犬にとっての家族とは
犬と人間の関係性については長きに渡って世界中で研究されてきました。オオカミを先祖に持ち、本来群れで行動してきた犬は私達飼い主や家族を「群れの仲間」であると認識していると言われてきましたが、近年の研究によって犬は同族以上に私達人間を信頼、優先してくれていることが分かっています。
犬と私達人間の間には「アイコンタクト」の存在がありますが、これは生みの親、つまり母犬には行わない行動であることが分かっています。そのため、犬は他のどんな動物よりも人間との絆を大切にすると言われているのです。
犬は飼い主の喜びや悲しみ、様々な感情をも共有し、時には身を挺して守ろうとすることもあります。つまり、犬達も私達人間の飼い主を種族を超えて大切な「家族」という存在として認識してくれていることは間違いないと言えます。
犬から見た家族の順位付け
犬は家族に順位付けをしていると感じる飼い主さんは非常に多いようです。オオカミを先祖に持ち、本来群れで行動をする習性を持つ犬には縦社会、つまり序列の概念があるとも言われてきましたが、近年では犬種や生活環境など個体によって順位付けの意識の有無が異なるという意見やそもそも「犬は家族に順位付けしない」という意見もあります。犬の家族を順位付けする意識やその支配性については未だ不明確な部分は多いものの、実際に家族に対して態度が異なることは珍しくありません。
順位付けの基準
その基準は個体によって異なるものの、メインでお世話をしてくれる人が家族で一番好きな人という名誉あるポジションに選定されることが多いようですね。「何事もお母さんに確認する」「お母さんの言うことだけを聞く」などはよく聞くお話です。また、犬の家族の順位付けとして面白いのが「一番愛犬を甘やかすのはお父さんなのに何故か順位が下」というもの。(笑)
つまり、ただただ甘やかしてくれるから一番好き!というわけではなく、頼れる存在であるかどうかや自分に利益があるのかどうかなども重要なのかもしれません。また、小さな子供相手の場合は自分よりも優位と認識はしていないものの、守らなければならない存在であると認識することで相手を尊重し、大切に扱う個体も非常に多いようです。
つまり、犬が家族に対して「好き」「大切」と思う気持ちにも、人間同様「母親」「父親」「兄弟」など様々な種類があったり、その時々の利益によって行動していたりすることが、まるで家族に順位付けしているように見えるのでしょう。これらは人間側の犬に対する態度や行動によって左右されることが多いため、それらを見直すことで、犬の家族に対する順位変えることは可能と言えます。
犬がわがまましたり家族に吠える理由
犬がわがまましたり、家族に吠えたりする理由は非常に様々です。特定の家族に対してこれらの行動をする場合は信頼関係や服従関係の欠如、つまり自分よりも下に見ている場合や甘えからくるわがままなどが考えられます。特に噛むなどの攻撃行動が見られる場合は前者、構ってほしいが故の要求鳴きの場合は後者である可能性が高いと言えるでしょう。
後者である場合も、突然家族に吠えることが増えた場合などは愛情不足やストレス、分離不安など精神的に不安定になっているサインである可能性も。ただ、基本的には犬がわがまましたり、家族に吠えたりするのはその行動をとることによって「自分に良いことがある」「要求が通る」と考えている場合が多いため、時には心を鬼にして「無視」することも必要です。
また、犬が家族以外に吠えるのは家族を守ろうとしている場合もあり、単に吠えると言っても様々な感情が複雑に関係しているため、その他の行動や仕草、状況などを考慮してその理由を明確にすることが解決の鍵となります。
犬にとって家族のリーダーとは
犬にとって家族のリーダーは誰なのかと聞かれると「一番お世話をする人」や「犬が家族の中で一番好きな人」と答える方が多いのではないでしょうか。しかし、そもそも犬が家族内の順位付けをしないと言われる近年では「家族の中にリーダーはいない」と言われることも。
ただ、犬は人との間に正しい服従関係があるかどうかでその態度や行動が異なるのは事実です。つまり、家族全員が同じように正しい服従関係を築くことができれば、犬は家族全員に平等な態度を取り、家族全員がリーダーやバディと呼ばれる存在になることができるということです。
ただ、「好き=リーダー」「言うことを聞く=リーダー」ではなく、犬はその時々の損得をしっかり考えながら行動しているため、日頃からお世話やしつけトレーニングをしてくれたり、遊んでくれたりとコミュニケーションがしっかりとれる家族に対して、特別な信頼を寄せることが多いようです。
犬にリーダーとしてしつけをすること
犬にリーダー、バディとしてしつけをすることは非常に大切なことです。犬は飼い主との間に正しい服従関係や信頼関係を築くことができなければ不測の事態に陥った時、飼い主の指示よりも自己の判断を優先させるようになります。つまり、飼い主が愛犬をコントロールすることができず、事故やトラブルに繋がる可能性も考えられるのです。
飼い主と愛犬の間に「リーダー」という支配的な立場や関係性は必要ないと言われることも増えてきていますが、いざという時に愛犬を守るためには必要な概念であると考えます。例えば犬が飼い主をリーダーだと認識していれば、何かイレギュラーなことが起こった時に犬は飼い主の目を見て判断を仰ぐようになります。ただ、リーダーと言っても犬を暴力的に制圧したり、横暴に扱ったりすることは言語道断。ただ厳しくしつけをするという意味ではなく、犬に信頼してもらえるリーダーになることが大切なのです。
犬にリーダーと認識させるには
まず犬にリーダーと認識してもらうためには、犬の体に積極的に触れることで服従関係を築いたり、アイコンタクトで信頼関係を築いたりすることが基本となります。犬と飼い主さんの間のルールは一貫し、いつも同じだけの愛情と態度で向き合うことが重要です。
また、リーダーと好きな人は違うとよく言われますが、リーダーと認めるだけ信頼している相手が好きな人であることには間違いありませんが、好きな人だからと言ってリーダーと認識しているわけではありません。よく懐いている=リーダーとは限らないということですね。ただ甘やかすだけでは犬にとっての好きな人、都合の良い人にはなれても、常に厚い信頼を寄せるリーダーにはなれないといったところでしょうか。
犬にリーダーとして認めてもらえれば、本来なら触られるのを苦手とする部位を含めたボディチェックやケアをさせてくれるようになったり、屋外での事故やトラブルから愛犬を守ることができたりと良いこともたくさんあります。この機会に「しつけ」という概念ではなく、愛犬の安全を守るために家族の中のリーダーについて考えてみてくださいね。
まとめ
犬は家族をどう見ているのか、リーダーの必要性などについてご紹介しました。近年では「犬は家族に順位付けしない」という説が一般的になってきています。とはいえ、実際に愛犬と暮らしている方にとっては犬が人によって態度が変えることは明らかですよね。(笑)
特定の家族に噛む、吠えるなどの問題行動を起こすのであれば考えなければなりませんが、そうでなければ「人によって態度が違う」愛犬の行動も、それはそれで可愛いものでもあります。
ただ、家族の中に肝心な時に愛犬をコントロールできる人がいないとなると問題ですよね。リーダーという言葉に抵抗がある方は、愛犬を守ることができるバディとして関係性を見つけ直してみるのも良いかもしれませんね。