犬が飼い主の匂いを嗅ぐのはなぜ?
家にいてもお散歩に出ても犬はとにかく匂いを嗅いでいることが多いと思います。特に初めて会った人や物、そして飼い主の匂いは特に念入りに匂いを嗅ぐ傾向にあります。しかし、毎日会っている飼い主の匂いを何度も何度も嗅ぐのはなぜなのでしょうか?
犬は匂いを嗅ぐことでそこからさまざまな情報を得ています。お散歩で道や公園の匂いを嗅ぎまわっているのも、他の犬に会った時にお尻を中心に匂いを嗅ぎ合うのも全て情報を得るため。この道をどんな犬が通ったか、出会った犬の素性や体調などを犬は匂いから知ることができるとされています。そのため、飼い主のこともより深く知ろうとして匂いを嗅ぐのです。特に飼い主の帰宅時など少しでも離れていた時間があると、その間何をしていたのかどこに行っていたのかを知ろうと匂いを嗅ぎまわることでしょう。また、嗅ぎ慣れた飼い主の匂いを嗅ぐことで安心感を得ているとも考えられます。
犬が飼い主の匂いを嗅ぐと脳や感情に変化が起こる
犬は飼い主の匂いが大好きです。そのため、靴下やスリッパ、服、ベッドなど飼い主の匂いが強くついているものを好み、噛んだりそばに置いて寝る行動などは多く見られます。初めて行く場所などで不安を感じやすい場合は、犬自身の匂いがついたものだけでなく飼い主の匂いがついたものも持っていくと犬の不安が減って安心して過ごすことができると言われています。
「犬は飼い主の匂いが好き」ということは漠然と感覚的に知っている人は多いと思いますが、実はこれには科学的な根拠があるとも考えられているのです。アメリカ・エモリー大学の神経科学者であるグレゴリー・バーンズ氏が高度な人工知能技術を用いた脳画像解析によって、犬が匂いを嗅いだ時に起こる脳の変化について研究を行っています。しっかりとトレーニングされた犬12頭を対象に、自分自身・知らない犬・一緒に暮らしている犬・知らない人間・一緒に暮らしている人間の5種類の匂いを嗅がせ、脳や感情の変化を分析しました。その中で特に一緒に暮らしている人間の匂いを嗅いだ時に、脳内で “前向きな希望”や“好意的な感情・快感“を司る部分が強く反応するということが明らかになりました。他の匂いを嗅いだ時にはほとんど活性化しなかったとのことですが、なぜ一緒に暮らしている人間の匂いにだけ反応するかということまではまだわかっていないようです。
犬が安心している時に見せる仕草
飼い主の匂いを嗅いで安心している時には犬はとても無防備になり、外ではあまり見せない姿を見せてくれるでしょう。飼い主を信頼し安心している時には、急所であるお腹を出して仰向けになったりリラックスして横になって眠ったりします。また、お尻や背中を飼い主にくっつけて座ったり伏せたりする様子も犬が安心している証拠。動物は自分の背後を見せるということに危機感を感じるため、信頼をおける相手でなければその状態で休むということはできません。口のまわりを中心に顔をなめてくる行為も相手に対する信頼や甘えをあらわすもの。これは本来子犬が母犬に対して行うことの多い行動で、親愛の情をあらわしていると考えられます。
犬は飼い主の匂いを嗅ぐことで安心し前向きになる
日頃の行動を見ても、専門家による研究結果を見ても、犬が飼い主の匂いを好みそこから安心感を得ているということがよくわかります。犬が匂いを嗅ぐのはもっと相手のことを知りたい、知ることで安心感を得たいという気持ちがあるのだと思います。そのため、帰宅後など匂いを嗅ぎに来た犬には存分に嗅がせてあげることはとても大切なコミュニケーションだと思います。愛犬との信頼関係を深め、犬の気持ちを安定させるためにもぜひ納得のいくまで匂いを嗅がせてあげてくださいね。