犬が飛びつく理由
犬が足元で無邪気に跳ねたり、こちらに向かって勢いよくジャンプしてくる行動を「飛びつき」といいます。愛犬家の方なら、犬に飛びつかれた経験は何度もあるでしょう。生まれたばかりの子犬から、ある程度年を重ねた老犬まで、年齢や犬種を問わず飛びつく行動がみられます、
では、なぜ犬は人に対して飛びつくのでしょうか?そこには、犬のポジティブな理由とネガティブな理由が隠されています。
嬉しい
犬の飛びつく理由として多いのが、「嬉しくて」「テンションが上がって」が挙げられます。例えば、飼い主が帰宅したときや散歩中にお友達に会えたとき、飼い主が大好きなオモチャやオヤツを持っているとき、散歩に行こうとリードを持ったとき、など。その子その子にとってテンションが上がるものを目の当たりにしたとき、「私はこんなにも嬉しいんだよ!」と飛びつくことで飼い主に愛情表現をしています。
このように自分の愛犬はもちろん、散歩中に出会った犬やペットショップやドッグランなどでの触れ合いの場で、初対面の犬であっても飛びつかれたら嬉しいものです。しかし、それは「犬好きの人」であることが前提です。
人懐っこい犬の場合、見知らぬ人に対しても「遊ぼう!」と飛びつくこともあるでしょう。相手が犬好きの人であれば喜んで受け入れて、服が汚れる程度の問題しか起こりません。しかし、もし犬嫌いの人であればどうでしょう。たとえ小型犬のような体が小さな犬であっても、犬嫌いの人からしてみれば恐怖でしかありません。急に犬が飛びつくことでバランスを崩し、大ケガをした事故も報告されています。「全員が犬好き」という認識は持たず、見知らぬ人への飛びつきをきちんとトレーニングすることは飼い主の義務といえます。
欲求を満たしたい
「抱っこしてほしい」「撫でてほしい」などのような欲求を満たしたいときにも、飼い主に飛びつく行動を示します。とくに抱っこされることに慣れている小型犬に多くみられますが、散歩中に疲れたときや嫌いなものに接近しているときなどに抱っこをせがみます。これは「自分を守ってほしい」という心理が働いているので、飼い主を信頼している行動と考えて良いでしょう。しかし全ての要求に応えていると、ワガママな性格になりかねないので、注意が必要です。
また、飼い主が仕事や用事で長時間帰ってこないお留守番のときは、とくに「早く帰ってきてほしい」「早く会いたい」と欲求が爆発しているはずです。飼い主が帰ってきたとき、その欲求が満たされて、その不安な気持ちが解放されて、思わず飛びついてしまう場合もあります。また飼い主とのコミュニケーションが少なかったり愛情不足を感じている犬は、「飼い主に会えた」という欲求が満たされたことで飛びつく行動を示します。「あなたが帰ってきてこんなにも嬉しいんだよ」というサインかもしれません。
自分の方が優位と思っている
犬は家族内や他の犬、人に対して「自分より上」「自分より下」「自分と同等」と順列を付けています。もともと主従関係の中で生きていた動物なので、本能的な習性の名残でしょう。リーダーや自分より上の順列に対しては飛びつき行動は示さないので、もし前足で押さえつけるような飛びつきを示した場合は、「自分の方が偉いんだぞ」と認識しているのかもしれません。
攻撃したい
これまでご紹介した飛びつきの理由とは逆に、攻撃心を持って飛びつく場合もあります。
警戒心が強い犬や順列意識が根強く残っている犬の場合、初めて見る犬や人に対して「どちらが強いか、順列が上か、確かめなきゃ」と心理が働き、お互いの飼い主の制止を振り切って飛びつくことがあります。犬同士でお尻のニオイを嗅ぎ合ったり、じゃれ合う程度の飛びつきは遊びの延長といえますが、相手側の犬は嫌がっているかもしれません。噛みつくほどのケンカにまで発展する恐れがあるので、飼い主は必ず目を離してはいけません。
好奇心旺盛な性格の子の場合、散歩中に横切る猫やネズミ、風で舞っているゴミ袋など、「面白そう!追いかけたい!」という心理が働きます。また、主に中型犬や大型犬にみられますが、車やバイク、自転車も飛びつきの対象となります。目の前を早いスピードで通過するものを見ると、「獲物だ!捕まえなきゃ!」と本能的に感じてしまいます。狩猟犬や牧羊犬として働いていた歴史を持つ犬種は、とくに気を付けましょう。
攻撃性の飛びつきは、犬自身や飼い主だけでなく、他の犬や人にも危険を及ぼす恐れがあります。子犬のころにきちんと飛びつき癖を直しておくことで、ケガや事故、トラブルを予防することができます。
犬が飛びつく時の心理
犬の飛びつき行動には、「飼い主が好きすぎる」という心理が隠されていることが多いでしょう。
飛びつく理由がポジティブな場合、飼い主の顔めがけて飛びついてくる場合があります。これはオオカミのころの名残で、子オオカミは親オオカミの胃の未消化の食べ物を口から与えられて育ちます。親オオカミの口元を舐めることで「ご飯ちょうだい」というサインになるため、人間と共生している現在も本能として行ってしまうことがあります。犬が飼い主の顔、とくに口元を舐める行動は、「自分はあなたより下」「飼い主を信頼している」と認識しているといえます。
また、子犬の頃に飛びついてきて可愛さのあまり撫でてしまったことはありませんか?これにより、「飼い主に飛びつく=飼い主が喜んで撫でてもらえた=飛びつくことはイイコト」と学習してしまいます。犬は飼い主が喜ぶ姿が大好きであるため、「飛びつく=飼い主が喜ぶ=自分も嬉しい」と認識してしまいます。このように、犬が飛びつくには「飼い主に喜んでほしい」「飼い主が好きすぎる」という心理が大きく働いているのです。
犬が飛びつくのをやめさせるしつけ方法
犬が飛びつくには必ず理由があることが分かりました。犬の飛びつきにおいてポジティブな理由であれば喜ばしいことですが、他人に飛びつくことでケガをさせてしまったり、車やバイクに飛びついて愛犬が事故に遭ってしまったり、そのような悲しい出来事を引き起こさないためにも、犬の飛びつきはしっかりとトレーニングしなければなりません。
犬の飛びつきは、「飛びついていいとき」と「飛びついてはダメなとき」の飼い主のルールがとても重要で、その線引きは犬にもきちんと理解させましょう。例えばお留守番を頑張ったときや、飼い主が帰宅したときなどの「飛びついていいとき」には思いっきり好きに飛びつかせてあげ、高い声で褒めてあげます。犬は「このときは飛びついていいんだ」と学習し、愛情を表現してくれます。
ここでは、犬が他の犬や人への執拗な飛びつきや、車やバイクなどの危険なものへの「飛びついてダメなとき」のしつけ方法をご紹介します。
犬や人に飛びつく場合
犬同士で挨拶をしたりじゃれ合うのはコミュニケーションの一つなので、十分に遊ばせてあげましょう。しかしお互いにヒートアップしてケンカへと発展してしまう恐れがあります。ケガや事故にならないよう、他の犬や他人に飛びつく行動は制止しなければなりません。
また「可愛いですね」などと近づいてきた人に対しても、犬はその有効的な雰囲気を感じとって嬉しくて飛びつきます。相手の洋服を汚してしまったり、小さいお子様であれば突き飛ばしてしまう恐れがあります。
散歩中はリードの輪っかを手首に通し、短くしっかり持ちます。万が一ゆるんでしまった場合も手首から外れにくいため、有効的といえます。最近では伸縮リードを使っている方が多いですが、ストッパーが付いているとはいえ、犬が急に走り出したり、車やバイクが近づいてきたときに早急に対処することができないため、あまりオススメできません。
前から犬や人が歩いてきた場合は、犬と飼い主の様子を確認しましょう。友好的に挨拶ができそうだと認識した場合は飼い主同士で許可を取り合い、犬同士で挨拶をさせてあげます。このときも、ふとしたきっかけでケンカへと発展するか分からないので、決して犬から目を離してはいけません。
他の犬や人に飛びつくような仕草がみられたら、低い声で短く「マテ」や「オスワリ」などのコマンドを出します。これは家に訪れた来客に対してもそうで、インターホンが鳴って犬が反応したのを確認したら、「マテ」や「オスワリ」などをさせるのも効果的です。飛びつくことなく、きちんと従うようであればご褒美としてオヤツをあげましょう。
また、家庭環境において飛びつく行動を助長させている恐れもあります。犬が飼い主に飛びついたあとにすぐオヤツをあげたり、飛びついてきて顔を舐めさせたり、オヤツを持って高く上げて犬を興奮させたり…。犬は「飛びつく=イイコトがある」と認識してしまいます。犬が他の犬や他人に飛びつくのを予防するには、まず日頃の家庭環境を見直してみましょう。
車やバイクに飛びつく場合
犬が車やバイクの存在に気付く前に、注目を別のものに逸らすことが大切です。犬は車やバイクを発見すると、「飛びつく対象が来た」「追いかけたい」と心理が働き、早い段階で飛びつく準備をしてしまいます。
飼い主は車やバイクが近づいてくるのを認識したら、その場でオスワリやフセなどの合図を出しましょう。オヤツを見せてこちらに注目させるのも効果的です。車やバイクの通過を待ち、上手にできたらオヤツをあげ、思いっきり褒めてあげます。このように、飼い主は散歩中は常に周囲に気を配り、危険を未然に防ぐことが大切となります。
飼い主の顔に飛びつく場合
顔に向かって飛びついてくる場合に一番重要なのが、高い声で奇声をあげないこと。犬にとっては「飼い主が喜んでる!」と勘違いし、しきりに飛びつくようになります。顔に飛びついて舐めたりするような行動をしても声を出さずに我慢し、低い声で短く「オスワリ」や「マテ」などのコマンドを出しましょう。
顔や体の向きを変えることも効果的です。犬は学習する動物なので、繰り返すことで「飛びつくことはダメなんだ」と認識してくれます。
一貫性のないルールは注意
犬はもともと集団で暮らしていました。それぞれに順位をつけ、リーダーを決め、集団のルールを決め、秩序ある生活を保つことで、野生の中を生き抜いてきました。それはペットとして飼われている今も名残として残っており、一貫性のないルールは犬にとってとてもストレスに感じます。
飛びつきに関してもそうで、例えば「飼い主がご機嫌なときは飛びつきを許してしまうのに、忙しくてイライラしているときは飛びつくのを制止する」「食事のときは飛びつきを禁止しているのに、オヤツのときは許してしまう」など、飼い主の機嫌や気分によってルールを変えてしまうのは犬にとって意味が分からず、ストレスとなります。
犬が飛びついてから噛む原因
犬が対象に対して飛びつき、なおかつ噛むことがあります。これは、犬の心理として「びっくり」「恐怖」「危険」を感じています。
愛犬に噛みつかれたり、唸られたりされるのは飼い主にとってとても悲しいことですが、このような噛みつきや唸りに悩む飼い主は、実は多くみられます。では、信頼しているはずの飼い主に対して噛みつきや唸る行動を示すのはなぜなのでしょうか?
実は、犬が飼い主を噛む理由は、子犬のころに過ごした環境が影響していると考えられます。犬は社会化期(生後2~3ヶ月)において、親犬や兄弟犬と過ごすことでじゃれ方や甘噛みの仕方、コミュニケーションの方法を学びます。その中で犬同士の遊び方、人との接し方、相手への配慮、噛む加減などを学習していきます。しかし社会化期を過ごしていない犬は学習しないまま成長していき、人や犬に対して恐怖心や敵対心が強くなり、飼い主であっても恐怖や危険を感じると噛んでしまうのです。とくにペットショップで売られている犬は、この傾向が多くみられます。
まとめ
犬の飛びつく行動には、ポジティブな理由とネガティブな理由があります。飼い主は犬の様子を観察して、良い飛びつきか、悪い飛びつきかを見極める必要があります。それは小型犬だから許して良い、中型犬・大型犬だからしつけなければいけない、というわけではありません。
飛びつく対象は他の犬や人、自動車、バイクなどあらゆるものなので、日頃から愛犬が飼い主に注目するよう習慣づけることが、ケガや事故を防ぐ一つの方法です。飼い主は愛犬が「どんな性格か」、「どんなものに興味を示すのか」、「どんなものに飛びつくのか」、「なぜ飛びつくのか」をしっかり把握するようにしましょう。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 匿名
40代 女性 匿名
50代以上 女性 匿名
小型犬のチワワでも同じです。
飼い主は良いけど他人には駄目と教えるのも難しいし幼い子供達(3歳と1歳の孫)へ犬に対する恐怖心を植え付けてもいけないと思ったからです。
40代 女性 おん
叱ると余計に興奮してエスカレート、部屋じゅう爆走となるので無視することにしていますが、しつけ上は本当はいけないことなんでしょうね。
もう8才になってしまったので、いまさらしつけもなぁ…というのが本音ですが(それ以外は特に問題ないので)。
散歩に行きたいのに行けない時(雨降りなどで散歩中止の日に)、いつもはごはんの時間なのにまだもらえない時(これから作ろうとしているのに)、どうにも衝動が抑えきれなくなると私に飛びかかってきます。
40代 女性 SUSU
飼い主にはあまりしなかったように思いますが、お留守番時間が長かった時には帰宅後、飛び付いてきたように記憶しています。今回の記事を拝見して、そう言えば最近、来客があっても飛び付いたりせず、足下の匂いを嗅いで、尻尾を振って挨拶しているな・・・と気づき、何で変わったのだろう?と原因を考えてみました。
ヒントになったのは、お散歩で大好きなワンコの飼い主さんに会った際はこの飛び付きをしてしまうことがまだあるということです。お散歩はどうしても興奮ぎみに出掛けてしまいます。そして、そのテンションのまま大好きな人に会うと嬉しくて飛び付いてしまっているように思います。会えるか会えない分からない外という環境で、大好きな人に会えると嬉しくなってテンションが上がってしまうのだろうと思います。
ではなぜ家にいて愛犬が大好きな来客に飛び付かなくなったのだろう、と考えると、興奮させないように過ごさせているということだと思います。
興奮させないと言っても、遊ばせない、ゲージに入れておくといったことではありません。出来るだけストレスなく過ごしてもらうよう、状況をきちんと話すよう心がけているということです。留守番時には何時間くらいで帰るよと伝えたり、来客があるときには○○さんが来るよなど、話をするようにしています。初めは何を言っているのは分からなかったと思います。でも同じ言葉を同じ状況時に何度も繰り返していると、言葉と起こった状況を関連付けして理解していくようになります。
こんなことで興奮しなくなるのか?と不思議に思いますが、ピンポンに吠え続けたり外の音に敏感に反応することが減り、ゆったりと落ち着いて過ごせることが増えたように思います。
人間でも、家族がいつ帰るのか、誰か来るのか、何が起こるか分からない環境よりも、情報が入る生活の方が心構えも出来るし、落ち着いて過ごすことが出来ると思うのです。自分の存在を認めてもらえているという自信にも繋がるのかもしれません。
飛び付きの癖を止めさせるだけであれば、目をふさいだり音を出してびっくりさせることの方が効果が出るのは早いのかなと思います。
ただ、なぜこういうことをしてしまうのか?といったことも考えてあげると、思わぬところで効果が現れるものなのかなと今回の記事を拝見して感じました。
なお、飛び付かれた際には、ワンコに対してしゃがんで横を向いてフリーズすると、落ち着いてほしい、止めてほしいという意味のカーミングシグナルになります。興奮しきっているワンコだとシグナルを受け取ってくれない場合もありますが、犬の会話としては通じるジャスチャーです。もしカーミングシグナルを受け取れない場合には、飛び付きだけでなく、普段からもう少し落ち着いて過ごすことが出来るよう、環境面等、考えてあげることも方法の1つになるのかなと思っています。
今回の記事を拝見して、今後の我が家の課題は、お散歩時に出来るだけ興奮しないよう、ゆったりと落ち着いて楽しめるようになることなんだと分かりました。引き続き頑張ります。
女性 匿名
目に入ったら大変です。
それはしつけではなく虐待です。
たとえ匂いで飛びつかなくなっとしても、そんな酷いことする飼い主のことを信頼しなくなります。
どうか罰なんて与えないでください。
飛びついたら無視をするだけでトレーニングは出来ます。
大好きな飼い主から無視をされるのが一番効きます。
40代 女性 ここあ