犬が配達員の人に吠えるのはなぜ?
かつて戸建ての家は不審者を追い払うために「番犬」を置くという概念がありましたが、時代とともに犬が吠える役割は薄れつつあります。それでも、犬は不審者に対して吠えるという本能が残っているようです。
特にオートロック付きのマンションなどは、インターフォンの音が鳴った瞬間、犬が激しく吠えることがあります。オートロックを解除して玄関のチャイムの音でまた吠える・・・犬が玄関の前で吠える・・・ドアを開けてまた吠える・・・。
その都度吠える愛犬に、ストレスを感じる飼い主さんは非常に多いと聞きます。インターフォンやチャイムの音、配達員が来ると犬が吠えるのはなぜでしょうか。
1.恐怖を感じるから
見知らぬ人が家に来るのは、犬にとっては一大事です。インターフォンやチャイムの音が鳴れば、犬は異変が起こる前触れのように感じることがあります。さらに、「音が鳴れば誰かがやってくる!」と犬が学習し、恐怖を感じるために犬が警戒して吠えてしまうことがあります。
いつもより低い声で必死に吠えている場合は、犬が不侵入者に対する恐怖を感じ、「警戒吠え」をしている可能性が高いです。
2.遊んでほしいから
人好きな犬は、誰かが家に来ることがうれしくて吠えていることがあります。配達員に飛びつくなど、ハイテンションに見える場合は、遊んでほしい、構ってほしいという気持ちの現れです。
犬を撫でたり構ってくれたりする人の場合、「吠えれば遊んでくれる!」「ご褒美をもらえる!」と犬が学習してしまいます。すると犬は、誰かがが来たら吠える『要求吠え』がどんどんエスカレートしてしまう恐れがあります。犬好きの配達員さんは飼い主にとって有り難い存在ですが、要求吠えが習慣になってしまわないように、犬を相手にしないように丁寧にお断りしましょう。
3.縄張りだから
特に縄張り意識の高い犬は、自分の家に近寄る者は、飼い主さんの家族であろうが親友であろうが、犬にとってはライバルで不侵入者なのです。自分の縄張りと飼い主さんを守るために、必死に吠えて威嚇しているのです。けれど、もしかしたら自分より強い相手かもしれない?・・・という恐怖心が働き、「これ以上近づくな!」「この家に入ったら攻撃するよ!」などと威嚇してみせているのです。
4.追い払った気になる
飼い主さんの家に遊びにくる親しい人の顔を、犬は良く覚えています。頻繁に来訪する人などには犬が心を許していることがあります。なぜか、郵便配達や宅配業者の人に犬が異常に反応して吠えることが多いようです。これは、玄関先で手紙や荷物を渡したのち、すぐに引き返すことと関係があるようです。玄関先で引き返すのは配達員にとって当然のこと。ここで仕事が完了します。
犬が吠えて配達員が家の中に入らないことが分かると、「不侵入者を追い払ってやった!」と犬が満足げに思い込んでいるためです。
5.負の強化によるもの
犬が吠えて相手を追い払ったというポジティブな思い込みは、飼い主にとってはストレスでも犬にとっては良いご褒美となってしまいます。これは、犬のしつけの世界で『負の強化』といわれています。例えば、ご褒美が欲しくて「お手」を覚えるのが『正の強化』で、犬にとってのご褒美とは、おやつをもらう・褒められることです。
対する『負の強化』とは、嫌悪や恐怖の対象となるものを取り除くことが、犬のご褒美となって覚えることです。負の強化は飼い主が知らないところで起きていることが多いといいます。配達員が頻繁にやってきて、吠えるといなくなる。その都度ご褒美をもらえると犬が学習します。すると、相手に対する恐怖心や警戒心がなくなり、誰かが来たら吠えることが習慣になっているのです。
最後に
犬は不侵入者への警戒心から、自分の家や家族を守る、という本能から威嚇して吠えます。玄関先で用事を済ませ引き返す配達員は、特にターゲットになりやすいといえます。犬は自分が吠えたから相手を追っ払ったと勘違いし、それをご褒美と捉えてしまいます。
特に一人でお留守番することが多い犬は、誰が不侵入者か、安心すべき相手かを判断できないために吠えることが習慣になっていることが多いです。無駄吠えを直すにはしつけが必要ですが、「なぜ吠えるのか?」飼い主さんが犬の気持ちを理解してあげることが大切ですね。
【参考書籍】
図解雑学 イヌの心理 竹内ゆかり(監修)