犬に上下関係はある?しつけの問題点や信頼関係を築くコツ

犬に上下関係はある?しつけの問題点や信頼関係を築くコツ

長い間、犬に上下関係をわからせる必要があると言われてきましたよね。しかし、近年の研究の結果、犬は上下関係を意識していないことがわかってきました。この記事では、上下関係を教えるしつけの問題点と、良好な関係の築き方について紹介します。

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記事の監修

犬の気持ちは行動に現れる。知っていますか?犬が顔を左に向けた時にはストレスを受けている可能性があることを。犬は様々な方法で人に気持ちや考えを伝えているのです。それを受け止めてアドバイスとして活かすことを仕事としております。様々な専門の知識と20,000時間以上の教育実績があなたとその愛犬の生活を助けて豊かに導きます。

犬に上下関係は存在する?

犬に飼い主との上下関係をわからせるべき?

犬には、上下関係を厳しくわからせる必要があると考えられていました。飼い主が上に立つべきというリーダー論、アルファシンドロームの影響です。

犬が自分はリーダーだと勘違いし、噛みつくなどの問題行動を起こすことをアルファシンドロームといいます。アルファシンドロームは、1980年代にアメリカでテリー・ライアンが提唱し、1990年代に日本でも紹介され、しつけの方法として広まりました。

しかしその後、アメリカ動物行動獣医学会(AVSAB)がアルファシンドロームは間違いであると発表しました。テリー・ライアン本人も否定するようになり、犬のしつけに対する考え方が大きく変わったのです。

犬は人や他の犬に対して上下関係を意識していない

そもそも犬は人に対して上下関係を意識していません。犬に厳しく上下関係を教える必要があると考えられた背景には、1980年代に流行したリーダー論アルファシンドロームがあります。

しかし今では、多くの行動学者やドッグトレーナーがアルファシンドロームに否定的です。アルファシンドロームは犬の先祖とされるオオカミの群れを研究し、生まれたリーダー論です。

オオカミの群れはリーダーであるアルファオスが絶対的な権力を持ち、服従させていると考えられていました。

ですが、1999年アメリカの生物学者L.デビッドメックの研究によって「野生のオオカミの群れは互いに協力し合う家族であり上下関係は存在しない」と証明されたのです。犬は人を上下関係ではなく、家族として意識しているのでしょう。

上下関係を教えるしつけでは犬の問題行動は減少しにくい

上下関係を教えるしつけだけでは、問題行動は解決しません。たとえば、警戒心の強い柴犬は食べ物を取られそうになると唸ったりしますよね。

これは犬種の特性で、自分がリーダーだと勘違いしているわけではありません。そのため、上下関係をわからせるしつけでは解決しないでしょう。

問題行動は、さまざまな要因がからみあって起こっていると考えられます。

  • 犬種や性格
  • 幼少期の社会化不足
  • 疾患によるストレス
  • しつけで行動が強化された
  • 飼育環境(寝床、食事、運動、遊びなど)

本来、犬は本能的な要求(寝床、食事、健康、運動、遊びなど)が満たされていれば、問題行動を起こしません。

問題行動の根本的な原因は、犬が不安や恐怖を抱えていることです。上下関係をわからせるよりも犬の特性を理解し、飼育環境を見直してみるとよいでしょう。

犬とは上下関係ではなく信頼関係を築くことが大切

人と犬が暮らすうえで最も大切なのは、信頼関係を築くことです。飼い主さんを信頼していれば犬の問題行動は減り、しつけも簡単にできるからです。

犬が求めている本能的な要求を満たし、安心感を与えてあげる必要があります。

犬は、強いリーダーに従うのではありません。信頼できて安心感を与えてくれる、母のような存在の人に従います。上下関係よりも信頼関係を築くようにしましょう。

監修ドッグトレーナーによる補足

威圧的や暴力的では、関係は破壊されてしまいます。大切なのは犬を「人間の家族」の感覚のように接してあげること。

人間の子供のしつけも叱ってばかりで要求を受け入れてあげなければ関係もおかしくなります。だからといって、おねだりなどの要求を聞きすぎるばかりではわがままに育ってしまいます。何よりバランスが大切です。

犬にしつけで上下関係を厳しく教える問題点

犬にしつけで上下関係を厳しく教える問題点

「犬の食事は飼い主が食べ終わってから」「飼い主より前を歩かせてはいけない」など、人が犬の上に立ち、威圧し服従させる必要があると言われていきました。

しかし、効果がないばかりか信頼を損なうなど問題点も多くあります。

人も犬も楽しくないため嫌な思い出だけが残りやすい

犬に厳しくしつける方法は、犬も人も楽しめずしつけの時間が苦痛でトラウマになります。犬は、恐怖から指示に従うことがあっても人を信頼する気持ちにはなりません。

本来しつけとは、人と犬の絆や信頼関係を強めるコミュニケーション方法の一つです。無理やり従わせるのではなく、犬が楽しんで指示に従うことで効果が期待されます。

不安や恐怖を与えるよりも、できたことを褒めて喜びや自信を与え犬が楽しく従うようにしましょう。

監修ドッグトレーナーによる補足

犬も人も常に楽しんで取り組むこと。win-winの関係でいることが大切です。

これを常に忘れずに実行することができれば、素晴らしい効果が期待されますよ!

犬が人に対して不安や恐怖を抱き信頼関係が築きにくい

上下関係を厳しくわからせるしつけは、犬が飼い主さんに対して不安や恐怖を抱き信頼関係が築きにくくなります。

犬は、不安や恐怖を飼い主さんと関連づけて嫌いな人だと覚えてしまうからです。ひどい場合は、不安や恐怖から飼い主さんに対して唸ったり噛んだりと攻撃的になることも。

犬を強く叱りつけて従わせようとするしつけは、効果がないばかりか犬の問題行動を悪化させます。信頼関係を築くには上下関係をわからせるよりも、犬を安心させてあげることが最も大切です。

犬との信頼関係を築くコツ

犬のしつけのポイント

しつけは、上下関係をわからせるためではなく信頼関係を築くために行いましょう。犬の気持ちを理解し、尊重しながら人との生活のルールやマナーを教える必要があります。

人も犬も楽しく行うことで、犬は人の指示を聞くことが楽しいと理解してくれるでしょう。

犬の気持ちに寄り添いながらできたことをしっかり褒める

犬が正しい行動を取ることができたら、好きなおやつをあげたり、撫でるなど、愛犬が喜んでくれるように褒めましょう。

犬は、この行動をするといいことがあると学習し、何度もくり返すことで習慣になります。「いい子ね」「よくできたね」と褒めるときは自然と笑顔になり、明るい気持ちになるものです。

飼い主さんが楽しく明るい気持ちになると、犬も楽しくなります。そして「飼い主さんの側にいると楽しい、いいことがある」と犬からの信頼も高まります。犬のしつけは、できたことを褒めて楽しく明るい気持ちで行いましょう。

家族全員が一貫したルールを持って犬に教える

家族全員が常に一貫したルールを持って教えることが大切です。一貫したルールがないと犬は混乱して正しい行動がわからなくなるからです。

ソファーで寝そべる犬に、お母さんや子供は「いい子」と撫でてくれるのに、お父さんが「ダメだ」と怒っていると犬は何が正しいのかわかりません。

しつけは、一貫したルールを繰り返し教えることで身につきます。家族でルールを決め、教え方に一貫性を持たせましょう。

飼い主さんの気分で態度をコロコロ変えない

ルールだけでなく、態度や接し方にも一貫性を持たせる必要があります。飼い主さんの気分で態度がコロコロ変わると犬は混乱し不安になるからです。

犬は、飼い主さんを信頼できずに不信感を持ってしまいます。感情的にならず、いつも同じ態度で接するようにしましょう。

感情的になって怒鳴ったり、叩いたりしない

犬との信頼関係を築くためには、感情的になって怒鳴ったり叩くなどの暴力を振るってはいけません。犬はなぜ怒られているのかわからないからです。

怒鳴られたり暴力を振るわれると、恐怖や不安でパニックになり人を信頼できなくなります。

力で抑え込むしつけは、恐怖から逃れるために従うことはあっても犬から積極的に人の指示を聞くようにはなりません。犬が悪いことをしたときは、冷静に「ダメ」や「ノー」と一言で伝えましょう。

監修ドッグトレーナーによる補足

怒鳴ったり暴力を振るう側は「ダメなことを伝えるため」と思っているでしょうが、犬は「特定の状況になると人が怖いこと、痛いことをする」と覚えてしまいます。

犬には何が悪いのか理解できません。またその状況になると自分の身を守るために噛みついたり逃げ出そうすることも。信頼関係は損なわれるばかりなので怒鳴る、暴力を振るうしつけは絶対にNGです。

犬と信頼関係があるか見分ける方法

犬との信頼関係を見分ける方法

犬と暮らす上で大切な信頼関係を愛犬と築けているのか気になりますよね。

では信頼関係があるのかを見分けるには、どのような方法があるのでしょうか。愛犬に信頼されているかチェックしてみましょう。

ゴロンとあお向けになって、おなかを見せてくれる

犬が隣でゴロンとあお向けになって、おなかを見せてくれるのは信頼されている証拠です。やわらかく無防備なおなかは犬の弱点。おなかを見せるときは相手を信頼しリラックスしているときです。

ゴロンとあお向けになって「撫でて」とおなかを見せてくるのは、飼い主さんを信頼し安心している証拠でしょう。

足先や口周りなど体をどこでも触らせてくれる

犬が体のどの部分でも触らせてくれるのは、信頼しているからです。とくに足先や口周りは敏感で触られることを犬は嫌がります。

口や足先を触らせてくれるのであれば、飼い主さんを信頼している証拠です。犬の体を触ることは病気の早期発見にもつながります。日ごろから体を触って、スキンシップの習慣をつけましょう。

一人の時間も落ち着いて過ごせる

飼い主さんが外出中も落ち着いて過ごせているのは、信頼関係が築けている証拠です。本来、犬は群れで生活する動物のため一人になると不安を感じます。

不安から吠えたり騒いだりする場合は、正しい信頼関係が築けていません。飼い主さんと信頼関係が築けている犬は、安心して一人の時間を落ち着いて過ごせるのです。

飼い主さんを見つめるのは「信頼しています」のサイン

信頼関係が深まると、犬は飼い主さんを目で追ったり見つめたりします。犬は、信頼する人とのアイコンタクトで体内のオキシトシンが上昇し幸せな気持ちになるからです。

オキシトシンは、人間の母と子の絆を強めるホルモンと言われ、同じように人と犬との間でも母と子のような絆が生まれます。日ごろから目を見ながら名前を呼んだり指示したり、アイコンタクトをとるようにしましょう。

まとめ

犬とハイタッチ

犬に上下関係を厳しく教えるしつけは必要ありません。新たな問題行動を引き起こすなど、さまざまな問題点があるからです。

犬は、母子のような強い絆で結ばれた信頼関係を求めています。しっかりとした信頼関係が築ければ、飼い主さんの言うことを喜んで聞いてくれて問題行動で困ることもありません。

犬に厳しく上下関係を教え従わせるしつけは、今や時代遅れの古い考え方。しつけは上下関係を教えるよりも犬と信頼関係を築くために楽しく行いましょう。

常識は時代とともに変わるものです。常に新しい情報をキャッチし、知識をアップデートする必要があります。正しいしつけの方法を学び、犬に信頼される飼い主になりましょう。

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