犬を放置するメリットとデメリット
大好きな愛犬とは、いつどんな時も一緒に居たいと思ってしまう飼い主さんも少なくないでしょう。しかし現実的に考えると、日中は仕事もありますし、家に帰ってからは家事などの自分の用事があることが多く、24時間365日ずっと構ってあげるということはできません。
また、構い過ぎてしまうと「どんな時でも飼い主さんは自分を優先してくれる」と犬も勘違いしてしまい、結果的に自己中心的でわがままな性格になってしまったり、上下関係が逆転してしまう恐れもあります。
さらに甘えんぼうに育ってしまった場合、エスカレートしてしまうと、飼い主さんと離れると極度の不安に襲われる『分離不安症』の症状が発症してしまう可能性が高くなるため、こちらも注意が必要です。
このように、健康面・しつけの面共に構い過ぎてしまうとデメリットが生じる点ももちろん重要ですが、人間も「1人になりたい」と思うことがあるように、犬にもまた1人でゆっくり過ごしたいと思う瞬間があります。犬の感情を理解し、尊重してあげる事も大切です。
監修ドッグトレーナーによる補足
分離不安症は以前から多かったのですが、此度のコロナにより、飼い主さんの在宅ワークやお子様の休校が続き、一気に増えている印象です。
飼い主さんの後を追うことはもちろんのこと、見えなくなると鳴いたり、ドアを引っかいたりといった問題が表面化しています。日頃から愛犬との距離感に気をつけることは重要です。
犬を放置するべきタイミングとは?
犬が1人で過ごしたいときには放っておいてあげる事が大切だと話がありましたが、愛犬がいつ1人になりたいかを知ることは簡単ではありません。そこで、どのようなタイミングに放置して欲しいと感じているのか、また放置するべきなのかをご紹介します。
1.寝ているとき
まずは寝ているときです。もしも自分が寝ているときにたたき起こされたり、ちょっかいを出されて無理矢理起きなければいけない状況に出くわしたとき、良い気分ではありませんよね。それは犬も同じです。
特に犬は浅い睡眠を繰り返しているため、熟睡するということは極めて珍しいとされています。このようにせっかく熟睡しているタイミングで構われてしまうと、大好きな飼い主さん相手でも「今はやめてよ」と思ってしまいます。
睡眠を妨害する行為は愛犬の健康に悪影響を与えてしまうこともありますので、寝ていたり1人で休んでいる時は、極力放置してあげるようにしましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
飼い主さんが愛犬から噛まれるシチュエーションの一つが、まさに“愛犬が寝ている時”です。寝ているときに触ると噛まれた、互いに寝ていて寝返りをしたときに愛犬に当たって噛まれたというもの。
怖がりな性格の犬ほど噛みやすい傾向にありますが、怖がりな子は起きている間中周りの気配をずっと気にして過ごしているので、せめて寝ているときだけでもゆっくりさせてあげましょう。睡眠不足は問題行動も増え健康にも害をもたらします。
2.食事中
また食事中も構ってはいけないタイミングの代表例です。犬にとって食事は命に関わる大切なイベントです。野性時代には食べられるときに食べておかなければいけない、という気持ちで生活していたため、今もその名残があるとされています。
そのため、個体差はあるものの、愛犬の食事中に撫でてしまったり、構ってしまうと「自分の食べ物が盗られる」と勘違いし、防衛本能が働いてしまうことがあります。すると攻撃的な行動をとる可能性も考えられるため、犬と飼い主の関係を考えると良い影響を与えるとは考えられません。
この行為を何度も繰り返してしまうと、飼い主という立場から「食事を盗もうとする敵」と見なされてしまうこともあるため、愛犬が食事を食べている間はそっとしておいてあげましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
もしも既に食べ物を守ろうとし始めている場合には、器には半分ほどの量を入れておいて、食べている間に少し離れた場所(愛犬が少しだけ気にする程度の距離)から器に向かって残りのご飯を投げるのも一つです。
そうすることで、“取ろうとする人”から“与える人”に徐々に変わり、守りにくくなっていきます。
3.外出する直前
自分が外出する時、大げさに撫でてしまったり、「いってくるねー!」「お留守番しててね」と声をかけてしまうという飼い主さんは多いでしょう。しかし、これも愛犬を不安にさせてしまう大きな原因の1つとなります。
特にこの行為を習慣化させてしまうと、「今から飼い主さんはいなくなる」という認識を強く持ってしまうため、大きな不安を煽ってしまいます。その結果、分離不安症を引き起こしてしまったり、鳴き続けるなどの問題行為に発展してしまうことがあります。
これは外出直前だけではなく、帰宅直後も同じです。帰宅直後に「よく頑張ったねー!」と大げさに構ってしまうと、「飼い主さんが外出することは大事である」と認識してしまい、それ以降外出時に大きな不安の原因となり得るのです。
監修ドッグトレーナーによる補足
外出、帰宅時に相手をすることは分離不安を助長させる可能性があります。もちろん飼い主心理として相手をしたくなる気持ちは分かりますが、外出時に鳴き続ける場合は別の方法で対処してあげましょう。
知育玩具におやつを入れて、食べている間にさっと出たり、帰宅時に興奮している場合は家事などを優先して落ち着いた頃に相手をしてあげてくださいね。
犬の放置は「悪い事をした時」に効果的!
上記で紹介したように、寝ているときや食事中など愛犬が何かに没頭している最中は無理に構ってはいけません。また余計な不安を煽ってしまう外出時の不必要な構いも悪い影響を与えてしまうことに繋がります。
この「放置」という行為ですが、実はしつけにも効果的であることをご存知でしたか?例えば飼い主さんに対してハウスから出してもらおうと吠えたり、愛犬がイタズラをしてしまった際にも有効です。犬が要求して吠えているときに「だめでしょ!」などと注意しても聞く耳を持たないか、しばらくしてから再び吠え始めることがほとんどです。それよりもしっかりと無視をして一切構わないほうが犬に伝わりやすく効果を得られやすいのです。また、犬がイタズラをする原因の一つには、「飼い主に構って欲しい」という心理から起こるものもあり、こちらの様子を見ながらしている場合はその可能性が高いです。ここでも「ダメでしょ」と叱ってしまうと、怒り方によっては「飼い主さんが構ってくれた」と勘違いしてしまう子もいます。
そこで、「構って欲しい」と思っている犬に対して無視をしたり、その場から離れることで、「これをしたら飼い主さんが構ってくれなくなってしまった」という考えに結びつきます。その結果、いたずらに対する対処法として有効となるのです。
しかし、この対処法はタイミングと放置時間が重要なキーポイントになります。
犬を放置するタイミング
イタズラをした直後、片付けもせずに放置してしまうと、このイタズラ自体が悪い事だと認識させることができません。そのため、黙って片付けた後後(遊びにならないように注意が必要)というタイミングで放置をすることが重要です。
犬を放置する時間
放置時間は短すぎても長すぎても効果が出ません。短すぎてしまうと無視されている実感が湧きませんし、長すぎてしまうと余計な不安を煽ってしまいます。そのため、適切な放置時間は15~30分程度でしょう。愛犬の様子を伺いながら放置時間を前後させると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。犬にも1人になりたいと思う瞬間はもちろんあります。そこで無理に構ってしまうと飼い主と犬との信頼関係を壊しかねません。ぜひ今回ご紹介した3つのタイミング、そして1つのしつけ方法を覚えておきましょう。