柴犬は狼と最も近い遺伝子を持つ犬種だった!
犬は元々狼だったという説は一般的によく知られていますが、実は詳しいことは謎に包まれている部分がとても多いのです。世界中のいろいろな大学でこの件についての研究がされてきましたが、なかなか信ぴょう性のある結果が出ていませんでした。
ところがついにアメリカにある大学のチームが行った研究の結果が発表されたのですが、それが何と、日本の柴犬が一番狼に近いという内容だったのです。
研究結果を大まかに説明すると、5000匹以上の犬の遺伝子を検査し狼が犬への進化を遂げた時代を調べるなど、犬の遺伝的な特徴を分類することによって4つのカテゴリに分ける研究がされました。その中の一つに狼に一番近い遺伝子があり、その遺伝子が最も多い犬種が柴犬であるということが分かりました。
柴犬の遺伝子は、ほぼ狼に近い性質の遺伝子で構成されていたのです。つまり柴犬のDNAは狼に近いDNAを持っているということです。
柴犬が持つ狼と共通する遺伝子(DNA)とは?
犬の起源を知るためにアメリカの大学のチームが行った研究は、5000匹以上の様々な犬の遺伝子を調べる事から始まりました。
その犬たちの中には純血種からミックス犬まで様々であり、野良犬のような犬種が混合されているようなものも含まれています。それら1匹1匹の遺伝子を細かく調べ上げていき辿り着いた検査結果は、犬の遺伝子は大きく次の4つに分類することができます。
WOLFLIKE(ウルフライク)
狼の特徴に限りなく近いDNAを持っていて、犬の歴史の中でも最も古くから存在していたと思われます。柴犬が狼に近いと言われているのは、この遺伝子を犬の中でも一番多く持ち合わせているという結果が出たためです。
HARDERS(ハーダーズ)
牧畜犬として働ける特徴を持ち、群れることを好む性質を持っていて、ボーダーコリー・シェットランドシープドッグなどがこの遺伝子を多く持っています。
HUNTERS(ハンター)
獲物を目がけて素早く行動する敏捷(びんしょう)性を持ち合わせていて、猟犬と呼ばれている犬種がこの遺伝子を強く持っています。ビーグルやイングリッシュ・ポインターなどが猟犬として有名です。
MASTIFFLIKE(マスティフライク)
屈強な体を持ちいざという時には戦うことができ、警察犬や軍用犬などに向いているジャーマンシェパードやドーベルマンなどがこの遺伝子を強く持ち合わせています。
どんな犬でもこれら4つの遺伝子の特徴を持っていますが、その犬によってどの遺伝子が強いのかそれぞれ違ってきます。それらを細かく調べていくうちに判明したのが、狼に一番近い性質を持っているとされるウルフライクの特徴を強く持っているのが柴犬であるという研究結果だったのです。
実際に柴犬には狼に近いDNAであるウルフライクがどのくらいの割合であるかのグラフも発表されていますが、そこに記されているのはほぼ柴犬の遺伝子はウルフライクであることが分かり、どれだけ柴犬と狼が近い関係であるのかを読み取ることができます。
柴犬と狼の似ているところ
柴犬は日本でも馴染みのある犬種なのでよく目にすることがありますが、狼は動物園などに行かないと見ることはできません。柴犬と狼の遺伝子が近いと言われても、いまいちピンと来ない人も多いのではないでしょうか。そこで、柴犬と狼の似ているところを比較してみました。
性格で似ているところ
柴犬と言えば、番犬としても活躍してくれるほど勇敢で、見知らぬ人や犬、物への警戒心が強い犬種です。頑固で独立心が強いなど、気難しい一面があるとも言われていますが、飼い主に対する忠誠心は強く、信頼する人への愛情深さは人一倍持っています。
狼はと言うと、1ペアのオスとメスのつがいを中心とした群れを成して生活をすることを好み、家族や仲間と協力しながら子育てや狩りを行う動物です。狼には飼い主がいるわけではないので、信頼や愛情は群れの中心である親狼や仲間に向けられます。
「狼少女」など、狼が人間を育てたという話が幾つかありますが、このようなストーリーからも仲間に対する愛情深さがうかがえます。一方で、群れの家族や仲間を守るためには、縄張り争いをする他の群れの狼には勇敢に立ち向かい、厳しく接します。
このように、仲間を愛し、家族に忠実で群れを作って行動する。そして、時には勇敢に敵に立ち向かうところは、飼い犬である柴犬と野生の狼の性格で似ているところです。また、好奇心が盛んなところも狼との共通点であると言えます。
見た目で似ているところ
柴犬と狼の見た目の類似点としてあげられるのは、面長な顔つきと筋肉質で引き締まった体型です。一般的に「キツネ顔」と呼ばれる丸みの少ない柴犬の方が古いルーツを持っているとされ、狼とも外見の雰囲気が近いように感じる人が多いでしょう。
また、当たり前のように感じるかもしれませんが、4足歩行で、人間とは異なる鋭い2対の犬歯を持っていることも柴犬と狼には共通しています。犬歯とは、肉を切り裂くことに特化した尖った歯のことです。
そして、いわゆる犬の親指部分である「狼爪(ろうそう)」も、狼や野生の頃の名残りと言われています。後ろ足の狼爪は、岩山を登ったり降りたりする時の滑り止めとして使っていたとされているからです。
狼爪については柴犬であっても生まれつき退化して存在しない場合があります。しかし、この狼爪が柴犬にもあることは、狼の遺伝子を持っている1つの証かもしれません。
遺伝子で似ているところ
犬と狼は遺伝子上とても近い動物のため、交配しても繁殖能力のある子を生み出すことができます。犬種としても存在し、狼の血を濃く引いている「ウルフドッグ」が有名です。
そのため、実際に交配することはないとしても、遺伝子学上の話だけで言えば、柴犬と狼も交配して命をつないでいくことは可能であると言えます。
一方で、ライオンやトラなどの大型のネコ科動物に対して人工で行われたケースが有名ですが、近い種類の動物であっても、異種交配では繁殖能力を持たない子が生まれたり、先天的な体の異常が多く認められ、短命になる傾向があります。
このことからも、犬と狼の遺伝子はとても似ているところがあると考えることができます。
柴犬と狼の違うところ
ここからは、柴犬と狼の違うところも比べてみましょう。柴犬が狼に近い遺伝子を持つとは言っても、そこはやはり「犬」と「狼」であり、大きな違いがあります。この違いを知ると、柴犬は狼のようにはなれず、狼も柴犬のようにはなれないということがよくわかるはずです。
狼よりも柴犬の脳が小さい
柴犬は狼の血を引いていますが、人間に家畜化された犬です。家畜となった犬の脳は、狼の脳と比べると約20%も小さいことがわかりました。
人間に飼われている環境では、激しい縄張り争いや、敵から自分自身や家族を守るための危機感の維持、食料をいかにうまく探して獲得するかといった狼に必須の行動を考えなくても安全に生きていけるからです。
野生の狼が生きていく上でフル活用している五感も、人間と暮らす柴犬では活用する範囲が狭いため、脳の発達度合いが小さくなっていったと考えられています。
柴犬のほうが認知能力が高い
柴犬との暮らしで飼い主が力を入れるものの1つに、「しつけ」があります。
犬のしつけでは、言葉だけでなくジェスチャーで指や手のひらの動きなどを通して人間の意図を伝えることがありますが、こういった「合図」に対する理解力は、チンパンジーなどの霊長類よりも犬の方が高かったという研究結果が存在します。
柴犬のしつけをしていても、「おすわり」や「伏せ」の動きをジェスチャーを使いながら教えるのに、ものの1時間もかからなかったという話はよく聞きます。
狼はと言うと、たとえ人慣れさせていた場合であっても、人間が出す合図を理解して覚えるまでには年単位のかなりの時間がかかるようです。
柴犬よりも狼の自立心や独占欲が高い
野生の狼は、せっかく狩りで得た食べ物や縄張りを失わないように、群れや自分自身が生きていくために強い独占欲をもって「守る」行動をとります。
また、どうすれば狩りを成功させたり、敵を追い払って群れの仲間を守るかを判断しなければいけないため、柴犬には考えられないほどの自立心も持っています。これは生存本能に基づくため、人間が抑えることはとても難しいものです。
犬全体で見れば、柴犬も大好きなおもちゃや食べ物、飼い主のことをひとりじめしようとしたり、番犬として活躍できるほど独占欲や自立心が高い犬種と言われます。
しかし、こういった行動は人間がしつけでコントロールできるレベルのため、狼とはまったく違うものと言えるでしょう。
そもそも「犬のようになつく」人慣れは狼には難しいことからも、狼の自立心がいかに強いかや、犬がどれだけ人間と暮らすことに特化した動物なのかがよくわかります。
柴犬は狼よりも雑食に適している
犬は肉を切り裂く尖った犬歯を持っているものの、「肉食寄りの雑食動物」です。柴犬のドッグフードの組成を見ても、肉類がメインではありますが、穀類などを用いて炭水化物を配合しているものが多いでしょう。
実は犬の消化管を調べてみると、狼よりも長い腸を持っていることがわかっています。また、炭水化物に含まれるでんぷんを消化する能力も、狼より高いのです。
これは、農耕生活を営むようになった人間と暮らしてきた結果、雑食性の食生活に合うように、より消化能力の高い体に変化したと考えられます。
一方で狼も、実は肉だけでなく植物や残飯を食べることもあるそうです。しかしあくまでも「雑食寄りの肉食動物」であり、犬とは違う栄養バランスの食事が必要です。
肉食性が強い狼の牙は柴犬よりも大きく、獲物をとったり攻撃する時に噛む顎の力も各段に強くなっています。柴犬に噛まれるよりも狼に噛まれる方がダメージが大きくなることは、簡単に予想できます。
狼の遺伝子を継ぐその他の犬種
- シベリアンハスキー
- チャウチャウ
- 秋田犬
- 甲斐犬
- 紀州犬
- サルーキ
- サモエド
- シャーペイ
- 日本スピッツ
- シーズー
- ペキニーズ
- シベリアンハスキー
- アラスカンマラミュート
5000匹以上のいろいろな犬の遺伝子を調べたアメリカにある大学の研究チームは、4つの遺伝子がどのような割合になっているのかということを犬種ごとに細かく調べて発表しています。
柴犬が狼に近いという研究結果もこれを元に発表されている訳ですが、柴犬が狼の遺伝子を多く持っているように他の犬種も柴犬ほどではないにしろ狼の遺伝子を多く受け継いでいるものがあります。
柴犬の次に狼の遺伝子が多かったのはチャウチャウです。柴犬は顔つきが精悍(せいかん)なので狼と近い遺伝子と言われても違和感がありませんが、チャウチャウは愛くるしい表情の大型犬なので驚きですね。
三番目に狼の遺伝子が強いのが、何とまた日本犬であり、秋田犬なのです。秋田犬と言えば柴犬にそっくりなことも有名で、全く別の犬種であるにも関わらず見分けが付かないという人も多いのですが、同じように狼の遺伝子を多く受け継いでいるというのも似ている理由なのかもしれませんね。
ちなみに見た目が狼に近いシベリアンハスキーは柴犬よりも狼に近いDNAを持っていないそうです。狼に近い遺伝子かというのは見た目にはあまり関係がないようです。
狼から進化した柴犬の歴史とルーツ
柴犬と狼はとても近い犬種であるというのはわかりましたが、なぜ柴犬は狼と違ってここまで人間の生活に密着した生活を送るようになったのでしょうか?その理由は柴犬がこれまで歩んできた歴史に関係があるようです。
柴犬の歴史は大変古く、縄文時代まで遡ります。かつてイノシシやシカやクマを狩猟して生活をしていた人々は、原始時代から生息していた柴犬を狩猟犬として飼っていたそうです。
この縄文人と柴犬の絆は大変深く、犬の亡骸を葬った墓が今でも残っています。さらに、柴犬はもっと昔の古墳時代ごろには飼い犬として人間と共に生活をしていたのだとか。この頃の柴犬は今よりも、もっと狼に近い姿をしていたとの考えもあります。
古くから存在していた柴犬と友好的な関係を築きながら生活をしている人間、そんな歴史があるからこそ、柴犬は現在でも狼のDNAを色濃く受け継ぎながらパートナーとして人間の生活に密接な関わりを持っているのでしょう。
柴犬が狼の遺伝子に近い!海外の反応は?
狼に近い遺伝子を持つ柴犬ですが、そのような事実を抜きにしても海外の人にとって柴犬は大変ユニークな珍しい犬種として知られています。珍しいと言われるその理由の一つが、原始的な姿の見た目です。
日本人からすれば大変見慣れた容姿でありますが、海外の方からすれば柴犬は「キツネ?」「コヨーテ?」「オオカミの末裔?」など、自分達が知っている犬の姿からかけ離れた容姿に困惑してしまうようです。中には「とても野生的な見た目をしているけれど凶暴なのでは?」と心配する方もいるようです。
しかし、ご存知の通り柴犬は大変賢く飼い主に対する忠誠心も高いです。その見た目と性格のギャップがさらに海外から注目を集めているのです。海外の反応を見ても、日本人からすればあまりピンとこないでしょうが、それほど柴犬は世界的に見ても珍しい犬種だということです。
まとめ
柴犬は狼の遺伝子が強いということは、アメリカの大学が研究した結果で分かりました。柴犬は狼に近いDNAが一番多く、その他の3つの遺伝子はかなり少ないということが分かりました。柴犬が狼に近いという説は、どうやら本当だったようですね。
狼に近い遺伝子を持つという事実を抜きにしても、柴犬は海外から注目されている人気の犬種です。世界的に見ても珍しい日本を代表するこの犬種がこれからも絶えることがないように大切に守っていけたらいいですね。
ユーザーのコメント
30代 女性 ちょびこ
30代 女性 zzz
犬の祖先はオオカミの亜種、または突然変異だと言われていますが、太古から姿かたちがほとんど変わっていないというのはすごいことですね。
私が飼っている犬は愛玩犬と言われるジャンルですので、柴犬などの原種に近い犬種とは真逆で、人間に扱いやすいように改良が繰り返されてきた犬種です。確かに、精悍な顔立ちの日本犬と比べると、見た目も性格も、同じ犬とは思えない、と良く感じます。
日本犬は、数が減少している犬種も多く、愛好家の方々が一生懸命保存会などを設立して活動をされているようです。是非、途絶えることなく後世まで日本で古くから生きて来た犬種を守ってもらいたいです。
30代 女性 komanu
見た目はオオカミの片りんはあまり見られませんが、わが家の愛犬の性格は一言で言うなら「自分を持っている」ことです。外部からの侵入者(配達、検針員など)には容赦なく吠えてくれて番犬になります。ですが飼い主の言うことは、おやつを持っているとき、または乗り気じゃなかったら無視します。あえてこちらも怒りはしませんが飼い主に似たのでしょう。人間っぽいというか、横柄だなぁという感じです。飼い主への忠誠心以外は当たってます。遺伝子的になのでよくわかりませんが、やはり、飼育環境によって性格はそれぞれですね。
ですが、「オオカミともっとも遺伝子が近いのは柴犬」と聞き、柴犬を愛犬に持つ私は何だか誇らしくもあります。
女性 ミッキー
そっか、オオカミに近いから日本犬はしつけが難しいのでしょうか。愛玩犬や使役犬は、しつけやお仕事がしやすいように改良されていったんですもんね。
女性 数の子
以前北海道で狼を飼っている人を見たことがありますが、似てるけどやっぱり狼は犬とはちょっと違うと言っていました。どんな経緯で狼が犬になったのか、不思議ですよね、気になります。
女性 ゴン吉
チャウチャウも狼の遺伝子が多いなんて驚きですね。外見による判断はできないんだなと思いました。
狼に近いと言われると、攻撃性があったり群れを好んだりという性格を思い浮かべますが、柴犬は割と人懐っこい面も持ち合わせていますし、孤独を好む犬種なのでどこら辺に狼の遺伝子があるんだろう?と思ってしまいました。
日本犬の隠れた魅力がまたひとつ増えましたね。柴犬や秋田犬は海外の人気も高いですが、やはり日本犬としての血統は守っていくべきだと思いました。
男性 匿名
猟犬なんて絶対無理で、熊や猪なんて立ち向かえないと確信出来ます。
性格にもよりますが、我が家の犬狼に近いなんて疑います
50代以上 男性 匿名