老犬になると目やにが増える理由
目やには、どんなに健康な犬でも寝起きやふとした時に出るものです。そして、老犬になると病気でなくても、目やには増える傾向があります。愛犬の目やにが増えると、それが自然のことなのか、病気なのか、分からなくて不安になることもありますよね。ここでは、老犬の目やにが増える理由をご紹介します。
そもそも目やにとは、老廃物の一種で、涙と共に排出された老廃物が目のフチにたまって、水分が抜けて固まったものが目やにになります。起きている時は常に瞬きをして、涙が流れているため、涙と一緒に老廃物は流れ出ていくものです。しかし、寝ている時は瞬きをしたり、涙を流すことがないので、目のフチに老廃物が溜まって目やにが出来ます。
老化による睡眠時間の増加
老犬になると、寝ている時間が長くなるため、自然と瞬きや涙を流すことが減少し、目やにが出来やすくなります。また、寝たきりになったり意識が低下している場合にも瞬きや体の機能が低下するため目やにが増える傾向があります。亡くなる直前の数日~数か月は目やにが多かったな、と思い当たる方もいらっしゃるでしょう。
老化による新陳代謝や水分量低下など
犬も高齢になると新陳代謝が衰えたり、体内の水分量が低下します。すると、涙が減り、涙に含まれる老廃物の濃度が高くなります。体内の水分量が減ると、涙の水分量も減り、老廃物が固まりやすくなるため、目やにが出来やすくなるということです。また、老化によってまぶたがたるむことも関係するかもしれません。
このように、老犬は老化による変化から目やにが多くなっていきますが、目の状態に異常が見られたり、目やにの量や色などに違和感がある場合、病気の可能性もあるため注意が必要です。
目やにが増えた時に心配する主な病気
- ドライアイ(乾性角結膜炎、KCS)
- 結膜炎
- 角膜炎
- 白内障(ぶどう膜炎、緑内障)
ドライアイ(乾性角結膜炎)
犬のドライアイの多くのものは、乾性角結膜炎(KCS)と呼ばれるものです。通常、目は涙で覆われていて、この涙が目の乾燥を防ぎ、外部からの刺激や細菌感染などから目を守っています。しかし、KCSになると涙の量が減少して角膜や結膜で炎症が起こります。
KCSになると、不快感や痛みから目をショボショボさせたり、目を擦ったり、炎症によって目やにが増えたり、白目が充血したりします。治療をしなければ悪化する一方となるだけではなく、早めに治療を開始しないと角膜にひどい損傷を起こしたり治療がとても難しくなってしまうので、上記のような症状が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
KCSは老犬でなくても中年齢以降の犬で多く見られ、またシーズーやキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、パグなどで特に多く見られます。
結膜炎
KCS以外でも結膜炎を起こすことがあります。結膜炎とは、まぶたの内側のピンク色の部分と白目の表面を覆っている結膜が炎症を起こしている状態です。犬の結膜炎には、ウイルスや細菌感染による『感染性結膜炎』と、アレルギーや、目に入った異物が刺激となったり、なんらかの理由で結膜に傷が出来てしまった結果などから結膜炎になる『非感染性結膜炎』の2つのタイプがあります。
結膜炎というと『うつる』と心配になるかもしれませんが、犬の結膜炎の多くが非感染性結膜炎で、他の犬にうつることがないものです。ただし、どちらのタイプかは動物病院で検査をして調べる必要があります。また、結膜炎は原因によっては軽度であれば自然治癒する場合もありますが、自然治癒せず重症化すれば、なかなか治らない傷となったり失明の危険もある病気です。
角膜炎
角膜炎とは、黒目の部分の表面を覆っている角膜に炎症を起こしてしまっている状態。目に異物が入ったり、何かにぶつかって角膜に傷が付いたり、目を強く擦すったりして角膜に傷が付いて起きる「外傷性角膜炎」とアレルギーや感染症、緑内障、結膜炎などから起きる「非外傷性角膜炎」があります。
シーズーやフレブル、チワワといった鼻が短く目が大きな犬種は目をぶつけやすいため、外傷性角膜炎になりやすいといわれています。
白内障
白内障とは、目の中の水晶体の一部や全体が白く濁り、視力が低下する病気です。原因は様々で、遺伝や加齢が大きな要因とされています。老犬ではとても多く見られます。初期の段階では、日常生活に問題もなく、目が白くなっていることに飼い主さんが気付くこともほとんどありませんが、進行すると失明の恐れもあります。
確実な予防法はなく、一度白くなった水晶体を元に戻すことはできませんが、早期発見をすれば点眼薬によって多少症状の進行を遅らせることが出来ます。しかし、根本的な治療には手術が必要となります。愛犬が老犬になり、目が白くなってきた、暗いところで動きたがらなくなった、物にぶつかりやすくなったといった様子が見られたら、早めに受診しましょう。
白内障だけでは目やにが増える原因とはなりませんが、犬では白内障が進行するとぶどう膜炎や緑内障を起こすことがあります。ぶどう膜炎や緑内障を起こすと、目やにが出たり犬自身が痛みを感じたりします。
老犬の目やにを見分けるポイント
生理的目やに
目やにが少量で「白」「黒」「グレー」「茶色」であれば異常はありません。黒い目やにに驚く飼い主さんもいると思いますが、犬の目やには老廃物やゴミなどが混ざると黒っぽくなったり、茶色くなることがあります。老犬になって増えやすくなる目やにも、生理的なものであれば心配はいりません。
異常な目やに
目が開かないほどの大量の目やにが出ていたり、「黄色」「緑色」の目やにが出た時は注意が必要です。黄色や緑色の目やにはまた、ベタベタしています。目やにを拭いてもすぐにまた目やにが出たり、涙も多い、目の充血が見られる、目やにが臭い、といった場合も、目になんらかの異常があることが考えられます。
老犬の目やにの取り方とケア方法
目やにの取り方
正常な目やにであっても、放置すると雑菌が繁殖して、それが結膜炎や目の病気の原因になってしまうこともあります。特に、老犬は目やにが出やすいので、こまめにケアしてあげる必要があります。犬の目に目やにが出ていたら、コットンやガーゼなどで優しく拭き取ってあげましょう。
ティッシュは、繊維が荒く、目を擦ると目を傷付けてしまう恐れがあるためなるべく使わない方が良いと言われますが、目の周りの皮膚だけを拭くのでしたらティッシュでも大丈夫です。ただし、ティッシュが目に当たらないようにしましょう。綿棒を使う場合もありますが、綿棒のような細いものが目に近付くと、怖がって嫌がる犬もいますし、目を突いてしまっては危険です。慣れない方や犬が動く場合は、綿棒の使用も避けた方が無難です。
目やにが硬く固まっている時の取り方
目やにが乾いて硬くなってしまっている場合は、ぬるま湯に浸けたコットンやガーゼをしばらく当てて、ふやかしてから取るようにしましょう。濡らした指先をあてても良いでしょう。強く押し当てたり、ゴシゴシと擦らないように。拭き取った後は、乾いたコットンで残った水分もしっかり拭き取りましょう。目元を湿ったままにしておくと、雑菌が繁殖しやすくなったり、涙やけが起きる原因になります。
目やにが目の中にある時の取り方
目やにが目の中の眼球の上にある場合は、無理して取ろうとせずに、瞬きや涙で自然と目のフチに出てくるまで待つか、犬用の目薬で洗い流してあげましょう。
目に異常がなければ、目は涙で覆われているため、目の中に目やにがあっても、痛がることはないでしょう。また、涙には自然に目やにやゴミを流す作用もあるので、無理に目やにを取ろうとして眼球を傷つけてしまうよりも、自然に出てくるのを待つ方が良いです。
その他のケア
目やには老廃物の蓄積によって出来ます。そのため、生活環境やドッグフードの質によって増えることもあるそうです。愛犬の過ごす部屋は埃やゴミが溜まらないように、日頃から掃除をこまめに行いましょう。また、年齢による体調の変化から、これまで食べていたドッグフードが合わなくなることもあるかもしれません。
何か体に異常や変化が現れたら、まずは動物病院を受診して治療すべき病気がないかをチェックしてもらいましょう。その上で、生活環境や食生活をできるだけ整えてあげましょう。老犬には老犬用のフードを選び、愛犬に合ったフードを与えるようにしましょう。フードをふやかして与えれば、水分補給にもなり、老廃物の排出を促す効果も期待できます。老犬は体内の水分量が減少するので、より積極的に水分補給をすることが勧められます。
老犬で異常な目やにがある時の対処方法
老犬の目やにが出る原因は様々ですが、目になんらかの疾患があった場合、多くは治療に目薬を使います。薬局などで犬用の目薬が売られている場合も稀にあるかもしれませんが、自己判断で使うのはやめましょう。目の病気は、大変な痛みや痒みを伴ったり、放置すると治らない傷となったり失明する危険もありますので、異常な目やにや目が赤いなどの異常が見られた場合は、自己判断したり人間の薬を使ったりせずに、早めに動物病院を受診して、適切な治療を行いましょう。
まとめ
いかがだったでしょう?可愛い愛犬の目に出る目やに。その目やにが増えると心配になる飼い主さんも多くいますね。ですが、歳とともに目やにが増えることは老犬にはよくあることです。目やにが出ていても、目やにの色や目の状態が正常な場合は、優しく目やにを拭き取るなど、必要なケアをしてあげてくださいね。
しかし、ドライアイや結膜炎といった疾患が疑われる異常な目やにが出た場合は、注意が必要です。目の疾患は、時に視力の低下や失明といった、犬の生活に大きな影響を与えることもありますし、そこまでの状態になってしまった場合、犬は相当の痛みを感じてきたことになります。
目には異常のない生理的な目やになのか、なんらかの異常や疾患による目やになのか、日頃から愛犬の目や目やにの様子をよく観察して、異常が見られた場合は、早めに動物病院に連れて行ってくださいね。