犬の健康と幸せを守るために、犬という生き物を知ろう
イギリスの英国王立動物虐待防止協会は1824年に設立された、世界で最初の動物福祉団体です。同協会は2017年に3000人以上の犬の飼い主を対象にアンケート調査を行いました。
その結果からはイギリスの人々が愛犬を大切に思う姿が浮かび上がってきたのですが、同時にまだ多くの人々が「犬が何を求め何が必要なのか」を知らずにいたり誤解していることも見えてきました。
今回ご紹介するのは、同協会が「すべての飼い主が愛犬の健康と幸せを守ることができるように」という目的で発信したアドバイスです。
犬は多様な生き物
ひとつの種の中で犬ほどの多様性を持つ生き物は他にいません。体の大きさや形状のバラエティはご存知のとおり。平均的なチワワとセントバーナードの体重差は110倍以上になるものです。
いっしょに暮らしている犬の犬種としての特性を学んで、よく知ることは犬の幸せを守るために不可欠です。
犬は高度に発達した感覚を持つ生き物
みなさんご存知のように、犬は人間よりはるかに優れた非常に発達した嗅覚を持っています。
また聴覚においても犬は人間が聞き取れる音の4分の1の音量でも感知することができます。
犬の視力はあまり良くないと思われがちですが、暗いところでは犬は人間よりも良くものが見えています。
あなたの犬はしっかりと嗅覚を使っているでしょうか?
散歩中に未知の匂いを探索する機会を持っているでしょうか?
犬の優れた聴覚にとって、騒々し過ぎる環境で長時間過ごしていないでしょうか?
夜という自然と暗くなる時間になっても、明るい光の下で長時間過ごしていないでしょうか?
犬の優れた感覚を尊重することは、犬の心と体両方の健康を保つために必要です。
犬はさまざまなコミュニケーション手段を持つ生き物
犬の嗅覚、聴覚、視覚のことに触れましたが、これらは犬のコミュケーション手段としても使われます。
人間にとって排泄物のにおいは嬉しいものではありませんが、犬にとっては情報を伝達するためのツールでもあります。衛生面に気をつけながら、犬の情報伝達手段も尊重することが必要です。
犬は吠えたり唸ったりという複雑な音声の組み合わせもコミュニーションに使用します。犬が吠えている時には理由があります。すべてを「無駄吠え」と呼び「ダメ!」と否定するのではなく、犬の発するメッセージを読み解く姿勢が大切です。
また犬は『カーミングシグナル』に代表される、体、顔、尻尾、耳、四肢を使ってジェスチャーによるコミュニケーションも行います。これらは当然ながら人間のジェスチャーとは違うものなのですが、多くの人が読み違えてしまう部分でもあります。犬が体を使って発するメッセージを勉強し理解することは、犬の幸せのためにも人間の安全のためにも絶対に欠かせないものです。
犬は雑食性の生き物
犬は肉と植物性の食べ物の両方を食べる雑食動物です。肉を引き裂くのに適した形状の歯も持っていますが、猫など他の肉食動物と比較すると食べ物をつぶすための臼歯がしっかりしています。
このような犬の食性に適した食べ物を与えることが、犬の健康を保つために重要です。
犬は刺激が必要な生き物
犬は好奇心旺盛で積極的に情報を集め、調査や探索に時間を費やします。そのために長時間歩き回ったり、身体を使った活動をします。これらの特性のために、犬は狩猟や牧畜といった人間の生活の有能な相棒となってきました。
つまり犬にとっては頭脳と身体への両方の刺激が必要だということです。変化に乏しく頭脳への刺激のない毎日、思い切り身体を動かす機会のない日々は犬にとって辛いものです。
犬は社会性を持つ生き物
さまざまなコミュニケーション手段を持つことでわかるように、犬は人間同様に社会性を持つ生き物です。他の犬との仲間集団を楽しみ、結びつきを見せます。犬同士だけでなく、人間とも強い社会的な結びつきを形成するのはご存知の通り。特にいっしょに暮らす特定の人間と非常に強い絆を結ぶ生き物です。
他の犬と接触する機会がないというのは犬にとって悲しいことです。仔犬期の社会化の重要性が叫ばれるのはこのためです。
人間との結びつきの強さを考えると、毎日長時間の留守番や家族から隔離されたところで暮らすことが犬に与える影響も想像できますね。
犬はまさに人間の最良の友
1万年以上も昔に犬が人間と暮らし始めた頃、彼らはさまざまな形で人間の生活を手助けしてきました。現代では多くの犬が家族の一員として、人間の心をサポートしています。
さらに、ハンディキャップのある人々を助けたり、命をかけて危険な任務に就いたり、ガンや糖尿病を検知したり。
「犬は人間の最良の友」という言葉は単なるたとえではなくて、まさにその通りです。
私たち人間はそんな最良の友のことをよく知り、学び、尊重していかなくてはいけませんね。
まとめ
英国動物虐待防止協会がすべての飼い主に向けて送った「犬という生き物をよく知って、彼らの健康と幸せを守ってほしい」というアドバイス。
ひとつひとつは「知ってるし、わかってるよ」ということなのですが、こうしてまとめると改めて背筋が伸びる気がするものです。
一人でも多くの飼い主が少しでも犬に対する理解を深め、一匹でも多くの犬が健康で幸せな生涯を送れるよう願ってやみません。
《参考》
https://www.rspca.org.uk/adviceandwelfare/pets/dogs