犬は「いじわる」を理解できるのか?
いじわるとは暴言や暴力、悪意のこもった嫌がらせをすること、相手をわざと困らせること。当然のことながら犬は暴力をふるう人に対して恐怖や嫌悪を感じると思います。では、その意味を正確にはできない嫌味や暴言、痛みなどは伴わないものの困った状況をつくられることなどに対して犬はどのように感じているのでしょうか?
犬は非常に感受性が強い動物だと考えられており、特に家庭犬や使役犬は人間と一緒にいる時間が長いため人間の言動を注意深く観察しています。そのため、ちょっとした声色や行動の変化から飼い主や周囲の人間の機嫌や気分を敏感に感じ取って把握している様子を多く見られます。そしてその影響を強く受けてストレスを感じたり、反対にとても楽しい気分になったりすることがわかっています。そのため、あからさまな暴言、暴力ではなく犬が困ったり好まないことをわざと行ったり、困っている犬の様子を見て笑ったりするようないじわるに対しても「自分に対して好意的ではない行動」であることある程度理解できると考えられています。
犬が嫌う・苦手とする人のタイプや言動
犬は犬好きな人がわかる?
「犬は犬好きな人がわかる」ということはよく言われることですが、それは本当に犬を好きな人の場合犬を困らせるようなこと、驚かせるようなこと、不快に感じることをしないからだと思います。「この人は犬が好きな人だ」と理解するのではなく、「自分に対して嫌なことをしない人だ」と理解するため、警戒心を解きやすいのです。
犬は騒がしい人が苦手
反対に犬のことが嫌いな人は大きな声を出して逃げたり、犬の行動に対してオーバーリアクションで対応したり威圧したりするため、犬も近寄りたがらなくなることがあります。犬は基本的に明るく大らかで落ち着いた人を好むので、ドタバタと逃げたり騒いだりする人はあまり好まないとされています。
犬はいじわるな人、嘘をつく人も嫌い
その他にも犬は自分の嫌がることをわざとくり返していじわるする人や、うそをつく人を避ける傾向にあります。「おやつをあげるよー」と言ったのにあげなかったり、「何もしないからおいで」と呼び寄せたのに嫌いなお風呂に入れたりというような期待が裏切られるようなうそをつくと犬はその相手を信用しなくなってしまいます。
飼い主への態度も見ている
2015年に行われた研究調査では自分の利害に関係のない場面であっても人間の行動を観察してその人間に対して評価をしているということがわかりました。さらに、京都大文学研究科グループからは飼い主に対して非協力的でいじわるな言動をする人に対しても犬は嫌な感情を持つという非常に興味深い内容が発表されました。
いじわるな人に対して取る犬の行動
犬は自分や飼い主を困らせるような人、いじわるをする人に対して目線を合わせなかったり、地面のにおいを嗅いだりして避けるような様子を見せることが多くあります。また、自分に関わらないで欲しいというアピールのために目の前であくびをする、顔や体を横に向ける、呼ばれた時なども弧を描いてわざとゆっくり近づくなどのカーミングシグナルを見せることもあるようです。また、あきらかな暴力があったり自分に危害が及ぶと感じた場合などは吠えたり歯を剥くなどの威嚇を行うこともあるでしょう。
<まとめ>犬はいじわるな人を避ける傾向にある
ちょっとしたいじわるやちょっかいに対して見せる犬の困った表情が飼い主にはかわいく見えてしまうことがあるでしょう。愛情があることを前提に考えればそうした「おふざけ」を含めたコミュニケーションやスキンシップも関係性によっては“アリ”かもしれません。しかし飼い主にとって楽しいコミュニケーションでも、やられる側の犬にとっては楽しくないという可能性も…。そうした行動を頻繁に行ったり、度を超えてやりすぎると信頼関係を損ねる原因になりかねないので十分注意しましょう。
犬には「いじわる」という概念自体はないかもしれませんが、自分に対して好意的ではない行動を取る人に対してはいい感情を持たないということがわかっています。言葉は持たずとも、しっかりとコミュニケーションを図ることができる相手として、犬の気持ちもきちんと尊重した関わりを意識しておくといいでしょう。