犬に上下関係はある?しつけの問題点や信頼関係を築くコツ

犬に上下関係はある?しつけの問題点や信頼関係を築くコツ

犬に上下関係をわからせる必要があると言われてきましたよね。しかし研究の結果、犬は上下関係を意識していないことがわかってきました。この記事では、上下関係を教えるしつけの問題点と、良好な関係の築き方について紹介します。

犬に上下関係は存在する?

犬に飼い主との上下関係をわからせるべき?

犬には、上下関係を厳しくわからせる必要があると考えられていました。飼い主が上に立つべきというリーダー論、アルファシンドロームの影響です。

犬が自分はリーダーだと勘違いし、かみつくなどの問題行動を起こすことをアルファシンドロームといいます。アルファシンドロームは、1980年代にアメリカでテリー・ライアンが提唱し、1990年代に日本でも紹介され、しつけの方法として広まりました。

しかしその後、アメリカ動物行動獣医学会(AVSAB)がアルファシンドロームは間違いであると発表しました。テリー・ライアン本人も否定するようになり、犬のしつけに対する考え方が大きく変わったのです。

犬は人や他の犬に対して上下関係を意識していない

そもそも犬は人に対して上下関係を意識していません。犬に厳しく上下関係を教える必要があると考えられた背景には、1980年代に流行したリーダー論アルファシンドロームがあります。

しかし今では、多くの行動学者やドッグトレーナーがアルファシンドロームに否定的です。アルファシンドロームは犬の先祖とされるオオカミの群れを研究し、生まれたリーダー論です。

オオカミの群れはリーダーであるアルファオスが絶対的な権力を持ち、服従させていると考えられていました。

ですが、1999年アメリカの生物学者L.デビッドメックの研究によって「野生のオオカミの群れは互いに協力し合う家族であり上下関係は存在しない」と証明されたのです。犬は人を上下関係ではなく、家族として意識しているのでしょう。

上下関係を教えるしつけでは犬の問題行動は減少しにくい

上下関係を教えるしつけだけでは、問題行動は解決しません。たとえば、警戒心の強い柴犬は食べ物を取られそうになるとうなったりしますよね。

これは犬種の特性で、自分がリーダーだと勘違いしているわけではありません。そのため、上下関係をわからせるしつけでは解決しないでしょう

問題行動は、さまざまな要因がからみあって起こっています。

  • 犬種や性格
  • 幼少期の社会化不足
  • 疾患によるストレス
  • しつけで行動が強化された
  • 飼育環境(寝床、食事、運動、遊びなど)

このような要因が、考えられます。本来、犬は本能的な要求(寝床、食事、健康、運動、遊びなど)が満たされていれば、問題行動を起こしません。

問題行動の根本的な原因は、犬が不安や恐怖を抱えていることです。上下関係をわからせるよりも、犬の特性を理解し、飼育環境を見直してみるとよいでしょう。

犬とは上下関係ではなく信頼関係を築くことが大切

人と犬が暮らすうえで最も大切なのは、信頼関係を築くことです。飼い主さんを信頼していれば、犬の問題行動は減り、しつけも簡単にできるからです。

犬が求めている本能的な要求を満たし、安心感を与えてあげる必要があります。犬は強いリーダーに、従うのではありません。信頼できて安心感を与えてくれる、母のような存在の人に従います。上下関係よりも、信頼関係を築くようにしましょう。

犬にしつけで上下関係を厳しく教える問題点

犬にしつけで上下関係を厳しく教える問題点

「犬の食事は、飼い主が食べ終わってから」「飼い主より前を歩かせてはいけない」このように人が犬の上に立ち、威圧し服従させる必要があると言われていきました。しかし効果がないばかりか、信頼を損なうなど問題点も多くあります。

人も犬も楽しくないため嫌な思い出だけが残りやすい

犬に厳しくしつける方法は犬も人も楽しめず、しつけの時間が苦痛でトラウマになります。犬は恐怖から指示に従うことがあっても、人を信頼する気持ちにはなりません。

本来、しつけとは人と犬の絆や信頼関係を強めるコミュニケーション方法の一つです。無理やり従わせるような方法ではなく、犬が楽しんで指示に従うことで、効果が期待されます。

不安や恐怖を与えるよりも、できたことをほめて喜びや自信を与え犬が楽しく従うようにしましょう。

犬が人に対して不安や恐怖を抱き信頼関係が築きにくい

上下関係を厳しくわからせるしつけは、犬が飼い主さんに対して不安や恐怖を抱き信頼関係が築きにくくなります。

犬は不安や恐怖を飼い主さんと関連づけ、嫌いな人だと覚えてしまうからです。ひどい場合は不安や恐怖から飼い主さんに対して、うなったりかんだり攻撃的になることも。

犬を強くしかりつけ言うことをきかせるしつけは、効果がないばかりか犬の問題行動を悪化させます。信頼関係を築くには上下関係をわからせるよりも、犬を安心させてあげる必要があります。

犬との信頼関係を築くコツ

犬のしつけのポイント

しつけは上下関係をわからせるためではなく、信頼関係を築くために行いましょう。犬の気持ちを理解し、尊重しながら人との生活のルールやマナーを褒めて教える必要があります。

人も犬も楽しく行うことで、犬は人の指示を聞くことが楽しくなります。

犬の気持ちに寄り添いながらできたことをしっかり褒める

犬が正しい行動をできたときは、褒めてオヤツをあげたり、なでたり犬が喜ぶことをしてあげましょう。

犬はこの行動をするといいことがあると学習し、何度もくり返し教えることで習慣になります。「いいこね」「よくできたね」と褒めるときは、自然と笑顔になり明るい気持ちになるものです。

飼い主さんが楽しく明るい気持ちになると、犬も楽しくなります。そして「飼い主さんの側にいると楽しい、いいことがある」と犬からの信頼が高まります。犬のしつけは、できたことを褒めて楽しく明るい気持ちで行いましょう。

家族全員が一貫したルールを持って犬に教える

家族全員が常に一貫したルールを持って教えることが大切です。一貫したルールがないと犬は混乱して、正しい行動がわからなくなるからです。

ソファーで寝そべる犬に、お母さんや子供は「いいこ」となでてくれるのに、お父さんが「ダメだ」と怒っていると、犬はなにが正しいのかわかりません。

しつけは一貫したルールを繰り返し教えることで、身につきます。家族でルールを決め、教え方に一貫性を持たせましょう。

飼い主さんの気分で態度をコロコロ変えない

ルールだけではなく、態度や接し方にも一貫性を持たせる必要があります。飼い主さんの気分で態度がコロコロ変わると、犬は混乱し不安になるからです。

犬は飼い主さんを信頼できずに、不信感を持ってしまいます。感情的にならず、いつも同じ態度で接するようにしましょう。

感情的になってどなったり、たたいたりしない

犬との信頼関係を築くためには、感情的になってどなったり暴力をふるったりしてはいけません。犬はなぜ怒られているのか、わからないからです。

どなられたり暴力を振るわれたりすると、恐怖や不安でパニックになり、人を信頼できなくなります。

力で抑え込むしつけは、恐怖から逃れるために従うことはあっても、犬から積極的に人の指示を聞くようにはなりません。犬が悪いことをしたときは、冷静にひとこと「ダメ」や「No」を伝えましょう。

犬と信頼関係があるか見分ける方法

犬との信頼関係を見分ける方法

犬と暮らすうえで大切な信頼関係ですが、愛犬と信頼関係が築けているのか気になりますよね。信頼関係があるか見分けるには、どのような方法があるのでしょうか。愛犬に信頼されているかチェックしてみましょう。

ゴロンとあお向けになって、おなかを見せてくれる

隣でゴロンとあお向けになって、おなかを見せてくれるのは信頼されている証拠です。やわらかく無防備なおなかは、犬の弱点なのでおなかを見せるときは、相手を信頼しリラックスしているときです。

ゴロンとあお向けになって「なでて」とおなかを見せてくるのは、飼い主さんを信頼し安心している証拠でしょう。

足先や口周りなど体をどこでも触らせてくれる

犬が体をどこでも触らせてくれるのは、信頼しているからです。とくに足先や口周りは敏感で、触られることを犬は嫌がります。

もし口や足先を触らせてくれるのであれば、飼い主さんを信頼している証拠です。犬の体を触ることは、病気の早期発見にもつながります。日ごろから体を触って、スキンシップの習慣をつけましょう。

一人の時間も落ち着いて過ごせる

飼い主さんが出かけても、一人で落ち着いて過ごせているのは、信頼関係が築けている証拠。本来、犬は群れで生活する動物です。そのため一人になると不安を感じます。

不安からほえたり、騒いだりする場合は、正しい信頼関係が築けていません。飼い主さんと信頼関係が築けている犬は、安心して一人の時間を落ち着いて過ごせるのです。

飼い主さんを見つめるのは「信頼しています」のサイン

信頼関係が深まると、犬は飼い主さんを目で追ったり、見つめたりします。犬は信頼する人とのアイコンタクトで、体内のオキシトシンが上昇し幸せな気持ちになるからです。

オキシトシンは、人間の母と子の絆を強めるホルモン。同じように、人と犬との間でも、母と子のような絆が生まれます。日ごろから、目を見ながら名前を呼んだり指示したり、アイコンタクトをとるようにしましょう。

まとめ

犬とハイタッチ

犬に上下関係を厳しく教えるしつけは必要ありません。新たな問題行動を引き起こすなど、さまざまな問題点があるからです。

犬は母と子のような強い絆で結ばれた信頼関係を求めています。信頼関係が築けると、犬は飼い主さんの言うことを喜んで聞き、問題行動に困ることもありません。

犬に厳しく上下関係を教え従わせるしつけは、時代遅れの古い考え方です。しつけは上下関係を教えるより、犬と信頼関係を築くために楽しく行いましょう。

犬の常識は、時代とともに変わるのです。常に新しい情報をキャッチし、知識をアップデートする必要があります。正しいしつけの方法を学び、犬に信頼される飼い主になりましょう。

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