アニマルホーダーとは?
アニマルホーダーの「ホーダー(hoarder)」とは、物を捨てれずにためこむ人・片付けられない人の意です。そして、アニマルホーダー(animal hoarder)とは、犬や猫などをどんどん連れてきて抱え込む人のことを指します。別名「アニマルコレクター」とも、「過剰多頭飼育者」とも言われています。
アニマルホーダーが問題とされているのは、管理可能な限度を超えた犬や猫といった動物を飼育し、最低限の給餌、衛生面の配慮、居住スペース、医療ケア等ができないにも関わらず、本人にその自覚がなく、感染症や悪臭など、周囲への被害の認識も乏しい状態にあることです。
ドイツやアメリカなどの動物保護先進国では、既に10年以上前からアニマルホーダーを深刻な社会問題として取り上げられていますが、日本ではなかなかまだ浸透していないのが現状です。もしかしたら私たちのすぐ身近にある問題かもしれません。
アニマルホーダーの定義
アニマルホーダーの定義は、2004年に開催された「動物との共生を考える連絡会主催のセミナー」にて、米国人道協会(HSUS)のランダル・ロックウッド博士が次のように話しました。
- 多数の動物を飼育している(何頭かは一概には言えない)。
- 動物に対し、最低限の栄養、衛生状態、獣医療が提供できない。
- 動物の状況悪化への対応ができない。
- 環境悪化に対応できない。
- 本人や同居人の健康や幸せにマイナス効果が生じていることに対応ができない。
上記の条件を満たす場合、「アニマルホーダー(過剰多頭飼育者)」としています。
参考文献:平成21年度 動物の遺棄・虐待事例等調査報告書(環境省)
アニマルホーダーは心の病気(精神疾患)
アニマルホーダーとは、単に犬や猫などたくさんの動物を飼育しているということではありません。一番の問題は、それが心の病気(精神疾患)によるものだということなのです。似ている精神疾患として「強迫性障害(OCD)」が挙げられます。
度々ニュースでも問題になっているゴミ屋敷の住人と、非常に近い心理状態と言えるでしょう。彼等が執着するのはゴミなどの不用品ですが、アニマルホーダーの場合は犬や猫といった動物の収集に異常な執着を見せるのです。
まだまだ研究の段階ですが、こういった心の病気にかかる人の傾向として、生育歴やトラウマが関係しているとも言われています。しかも本人には病気である自覚はありませんから、問題に介入するには個人の力だけでは非常に難しいのが現状なのです。
アニマルホーダーの特徴
アニマルホーダーに一番多いのが、中高年(50代~60代)の一人暮らしの女性だそうです。しかし、もちろん男性も、若い人や夫婦にもいます。
それらに共通して言えるのは、明らかにこれ以上の犬や猫などの動物を飼うことが、無理な様子が誰の目にもはっきりわかる状況でも、決して手放したがらないこと、むしろ虐待であることは認めようとしないのもアニマルホーダーの特徴です。その為、付近住民からクレームを受けても話し合うことが非常に困難です。
アニマルホーダーについて知識のない人から見れば、それは単に飼い主のエゴに思われるでしょうが、本人にはそれを受け入れることができないのです。なぜなら、それは心の病気によるものだからです。
なかには、売買や繁殖目的で売れなかった犬猫を飼育放棄する人や、更に悪質だと動物保護活動を装って、犬など動物を収集するタイプもいるのです。このタイプは自宅を絶対見せたがりませんし、去勢や里親探しなどをしている形跡がないのも特徴と言えるでしょう。
アニマルホーダーにまつわる体験談
かかここ さん 男性 40代
義理の弟が正に「アニマルホーダー」です。犬猫拾ってきたり、保健所から貰ってきたりして、エサだけ与えてるだけで衛生状態は最悪です。自分の身勝手、無責任を正義と勘違いし、周囲に迷惑を平然とかけるのでタチが悪いです。
匿名 さん 女性 50代
私の母の知り合いに典型的なアニマルホーダーの方がいます。うつ病で一人暮らし、キッチンや部屋はかなり汚れているそうです。野良猫を4~5匹保護しています。経済的ゆとりがあれば構わないのですが、住所はペット不可の公団で、母や友人の方々がとても困っています。
匿名 さん 女性 40代
私は元アニマルホーダーです。20代の頃はうつ病にかかりながら、夜な夜な野良猫をスーツケースに詰め込み持ち帰っていました。家はボロボロ、猫だらけ、それでも自分は助けているつもりで悪意や暇つぶしではなく一生懸命でした。
いろいろな諸事情から、ようやく親の耳に入りボランティアの方に引き取ってもらいました。ほぼ100%再発と書かれていますが、あれから20年、今のところは大丈夫です。
アニマルホーダーへの対策
タレントの杉本彩さんが、動物保護団体と行政に掛け合ったり、アニマルホーダーについてもブログに書かれたりしていますが、本当にデリケートな問題ながらも、まだまだ対応が十分でなく、一刻も早く法の整備が待たれるところです。
今の法律上では犬や猫などの動物は所有物とされているため、飼い主本人が「放棄」しなければ行政も介入できません。また、仮に一旦飼い主が放棄して動物たちを保護できたとしても、一番の問題である飼い主の心の病気が回復しなければ、また同じことが繰り返されてしまうのです。
実際、アニマルホーダーの再発率はほぼ100%に近いと言われていますが、本人に病気の自覚がないため、カウンセリングなどは困難を極めます。しかし、これから独居老人はますます増えるでしょうし、実際にアニマルホーダーを疑われる事例もよく耳にします。
行政や動物保護団体に相談し受け入れ先も検討する
もし、身近にいる方に心当たりがあったら、アニマルホーダーは心の病気であることを踏まえ、個人の働きかけだけではなく行政や動物保護団体への相談などを中心に、慎重に行う必要があります。
また、もちろん保護した動物たちのケアや受け入れ先についても検討が必要になってきます。こうした活動をされている団体もありますから相談できるところを探してみましょう。
まとめ
アニマルホーダーは深刻な社会問題となっています。動物の危機的状況を救うのはもちろんのこと、再発しないためにも、アニマルホーダーになっている本人の心の病気のケアも必要です。
身近なところで、もしかしたらあの人はアニマルホーダーかもしれないと、気づくことがあったとき、わたしたちに何ができるのか改めて考えさせられます。
まずは、犬などを異常なまでに抱え込んでしまう人、アニマルホーダー(animal hoarder)について、一人でも多くのかたに知っていただけたらと心から願っています。