犬の血液型の種類
人間の血液型は「B型+」「O型-」というようにABO式とRh式で分類されますが、犬にも血液型の分類があります。ただし、犬の血液型は「DEA(Dog Erythrocyte Antigen)式」と呼ばれる「犬赤血球抗原」によって分類され、それぞれの抗原を持っている(+)のか、持っていない(-)のかによって以下のように分けられます。
- DEA 1.1(+)or(-)
- DEA 1.2(+)or(-)
- DEA 3 (+)or(-)
- DEA 4 (+)or(-)
- DEA 5 (+)or(-)
- DEA 6 (+)or(-)
- DEA 7 (+)or(-)
- DEA 8 (+)or(-)
人間の場合は1人に対し1つの血液型しかありませんが、犬の場合は抗原の有無によって「DEA1.1型とDEA4型」というように1つの個体が複数の血液型を持っていることになります。個体差はあるものの、「DEA1.1」「DEA4」「DEA6」「DEA7」を持っている犬の割合が多いようです。
実際の犬の血液型は10種類以上あるとされていますが、研究中であるため国際基準(DEA分類)では現在の犬の血液型を8種類と定めています。
日本表記は
日本では表記を変えて犬の血液型を9種類に分けており、日本表記「D式」と呼んでいます。これは抗体によって血液型を分けたもので、人間のABO式にあたる「DEA式」を1(-)型、1.1型、1.2型に分け、Rh式にあたる「D式」をD1型、D2型、D1D2型に分けて組み合わせると以下のようになります。
- 1.1 D1型
- 1.1 D2型
- 1.1 D1D2型
- 1.2 D1型
- 1.2 D2型
- 1.2 D1D2型
- 1(-)D1型
- 1(-)D2型
- 1(-)D1D2型
国際基準(DEA分類)と日本表記「D式」で表記の方法は変わりますが、どの抗原(抗体)を持っていてどの抗原を持っていないのかという分類に違いはありません。
犬の血液型と人気犬種
血液型と犬種には関係性があると考えられており、特に日本式表記「D式」においては血液型に犬種の偏りがあるようです。以下にその血液型に多く見られる犬種をまとめてみました。
- 1.1 D1型 日本犬の雑種など
- 1.1 D2型 シーズー、チワワ、柴犬など
- 1.1 D1D2型 アフガンハウンド、四国犬など
- 1.2 D1型 日本犬、洋犬の雑種など
- 1.2 D2型 ダックスフンド、シベリアンハスキーなど
- 1.2 D1D2型 ドーベルマンなど
- 1(-)D1型 秋田犬など
- 1(-)D2型 ビーグル、ラブラドールレトリバーなど
- 1(-)D1D2型 ウエストハイランド、ホワイトテリアなど
個体差による違いはあるものの、D1型には日本犬が多く、D2型には洋犬が多い傾向があるようです。
犬と猫の血液型の違い
犬と猫では血液型の分類が異なります。猫の血液型は「猫AB式」によってA型、B型、AB型の3つに分類され、O型は存在しません。人間のように父猫と母猫から受け継いだ血液型の遺伝子型によって決まり、多くの猫はA型で、B型の猫は少数、AB型は非常に稀とされています。
猫の種類によって血液型に偏りがあることもあり、A型が出やすい猫種にはアメリカンショートヘアーやロシアンブルーなどがいます。また、ブリティッシュショートヘアー、バーマンなどの特定の純血種ではB型の割合が多少増加するようです。
犬の血液型の検査方法
犬の血液型の調べ方として一般的なのは、動物病院で専用の検査キットを使用する方法です。少量の血液を採取して検査キットを使うと10分程度で結果がわかり、費用も1,500~3,000円程度と手頃です。また、富士フィルムモノリス株式会社が、小動物の臨床検査機関として動物病院から依頼された検査を請け負っています。
ただし、キットを使った犬の血液検査でわかることは「DEA1.1型が陽性なのか陰性なのか」ということのみです。DEA1.1型が陰性の犬に陽性の犬の血を輸血してしまうと、拒絶反応を起こすことがあり大変危険だからです。よって、安全な輸血を行うために必要な情報としてまずはDEA1.1型の抗原の有無を確認しておくことが重要だと言われています。
さらに詳しい血液型を調べるには、動物病院で採取した血を専門の検査機関に依頼する必要があります。費用も1万円前後になり、結果がわかるまで10日程かかります。人間と違い犬の血液型を事前に調べるのは一般的ではありませんが、ケガや出産、輸血を必要とするレベルの治療の際に安全な輸血をするために血液型を知っておくのもよいかもしれません。
犬の血液型と輸血で知っておきたいこと
2回目以降の輸血は要注意
犬は生まれつき持っている抗体がないため、初めての輸血をする場合はほとんど拒絶反応が起こらないとされています。しかし1度輸血をすると、2回目以降にその血液型が入ったときに異物と判断され、激しい拒絶反応が起きてしまいます。
特にDEA1.1型はDIC(播種性血管内凝固症候群)や急性腎不全などの命に関わる拒絶反応を示すとされていることから、2回目以降の輸血には注意が必要です。
輸血時は交差適合試験(クロスマッチ)を行う
事前に検査キットなどで犬の血液型を調べている場合でも、輸血が必要となったときには必ず交差適合試験(クロスマッチ)を行うことになっています。
これは輸血に使う犬の血液と輸血を受ける犬の血液が適合しているかを判断するもので、それぞれの血液を混ぜることで確認できます。血液を混ぜた結果、凝集反応が起こって血が固まってしまう場合は不適合となり、その血液は輸血に使うことができません。
交差適合試験(クロスマッチ)は犬の命を守るために必要な検査で、DEA1.1型の抗原がプラスかマイナスかを調べる検査とともに輸血前に必ず行われます。よって、もし事前に血液型を調べていなくても、安心して輸血を受けることができると言えます。
ドナー犬になる条件
現在、犬や猫などの動物には人間のような確立された血液バンクがありません。輸血が必要となる犬が出たときには、動物病院で飼育している犬から採取したり献血に協力してくれる犬を探したりして採取しているのが現状です。
自治体や動物病院では緊急で輸血が必要になった場合に備えて、ボランティアドナー(献血犬、供血犬)になってくれる犬を募集しています。ドナー犬になれる条件は以下の通りです(病院によって条件が異なる場合ありますので確認が必要です)。
- 年齢が8歳未満であること
- 持病がなく健康体であること
- 予防接種やフィラリア予防ををきちんと受けていること
- 輸血や妊娠、出産の経験がないこと
- 体重が指定された重さ以上で、肥満体でないこと
これらの他に「DEA1.1型が陰性であること」、「ヘマクリットが40パーセント以上であること」などが条件に加わることもあるようです。条件を全てクリアしている犬のみがドナー犬になれるため、貴重な存在と言えます。
自治体や動物病院によって内容は異なりますが、ドナー犬として登録をすると血液型の検査や伝染病の予防接種が無料または割引になったり、ドッグフードがもらえたりするところもあるようです。
犬の血液型は性格に影響はあるの?
犬の血液型は数が多く複雑で、犬種による分類などもありません。そのため、血液型によって性格の判断をするのは難しいと考えられます。犬種によって血液型の偏りは若干あるものの、犬の性格は飼育環境やしつけなどが大きく影響すると言えるでしょう。
まとめ
犬は1つの個体に対し複数の血液型を保有しているため、必ずしも血液型を知っておく必要はありません。しかし、ケガや病気、出産などで急な輸血が必要になった場合に備えて、事前に調べておくのもよいでしょう。
犬の血液は慢性的に足りていないとも言われているので、条件に合うようであればドナー犬に登録しておくと他の犬を助けることに繋がるかもしれません。血液型についての知識をつけておくことで、愛犬の命と健康を守ってあげられるとよいですね。
ユーザーのコメント
40代 女性 momo
30代 女性 38moto
血を提供してくれたドナーの大型犬は、愛犬の下のゲージで点滴を受けて横になっていました。血液は長期保存できないので、こういう時のために動物病院で飼われているレトリーバーでした。輸血のために飼われるというのは悲しいですが、それで助かった命があるのでとても複雑です。
輸血後、体調は良好で血液の数値が改善され拒絶反応等もありませんでした。気になった点は、輸血後愛犬の目が垂れたことです。元々アーモンドアイだったのが丸い目になっていて輸血の影響なのかどうか、過去に報告もないのでわかりませんが、これが輸血後の一番の変化でした。
女性 ぴょん
そして、犬には人間のように血液バンクがなく保存をすることができないので必要なときに適合する犬を探して輸血をすることになります。
しかし、輸血が必要な状態というのは多くは突然やってきて緊急を要することが考えられます。その一刻を争っているときに、血液検査から適合検査、適合した犬からの献血と段階を経て輸血となるには時間を要します。
愛犬に輸血が必要になったとき、もしも犬の血液バンクが発達していてすぐに取り寄せることができたらと、思ったことがある飼い主さんも多いのではないかと思います。
現段階でできることは、愛犬の血液型を知っておけば輸血や供血を少しは早く段取りができるのではないでしょうか。
愛犬が元気な時には考えもしないことですが、この機会にそんなこともあるかもしれないことを、考えておくのはいいかもしれません。
40代 女性 パンプキン
わが家の愛犬は体重の軽い小型犬で、友人の愛犬(中型犬)の献血ドナーにはなれませんでした。体重だけでなく、過去の出産経験や輸血経験も、条件に関係しているんですね。体の大きな犬が望ましいということは聞いたことがありますが、秋田犬はドナーになれない(それも、血中のカリウム濃度の関係で)というのは意外でした。
気になったので調べてみると、ドナーになった犬が採血するときは、麻酔をかけないことを知りました。おとなしい犬じゃないと、ドナーは難しいということでしょうか。
犬の輸血・献血にはいろんな条件があり、もしもの場合、即座に対応できるとは限らないことがよくわかりました。現状では、献血を病院で飼われている犬に頼るか、知り合いやドナー登録してくださっている方に協力をお願いすることになります。自分の愛犬はすでに高齢のため、ドナーとして協力できないことが心苦しいですが、今後、犬の献血ドナー登録が増えることを願っています。
30代 男性 さとう
いろいろな条件を満たしたうえで、その病院まで急いで連れて行ける犬、となると大変だなと思いながら見ていました。
しかし、病院で血液検査をしても適合するかわからないとなると、これはもう本当に大変ですね。
献血が必要な犬の飼い主さんは、なにがなんでも適合する血液が欲しいでしょうし、そのツライ思いを察するとどうにかしてあげたくなってしまいます。
以前ダックスのわんちゃんが緊急で血液を探していましたが、ちょっと特殊な型とかで結局見つからなかったようです。その際にはダックスで探していらっしゃいました。ダックスはいろいろな犬種がかけ合わさっているから特殊なのでしょうか。
30代 女性 nico
20代 女性 あめたま
犬にも血液型があることは知っていましたが、それは私たち人間が知識として得ている情報とは異なるものだと知り、驚きました。
同じ哺乳類であっても、分類の仕方が違うのは種族が違うので当たり前だと言えます。
犬の血液型を知る事は飼い主にとって有意義であると言えます。
人間が用いる血液型占いには利用出来ませんが、病気を防ぐ事も出来ます。更には年齢に制限がありますが血液を提供する事も可能なのでより多くのワンちゃんを救う活動に参加も出来ます。
場合によっては、自分の飼育するワンちゃんが助かる可能性も高まるので犬の献血についての知識や理解が飼い主により広まると良いな、と感じられました。
犬の血液型に関しては知らなくても日常生活に支障をきたすものではありません。
ですが、知っておくと良い事も沢山ある事は確かです。
20代 女性 ゆず
でも、いざ自分の愛犬が輸血が必要になったというときは迷わず輸血治療をお願いしたい!と思うはずなので自分の愛犬の血液型はちゃんと事前に調べておいて損は無いと思いました。
記事の中ではあまり触れらていませんでしたが、輸血に関するデメリットもきっとあると思うので病院の先生ともよく相談して決めたいですね。