犬が消化にかける時間
犬の消化時間は、通常約12時間~24時間だと言われています。通常の場合、胃で2時間、小腸で1時間、それから大腸でゆっくり水分を吸収し、12時間後に排泄するという流れになります。
消化時間は犬の個体差や年齢、食べた物などにより異なりますが、消化に時間のかかるものは胃腸の負担にもなってしまいます。特に消化器官が衰えている老犬や胃腸の弱っている犬に与える時は、胃腸への負担を軽減するために食べ物を小さくカットしたり、すり潰すなどの与え方の工夫が必要です。
犬は食べ物を人間のように噛むということがなく、喉を通る大きさになると飲み込んでしまいます。犬が食べ物を丸飲みするのは、祖先であるオオカミが食べてすぐに栄養として体に取り込まなければならなかったという名残と、犬の歯が食べ物を引きちぎることだけに特化した形状であるためです。
また、草食動物に見られる臼歯という歯が無く、食べ物を噛んですり潰すようにできていないことも理由のひとつです。
犬にとって消化時間が短い食べ物
生肉などの動物性たんぱく質が豊富な食べ物や、消化酵素がたくさん含まれた果物、柔らかく煮てある食べ物は、体への負担も少なく4~5時間で消化されていきます。このように犬の消化にいい食べ物は、胃に留まっている時間が短いので、胃に優しい食べ物です。
犬にとって消化時間が長い食べ物
穀物や野菜など、特に食物繊維が多い食べ物はそのまま与えると消化不良を起こしてしまいます。犬の腸は草食動物のように、腸の微生物による消化吸収ができないので、食物繊維でできている、野菜の細胞壁内の栄養を消化吸収することが難しいため、消化時間も長くなります。
犬の年齢に応じた消化の手助け
犬が消化に使うエネルギーは、体内で作られるエネルギーの60%ほどが消化のためだけに使われているそうです。胃腸に負担がかかるので、成犬の食事の回数は通常1日2回で問題はありません。
ですが、仔犬や老犬はどうでしょうか?
仔犬の場合
仔犬は消化器官が未発達なので、1日の食事の回数は時間を見て3~4回に分けるのが良いです。胃腸の負担よりも栄養を吸収することの方を考え、市販のフードは「仔犬用」を与えてあげてください。
また、仔犬は消化時間が早いため、消化不良や空腹で吐く場合がありますが、消化不良の場合は消化を良くするため、ドッグフードをお湯でふやかしたり、空腹の時間を短くするため食事の回数を小分けにすると良いです。
老犬の場合
犬を長生きさせる秘訣は食事、運動、ストレスをかけないことなど様々ですが、老犬になると消化器官の働きが衰えてくるので、「老犬用」フードに切り替えることや、健康に悪影響を及ぼす可能性がある化学物質が使用されている食べ物を避けることです。
また、食事の回数は少量を小分けにすることで消化器官にかかる負担も軽減できます。ドライフードなどの固いものはお湯でふやかしたり細かくして出汁と混ぜてあげたりすることで消化の手助けができます。
犬の消化に良い食べ物と与え方
「食物繊維」は犬にとって消化時間がかかるので「与えてもいいの?」と悩まれている飼い主さんが多いのではないでしょうか。
ですが食物繊維は、腸内のゴミやウィルスを排泄物として出してくれる働きがあるので犬にとってもむしろ必要なものなのです。
犬の消化を助けるためにも、避けるのではなく工夫をして与えてあげましょう。
リンゴ
腸内の善玉菌を活性化させる作用があるペクチンが入っています。また、抗酸化作用を持つポリフェノールは皮の部分に含まれています。おすすめの食べ方はリンゴをよく洗い、皮ごとすり下ろすと栄養を逃すことなく体に取り込むことができます。
キャベツ
キャベツにはビタミンU(キャベジン)が含まれていて、胃の粘膜を保護してくれる作用があります。また、ビタミンCも豊富に含まれていて、免疫力アップに欠かせません。食物繊維が豊富ですが、生のままミキサーで細かく刻んだりして与える工夫をすると不足しがちな食物酵素の摂取ができます。
ヨーグルト
ヨーグルトには乳酸菌が多く含まれ、整腸作用が望めます。仔犬などの腸内細菌が不安定な時や、突発的にお腹を壊した時に、無糖(プレーン)のヨーグルトを少量与えるのが良いです。また、腸内の菌の様子も日々変わるため、毎日少量与えることで乳酸菌の栄養を随時補給することができます。
納豆
納豆に含まれる栄養素はタンパク質と脂質ですが、ビタミンやミネラル分も豊富で、いずれの栄養素も犬には不可欠です。便秘や便秘予防で犬に与えると、効果が表れる場合があります。納豆は食物繊維豊富なため、犬に与える際には細かく刻んで与えるのがおすすめです。
さつまいも
ビタミンなどの栄養が豊富で食物繊維も豊富な食べ物で、愛犬の食欲不振や胃の調子が悪い時に整腸剤代わりに犬に与える飼い主さんも多いです。
しかし、さつまいもはカロリーと糖分が多いので、メインで与えるのではなく、おやつやトッピングとして細かく切って少量与える程度が望ましいです。
まとめ
愛犬の消化時間を短くし、いかに栄養を十分に吸収できるか、それによって犬の健康を維持することに繋がると思います。そして重要なのは排泄物のチェックです。
どのような状態か、愛犬がしっかり消化できているかなど、便の状態で知ることができます。また、犬は環境の変化やストレスで胃腸に負担がかかる場合もあります。仔犬の時に飼い主さんが変わったり、老犬になったことで外から室内に移った時なども注意が必要です。
犬の消化時間を知り、理解することで愛犬への食べ物の選び方や与え方が変わってくると思います。普段与えているドッグフードの材料が気になった飼い主さんも、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。これを機に、愛犬に消化の良いフードの見直しをしてみてはいかがでしょうか。