犬は人に心を閉ざしてしまうことがある
犬は遠い昔から人と共に生きてきました。日本においては、縄文時代から犬は人の狩りの手伝いをしていたと考えられており、縄文時代の遺跡からは丁寧に埋葬された犬の骨が見つかっています。
長い歴史を人と共に歩み続け、「人間の最良の友」とも言われている犬ですが、時として人に心を閉ざしてしまうこともあります。その原因としては、暴力や飼育放棄による肉体的・精神的虐待や、体罰を与える間違ったしつけなどが挙げられます。
虐待や体罰によって心身に傷を負い、人に心を閉ざしてしまった・・・そんな犬の怯えた目を見ると、胸が締め付けられる思いです。そのような犬は、「仕草や行動」にも人への恐怖心が表れています。
それでは、心を閉ざしている犬はどのような仕草や行動をするのか、そしてどのように向き合っていくべきなのか、一緒に見ていきましょう。
心を閉ざしている犬がする仕草や行動
①尻尾を股の間に挟み込む
犬は言葉を話すことはできませんが、尻尾の位置や動きで自分の気持ちを表現します。尻尾を股の間に挟み込むのは、「怖い!」「近寄らないで!」という気持ちの表れです。
このときの犬の姿勢は低く、耳を後ろに寝かせています。もし人が近づいたときにこの仕草を見せるのであれば、人に怯えて心を閉ざしている犬である可能性があります。
②視線を合わせない
人は、怖いと感じる対象からは目をそらしたくなるものです。犬も怖いときは視線を下げて、相手の視線を避けようとします。ですから、人に心を閉ざしている犬は、かたくなに人の目を見ようとせず、視線が合わないように顔を背けます。
③震える
犬の体が震えるのは、寒いときだけではありません。恐怖心が強いときも、無意識に体が震えます。ですから、人が恐怖の対象となっている犬は、人が近づくとブルブル体が震え出してしまうことがあります。
④硬直する
人が怖いあまりに、硬直して体が全く動かなくなってしまうこともあります。これは、恐怖を感じるとアドレナリンが体内に放出されて、全身の筋肉が硬直するためです。怖くて逃げ出したい気持ちとは裏腹に、体が動かなくなってしまうのです。
⑤唸る・吠える
犬が唸るときは攻撃的な気持ちになっていると解釈してしまいますが、人が怖くて怯えている犬は極度の恐怖心から威嚇行動に出ることがあります。鼻にシワを寄せ、険しい顔つきで犬歯を見せながら唸っていても、本当は怖さでいっぱいなのです。
けたたましく吠えるのも犬の精一杯の最後通告で、「怖い!」「あっちへ行って!」というメッセージを送っています。恐怖心から威嚇行動に出ているときの犬の姿勢は低く、尻尾は下がり、耳は後ろに寝ています。
⑥噛みつく
犬はむやみに噛みつく動物ではありませんが、怖さが極限に達すると自分の身を守るために噛みついてしまうことがあります。
唸る、吠える、噛みつくといった行動は、一見攻撃性が強いように見えます。しかし、人に怯えて心を閉ざしている犬は、自分に近づいて来る人への恐怖心を感じ、その裏返しで威嚇や、攻撃などをしてしまうことがあるのです。
心を閉ざしている犬と向き合っていくときに大切なことは?
人に心を閉ざしている犬と向き合っていくときに大切なことは何でしょうか?2つご紹介します。
犬の心に寄り添う
人に心を閉ざしている犬と向き合っていくためには、まず犬の心に寄り添うことが大切です。心を閉ざしている犬と早く仲良くなろうとして、こちらから近寄ったり、声をかけたり、触ろうとしたりすると逆効果になってしまうこともあるので注意が必要です。
無理にスキンシップやコミュニケーションをはかろうとするのではなく、犬が何を感じて何を望んでいるのかを理解してあげましょう。
気長に付き合っていく
虐待や体罰といった怖い経験をし、心を閉ざしている犬の、人への恐怖心は簡単に拭い去れるものではありません。犬のペースに合わせ、時間をかけて少しずつ恐怖心を取り除いていく必要があります。
人に心を閉ざしている犬と向き合っていくときは、犬が人を怖いと思わなくなるまで、穏やかな気持ちで気長に付き合っていくことも大切なのです。
まとめ
虐待や体罰によって人に心を閉ざしている犬が見せる仕草や行動はさまざまです。人間の最良の友であるはずの犬が人を怖がって震えたり、牙をむいたりするのを見るのはつらいものです。しかし、それほどにまでその犬の心は深く傷ついているということを理解してあげましょう。
人に心を深く傷つけられ、心を閉ざしている犬と向き合っていくのは簡単なことではありませんが、犬の心に寄り添い、犬のペースに合わせて気長に付き合っていくことが大切です。