「毎日愛犬とお風呂は絶対ダメ!」な理由
被毛で覆われている犬や猫は、肌がむき出しの人間より皮膚が強い、というイメージを持っていませんか?さらに、うちの犬は毎日一緒にお風呂に入ってるのに臭い。高級な人間用で洗ってるのにフケが出る。と思っている飼い主さん。
そのイメージやシャンプーの仕方は「大間違い」です!ワンコの肌はとってもデリケートなんです。まず犬の皮膚構造から、ダメな理由を見ていきましょう。
犬の皮膚の構造
犬の皮膚は大きく分けて、外側から順に「表皮」「真皮」「皮下組織」の3つの層でできています。
表皮の一番外側は「角質細胞層」と言い、紫外線や雑菌や乾燥などから肌を守っています。
人と犬の皮膚の違い
ヒトは進化の過程で体毛が無くなり、そのむき出しの皮膚を環境から守るために、肌のガード能力は被毛が無くても耐えられる様に進化しています。
一方、犬は現在も被毛で覆われていて、その被毛が肌をガードしています。被毛でガードされている犬の表皮の厚さは人間の5分の1ほどしかありません。その皮膚は人間よりも弱くとてもデリケートです。
ターンオーバー
犬の皮膚は一定の周期で生まれ変わります。表皮の一番下の基底層で作られた新しい細胞が少しずつ押し上げられ肌の表面まで達すると、それまで肌を守っていた角質層はフケとなってはがれ落ちます。これをターンオーバー(新陳代謝)と言い、周期は人間は約28日、犬は約20~25日と言われています。
犬の適切なシャンプー頻度が2週間〜1か月と言われるのはこのターンオーバーが関わっているからです。
免疫低下
ターンオーバーを無視した頻繁なシャンプーは、犬を清潔に保つどころか皮膚の状態を悪くする原因になりかねません。形成が不十分で隙間だらけの角質層はガード能力が低下し、その隙間から雑菌などが侵入しやすくなります。弱った皮膚はさらに外的脅威にさらされ、どんどん免疫力が低下してしまいます。
ドライング
トリマー時代、手が恐ろしいほど荒れていました。
手荒れの原因はシャンプー剤だと思っていましたが、一番の原因は実は毎日何度も当たるドライヤーの温風だったんです。温風は肌の水分を奪い、肌荒れを起こさせます。それが表皮の薄い犬ならなおさらです。
さらにドライヤーの温度は思っている以上に熱く、同じ場所に数秒当て続けるとヤケドをさせてしまいます。だからと言ってほどほどでドライングを止めてしまうと、湿気戻りが起こり、犬の肌はジットリ湿気たままで雑菌が繁殖しやすくなります。
この様に、犬の皮膚は弱くデリケートです。皮膚疾患で獣医さんから指導を受けている場合は別ですが、出来ればシャンプーは1か月に1〜2回が理想です。頻繁にシャンプーしたり一緒に入浴する事で愛犬の皮膚状態を悪くしているのは飼い主さんなのかもしれません。
人畜共通感染症(ズーノーシス)の危険性
動物から人間に感染する、 または感染する可能性がある疾患を「人畜共通感染症」と言います。人畜共通感染症は非常に数が多く、さらに病原体の性質が変化する事で人間に影響を及ぼしやすくなっているものもあり、その数は増えているそうです。
愛犬と入浴する事で人間に感染するリスクがある事を知っておきましょう。今回は犬猫に関する身近な人畜共通感染症について考えてみます。
パスツレラ症
パスツレラ菌(口腔内正常細菌)という、健康な犬猫の口腔内にいる細菌です。引っ掛かれたり、噛まれたり、空気中に浮遊する菌を吸い込んで感染するケースが多いようです。
症状
- ヒト … 外傷感染では傷が腫れる 、疼痛、化膿するなど。空気感染では風邪、肺炎、副鼻腔炎など。
- 動物 … 無症状、または呼吸器系の症状。
抵抗力の弱い幼児や高齢者、慢性疾患をお持ちの方は注意をして、過剰なスキンシップは避けましょう。
回虫症
感染した動物の排泄物から回虫の卵が経口感染します。犬が排泄物の匂いを嗅いだり、まわりの草を食べたり、排泄物を処理する人の手からも経口感染する事もあります。
症状
- ヒト … 発熱や重症化すると脳炎を発症。
- 動物 … 無症状、または嘔吐、下痢などの消化器系の症状。
抵抗力の弱い幼児や高齢者は十分注意をして、お散歩中も犬の行動に注意をしましょう。排泄物を処理した後は手を洗い、犬の食器やトイレなども定期的に熱湯消毒やそれに代わる消毒をしましょう。獣医さんで定期的な検診をオススメします。
皮膚糸状菌症(皮膚真菌症または白癬)
皮膚糸状菌という真菌で、すでに糸状菌に感染している犬や猫、ヒトと接触する事で感染します。
症状
- ヒト … 円形の赤い発疹や水ぶくれができ、痒みを伴う事がある。
- 動物 … 顔、耳、四肢などの一部に円形の脱毛ができ、痒みで患部を掻く動作も見られる。
ヒトも動物も抗真菌薬の塗り薬や内服薬で治療できます。動物との不用意な接触を避け、愛犬の居場所も清潔にしておきましょう。
その他の感染症
- Q熱 … コクシエラ菌という細菌で感染源は広く、ヒトが感染すると発熱や倦怠感などの症状がでる。
- ノミ刺咬症 … ノミに寄生された動物との接触でノミがうつり、ノミに刺された部位に強い痒みがでる。ノミはバルトネラ菌を媒介するので、猫ひっかき病にも注意が必要。
ペットと一緒に入浴する時は、このような病気に感染するリスクを知っておいてください。健康な成人は感染に過度に神経質になる事はありませんが、体が疲れていたり、幼児や高齢者のように免疫力が低下している方や、慢性疾患をお持ちの方は注意が必要です。
犬とお風呂に入るときに注意すること
お湯の温度は37度以下
犬は体温調節するための汗腺が肉球にしかありません。人間のように発汗で体温調節することが上手に出来ないので、人間が入浴する湯の温度の約40度は犬が熱中症になる可能性があり危険です。犬のシャンプー時は湯の温度は35〜37度に調節してください。犬が口を開けてハッハッと激しい呼吸を始めたら注意をしましょう。
入浴剤はペット用か無添加の乳幼児用を
最近は皮膚の乾燥や毛穴の汚れ洗浄などの効果があるペット用の入浴剤を取り入れるトリミングサロンが増えています。利用される方も多いと聞きます。お家で使用される時はペット用か、無添加・無香料の乳幼児用を選びましょう。それでも合わない場合があるので、様子を見ながら使用しましょう。
シャンプーは犬用を
どんなに薄めても人間用のシャンプーはお勧めできません。皮膚構造が人間と犬とでは違うことを述べたように、犬の皮膚は薄くデリケートです。さらに犬はアポクリン汗腺というベタッとした脂肪分を分泌する汗腺が全身に分布しています。人間用シャンプーでどんなにゴシゴシ洗っても犬独特の匂いと汚れにはあまり効果はなく、皮膚を傷つけるだけです。犬用シャンプーを泡立てて、マッサージするように優しく洗ってあげましょう。
自然乾燥せずにしっかり乾かす
トリマー時代、お家でシャンプーして被毛がフェルト状にもつれにもつれたワンちゃんが来店し、全身丸刈りにするしか方法がない、という事が結構ありました。お家でシャンプーされる方のほとんどはタオルで拭いた後自然乾燥していたり、ドライヤーで表面だけ乾かすだけでした。トリマーでもドライングは技術と根気が必要な作業です。不十分なドライングは細く柔らかい犬の被毛をもつれさせ、ダブルコートの犬は湿気が戻り、短毛種でも顔や脇の下や指の間が湿った状態です。湿った場所を好む細菌は、半乾きの犬の皮膚で繁殖し、体臭や皮膚疾患を発症します。
自然乾燥せずにしっかりと乾かしてあげましょう。長毛犬やダブルコートの犬はスリッカーブラシやコームを使い、とかしながら行うと無駄な抜け毛も取り除き、皮膚の状態も確認出来ます。
ドライヤーの温度に気をつけて、最後は乾かし残しがないかも確認してあげてください。
飼い主もしっかりと体を洗う
犬との入浴後は自分の体もしっかり洗いましょう。換毛期でなくても犬の毛は結構抜けています。細菌や寄生虫の卵が残っている可能性もあります。
まとめ
お風呂好きのワンちゃんなら、大好きな飼い主さんとお風呂も一緒なんてとても幸せでしょう。
犬の適温での入浴や、感染症のリスクを受けない健康体、入浴後のドライングや風呂掃除などの後作業までしっかりとできる飼い主さんなら、愛犬とのお風呂タイムは最高のスキンシップになるかもしれませんね。(オススメはしませんが…)
皮膚疾患のワンちゃんは、獣医さんと相談してシャンプーの種類や洗う頻度を決めましょう。自己満足にならないよう、愛犬との入浴の仕方をもう一度考え直して見てください。
ユーザーのコメント
40代 女性 匿名
うちで通っている獣医さんは皮膚疾患についてHPに注意等の説明を載せている先生です。
うちでは飼い始めの頃はお散歩が週に1回ぐらいだったのですが、その度に旦那が全身シャンプーをするので心配で先生に相談したら「もし頻繁にシャンプーをしてもきちんと洗い流せば問題ないです」と言っていました。
洗い残し(流し残し?)がいけないとの事でした。
もちろん、犬用シャンプーで優しく洗う事は当たり前で、きちんと乾かす事も前提でのお話ですが。
シャンプーに関しては「絶対ダメ!」って事ではないみたいですよ。
今はほぼ毎回お散歩に行っているので、2〜3日は足等お散歩中に地面に接する場所だけをシャンプーで洗っているので週に2〜3回は全身シャンプーしています。
先日予防接種で診察して頂いた時も異常ありませんでした。
うちの犬はおトイレの上で寝るのが好きなので、気を付けてはいますが汚れたトイレの上で寝ている事がたまにあります。
それがもし毎日だったら、きれいに洗い流せば毎日シャンプーした方が良いのではと思います。
女性 ゴン吉
ご飯後の口元やお尻周りくらいなら毎日でもいいと思います。