にヨーロッパの各地ですが、日本国内にも少なからず自生しているところがあるようで、しばしば国内でのトリュフ採取が報告されています。
「トリュフを探すのは、豚の仕事」と思っている方が多いと思いますが、それは少し昔の話し。近年では、専門の訓練を受けた犬もトリュフを探すのに活躍しているのです。
トリュフは広葉樹の根に寄生する「地下生型菌根性キノコ(地中で生息するキノコ)」なので、普通のキノコのように胞子を自分でまき散らすことができません。そのため、熟成し食べ頃になると独特の芳醇な香りで動物をおびき寄せ、胞子を運んでもらうように進化しました。
その芳醇な香りが、オス豚のフェロモンの香りによく似ているのを利用して、以前はメス豚がトリュフを探すのに使われていたのです。
しかし困ったことに、豚は見つけたトリュフを食べてしまうことが多く、人間が食べられる状態で収穫するのが難しいという欠点がありました。そのような事情により、最近では豚に代わって訓練された犬にトリュフを探させることが増えてきているのです。
日本には「松茸犬」と呼ばれる松茸などのキノコを探す犬がいますが、これらの犬はトリュフ犬を参考に教育されたといわれています。
トリュフを探すのに犬が適している理由
では、どうして様々な動物の中から、トリュフを探すのに犬が選ばれたのでしょうか?その理由は幾つかあります。
嗅覚が優れている
第一に、犬の嗅覚が非常に優れているという点が挙げられます。
トリュフは、地下で生息し地上ではその姿を見ることができません。そのため、放つ香りだけで生息場所を突き止めなければならないので、地下のトリュフの香りを15~20メートル先からでも見つけることができる犬の優れた嗅覚が必要なのです。
また、多くのトリュフ・ハンターは、夜の間にトリュフを採取します。何故なら、他のハンターにトリュフの生育場所を気付かれないようにするためです。視界の悪い暗闇でも、犬の優れた嗅覚が大いに役に立つのです。
ちなみに、フランス語でトリュフ(truffe)は「犬の鼻」を意味する言葉です。
トリュフを食べない
犬は、豚のように見つけたトリュフをその場で食べてしまうようなことはありません。
たとえ、食べたりおもちゃにしてトリュフを傷付けたりするようなことがあっても、その学習能力の高さから、訓練次第で食べられる状態のままトリュフを採るようにしつけることができます。
飼い主に従順である
犬は豚に比べて学習能力が高いだけでなく、人間に対してとても従順です。豚は見つけたトリュフを人間が取り上げようとすると暴れて噛み付くこともあります。
しかし、人間に対して従順な犬にそのようなことはなく、言われたまま、訓練を受けたまま、人間に従うことができるのです。
トリュフ犬に向いている犬種
トリュフ犬には一般的に扱いやすい小型犬が好まれるようですが、様々な種類の中でトリュフを探すのに適しているのはどんな犬種なのでしょうか?
ロマーニョ・ウォーター・ドッグ
もとはイタリアでウォーター・ドッグ(撃ち落とされた鳥を水上まで泳いで行き回収する鳥猟犬)として活躍していました。やがて狩り場である湿地帯が耕作地に変り、その仕事を失って一時絶滅の危機に陥ります。
しかし、もともと穴掘りが大好きで嗅覚が優れていたため、テリアやミニチュアプードルなどを掛け合わせて改良し、トリュフ犬として使われるようになりました。
こうして絶滅の危機を逃れ、今では「トリュフ・ドッグ」の別名を持つほど、トリュフを探す犬として有名になりました。
トイ・プードル
あらゆる犬種の中でも学習能力の高さはトップクラスで、嗅覚も非常に優れています。また、水鳥の回収を行う狩猟犬だった歴史があるためでしょうか、水遊びやおもちゃを取ってくるような遊びを大変好みます。
それらの習性から、かつてはトイ・プードルもトリュフ犬として活躍していた時期がありました。
ラブラドール・レトリバー
大型犬に分類される狩猟犬の一種で、レトリーバーとは「獲物を回収(Retrieve(レトリーブ))する犬」という意味です。
祖先犬は、魚の回収を目的とした使役犬でした。その名残で、足に水かきが付いているのが特徴で、活発で泳ぐことが大好きです。また、洞察力、作業能力に優れ、身体障害者補助犬、麻薬探知犬、警察犬など、現在では様々な場面で活躍しています。
ボーダー・コリー
イギリス原産の犬で「世界中で最も多く使われている牧羊犬」といわれています。全犬種の中で「最も知能が高い犬種」との研究結果もあるほど賢い犬です。
学習能力が高いだけでなく運動能力も非常に優れているので、アジリティ、ディスクドッグ競技、ドッグダンスなど、様々なドッグ・スポーツでも活躍している犬種です。
トリュフ犬の訓練方法
本能的にトリュフを探し出す豚と違って、トリュフ犬の育成には長時間の訓練と費用がかかります。そのため、まだまだトリュフ犬の数は多いとはいえませんが、海外にはトリュフ犬を育成する学校もあります。
そこで犬はどのような訓練を受けているのでしょうか?トリュフ犬になるための訓練方法を調べてみました。
1.トリュフの香りを覚えさせる
まず、犬にトリュフそのものやトリュフの香りの付いたボールなどを使って遊ばせることから始めます。それらを投げて、犬がくわえて戻ってきたらビスケットなどのご褒美を与えます。
2.徐々に範囲を広げていく
犬がトリュフの香りを覚え持ってくるようになったら、少しずつ投げる範囲を広げて、背の高い草が生えているなど、より探しにくい場所でトリュフやボールを探させます。
この時、犬に「行け・探せ・よくできた!」と常に声をかけ続けて、褒めたりご褒美を与えるようにします。
3.地面に埋める
犬がトリュフの香りを完全に覚えたら、次はそれを地面に埋めて犬に探させます。最初はあまり深く埋めないようにして、慣れてきたら徐々に深い所に埋めるようにします。
4.トリュフを食べないように教える
トリュフの香りを覚えて上手に掘り出すことをマスターできたら、次に「見つけたトリュフを人間の所に持ってくればご褒美をもらえる」ということを学習させます。
5.優秀なトリュフ犬を育成するには
優秀なトリュフ犬になるには、平均で3年はかかるといわれています。トリュフ犬を育成するのに一番重要なことは「犬を訓練し続ける」ということです。
たとえ毎日訓練できなくても、根気強く地道に訓練を続けることが大切なのです。
まとめ
上記のようにトリュフ犬に向いている犬には、もとは狩猟犬で獲物の回収能力が高い、学習能力が高い、といった多くの共通点が見られます。
しかし、あるトリュフ犬の訓練士は「すべての犬が優秀なトリュフ犬になれるとは限らない。しかし、すべての犬にそのチャンスはある」と言っています。
優秀なトリュフ犬の育成には「強い忍耐力を持つこと。そして、犬にはゲーム感覚でトリュフを探し出すことの楽しみを教えることが大切だ」とも言います。
これらのことを参考にすれば、あなたの愛犬も、訓練しだいで優秀なトリュフ犬になれる…かもしれませんね。