イタズラは悪いことと分かっているの?怒られたくてやっている?
その答えは【NO】です。分離不安やストレス、空腹による、飼い主さんにとって望まない犬のイタズラ行動以外は、怒られることも、悪いことだという認識もなく、楽しい遊びの1つです。
犬にとっては、【イタズラ】という認識はないのです。では、いったいどんな気持ちなのでしょうか?
犬のテンションがめっちゃ上がっちゃう遊びベスト5
5位 ゴミ箱あさり
生ごみの匂いは犬にとっては魅惑の香りです。ゴミ箱に体をこすりつけようとして倒してしまい、中から出てきたゴミの中から、何かを探し出します。紙類や匂いが強い物をバラバラにしてゴロゴロ、スリスリしてとっても楽しんでいます。
4位 ティッシュや紙類の咬みちぎり、ばらまき
ティッシュの箱やトイレットペーパなどは、噛み心地がよく、噛みちぎられた紙類の上で走ったりゴロゴロしたりすると、散らばった落ち葉などで遊んでいるような感覚で楽しいのです。
3位 飼い主さんの衣類や靴やスリッパのチュパチュパ
大好きな飼い主さんの匂いを、自分の体につけたい犬はとても多いのです。特に足の匂いは、犬にとってみると飼い主さんの体臭が強く残っているので、スリッパや靴は大好きなのです。
壊すつもりはないのですが、ペロペロ舐めてみて、ハムハムしてみて、おや?噛み心地が気持ちいいー♪もっとやってみよ!ここも噛んでみよう♪としているうちに、壊れてしまいます。
2位 壁紙むしり、ばらまき
なんとなく暇なときに、ふと壁の角を噛んでみたら、歯触りが気持ちいいことに気が付きます。クッション性のある壁紙は、歯のかゆい所を当てていると気持ちよく、そのうち歯が刺さり、切れ目ができてめくれてきます。ちょっとやってみようかなーと、めくれをむしり、壁に歯を当てているのが気持ちよく、気が付くとガリガリと壁をかじってしまうのです。
1位 飼い主さんと遊ぶ
解説は必要ありませんね。飼い主さんと愛犬のいつもの遊びが、一番楽しいし、幸せでハイテンションになります。どんな一人遊びより、飼い主さんとの遊びが一番です。
怒られると思い出すのは 遊びのあと
犬にとっての遊びや好奇心による行動は、飼い主さんが望まないイタズラ行動でもありますが、犬は飼い主さんを怒らせようとしているわけではありません。でも、いつも叱られてしまうのに、なぜ繰り返すのでしょうか?それは、「いつも叱られるのは遊びの後だから」です。
一通り遊び終わって、満足して、めちゃくちゃになってしまった部屋を見て、犬は思い出します。いつもそのあとに起こること。それは、怖い顔をして自分を叱る飼い主さんの声と動きです。これは、犬にとっても望んでいない結果です。
いつもと同じ状況で、望まない飼い主さんの反応を思い出し、悲しい顔や反省した顔をしていたり、隠れたり、とぼけてみせたり、一生懸命望まない状況を回避しようとします。ですが、いつも通り叱られてしまうのです。
飼い主さんからみると、めちゃくちゃにイタズラした後に発見し、叱る。反省した顔も、悲しい顔も関係なく、悪いことはダメと叱って言い聞かせようとします。ですが、犬は遊び(イタズラ)を始めるときには、一ミリもその後に起こるいつもの結果を思い出すことはないのです。
頭が良いはずなのに、なぜいつも怒られることを学習できないのか?
それは、「楽しんで遊んだ→叱られた=望まない状況→やめよう」と結びついていないからです。
遊びが終わり、めちゃくちゃになった部屋や壊された物を見せて、「これはダメ!」「なんで何度も言っても分からないの?!」と叱っても、犬は自分が部屋を散らかしたことや、物を壊したことで飼い主さんに叱られたとは認識できないのです。
そして、散らかった部屋やイタズラの痕跡を見て、怒りや苛立ちや悲しさという飼い主さんの感情の変化を、体温や雰囲気で感じとり、以前に怒られた記憶がよみがえり、反省しているような行動をとります。ですが、これは反省しているわけではなく、なぜだか分からないけど怒られる。
- 怖い
- どうしたら良いか分からない
- どうして怒っているの?悲しいの?
と、理解できずに混乱している様子です。
自分の遊びが、飼い主さんにとっては望まないことであるという認識がないために、何度も何度も同じ遊びを繰り返して、同じことで叱られてしまうのです。愛犬の学習能力が低いのではなく、犬が理解できるように伝わっていないだけなのです。
犬が繰り返すイタズラをやめさせるにはどうしたら良いの?
犬が行動を起こすその瞬間に、やめさせる指示をして止めます。重要なのは、犬が望まない行動を起こす【前】に、正しい指示に必ず従わせることです。
遊び始めてしまったら、物を取り上げたり体を抑えつけたりして行動を止めるのは、誤った解釈をしやすくなります。止められている、叱られていると解釈するのではなく、自分の好きな遊びに飼い主さんも参加したと解釈してしまうからです。
テンションは上がり続け、飼い主さんの言葉や力も強くなり、意味も分からずに体を抑えつけられて大きな声で叱られると、体の動きは止められますが、犬の「なぜ?」には正しく答えられていないのです。
イタズラを繰り返す場所や物に近づいたり、興味を示したりしたその瞬間に、「ダメ」と短くはっきりと低い声で伝え、行動を止めさせます。そして、すぐに近くへ呼び戻し、褒めます。スリッパや靴など、犬が咥えようとした「その瞬間」に言葉だけでやめさせるのは、とても良い方法です。
イタズラするのを待って叱るのではなく、日常生活の中で目が届くときに、望まない行動に繋がりそうな動きを見せたその瞬間に、声をかけられるかが重要なのです。
飼い主さんの「ダメ」に反応して、呼び戻したら必ず褒めてあげます。これを繰り返していき、「ダメ」は自分のしようとしている行動を中止することだと覚えさせていきます。
- ゴミ箱の臭いを嗅ぎそうな瞬間
- 壁紙の臭いを嗅ぎそうな瞬間
- テレビのリモコンに興味を示しそうな瞬間
- スリッパや靴下に興味を示しそうな瞬間
- 落ちている物に興味を示しそうな瞬間
など。
これは、日頃から愛犬の様子をよくみていると、興味を示したときの動き方や、耳や目の動きが分かってきます。
この「ダメ」の教え方を応用すると、散歩中の拾い食いの防止にも役立てることができます。まずはおうちの中で、飼い主さんの「ダメ」「ストップ」「やめて」などの指示にしっかり反応できるよう教えてあげましょう。
イタズラしてしまった後には叱らない
犬の行動のコントロールのポイントは、行動を起こす前です。イタズラしたあとにいくら厳しく怒っても、犬には伝わりません。大きな声を出しても、体を抑えつけても、怒られた理由に結びつくことはありません。
間違った場所でおしっこしてしまったとき、犬の鼻をその場所に抑えつけて叱ると覚える、というしつけ本を読んで、苦労された飼い主さんが多くいますが、事後では何も伝わらないのです。
望む行動を褒めるときも同じで、指示に従って動き出す瞬間に「いい子」「上手」などと明るい声でポジティブな感情で、褒めてあげると覚えが早くなります。
事後に訳も分からず叱られて、混乱が強くなると、反発や不信、防衛が強く行動に現れるようになり、怒られそうになると牙をむく=嫌なことは怒り、反発で回避する、と覚えてしまうと、噛み犬や、全く行動制御できない問題犬を育ててしまうのです。
精神的なストレスによるイタズラの場合
寂しさ、分離不安、空腹、苛立ちなど、犬が精神的なバランスを崩しておこしてしまうイタズラは、犬にとっては遊びではなく、SOSを発信している状態です。このような状態のときに、事後に叱るを繰り返してしまうと、更にストレスは大きくなります。
精神的なストレスが大きく、問題行動をおこしているときには、イタズラ以外に様々なSOSサインがでていることが多いので、注意してみてあげましょう。
- 飼い主さんがいないと泣き叫ぶ、震える
- 常に抱っこ、常に構って、常に落ち着きがない
- 家じゅうどこに移動してもぜったいにそばを離れない
- 手や足を舐め壊す
- 食糞が治らない
など。
ストレスによって現れる行動がある犬が、何度もおなじイタズラを繰り返すときには、まずは精神的なバランスを整えることから始めましょう。
まとめ
イタズラ防止の基本は、イタズラができる環境を作らないことです。ゴミ箱、スリッパ、衣類、ティッシュ、リモコン、携帯、電気コードなど、犬がイタズラしやすい物は届くところには置かない。壁や大物家具家電は隠しておけないので、イタズラをする前に行動を中止させて防止します。
できる限り、犬を叱らずに生活するには、飼い主さんが環境を整えるのが一番の解決策です。そして、犬にとって事後の指示や教育は、正しく伝わらないことを知っておきましょう。
不在時のイタズラは誤飲の危険があり、絶対にやめさせなければいけません。飲み込んでしまった物によっては命の危険もありますし、飲み込んだことに気が付かずに、腸閉塞などを引き起こしかねません。
犬のイタズラに、何度教えても言うことを聞かないと悩んでいる飼い主さんは、まずは愛犬の行動や癖をよく観察して、適切なタイミングで指示が出せるよう練習してみましょう。