犬は観察する動物である
犬という動物は周りの状況や人の様子、他の犬の様子などをとてもよく観察する動物です。彼らは野生の狼だった時代から複数頭の群れで生活していました。本来肉食獣である彼らは狩りをして生活していました。群れ全体を養うために狩りを効率的に行う必要があったのです。
狼は人の様に言語でコミュニケーションをとるわけではありません。そのため狩りの仕方についても、言葉で教えてもらうことはできません。そこで狼たちは狩りの上手い先輩狼の動きを観察しました。
小さな動物の狩り方や大きな草食獣の倒し方、または反撃のかわし方などを確実に学ばなければ、自分も食べていくことが出来ませんし怪我で死んでしまうかもしれません。また群れ全体を危険に陥れる可能性もあります。だからこそ狼たちは上手な先輩をよく観察し、その動きを真似たのでしょう。それが狼たちの学習だったのです。
この性質を残しているため、大抵の場合に犬は自分の「群れ=家族」のそれぞれについて経験値を優先させた順位をつけているようです。
最近の研究ではこの順位付けという考え方も見直されていて、狼の群れも階段的な支配構造にはなっていないと言われていますが、群れの親や年上の経験が豊富な狼に子どもや若い狼が戦いを挑むことはないそうです。
真似をさせてもらい経験を積まなくてはならない子どもや若い世代の狼にとって、年上の狼は自分を生かすテクニックを持つ大事な先生なのでしょうね。家庭に飼われている犬にとって、この先輩狼にあたるのが飼い主なのです。
犬は真似をして学ぶ動物である
さて、犬も狼と同様に年長のものを観察してその行動を真似ることで学習をしていきます。
犬は生後1か月(約4週間~5週間)ではっきり目が見える様になったり耳が聞こえるようになったりします。それまでの間もうすぼんやり見えていたり、聞こえていたりはするのですが、生後1か月から生後3か月(生後12週間)の間は母犬や兄弟犬からものすごい量の情報を吸収します。
おなかの中やベッドの中にいた時とは違う、外界からの刺激を受け社会に適応していく時期となります。
この時の好奇心と行動力はすさまじく、見るもの、聞こえるものすべてに反応して興味を示します。
この時期には母犬に噛みついては叱られたり、兄弟でぶつかってはひっくり返ったりしてよく遊ぶ子犬ですが、彼らは母犬や兄弟犬の行動をよく観察して真似をすることに一生懸命です。例えば、母犬がする「遊ぼうよ!」のポーズを真似すると遊んでもらえると学習したり、兄弟が母犬を噛んでしまって怒られているときに「お腹を見せる」と許してもらえると学習したりですね。
母犬の真似をすることで犬同士のお付き合いを学ぶこの時期は、犬の一生の中で大変重要だと言われています。
犬は飼い主の行動を真似る動物である
犬か群れで生活していた狼の頃の名残で、年長者や親の行動を観察し真似る性質があることは先に挙げたとおりです。この性質はもちろん子犬の頃だけのものではありません。群れのリーダー、あるいは自分より強い個体、優れている個体を観察して真似ることは野生において生存の確率を高めることになるので、成体になったとしても学習は続けられるのです。
現代の犬にとってはリーダー、あるいは自分より強い個体として位置づけられるのが飼い主でしょう。彼らは野生ではないため生存を賭けて他者を真似る必要はないのですが、自分の生活環境を豊かにするためには飼い主の行動を真似した方が都合が良いと考えているのではないでしょうか。
大抵の場合、犬が自分の行動を真似たら飼い主はそれに驚き、感激すると思います。人知れず泣いていた時に犬が泣いているような切ない表情で寄り添ってくれたら、ありがとうと褒めてあげるでしょう。または遊ぼうと思って笑ったとき、犬が笑顔を作ってそれにこたえてくれたとき、そんな時も犬をほめてあげたりすると思います。
犬にとっては飼い主に喜んでもらい褒められることこそ至上です。飼い主の真似をすると人は笑顔になり、褒められる確率が上がります。そのため狼譲りの優れた観察力で飼い主を動きや表情をよく見ているのです。
まとめ
いかがだったでしょう。犬にとって人の行動を真似ることは、強い個体の真似をすることと同じことで、生きるための習性だったのです。真似をされているということは、犬はあなたのことをリーダー、あるいは自分よりはるかに優秀な個体と認識しているのだと思います。みなさんのおうちの犬たちは誰かの真似をしていませんか? 犬にとってのリーダーがそれで分かるかもしれません。是非観察してみてくださいね。