【遊び】犬は1日どれくらい遊べば満足?
動物行動学上の犬の遊び時間の目安
動物行動学上では、野生の犬が群れの中で他の犬と遊ぶ時間は1日の5~10%だそうです。それをペットの犬に換算してみると1日1時間位ということになります。
これに対して日本ヒルズ・コルゲート株式会社・ペットウェルが行なった〝ペットと遊ぶ時間はどれくらいか〟というアンケート結果では、犬の場合1時間以上という答えが52.4%という結果がでており、数字的には日本の飼い犬は満足していることになります。
それぞれの犬に合った遊び時間を
動物行動学上の適正な時間を理解した上で、愛犬の種類・年齢・性格を考慮してその犬に合った遊び時間や内容を考えましょう。
遊びの時間には散歩も含まれており、遊びと理解するよりも飼い主とのコミュニケーションと考えた方がよさそうです。若く元気な犬は1時間では物足りないかもしれないし、高齢犬なら室内でまったりしている時にマッサージ(犬がマッサージ好きなら)の時間を取り入れるなど、いろいろなやり方があると思います。
また、日本犬気質の強い性格であまりベタベタと傍にいるよりは一人で過ごしたいタイプの犬もいるでしょうし、逆に牧羊犬やガンドッグの血筋の濃い犬種では、頭を使うゲームっぽい遊びを飼い主と一緒にやることが好きな犬もいます。
それぞれの気質を飼い主が気遣いましょう。
犬が満足する遊びとは?
犬との遊びというと、思い浮かぶのはボール遊びやピーピー鳴るおもちゃ、ひっぱりっこなどでしょうか?また、走らせるためにドッグランへ行く方もいらっしゃるでしょう。
しかしこれらの遊びは人間が与えている遊びだということに気付いて見直してみてください。これらが悪いというのではなく、人はつい遊びの時間まで犬の自由ではなく、人間の気分で遊びを与えて人間が遊びを終わらせるという訓練のような時間にしてしまうことが多いからです。ボールや引っ張りっこなどは人間がわざわざやらせるのではなく、持って来たらちょっと付き合ってあげる程度にすると意外とすぐにやめてしまいます。
ボールは持ってこさせて取り上げる必要はなく、引っ張りっこは飼い主が勝つ必要もありません。
犬が自分で遊ぶのを見守ろう
では、犬を心身ともに満足させるにはどんな遊びをさせればいいのでしょうか?
それはまず、犬を構いすぎないことが基本です。犬は散歩とご飯以外はほとんど寝て過ごすのが基本です。
遊びの時間の中には散歩も含まれるので散歩以外で「さあ、遊ぶぞ!」と身構えることはないのです。散歩以外の時間で大切なのは自由に心安らかに過ごせることです。
犬は社会性の優れた動物なので、家族と隔離されてゲージに閉じ込められたり、一人ぼっちで長時間お留守番させられるのはとてもストレスになります。
危ないものは片づけて自由にした方がかえって落ち着きます。
クッションや犬ベッドを数か所に置いてあげると自分の好きな場所でお昼寝できます。
家族がくつろいでいれば傍に来て甘えたり、ちょっとおもちゃを出して遊んでみたりと犬がリクエストしてきた時だけちょっとかまってあげる程度が犬にとって一番心地よい飼い主との遊び(ふれあい)といえます。
お庭があれば出入り自由にしてあげるとベストです。バッタやトカゲを追いかけたり、穴掘りしたりと上手に遊びを見つけるものです。
【散歩】犬にとって、散歩は大事。けど飼い主が無理しては犬も不幸。
散歩時間も距離も決まった数字はない
遊びの時間の中で最も重要ポイントの散歩ですから、犬にとっても飼い主にとっても理想の形があればぜひ知りたいところですね。
「小型犬などは毎日散歩させなくても大丈夫」とゲージとセットで販売している例を見かけますが、どんな小型犬でも散歩は必要です。排泄と匂い嗅ぎは犬にとって大事な日常の習慣ですから、それをさせないのはストレスにつながります。
しかし小型犬だから15分でいいとか、大型犬だから1時間以上じゃなくては満足しないということではありません。どんなに頑張って散歩しても、飼い主がせかせかしていたり無理をして義務感でイライラしていると犬は感じとってしまうものです。
散歩は犬も飼い主も楽しめるように散歩本来の目的を満たすようにするとうまくいきます。
散歩の目的や意味を見直そう
毎日のお散歩の目的や意味ってなんでしょうか?
朝、フレッシュな空気を吸って外へ出ると楽しみはいっぱいです。道端の草に鼻をくっつけて匂いを嗅いだり、他の犬の匂いはよくよく確かめて分析するでしょう。いつも通りのお散歩コースでも新しい誰かの匂いがしたり、お天気や風の向きによって、敏感な犬の感覚はいろいろな情報を捕まえて脳を刺激しているのです。
季節によっては木の実や果実が落ちていることもあるでしょう。芝生や河川敷などが近所にあれば草の上でごろごろしたり、立ち止まって草や枝を噛んだり、座り込んで休んだりと楽しみは尽きません。
これらを満喫するには散歩を運動と考えるのではなく、散歩は遊びの一つと考えると納得できますね。
犬も飼い主もぶらぶら散歩でリラックス
散歩時間は30分前後を目安に朝夕行くのが基本ですが、上記のようなことを目的に散歩をするには距離よりも安心してゆっくり匂い嗅ぎをしながら歩ける場所を選ぶことが大切です。
車や人通りの多い場所をできるだけ避けてゆっくり歩ける土や草のある場所を探して犬の五感を満たしてあげましょう。
飼い主も「自分がリードして歩かなければ…」とか「犬の行きたい方向へ行ってはいけない」などと考えながら歩くより、一緒にお散歩自体を楽しんだ方が心が豊かに感じるし疲労感や負担も感じないと思います。
【しつけ】楽しい時間にすることが重要
しつけもコミュニケーションのひとつ
人と犬の共存では圧倒的に犬のほうに我慢をさせることが多いように思いますが、家族の中で犬も人も快適に暮らすため、また地域の中で受け入れてもらうためには基本的なしつけは必要だと感じている飼い主がほとんどです。
しかし、ひっくり返して押さえつけたり、大きな音で脅かしたりするようなしつけは犬が幸せになるどころか飼い主と心を通わせる関係にはなれません。災害時のためにクレート訓練をしたり、飛び出さないようにマテを教えるよりも、犬が自分で怖いことや困ったことがあったら飼い主の傍にくっ付いていようと思ってくれるような関係を作ることが大切です。
あまりいろいろなことをやらせる必要はないので遊び感覚でできるようなことをおやつタイムに取り入れて、楽しい時間を作ってあげるなど工夫しましょう。
おやつは工夫次第で脳が活性化!
心理学的にコントラフリーローディング効果といって、犬だけでなく生物全般はただ食べ物をもらうより仕事の報酬としてもらった方が幸福度が高いのだそうです。言い換えれば、頭を使ってその食べ物を手に入れるほうが良いのです。
そうすることで脳が活性化して、覚えも良いのだそうです。その意味からおやつを使ったしつけは効果的だということです。
その場合おやつの量に注意することと、出来ないからといって飼い主が焦ったりイライラしたり、しつこく何度もやらせたりする事のないようにします。あくまでも楽しいコミュニケーションとして行いましょう。
空き箱や紙袋におやつを入れたり、庭のどこかに隠して探したりというのも報酬としての価値があり、犬の満足度につながります。
その楽しみを共有することがお互いの信頼に結びつき、幸せな落ち着いた犬になることが災害時や緊急の場合にも一番必要なことなのです。
まとめ
「遊び・散歩・しつけ」はどれも犬の自主性を尊重して見守ることが一番良いと分かってきています。
一昔前は犬はオオカミの習性をもつということを根底に、飼い主はリーダーにならなければいけないというしつけが主流になってしまいました。
しかし、現在ではすでにいろいろな研究結果から、犬は人間が作り上げてきた歴史の中でオオカミとは全く違う生き物として確立しており、人間に対して上下関係を意識する生き物ではないといわれています。仲間同士でも状況によって頼る個体を選び、極力争い事を避ける性質であることが分かっています。
また人間と同じように左脳で言葉の内容を右脳で言葉の抑揚を感じ、飼い主の喜びや悲しみの声を聴かせると仲間の声と同じように反応し、飼い主の感情も感じているということまで分かってきたのです。
つまり犬と人間は最高のパートナーなのです。犬の習性を尊重し、犬の目線で生活を見直して心の友となるつもりで接していくと、気持ちが楽になるかもしれません。