春から始める予防
寒い冬が終わり、暖かな春がやってきます。春が近づくと動物病院は活気付きはじめ忙しくなります。それはワンちゃんにとって病気の予防の季節になるからです。地域によって予防の時期は違いますが、春から始める予防で防げる病気があります。
狂犬病
狂犬病予防法によると
と記載があり、犬を飼うにあたり登録と年に一度の予防接種は義務づけられています。よく受付で「狂犬病予防は絶対しないとダメなの?」と聞かれる事があります。確かにここ数十年日本での発生はありません。しかしそれはラッキーなだけで、いつ発生するかはわかりません。2013年に日本と同じ様に数十年発生していなかった同じ島国である台湾で、狂犬病が見つかりました。人に感染すると特効薬や治療法もない、致死率100%の怖い病気です。海外との交流が盛んな今の時代、いつ狂犬病が発症してもおかしくありません。
ただ病気の治療中や老犬、注射のアレルギーがある子もいるのでその場合は一度かかりつけの先生に相談し予防接種を受けて下さい。
フィラリアの予防
ワンちゃんを飼ううえで必要な予防の1つです。住んでいる地域の気候によって蚊が活動する期間が違いますが、蚊が出始めて1ヶ月後から蚊がいなくなって1ヶ月後までが予防期間です。1ヶ月に一度フィラリアの予防薬を飲ませる事で予防できます。春に昨年の予防がきっちりできているのかを確認する為に血液を少量とり検査し感染がなければ予防薬を飲ませる事が出来ます。よく「血液検査って絶対しないとダメ?」と聞かれますが、もし感染したままの状態で薬を飲ませると、体の中のフィラリアが一気に死に血管に詰まったり、アナフィラキシーショクを起こし突然死する事があります。
昔、その状態になった子が運ばれてきました。その子は検査をしないまま昨年飲まし忘れて残っていた予防薬を飲ませ、ショック状態に陥りました。緊急処置を行いましたがそのまま亡くなってしまいました。
確かに近年、フィラリア感染している子は少なくなりました。しかし、5年以上フィラリア予防していない子が感染していなかったこともある一方で、夏の短い間だけ予防し予防期間を早めに終わっていた子が感染していることもありました。感染するかしないかは、フィラリアに寄生されている蚊に刺されるか刺されないかなので、外に出て完全に蚊に刺されないようにする事は困難です。一度感染し心臓に寄生すると、駆除する事は難しく体に大きな負担となります。予防薬をきっちり飲ませていれば予防できる病気です。
ノミやマダニの予防
春はお散歩も気持ちよく、近くの山や川にハイキングに出かけたり大きな公園に出掛けたりと外に出る機会が増えます。暖かくなるとノミやマダニの活動も活発になり、予防を怠ると体に寄生してしまいます。
ノミが寄生し家で繁殖すると駆除は大変です。それに人もノミに咬まれるとひどい痒みです。私もノミに咬まれた事がありますが本当に痒くて我慢できません。ワンちゃんもノミに寄生されるとひどく痒がり、ノミアレルギーを発症すると痒みや脱毛や湿疹で強いストレスから痩せてしまったり、大量に寄生される事で貧血をおこす事もあります。
またマダニが寄生する事でおこる怖い感染症もあります。犬のバベシア症はマダニが吸血することにより感染します。ワンちゃんの血液の中にある赤血球の中に侵入し、その赤血球を破壊し血液が壊れひどい貧血を起こします。点滴や輸血が必要となり重症化すると命の危険もあります。
今まで数件、感染した子をみました。その中で、小さなヨーキーの子はもともと体が小さいうえ痩せていた為、輸血と点滴を行い無事に退院しましたが治療は長期間続きました。またここ数年、マダニ感染症により人が亡くなるニュースも耳にした人も多くいると思います。ワンちゃんだけでなく、人にも感染するので予防する事は自分自身を守ることにもなります。
最後に
春から始める予防はワンちゃんにとって必要な予防です。確かにお金もかかりますが、もし感染してしまうと治療でもっとお金もかかりますし、命にも関わります。
長い間動物病院に勤めていて、フィラリアに感染したワンちゃんや、マダニの感染症でひどい貧血になり輸血した子や、ノミアレルギーで激しい痒みに襲われている子をみてきました。どの子も治療は大変で、中には完治する事なく亡くなった子も多くいます。
また予防する事で他のワンちゃんへの感染を防ぐことにもなります。狂犬病は年に一度の注射で予防出来ます。フィラリア予防薬やノミダニ予防薬も、与えやすいおやつタイプや背中にたらすスポットタイプ、小さな錠剤や注射もあるので予防方法も今は簡単になっています。
色々なご意見はあると思いますが、大切な愛犬を守る為・自分自身を守る為・他のワンちゃんや人を守る為にも必要な予防です。