愛犬の食事介護の方法と飼い主が気をつけたい注意点

愛犬の食事介護の方法と飼い主が気をつけたい注意点

犬の介護の中でも「食事面での介護」は、どの家庭でも身近に起こり得るものです。この記事では、動物介護士資格を持つペット終活アドバイザーが「愛犬の食事の介護方法と注意点」について、詳しくお話します。

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以前はトリマーとして働いていましたが、愛犬を亡くしたことをきっかけにペットロスカウンセラーに転身しました。現在はペットロスカウンセリングやグリーフケアを行う一方で、Webライターとして動物に関する記事を執筆しています。

愛犬の食事介護での基本

犬の手のドッグフード

まず、前提としてお話しておきたいのが「愛犬が7歳を過ぎたらシニア用のフードへの切り替えを検討してほしい」ということです。というのも、多くの家庭の犬はシニア期を境に肥満になりやすい傾向があります。

なぜかというと、シニア期に入ると徐々に代謝機能が衰えていくため、今まで通りに食事を摂っているとエネルギーに変換できなかった栄養分が脂肪として愛犬の体に蓄積されてしまうからなのです。

それに、シニア期では代謝機能だけではなく消化機能も衰えていきます。若い頃と同じ食事内容のままでは、飼い主の知らない間に犬の内臓に負担をかけてしまっているケースも珍しくはありません。

シニア犬に限ったことではありませんが、肥満は寿命を縮めてしまうことにもつながります。愛犬に長生きをしてもらうためにも、シニア期を迎えたら食事内容の見直しを行いましょう。

自力で食べられる愛犬の食事介護

食事中の犬

「自力で食べられるのなら介護は必要ないのでは?」と思う飼い主さんもきっと多いですよね。しかし、自力で食べられる子であっても、必ずしも「不便さを感じていない」というわけではありません。

ここからは「自力でごはんを食べられる愛犬に対して行う食事介護」についてお話します。

高さのある食器を選ぶ

まずは、愛犬がごはんを食べる際に使っている食器を見てみましょう。高さが低くて、犬の背中や首が大きく曲がってしまってはいませんか?

シニア期に入ると、背中から首にかけての筋肉や骨も衰えていきます。そのため、今までは平気だった高さの食器も、今では苦痛を感じているかもしれません。

さらに、シニア犬は飲み込む力も弱くなっているので、首が下を向いたまま食べていると誤嚥の可能性も高くなってしまいます。

  • 食べるのに時間がかかる
  • こぼすことが多くなった
  • 食事中にむせることがある
  • 食欲はありそうなのに途中で食事をやめてしまう

このような様子がみられるときは、食器が合っていないのかもしれません。犬が背中から首にかけて真っ直ぐの体勢でいられるくらいの高さがある食器に替えてみましょう。

また、お皿の底の角度が斜めになっているとフードが自然と口元に集まってくるので、愛犬はもっと食べやすくなりますよ。

嗜好性が増すように工夫する

先ほど「シニア期に入ると代謝や消化機能が衰える」という話をしましたが、犬の最大の武器でもある「嗅覚」も年齢とともに衰えます。

犬は目があまり良くないので、匂いでさまざまなことを判断します。もちろん、ごはんだってそのうちの一つです。

「安全なものか?」「おいしいものか?」など、若い頃は匂いで判断していましたが、シニア期に入り嗅覚が衰えてくると、その判断がうまくできなくなってしまうのです。

シニア期に入って食欲が落ちた犬のごはんには、まず「嗜好性の増す工夫」を行ってみましょう。フードの匂いが強くなるように、お湯を入れたりレンジなどで温めてみたりするのがおすすめです。

犬が口の中を火傷しないように、人肌程度に冷ましてから与えてくださいね。簡単な方法ではありますが、実際にこの方法を試すようになってから食欲が戻ったという犬は珍しくありません。

嗜好性を高めるものには、他にも以下のような方法があります。

  • 食事の場所を変える
  • フードを潰して食感を変える
  • フードの保存方法を変える

犬は、私たち人間では気づかないような小さな変化にもとても敏感です。ほんの少しのフードの内容や環境を変えただけでも、嗜好性が高まって食欲が増すこともあります。

まずは飼い主さんが行える工夫を試してみて、それでも食欲がないようであれば、かかりつけの獣医師さんに相談してみてくださいね。

自力で食べられない愛犬の介護方法

ドッグフードと犬

ここからは自力で食べられない愛犬の介護方法についてお話します。ただし、飼い主の自己判断で「自力で食べられない」と決めてしまうと、愛犬の生活の質を下げることにもなりかねません。

介護は「愛犬の身の回り全ての世話をする」のではなく、あくまでも「愛犬のできないことを手伝う」という姿勢が基本です。まずは、かかりつけの動物病院を受診して、獣医師さんの判断を仰いでくださいね。

流動食の与え方

流動食を与える際には、噛む力のない愛犬でも無理なく飲み込めるように細かくすりつぶしたフードを与える必要があります。

市販でも犬用の流動食が売られていますが、普段から食べているフードを水と混ぜて柔らかく潰したものでも構いません。

こうした流動食をシリンジなどを使って犬に与えていきます。誤嚥の危険もありますから、犬の口のわきからゆっくりと、きちんと飲み込めているかを確認しながら流し込んでください。

このとき、喉をさすると犬も自然と飲み込む仕草をするので、流動食を口に入れたら優しく喉をさすってあげましょう。水も流動食と交互にシリンジで流し込んであげると、フードが口の中に残りません。

そして、このときの犬の体勢にも注意が必要です。寝かせたまま与えてしまうと、誤嚥が起きてしまう危険性が高くなります。

犬の上半身だけでもいいので体を起こして、頭を少し高くするように意識しましょう。寝たきりの犬であれば、飼い主の体やクッションなどに体をもたれかかるようにしてあげると、ごはんを与えやすいかと思います。

ただし、犬の顔を高くさせようと顎を上に向けてしまうとかえって危険です。犬の顔は真正面を意識してくださいね。

ごはんのあとは歯磨きも

シニア期に入ると免疫力も低下してくるので、さまざまな病気への対策も必要です。特に歯周病は他の病気へと発展してしまう危険もあり、最悪の場合は命にも関わるので、「たかが口の病気」と侮ってはいけません。

ごはんの後は歯周病予防のために、歯磨きガーゼなどで愛犬の口の中をきれいにしてあげてくださいね。

愛犬の食事介護での注意点

ドッグフードと犬

愛犬の食事介護の方法をご紹介しました。では、飼い主はどのようなことに気をつけて介護に取り組んでいくといいのでしょうか?

ここからは、愛犬の食事介護で飼い主に気をつけてほしい注意点についてお話します。

不安があれば獣医師に相談する

愛犬の食事介護で不安になりやすいことというと「食欲の減退」かと思います。先ほども、シニア期に入ると嗅覚が衰えたり食事の体勢がつらくなったりするので食欲が落ちる……というお話をしました。

しかし、じつはそこには「老化」だけではなく「病気」が隠れている可能性もあります。

反対に「食欲が旺盛になった」「さっきあげたばかりなのにまた食べたがる」という場合でも、認知機能に障害があることもあるので注意が必要です。

どんなに些細なことであっても、愛犬の食欲や食事方法などで気になることがあればすぐに動物病院を受診して相談してみてください。

獣医師や動物看護師・動物介護士などのプロに相談して、悩みをクリアにしながら介護を行いましょう。

ストレスによる噛みつきに注意

介護は、世話をする飼い主だけではなく、じつは愛犬にも大きなストレスがかかります。もちろん、大好きな飼い主さんが自分のお世話をしてくれるのは、愛犬にとっても幸せなことです。

しかし、今までのように思い通りに食事を摂れないというのは、犬にとってはやはりつらいことですよね。

どんなにおとなしい子であっても、そのストレスから食事の際に介護をしている飼い主に噛みついてしまうケースは珍しくありません。

飼い主は愛犬の様子をしっかり観察しながら、ゆっくりと介護を行っていくようにしましょう。

愛犬の介護は一人で抱え込まない

愛犬の食事介護や注意点についてお話してきました。

食事は「生きるための手段」であり、介護が必要になった犬にとって重要なことです。しかし、重要であるからこそ、飼い主は大きな責任を感じてしまってストレスにもつながりやすくなります。

愛犬の幸せは、大好きな飼い主さんが笑顔で楽しく過ごしてくれることです。

そのためにも「自分の犬だから」と一人で介護を抱え込むのではなく、家族や友人、ペット介護サービスなどに頼りながら、できるだけ“楽しく”行っていきましょう。

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