常設譲渡会場として「保護犬のいるカフェ」は素晴らしい
小さな規模で保護活動をしている方々の悩みは、もちろん継続資金や協力者集め、そして保護した犬の里親探しです。
資金的に常設施設を持てないため、中には自宅で預かったりし、大型店舗などに協力してもらって一時的な譲渡会を開催するなど苦労をしています。
ドッグランがあれば、と思いますが、住宅街ではその敷地確保は苦難です。
しかし、カフェなら市街地でも可能ですし、気軽に休憩に来て犬達と触れ合ってもらえます。
何度も会ってマッチングを確認して、里親を探すことも日常的にできます。
何より、保護犬を見に遠くの保護施設まで行かなくても良いというのは、里親探しには大きなメリットと考えます。
猫カフェが流行っているので、保護犬でカフェを作って里親探しができないかと、地元の活動家の方々と常々話し夢見ていたところ、この活動をすでに始められていると知って、とても素晴らしいと思いました。
ただ、時々情報を拝見しているうちにその「保護犬カフェ」が商標登録されていると知って、どうして商標登録したのかなと、少し考えてしまいました。
そもそも商標登録をするメリットとは
通常、登録した商標を独占して使用し、他者に同じまたは類似した商標を使わせないために商標登録をします。
勝手に使用された場合は、使用停止を申し入れることができますし、裁判で商標権侵害と判断されれば強制的に侵害者の使用を差し止めることができます。
また、ブランドイメージが傷つけられたり、無断使用によって売り上げが下がったりした場合、商標権者に損害が認められる時は損害賠償請求や信用回復措置請求をすることも可能になります。
端的に言えば、商標登録をすることで自社のブランドイメージを保護し、売り上げ侵害を防ぐという目的があります。
また、商標権は財産権になりますので、使用許諾や権利移転によって対価を得られるというメリットもあります。
また、昨今ではインターネットによるイメージ定着や集客に重きが置かれていますので、登録された商標は商標権者しか使用ができないため、検索エンジンのヒットをほぼ独占できるので、ネット上の集客や宣伝的なメリットも大きいでしょう。
どんな人が商標登録をするのか
『ブランドイメージと売り上げを守りたい企業が商標登録をする』というのが一般的な理解だと思いますが、大企業に限らず、中小企業や個人でも、守りたい商標があれば登録することができます。
そして、もし以前からその商標を使っている会社等があっても、先に登録した方が商標の権利を独占してしまいます。
また、商標登録をするのは今や企業だけではありません。
最近では自治体が、ご当地キャラや有名になった動物に着けられた名前の商標登録を行っています。
これらは大抵の場合、先に商標登録されてしまうとその名前が使えなくなったり、悪用防止、イメージ損傷防止とグッズ販売等が出来なくなる、又は他者に勝手に売られる可能性を排除する意図で行われています。
なぜ「保護犬カフェ」を商標登録したんだろう
私が、『保護犬カフェ』が商標登録されていることを複雑に思った理由は、私の商標登録をするという行為に対する一般的理解が、『独占使用によるブランドと利益保護が目的』だったからです。
商標登録をするには手間も費用もかかりますので、それなりの理由がないとしないでしょうし、商標権者が数件のカフェを経営している企業?のように見受けられましたので、そこだけ見たら正直がっかりしてしまったのです。
もしかすると、『保護犬カフェ』を騙る悪徳の業者の参入による、悪用防止やイメージ損傷を防止する狙いもあるのかもしれませんが、であってもそれが本当に正しい方法なのかは疑問が残ります。
実はこのことを知った時、スペインのUDON商標登録を思い出してしまいました。
スペインでうどんが流行りだしたとき、ある会社がUDONを商標登録してしまい、以前から営業していたうどん屋さんがUDONと一切表記できなくなったり、廃業に追い込まれたというものです。
だから、せっかく素晴らしい活動をしているのに、営利目的なのかと一瞬嫌な気持ちになったのです。
この商標登録に関するイメージは、これまでに商標登録によって利益を独占しようとしてきた企業などの悪いイメージが強く働いています。
商標権者である会社に対して、『例え、素晴らしい活動をしていても、保護犬をビジネスに利用していると思われてしまうのでは?』と思ってしまいます。
これは私が正直に感じたことですが、こう思ってしまうのは私が長くビジネスの世界にいたせいでしょうか。
まとめ
非営利団体や個人で活動されている方々にとって、特に活動維持資金の確保は常につきまとう悩みです。
活動の普及や理解を得ることも簡単ではありませんし、その上で、自身の生活も守らなくてはならないのです。
私は常々、『企業にしかできないことがある』と考えているので、ボランティア活動を企業が支えることはとても良いことだと思います。
カフェを実現させ、名称を商標登録した経緯にはご関係者の多大なご苦労があったと思います。
だからこそ、まずは会社が商標登録をされた意図を誰でもすぐわかるところで公開して欲しいと思います。
そして、微力ながら日本各地で活動されている方々が里親探しで苦労している現状で、このような一般的に使われそうな、そして一目で意図がわかる商標は、できれば自由に使わせて欲しいと願います。
iPS細胞研究の促進の為に、特許を自由に使わせてくれている事例もあるように、1頭でも多くの保護犬に出会いを作ってあげたい、幸せになってもらいたい、そう願う気持ちは皆さん同じなのですから。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 匿名
どの子も小ざっぱりとされていて良い子達でした。我が家は2匹いますから寄付という形の協力しか出来ませんが、もっとこうした場を設けて多くの方々に関心を持って頂きたいと思います。
30代 女性 匿名
登録商標、そんなにおかしいでしょうか。
がんばっている現場を見た私からすると「いちゃもん」に思えます。なにか罪をおかしたわけでもないのに。これで意地の悪い問い合わせやSNS上の悪口が増えたりしたら、スタッフさんの手を煩わさせることになりかねません。
ブランド力を守る…確かにそうです。保護が必要な動物を受け入れる場所はたくさんあります。でもその中身は様々。「正解」は難しくても「誇り」を持って活動することは重要だと思います。
それと3番のコメントが気になります。
何を疑問に感じるのか…もし「保護犬とは言え所詮は血統書扱いのキレイな子」とかだったら、それは違います。
ひたすら妊娠出産を繰り返しボロボロになった子、思ったような見た目で生まれなかった子(小さくないミニチュア、病気や障害を持って生まれた子等)など…
結局は、〝やらない善よりやる偽善〟。誰が何と言おうと、あそこで救われている子たちがいる。それが事実です。
40代 女性 匿名
「ブランド力を守る・・・確かにそうです」と言い切ってしまって、それは何度も通われたのでご存知で確定的に言われていると受け止めました。
それにコメントされている方が何もしていないとは限らないです。
この記事を読む限り、批判しているのではなく、名称をみんなに使わせて欲しいと願っているようです。
保護犬の受け入れ先はたくさんあるわけではないのです。毎回、捨てられた犬を保護しに行くのは大変で、保護した後に個人宅で預かったりしている状態です。そんな活動家さん多いです。
今度、ある店舗のご協力で、少ないですがやっと保護犬の譲渡会を開くことになりました。簡易的に屋外カフェを設置したかったのですが、パンフやネットで保護犬カフェと宣伝できないと知って、カフェ併設としました。
こんな私たちでも、誇りを持って、苦しいながらも活動しています。
男性 通りすがり
断られた理由がお留守番の時間が6時間を越える日が絶対にあってはならないと言われたとお話されていました。)お人柄も良く、引き取りの際には多額の寄付金もお納めになっておりました。この方も願いは皆さんと同じ小さい命を救いたいだけです。
私の感覚ではビジネスとして商標登録されたのではなく、他の団体と思想と譲渡方法、治療方針などを区分けするために必要な措置だったのではないかと思います。同じ名前を語ってビジネスをしようと思えばできるかもしれませんが、同店舗ではそのような事をしてるようには見えません。とてもチープ(失礼?)な店内です。そしてスタッフさんも必死でお世話してます。同じ名前を使いペットショップまがいの事をさせない為にも国内では必要な登録だったと思いますよ。
40代 女性 匿名
50代以上 男性 ふうちゃん
現在、関西地方を中心に展開されている保護犬カフェは十分ビジネスとして成り立っています。
ブリーダーからの繁殖引退犬の引き取り料。譲渡時の費用の請求。ペット保険に強制加入による代理店収入(人の生命保険と同じです)。1頭当たり数万円の利益を得る仕組みになっています。
ですから、保護犬カフェを商標登録をする意義は高いといえます。
繁殖引退犬やペットショップでの売れ残り犬などは、2013年の法改正以前は保健所に持込み、税金で殺処分になるのがほとんどでした。いまだに「引き取り屋」というのが存在しているくらいです。
悪質な「引き取り屋」は現在においても存在し、違法な処分をしているのも現状です。
「保護」というのは、本来人の良心に訴えかけて、ボランティアとして行うのが本来なのかもしれません。
しかし、考えてみましょう。少し前のデータですが2015年の子犬の流通数は約69万頭です。
お判りでしょう。子犬がこれだけの数いるのですから、親犬の数も膨大な数になります。
保護犬カフェで取り扱う繁殖引退犬の数は氷山の一角にすぎません。
ペット業界の闇の部分に厳罰で取り締まりが出来る法律を制定しない限り、現在の動物愛護法ではザル法と言わざる負えないでしょう。
動物愛護センターでは殺処分がゼロであっても、現実は動物愛護センターが受け入れないだけで、繁殖業者のもとでの安楽死、そして、ボランティア団体さんや保護犬カフェに場所が変わっただけなのですから…。
現状において、殺処分される子が保護犬カフェにおいて救われる命になるのなら、納得してそこから保護犬を迎え入れる方には保護犬カフェはありかと思います。
商標登録の議論をする以前に、ペットを家に迎え入れようとする人間の資格制度の導入など、ペット業界への規制と並行して行わない限り、永遠に終わることのないことかと思います。