犬の夜鳴きの原因
「夜鳴き」と一言に言っても、じつは犬が夜鳴きをする理由にはさまざまなものがあります。
犬が夜鳴きをするのには、いろいろと理由が積み重なっていることがほとんどですが、特に考えやすい原因についてお話します。
感情表現・生理的欲求の不満
まず考えられる原因は「感情表現」や「生理的欲求の不満」です。
私たち人間のように言葉を話すことのできない犬は、普段から鳴き声で私たちに何かを伝えようとすることもありますよね。
この場合の夜鳴きは、普段から行っている感情表現が“たまたま夜の時間帯に重なった”と言えます。
- お腹が空いた
- 喉が渇いた
- トイレに行きたい
- トイレが汚れている
- 寂しいから起きてほしい
愛犬はこうした何らかの不満を飼い主さんに訴えたいのかもしれません。
認知症
人間と同じように、犬でも高齢の場合には認知症(認知機能不全症候群)になることも珍しくはありません。
認知症になると不安感が増すため、夜に飼い主を呼ぶために夜鳴きをするケースが多くあります。
また、犬の認知症には夜鳴きだけではなく、以下の行動・症状も多く見られます。
- ぐるぐると同じところを歩き続ける
- トイレの失敗が増える
- 呼びかけても無反応
- 昼間はよく寝て夜間に起きる
- 意味もなく単調な声で鳴き続ける
昼間から夜間にかけて愛犬を観察する中で、こうした行動が見られるようになった場合には認知症かもしれません。早めにかかりつけの動物病院を受診するようにしましょう。
不安や恐怖
先ほどの認知症でも「不安感が増して飼い主を呼ぶ」とお話しました。しかし、認知症でないシニア犬でも、日常生活に不安や恐怖を感じて夜鳴きをするケースもあります。
ご存知の通り、犬は嗅覚や聴覚がとても優れた動物です。特に嗅覚は、人と比べると数千倍から1億倍も優れていると言われるほどで、犬は日常生活のほとんどを嗅覚に頼って生きています。
しかし、人間でも歳を重ねるにつれて視力や聴力が落ちていくように、犬の嗅覚もシニア期に入ると徐々に衰えていきます。
こうして日常生活に支障が出てくることによって、犬の不安感や恐怖心が増すことも珍しくはありません。夜になり家族が寝静まると、そういった不安な気持ちや恐怖はさらに増してしまいます。
認知症のような行動が見られないシニア犬の場合、そうした不安感から「大好きな飼い主にそばにいてほしい」と夜鳴きをしているのかもしれません。
シニア犬の夜鳴きの介護
犬が夜鳴きをする原因についてお話しました。さまざまな原因が考えられる犬の夜鳴きですが、ここからはシニア犬の夜鳴きに対して飼い主ができる介護についてお話していきます。
「叱らない」ことが前提
愛犬が夜鳴きをしていると、家族も眠れなかったり近隣から苦情が来てしまったり、つい叱りつけてしまいたくなることもありますよね。
しかし、ここで叱ってしまうのは逆効果ですので、絶対にやめましょう。先ほどもお話しましたが、犬が夜鳴きをするのには「不満」や「不安」といった原因があります。
不満や不安が増している中で飼い主から叱られると、犬には余計ストレスがかかり、もっと夜鳴きがエスカレートしてしまうことも十分にあり得ます。
飼い主さんの焦ってしまう気持ちも、とてもよくわかります。ですが、ここは愛犬の不安な気持ちを察してあげて「叱る」ということは絶対にしないように心がけてくださいね。
食事回数・食事時間の調整
夜中にお腹が空いて鳴くというのは、シニア期に限らずどの年齢の犬でも十分にあり得ることです。
しかし、シニア期に入ると特に、食が細くなって食事時間で多くの量を食べることが難しくなるため、夜中にお腹が空いてしまうことも多くなります。
空腹が夜鳴きの原因として考えられる場合には、食事の回数や時間の調整を行いましょう。食事の回数に分けたり夜眠る直前におやつの時間を設けたりすると、夜中にお腹が空いて鳴くことを防げますよ。
また、夜中に喉が渇いて鳴いてしまう子の場合には、寝床のすぐ近くに新鮮なお水を置いておくのもいいでしょう。
シニア期に入ると食事やお水を飲むのにも一苦労ということもあるので、食器にも気を遣ってあげるのがおすすめです。
昼夜逆転を防ぐ
シニア期に入ると、これまでのように昼間に活発に運動することも減ってきますよね。シニア犬では「散歩に行きたがらず、1日中寝ている」という子も多いように感じます。
しかし、この生活を飼い主が許してしまうと、生活リズムが段々と崩れるので注意が必要です。規則正しい生活ができていないと、犬の生活リズムが昼夜逆転してしまいます。
私たち人間が夜になって眠ろうとしても、犬にとっては「まだお昼」という感覚ですから、夜中に行動したり何かを要求したりして夜鳴きにもつながるのです。
- 朝になったら、しっかり犬を起こす
- 日光の当たる場所で過ごさせる
- 昼間は無理のない程度に運動や散歩をさせる
これらを行い続けることで、昼夜逆転による夜鳴きを防ぐことができます。また、こうした飼い主側の行動は昼夜逆転を防ぐだけではなく、認知症の予防や進行を遅らせることにもつながりますよ。
寝床の見直し
先ほど「生理的欲求の不満が理由」というお話もしましたが、寝床の環境への不満から夜鳴きをしている犬も珍しくはありません。
飼い主は、愛犬が寝ている環境をもう一度よく見直してみましょう。
- 寝床が寒い、または暑い
- 寝床が明るい
- ベッドの寝心地が悪い
このようなことはなさそうですか?若い頃には平気だった環境であっても、体温調節の機能が低下したり体への不調が多くなったりしてきたシニア犬にはつらいこともあり得ます。
また、シニア期に入ると先ほどもお話したように不安感が増してきます。そのため、飼い主から離れて眠ることに抵抗が出てくる子も多いです。
「飼い主と同じベッドで寝かせるようになってから夜鳴きがおさまった」という話も、決して珍しくはありません。もし飼い主さんに抵抗がないのであれば、愛犬と一緒に眠ってあげるのも一つの手です。
飼い主のリフレッシュも忘れずに
犬が夜鳴きをする理由や飼い主が行いたい介護についてお話しました。
愛犬の夜鳴きは飼い主が不眠気味になったり近隣への配慮が必要になったり、つらく感じることも多いですよね。
しかし、犬は飼い主の気持ちを汲み取るのが上手な動物です。飼い主のつらい気持ちを感じ取り、それが犬の不安につながって夜鳴きが増してしまう……ということだってあるのです。
飼い主さんは愛犬の介護を一人で抱え込むのではなく、家族やペット介護サービスなども利用しながら過ごしましょう。
飼い主が眠れない状態が続いている時には、動物病院などのペットホテルを利用するのだって悪いことではありません。無理をせず、愛犬の介護に向き合っていってくださいね。