犬がトイレを失敗するようになった原因
それまで問題なくトイレができていた犬が、ある時から失敗し始める背景には様々な理由が考えられます。主に、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下、病気や体調不良、精神的なストレスや環境の変化、そしてしつけ上の問題などが挙げられます。
加齢による筋力・認知の低下
犬は一般に、小型犬や中型犬で7〜9歳頃、大型犬で5〜6歳頃からシニア期に入ります。年齢が進むと筋力や関節の衰えにより動きが鈍くなり、トイレまで間に合わなくなる場合があります。また、認知機能が衰えるとトイレの場所を忘れ、慣れた環境でも迷うことがあります。
病気やホルモン異常の影響
犬のトイレの失敗は、膀胱炎や尿路結石、腎臓病、糖尿病など身体的疾患の症状として現れることがあります。特に、排尿回数や尿量が急に増えたり減ったりする場合は要注意です。
ほかにも、ホルモン疾患(クッシング症候群、副腎皮質機能亢進症)や薬剤の副作用(ステロイド剤や利尿薬など)、避妊後の雌犬の尿漏れなどが原因であることもあります。
環境の変化によるストレス
犬は環境の変化に敏感なため、引っ越しや部屋の模様替え、家族構成の変化、新しいペットの加入、留守番時間の延長などによってストレスを感じ、トイレの失敗を起こすことがあります。騒音(雷や工事音)など一過性の刺激も一因です。
トイレの環境に不満を感じている(使いにくい、不衛生)
トイレが汚れている場合や、トレーが狭くて使いにくい場合、設置場所が騒がしい場所である場合など、犬がトイレ環境に不満を感じると、別の場所で排泄してしまうことがあります。
特に衛生面は重要で、シーツが排泄後も長時間交換されない場合は使用を避ける傾向が強まります。
マーキングしている
去勢していない雄犬を中心に、マーキングとして家具や壁などに排尿する場合があります。マーキングは新しい家具や来客後など、犬が縄張りを主張したい状況で頻発します。また、雌犬や去勢済みの雄犬でもマーキング行動をとる場合があります。
誤ったしつけによる影響
排泄時に強く叱られたり、鼻を排泄物に近づけられたりすると、犬は排泄自体を「悪いこと」と誤解します。その結果、飼い主が見ていない場所で隠れて排泄する行動をとるようになることがあります。
また、一度できていたトイレでも、継続的な成功体験が途切れることでトイレ場所を正しく認識できなくなるケースもあります。
飼い主の注意を引くため
犬が退屈している時や、飼い主とのコミュニケーション不足を感じている時に、排泄することで飼い主の関心を引こうとすることがあります。一度でもその行動に対して飼い主が慌てて反応すると、犬はそれを「成功体験」として学習してしまうため、注意が必要です。
犬がトイレを失敗したときに確認すべきポイント
犬がトイレを失敗した際は、問題の原因を特定するために、まず冷静に状況を把握しましょう。犬の行動や排泄の状態を正しく観察・記録することで、原因に合った適切な対応につなげられます。特に以下のポイントを確認してください。
排泄のタイミングや頻度
失敗が起きた時間帯や状況を確認します。「朝起きた直後」「留守番中」「遊んだ直後」など、特定のパターンが見えてくる場合があります。また、排尿回数や排尿間隔に変化がないかも記録しましょう。
尿の量や色・臭い
排尿の量が多すぎる、逆に少なすぎるなどの異常や、色の濃さや臭いが普段と異なる場合は、病気が原因の可能性があります。特に血尿や濃い褐色尿、異常な臭いがする場合は早めの動物病院の受診が必要です。
水を飲む量の変化
飲水量が急に増えたり減ったりする場合も注意が必要です。特に犬の飲水量が1日に体重1kgあたり100mlを超える状態が続く場合は、病気の可能性がありますので記録しておきましょう。
排泄時の犬の様子や仕草
排尿時に犬が落ち着きなく何度もトイレに行く、排尿姿勢を取るのに尿が出ない、痛そうな鳴き声をあげるなど、普段とは異なる仕草が見られるか観察してください。特にこうした行動は、病気や痛みなど身体的な問題を抱えている可能性を示しています。
トイレ周辺の環境
トイレの設置場所に最近変化があったか、トイレシーツの種類を変えたか、また清潔な状態を保てているかを確認します。さらに、トイレ周辺の騒音、温度、出入りの多さなど犬が落ち着いて排泄できない状況になっていないか見直しましょう。
排泄を失敗した直前の出来事
失敗が起きた直前に、雷が鳴った、来客があった、引っ越しや家具の入れ替えなど、犬にとってストレスや興奮の原因となるような出来事がなかったかを洗い出して記録しましょう。意外な原因が見つかることもあります。
犬がトイレを失敗するようになった場合の対処法
犬がトイレを急に失敗するようになった場合、適切な対処法は原因によって異なります。まず、病気や老化など身体的な原因がないかを確認したうえで、それぞれのケースに合わせて以下の対応を行いましょう。
トイレや周辺の環境を見直す
トイレの失敗が設置場所の使いにくさや衛生状態に起因する場合は、トイレ環境を見直しましょう。
トイレの場所は静かで落ち着けるところに設置し、トイレトレーは犬が無理なく方向転換できる広さのものに変更します。トイレシーツは汚れたらすぐ交換するなど清潔さを保つことも大切です。
もし環境の変化や刺激により犬がストレスを感じている場合は、安心できる環境づくりを行いましょう。
使い慣れたおもちゃや寝具を身近に置いたり、静かな居場所を用意したりして、犬が落ち着ける空間を確保します。また、飼い主とのコミュニケーションや適度な運動を増やすこともストレス解消に効果的です。
マーキング対策をする
マーキング行動が原因でトイレの失敗が増えている場合は、専用の対策をおこなましょう。
たとえば、犬が過ごすエリアを限定して、新しい家具へのマーキングを防いだり、一時的にマーキングを防ぐアイテムを使用したりして対処します。
去勢手術を行うことでマーキング行動を軽減できる場合もありますが、獣医師と相談の上判断しましょう。
失敗後は徹底的に匂いを消す
一度排泄してしまった場所には臭いが残りやすいため、犬は繰り返し同じ場所で排泄することがあります。
再発を防ぐためには、酵素系のペット専用消臭クリーナーなどを使い、臭いが完全になくなるまで徹底的に清掃してください。アンモニア系の洗剤は逆効果となるため避けましょう。
「体調の異変」に気づいたらすぐに動物病院を受診する
排尿時に痛みを伴う、尿の色や臭いが異常、極端な頻尿や尿量の減少など、身体の不調が考えられる場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。
特に、雄犬が排尿姿勢を何度も取るのに尿が出ない場合や、血尿、強い痛みを示す場合は緊急性が高いため、迷わず獣医師の診察を受けてください。
犬のトイレ失敗を防ぐしつけ・トレーニング方法
犬のトイレの失敗を防ぐには、正しい行動を繰り返し成功させ、定着させることが大切です。犬の習性を理解し、焦らずに基本のトイレトレーニングを再度行いましょう。特に重要なポイントは以下の通りです。
1、排泄のタイミングでトイレに誘導する
犬がトイレをしたくなるタイミング(起床後、食事後、水を飲んだ後、遊んだ後など)を把握し、適切なタイミングでトイレに誘導しましょう。毎日決まった時間に排泄を促すことで犬は習慣として覚えやすくなります。
2、トイレ誘導して排泄の合図する
トイレに誘導する際は、家族全員が同じ合図や掛け声を使うようにします。「ワンツー」や「シーシー」など一貫した合図を用いることで、犬が排泄行動と結びつけやすくなります。
3、成功したら「十分に褒める」
犬がトイレで正しく排泄できた時は、即座に褒めてあげましょう。おやつやおもちゃを使ったご褒美を与えることで「ここで排泄すると良いことがある」と認識し、成功体験を積み重ねていきます。
その他のポイント
失敗場合は叱らず冷静に対応する
トイレを失敗した場合でも、犬を叱ることは逆効果となります。叱責や罰を与えると犬が排泄自体を避けるようになったり、飼い主を恐れて隠れて排泄することがあります。失敗した際は無言で淡々と片付け、成功した時に褒める方法に徹してください。
トイレを覚えるまでは行動範囲を制限する
犬がトイレを覚えるまでは、家の中で自由に行動できる範囲を限定しましょう。サークルやペットゲートを活用して範囲を制限することで、犬が迷わずにトイレの場所を認識しやすくなり、失敗を防ぐことにつながります。
家族でトレーニング方法を統一する
家族で対応がばらばらになると犬が混乱してしまいます。排泄場所の指定方法、誘導の仕方、褒め方などを事前に家族間で共有し、一貫性のあるトレーニングを継続することが成功の鍵です。
犬のトイレトレーニングに役立つアイテム
トイレトレーニングを効率よく進めるためには、犬が排泄しやすくなる便利なアイテムを取り入れることが効果的です。以下に特に役立つアイテムを紹介します。
大きめのトイレトレー
トイレトレーは犬が方向転換でき、前足がトレーからはみ出さないサイズを選びます。雄犬の場合は、壁付きのL字型や縁が高いトレーを選ぶとマーキング対策としても有効です。
高吸収・滑り止め付きトイレシーツ
吸収力が高く、表面がサラッと乾くタイプのトイレシーツを選びます。犬が乗ったときにシーツがずれにくいように裏面に滑り止め加工が施されている製品を使用すると、犬が安心してトイレを使用できます。
ペット専用の消臭・除菌クリーナー
犬が失敗した場所の臭いを完全に除去するためには、酵素系の消臭クリーナーがおすすめです。アンモニア臭を元から分解し、臭いの再発を防ぎます。素材に応じて次亜塩素酸水を利用する場合は、製品表示を確認して、変色や腐食の恐れがないかを事前に確認しましょう。
サークル・ゲート
トイレの場所を覚えるまでは、犬の行動範囲を限定するためにサークルやゲートを活用します。犬が落ち着いて排泄に集中できる空間を作ることができ、トイレの失敗を防ぐのに役立ちます。
トイレ用のしつけスプレー
犬が排泄場所を認識しやすくなるように、排泄を促す効果のあるトイレ専用のしつけスプレーを利用することもできます。トイレシーツに軽く吹きかけることで、犬が自然とトイレに誘導されやすくなります。
犬のトイレトレーニングを行う際の注意点
犬のトイレトレーニングを成功させるためには、飼い主側の接し方や対応にも注意が必要です。以下のポイントを押さえて、焦らず根気強くトレーニングを進めましょう。
焦らず犬のペースに合わせて進める
犬が再びトイレを覚えるには、ある程度の時間がかかることがあります。失敗しても焦らず、根気強く犬のペースに寄り添ってあげることが大切です。飼い主が焦ってしまうと、犬にストレスが伝わり失敗が増える原因になります。
一貫したルールを家族で共有する
トイレトレーニングは、家族全員で同じ方法、同じルールで一貫性を持って取り組みましょう。異なる対応をすると犬が混乱し、トレーニングの効果が薄れます。
成功体験を重ねることを優先する
トイレトレーニングは失敗させないことよりも、「成功させること」を意識しましょう。成功したときにしっかりと褒めることで犬の自信が高まり、トイレの場所を覚えやすくなります。
叱る行動は絶対に避ける
犬がトイレを失敗してしまった場合でも、決して叱らないようにしましょう。犬は叱られた理由を正しく理解できず、飼い主への恐怖心や不信感につながります。失敗したら黙って片付け、成功した時だけ褒めるように徹しましょう。
短時間のトレーニングを繰り返す
一回のトレーニングを長くするよりも、短時間でこまめに繰り返す方が効果的です。犬が飽きたり疲れたりしないように配慮し、無理なく習慣化させることを目指しましょう。
まとめ
犬がトイレを急に失敗し始める背景には、加齢や病気による身体機能の変化、環境変化に伴うストレス、トイレ環境の問題、しつけの誤りなどさまざまな原因があります。愛犬がトイレを失敗した際は感情的にならず、排泄時の様子や環境の変化などを冷静に確認することが大切です。
病気が疑われる場合はすぐに動物病院を受診し、問題がしつけやストレスにある場合は、環境を整え直し基本のトイレトレーニングを根気よく行いましょう。成功体験を積み重ねることで、多くの犬が再び正しいトイレ習慣を取り戻せます。