犬も肩がこる、とよく言われていますが、「犬は肩はこらない」という意見もあります。「犬は肩はこらない」というのは「犬がこるのは肩ではなく首だ」ということのようです。直立二足歩行の人間と四足歩行の犬では、肩まわりの骨や筋肉にも大きな違いがあり、人間の肩こりと同じ筋肉が同じようにこるのではなさそうです。しかし、首と肩は近く、首こりの原因が肩こりの原因にもなるかもしれませんので、本記事では首と肩まわりのこりをまとめて「肩こり」と呼ぶことにします。
犬が肩こりになる原因
犬が肩こりになると言われている原因を5つご紹介します。まずは、肩こりの原因を見つけてから予防や対処をしていく必要があります。
体の構造
犬には鎖骨が無く、前足は筋肉でのみ胴体とつながっています。腕を回したり何かを抱える動きが必要のない犬には鎖骨は必要がなく、逆に鎖骨がないことによって獲物を追いかけるのに必要な、走る時の大きなストライドと柔軟な動き、スピードを手に入れたと考えられています。
また、四足歩行の動物では体の前側に体重の6~7割がかかっています。これらのことから、犬では肩や上腕の筋肉に大きな負担がかかっているのではないかと言われています。
首輪が合っていない
首輪のサイズが合っていなくて首輪がいつも動いてしまって犬が首輪を気にしたり、大き過ぎたり素材によって重い首輪をしていると、首や肩に負担がかることがあるでしょう。首輪を選ぶときのポイントは、次のことをみて選ぶとよいでしょう。
- 太さが丁度良いか
- きつ過ぎないか、ゆる過ぎないか
- 素材は適切か
- 重過ぎないか
小さな子犬を除き、首輪の太さが1㎝以下ですと、細過ぎて犬の首に大き過ぎる衝撃がかかってしまうことがあるでしょう。理想のサイズは、首輪を付けた状態で指が2, 3本入るゆとりが必要です。太過ぎても首の動きが制限されたり重くなったりして、犬の負担になる可能性があります。サイトハウンドなど首が長い犬種で幅の広い首輪を使うことがありますが、その場合には重過ぎないものを選んだり、必要な時だけ幅広の首輪を使うなどの工夫をすると良いでしょう。
きつ過ぎるのはもちろん、首輪がゆる過ぎてもいけません。ゆるくて犬が下を向く度に顎まで落ちてくる首輪は、犬も邪魔に感じるだけではなく、首輪がさるぐつわのようになったりまたは抜けてしまったりと、危険も伴います。理想のサイズは、首輪を付けた状態で指が2, 3本入るゆとりがある程度です。成長に合わせてサイズも変えましょう。
また、革やナイロン、布など、様々な素材の首輪があります。ファッションとしてなのか、散歩用なのか、迷子札や鑑札などをぶら下げるためなのか、また散歩の時だけつけるのか24時間つけているのか、などによって素材やデザインも適した物を選びましょう。
頻繁に見上げる、首を上下に動かす
大好きな飼い主さんを頻繁に見上げる行動も肩こりの原因になります。
見上げるのが負担になっている様子があれば、同じ目線になるようにしゃがんでから声をかけたり、愛犬が飼い主さんを見上げるような位置から名前を呼ばないようにして負担を減らしてあげましょう。また、食事中に下を向くのも、首に負担がかかることがあります。食事用の食器台を用意するのも良いでしょう。
ストレスを感じている
日常的にストレスを抱えていると筋肉が緊張状態になり肩こりを引き起こしやすいかもしれません。この場合のストレスとは、不安や恐怖のことです。突然の大きな音や、慣れない環境、安全だと感じられない環境などがストレスの原因になります。
なるべくストレスの原因を取り除いてあげて、十分にコミュニケーションを取り、不安や恐怖を減らしてあげましょう。
肥満気味
肥満になると、肩や肢に余分な重さがかかりますし体も動かしにくくなって肩こりが起きやすくなるかもしれません。犬種や年齢ごとの理想の体重を維持しましょう。もし愛犬が体重オーバーでしたら、おかしや食事の与えすぎをやめ、計算結果に基づいた量の食べ物だけを与え、適度な運動を取り入れることで健康的な体重を目指してみてはいかがでしょうか。
犬の肩こりの症状
犬が肩こりをすると、痛みや違和感からいつもより動きが鈍くなる場合があるそうです。「歩く速度が遅くなる」「歩幅が狭くなる」「動きづらそうにする」「上を向きづらそう」などの変化が起こることもあります。
ただし、首や肩に痛みをおこす病気もあります。上記のような症状が見られたり、首や肩を触ったり抱っこをすると痛がる場合には、まずは病気がないかを動物病院で診てもらいましょう。何も病気がない場合は、犬専門の整体院やマッサージをしてくれるサロンなどに相談してみるのも良いと思います。
犬の肩こりに効くツボとマッサージ
リラックスさせる
マッサージ前に筋肉の緊張をほぐすためリラックスさせてあげましょう。愛犬が落ち着いた状態のときに呼んであげてマッサージを始めます。
「おすわり」または「ふせ」の姿勢になってもらったり横に寝転んでもらって、初めは優しくなでてあげます。飼い主さんがリラックスすることで、自然とワンちゃんも落ち着けます。ただし、マッサージは食事や運動の直後は避けてください。
指で肩のツボをマッサージ
肩に手を添わせてツボを優しくマッサージします。強く力を込めるのはNGです。
上腕の付け根周辺(下図C)を円を描くように指の腹でツボを押します。ワンちゃんが苦痛に感じていないか様子を見ながら行います。ポイントはとても優しい力で行うことです。肩甲骨周りから腕上部の筋肉をほぐしてあげましょう。
リンパを流すマッサージ
両手で首のあたりを優しく包んでなでていきます。この時も円を描くようなイメージで行い、首の付け根にあるリンパ節に向かって優しくリンパを流すイメージで行います。なるべく暖かい状態の手でなでてあげましょう。全体の血行促進にもつながります。
- 耳の後ろから肩、腕までを優しくストロークする。これを左右6回ずつ行う。
- 肩甲骨の上あたりを人差し指と中指の腹で円を描くようにマッサージ。これも左右6回ずつ行う。
- 次の画像を参考にして「液門・神門・湧泉」のツボを優しく押す。これらはリンパを流すためのツボではありませんが、副交感神経を活発にしてリラックスさせたり血行促進効果が期待できるそうです。液門(えきもん)は薬指と小指の間、神門(しんもん)は手首にある肉球(手根球)の下にあるくぼみ、湧泉(ゆうせん)は一番大きい肉球の中央の下にあるくぼみです。
- 肩から首にかけて皮膚を優しく何か所かに分けて優しく引っ張る。
動画でマッサージの仕方をチェック!
次の動画で獣医師さんがマッサージについてわかりやすく解説しています。肩以外で凝りやすい部位のマッサージの仕方も勉強することができますので、ぜひ見てみてください。
まとめ
犬の肩こりについてご紹介しました。肩こりの原因は、下記のことが考えられます。
- 体の構造
- 首輪が合っていない
- 頻繁に見上げる、首を上下に動かす
- ストレスがある
- 肥満気味
普段と比べて動きづらそうにしていたら、肩こりに悩まされているのかもしれません。肩こりの原因を見つけ出し、改善してあげましょう。ただ、病気によって痛みや体の動かしづらさが生じることもあります。愛犬の体に何か変わったことがある場合には、まず動物病院を受診しましょう。
マッサージは愛犬への癒し効果だけでなく、愛犬とコミュニケーションをとる飼い主さんにとっても大切な時間になります。自宅で簡単にできるマッサージをご紹介したのでぜひ参考にしてみてください。
胃拡張捻転症候群の予防として大型犬の食器をどの高さに置くのが良いかという議論がありますが、これは首や肩のこりとはまた別の話になります。論文もいくつか出ていますが、今のところ食器を高くすることが胃拡張捻転症候群の発生率を下げるという科学的根拠は得られておらず、大型犬や超大型犬でも床においた食器から食べさせることを推奨している人もいます。