犬の行動には意味がある
人間にとって何気ないと思える犬の行動にもちゃんと意味があります。犬は人間のように話すことができないため、行動で気持ちを表します。昔から群れで暮らしてきた犬は他の犬とのコミュニケーションのために、人間のボディランゲージにあたる「カーミングシグナル」を使っていると言われています。犬は人間に対しても自分の気持ちを伝えるためにカーミングシグナルを発しています。
その時の状況によっても意味が変わることはありますが、犬が出すサインの意味を人間も理解できるようになると、犬との関係をもっと深く築くことができるでしょう。
犬の行動と込められた意味
犬の行動①舐める
犬の行動で顔を舐めるのは自分より強い相手への挨拶だと言われており、代表的なカーミングシグナルです。信頼している人間に対しての愛情表現、「大好き」の表現であると考えてもよいでしょう。これとは別に、お腹が空いている時や落ち着かない時も口を舐めることがあります。
顔ではなく、人の足を舐める、手を舐めるという行動は、かまってほしい時や甘えている時にすると言われています。この場合はスキンシップを欲している意思表示と理解しましょう。
犬が自分の足を舐めるだけでなく、足を噛むという様子を見せるときはストレスが原因である場合もあります。長時間舐める、声をかけても噛むのをやめない時は様子をよく観察し、ストレスの原因を取り除いてあげて下さい。それでも改善が見られない場合は獣医師に相談しましょう。
犬の行動②鼻で押す
鼻先で人間の体をツンツンしてくる犬の行動は「早く行こう」「こっちを向いて」など自分に意識を向けてほしいという意思表示であることが多いようです。強めに鼻で押す時は、「遊んで」や「おやつちょうだい」など何か要求をしていると考えられます。
犬同士がそっと鼻先を近づけて嗅ぎ合っているのは、「こんにちは」や「はじめまして」の意味で、初対面の犬に対しての遠慮がちな挨拶だと言われれています。
犬の行動③体を擦り付ける
飼い主に体を擦り付けてくる犬の行動は、「自分の好きな匂いをつけたい」「甘えたい」などの意味が込められています。食後にお腹を出してくねくねと体を床に擦り付けているのは、お腹いっぱいに食べて満足していることを表しているようです。
しかし、異常に体を擦り付けてきたり体の一部だけこすりつけたりしている場合は、ノミやダニ、皮膚病やアレルギーなどが原因の可能性もあります。早めに獣医師に相談しましょう。
犬の行動④足を上げる
犬の行動で片足だけを上げているのはカーミングシグナルの一つで、初めての人や犬に会ったとき、相手に敵意がないことを伝えようとしているしぐさです。また自分を落ち着けようとしている時にとる行動だとも言われています。
片足をあげたままじっとしている時は、何かを見つけ「あれは何だ?」と集中している時です。他にも、片方の前足をあげて飼い主の方を見るのは気を引こうとしている行動だと言われています。
これは子犬が母犬に母乳を催促する時や甘えたい時、遊んでほしい時などに見せる「パピーリフト」というしぐさです。両足を上げて「ちょうだい」のようなしぐさをとるのもパピーリフトの延長と言われています。
犬の行動⑤膝に乗る
犬が飼い主の膝に乗るのは、甘えたい時やかまってほしい時の犬の行動だと言われています。しかし、自分のほうが上だと誇示している場合もあるので噛み癖があったり、攻撃的だったりなど問題行動がある場合はしつけが必要です。それらがないのであれば膝に乗せること自体は悪いことではなく、犬が飼い主に対して安心して身を任せ、居心地がよいという意思表示なので、積極的にスキンシップをとってあげましょう。
犬の行動⑥あくび
犬も眠い時、退屈な時などにあくびをします。一方で、緊張や不安、葛藤などを感じている時に、自分の気を紛らわせる方法としてあくびをすることもあります。これは「転位行動」と言われるもので、他に体を掻いたり、体をぶるぶる振ったりすることもあるそうです。
犬の行動⑦マウンティング
犬の行動の中で、他の犬の背中にのしかかる、人間の足にしがみつくなどの行為はマウンティングをする時によく見られる行動です。マウンティングは興奮を抑えたり、不安を解消するためのコミュニケーションです。少し前までは性的な欲求の解消や上下関係を誇示するという意味としてとらえられ、問題行動だと言われていましたが、最近では本能的で自然な行動であるという捉え方に変わっています。
しかし、知らない犬や人間にマウンティングをして思わぬトラブルや事故につながらないようにしなくてはいけません。マウンティングをしそうになったらおもちゃで気をそらしたり、伏せやストップなどのコマンドで意識を変えたりするなど、しつけを徹底することが大切です。
犬の行動⑧隠れる
「隠れる」という犬の行動はいじける、すねているの意思表示だと言われています。他にもご飯をわざと食べない、疲れた様子で寝ている、散歩に行きたがらないなど仮病のようなしぐさを見せるのもいじけている時の行動です。しかし、ストレスや本当の病気の場合もあるので様子をよく観察する必要があります。単にいじけているのであれば、かまってあげる、そっとしておくなど、その犬の性格に合った対応をしましょう。
犬の行動⑨穴掘り
犬の行動で穴掘りをする時は、野生の記憶から巣穴を掘ったり、物をうめたりしているという場合もありますが、運動不足や一人でいる時間が長いといったストレスが原因で穴を掘ることもあります。また、穴を掘るのはカーミングシグナルの一つで気持ちを落ち着かせる、他の犬への自己アピールをしていると言う見方もあるそうです。
犬の行動に飼い主への気持ちも込められる
犬の行動には本能からくるものもありますが、自分の気持ちを飼い主に伝えるために行動することもあります。悲しそうにしていたら犬に顔を覗き込まれたり、心配そうに側を離れなかったといった経験のある飼い主も多いのではないでしょうか。
犬は群れで暮らしてきた歴史から他の犬の様子を察したり、変化を感じ取ったりすることができると言われています。一緒に暮らしている人間の気持ちにも敏感に反応して、それに合わせた行動していることがたくさんあるようです。犬の行動を注意深く観察して、犬のしぐさの裏にはどういう意味があるのか、飼い主に何を伝えたいのかなど、犬が発しているサインに気付いてあげましょう。
犬の行動学とは
動物行動学とは
動物行動学とは、犬に限らず生物の行動を研究する生物学の分野で、動物の行動を比較しながら行動の意味を探る学問です。犬の行動には意味や理由があり、人間には困った行動に思えても犬にとっては当たり前の習性である場合もあります。犬の欲求を理解して、人間とのギャップを埋めるのが動物行動学です。動物行動学は生態学、生理学、行動心理学を駆使して、動物を総合的に理解することに努めます。
動物の行動学の応用
近年、動物の行動学の研究はかなり進められており、動物行動学を学べる大学や専門学校も増えてきています。動物の行動を観察し、なぜそのような行動をするのかを考える学問であるため、獣医師や動物看護師、トリマーなど、動物と触れ合う職種につくときに勉強して置くと現場ですぐに活用できるようです。仕事としてではなく、飼い犬の心理を知りたいと言う気持ちから、動物心理学を勉強する飼い主もいます。
行動学によって犬の気持ちを知り、問題行動に対しては適切な対応をできるようになれば愛犬との生活もより充実したものになるでしょう。
まとめ
犬の行動にも色々な意味がありましたね。同じしぐさでも、表情やその時の状況で意味が違うこともあるようです。普段から一緒に生活しているからこそ理解できる行動や気持ちもあるでしょう。コミュニケーションの中で犬が発しているサインを深く汲み取って、愛犬と会話しているように心を通じ合わせられるとよいですね。