犬のお手に込められた意味
犬のしつけといえばお手!というイメージがあるかと思いますが、そもそも「お手」にはどんな意味があるのでしょうか。
「お手」は、前足を触れられたり、肉球を無防備に晒すという、犬にとって人との信頼関係が重要な行動になります。
そのため「お手」という行動は、自分より位が高いものに対する、服従や信頼の証であると考えられています。
ただ、すでに信頼関係が築かれている間柄での「お手」には、犬から人に対して要求の意味が込められている場合もあります。
「遊ぼう」「おやつちょうだい」などの気持ちを伝えたい時に、飼い主さんの顔を見ながら、手をちょんちょんとつついてお手をすることはありませんか?
「お手をすればご褒美を貰える」と思っているわんちゃんも多いでしょう。
「お手」は人と犬が信頼関係を築くうえで、最も簡単なコミュニケーション方法かもしれませんね。
監修ドッグトレーナーによる補足
犬が人に求めている気持ちで非常に重要なポイントのひとつが、人とのコミュニケーション欲求です。
犬は人と関わる事に対して命をかけていると言っても過言ではないほど、人とのコミュニケーションに重きを置いています。
愛犬からの視線を感じた事はありませんか?
人が動くと愛犬が逐一その動きを観察していませんか?
お散歩やお出かけ、ご飯の準備をすると、どこからともなく愛犬が飛んできませんか?
このように、愛犬達は人と関わろうと必死になっているんですね。
そして、このコミュニケーション方法の数が多ければ多いほど、愛犬達は幸せを感じられることが判明しています。
お手もコミュニケーションのひとつに組み込んで、お互いに幸せになれるよう取り組んでみるのもいいでしょう。
犬にお手を覚えさせる必要性はあるのか?
犬をお迎えしたらまず「お手」「おすわり」を覚えさせることがベターとなっています。
ところで、犬に「お手」を覚えさせる必要性はあるのでしょうか?
必ずしも必要ではないが、覚えさせると良いことがある
お手の必要性に関しては様々な意見があるものの、必ずしも覚えさせなければならないものではありません。
「おすわり」「待て」「戻れ」などは、愛犬の安全や、人と共存していくにあたりルールを守るために必要なしつけです。
しかし、そういったコマンド(指令)と比べると、「お手」は「芸(トリック)」に近いものです。
嫌々お手の練習を繰り返しても、愛犬にとってストレスになったり、コマンド練習そのものに対して、嫌悪感を抱いてしまう可能性があります。
そのため、お手を嫌がる犬に訓練を無理強いする必要はありません。
ただ、お手は他のコマンドに比べると子犬であっても成功しやすいことから、コミュニケーションやしつけの練習として取り入れやすいという良いところもあります。
他にも、お手を犬に覚えさせておくと良いこともあるため、犬も飼い主もお互いに無理をしすぎない範囲で、挑戦してみることをおすすめします。
女性 30代
お手を覚えさせておくと、お風呂に入った時に片足ずつ上げてくれるので洗うのが楽になりました。
お風呂を出た後のタオルドライの時も順番に上げてくれるので作業が捗ります。
犬にお手を教えるメリット
犬にお手を教えると、いくつかのメリットがあります。
- 散歩から帰宅後に、足を拭いてあげやすくなる
- 爪切りがしやすくなる
- 足をケガした時に、手当がしやすくなる
例えば、外から帰ってきた愛犬の足を拭いてあげたい時や、爪を切ってあげたい時、ケガをしているから手当てをしてあげたい時など、生活の中で必要になる「足を触られる」という行為に慣れさせるきっかけになります。
また、お手は飼い主の指示に従うということで、飼い主との正しい服従関係を築く練習に役立ちます。
お手は簡単な動作なため、犬が従いやすいのです。
重要なのは、一緒に楽しみながらトレーニングをすることであり、「必ず覚えさせなければならない」と気負いすぎる必要はありません。
監修ドッグトレーナーによる補足
爪切りで苦戦されたいる方は案外多いのではないでしょうか?
足を触るのは爪切りと足を拭く時ぐらいだと、犬からすればあまり嬉しいことではありませんよね。
犬の方には得になるようなメリットを感じられにくいんです。
お手をすることでご褒美をもらえるというメリットを経験すると、犬の方にも足を人に触ってもらえる理由が出来上がりますよね。
歳を重ねれば体調の不調で足から点滴をするケースも増えています。
今からお手を始めることによって、将来長生きできる可能性も秘める、侮れないトリックがお手にはあったりもします。
犬のお手の教え方
お手のしつけはいつから始める?
お手に限らず、子犬にしつけを始める時期は「早ければ早いほど良い」と言われています。
そのため、生後何ヶ月からという決まりはなく、いつからでもお手のしつけを始めて問題ありません。
子犬をペットショップやブリーダーからお迎えした場合の年齢は、若くても生後2ヶ月~3ヶ月頃であることが多く、この時期になると十分にしつけのトレーニングを始めることが可能です。
ただし、慣れない環境で一度に様々なしつけを行うと、混乱してしまう可能性もあるため、焦らずゆっくりトレーニングを行うことが重要です。
子犬をお迎えした時は、まずはトイレやおすわりなどの日常に必要なしつけのトレーニングを優先して行い、それらがマスターできてからお手の練習を始めると良いでしょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
教える時期は早い方がよいというのが一般的な意見です。では歳を重ねてしまったらもう手遅れなのか?というとそうではありません。
犬は生物の中では珍しく、革新的な性質を持っています。革新的とはなにかと言いますと、「新しい物事を受け入れる能力」のようなものです。
皆さんが子供の頃にスマホはありましたか?大人になってからスマホを触った方も多いのではないでしょうか?
私たちは、大人になってからでも十分スマホを使えますよね。犬もこれと同じなんです。
私の愛犬は10歳を超えますが、まだまだ新しいトリックを教えて覚えていっています。愛犬の可能性はいつだって開かれた状態にあるんですね。
愛犬はもう若くないからと諦めてしまわずに、今からでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
「お手」は右手?左手?「おかわり」は?どっちの手が正しいの?
お手は、右手と左手どちらが正しいのか?
右手が「お手」で、左手が「おかわり」と決まっているのでしょうか?
答えは「どちらでも良い」です。
飼い主さんや愛犬が、トレーニングを行いやすい方の手で構いません。
犬にも人間同様に利き手なるものが存在するため、愛犬の利き手に合わせてあげるのも良いでしょう。
ただし、毎回指示が異なると愛犬が混乱してしまう可能性があるため「お手は○手」「おかわりは○手」と、統一してトレーニングを行いましょう。
お手は「ハイタッチ」や「握手」など、様々な種類の芸の基礎となりますので、一貫することが大切です。
女性 40代
我が家のゴールデンレトリバーはハイタッチも教えてあげたら覚えました。
ハイタッチが上手に出来ると主人がマッサージをしてあげるというルールになっていて、いつも大好きなマッサージをしてもらう為に喜んでやっています。
犬にお手を教える時のコツと注意点
- 犬も飼い主も、お互いに楽しみながら行うこと
- 寛容に気楽な気持ちで行う
- 成功したら大げさに褒める
- 褒める言葉は「いいこ」「グッド」など端的な言葉で、いずれかに統一する
- できないからといって、イライラして感情的に叱らない
- 失敗しても怒らない
「お手」に限らず、しつけにおいて最も大切なのは、犬も飼い主も、お互いに楽しみながら行うということです。
愛犬が上手くお手ができないからといって「ダメな犬だ」と、感情的に叱ってはいけません。
犬の自尊心を傷つけてしまったり、しつけの練習そのものを嫌がるようになったりする可能性があります。
しつけや芸の練習は、愛犬と飼い主のコミュニケーションツールとしての役割もあります。お手がその日できなかったとしても「また明日やろうね」くらいの、気楽な気持ちで取り組むことが大切です。
犬にお手を教える時は、寛容な気持ちで接することを忘れないでください。失敗しても怒らない、成功したらすぐに大袈裟に褒めるということが重要です。
褒める時の言葉は、色々な言葉を使うのではなく、毎回統一するのが好ましいです。「いいこ」「グッド」「できたね」など、短く分かりやすい言葉で大袈裟に褒めましょう。
また、お手が成功した時のご褒美は、与えても与えなくてもどちらでも構いません。
しかし、筆者も経験上、おやつを与えなかった時に比べると、与えた時のほうがはるかに早く覚えてくれるのは事実です。
犬にお手をしつける手順
お手の練習は、愛犬の機嫌が良い時に行いましょう。
散歩から帰ってきた後、たくさん遊んだ後などが、犬の機嫌が良いことが多いです。
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まず犬と正面から向き合い、おすわりの状態にさせます。
そして、犬の右前足を手のひらに乗せるようにしながら優しく持ち上げ「お手」と言います。
この時のコマンドは「お手」でも「ハンド」でも、短く聞き取りやすいコマンドであれば何でも構いません。
重要なのは声の高さやイントネーションを統一することです。 -
その状態で5秒程度「お手」の状態をキープします。
この時、犬の足を強く握ったり、高すぎる位置で固定したりしないよう注意しましょう。 -
お手の状態から5秒程度経過したら、足を下ろし大袈裟なくらい褒めちぎってあげましょう。
おやつを与える場合は、このタイミングでご褒美として与えます。
最初はこれだけできたら上出来です。 -
愛犬の様子を見ながら「①〜③」の手順を繰り返します。
この時、明らかに愛犬の集中力が切れていたり、何か他の物に興味を惹かれていたりする場合は無理強いせず、一旦中止しましょう。 -
上記の手順がスムーズに行えるようになったら、犬の足を持ち上げることをやめてみましょう。
「お手」と言いながら、愛犬の前に飼い主さんの手を差し出すだけにします。犬が自主的に足を手の上に乗せてくれたら成功です。
あごを撫でるなど、思いっきり褒めてあげてください。
ここで、自主的に足を乗せてこない場合は、手順①~③を交えながら練習しましょう。
焦らずゆっくり、楽しんで行ってくださいね。
愛犬が完全に「お手」をマスターした後も、毎回褒めることは忘れないでください。
飼い主さんが褒めてくれることで、しつけや芸の練習そのものが愛犬にとっての良い刺激になることもあります。
監修ドッグトレーナーによる補足
最初から5秒間のお手を続けるのが難しいケースもあるかと思います。
なんとか5秒続けようとして犬の手を握ったり、離さないようにしてしまうとお手が嫌いになりかねません。
そんな時には、愛犬が出来る範囲での秒数でも大丈夫です。極端ではありますが、一瞬お手が出来たでもかまいません。
お手が出来たご褒美を与えることで、お手のイメージを良くしていきます。
少しずつお手の出来る秒数を増やしていくイメージでやってみるのも、ひとつの手段ですよ。
犬がお手をできないパターンと対処法
「犬がお手を覚えない!なかなかお手ができない!」
そんな、お手を失敗するパターンや対処法についてご紹介します。愛犬がお手をしない原因は、意外なところにあるかもしれません。
お手を外す(空振りする)
お手を空振りしてしまう犬も多いようです。
お手を外す原因は様々で、単に飼い主さんに構ってもらえることが嬉しかったり、ご褒美のおやつを期待していたりすることで、興奮して空振ってしまうことがあります。
その一方で、手を触られることに抵抗があり、人間の手を避けていることが理由の場合もあります。
どうしても正しいお手を覚えさせたい場合は、犬の手が、飼い主が差し出した手に乗らなければ、褒めたり、声掛けをしたりせず、成功するまで気長に練習しましょう。
ただ、お手そのものは必ずしも覚えなければいけないものではありませんので、空振りしてしまうのも愛犬の個性と考えるのも一つです。
以前、Twitterで「お手が下手すぎる犬」として思いっきりお手を空振り、足をクロスさせてポーズを決めるわんちゃんの動画が話題になったことがあります。
大切なのは、飼い主さんと愛犬が「楽しんでいる」ことです。完成度よりも、愛犬の一生懸命な気持ちを受け入れてあげるのも愛情のひとつです。
対処法
- 犬の手が、飼い主が差し出した手に乗らなければ、褒めたり、声掛けをしたりせず、成功するまで気長に練習する。
- 空振りしても、犬の愛嬌として受け入れる。
お手を教えようとすると噛んたり、怒ったりする
犬にお手を教えようとしたら、噛んだり、怒ったりする場合があります。
これは、どうしても足を触られたくないことが原因にあげられます。無理強いすると、状態が悪化する可能性もあります。
そんな時は、無理にお手の練習を続けるよりも、手に触られることを徐々に慣らすところから始めましょう。
また、足に何らかのトラブルが生じ、痛みや不快感がある可能性もありますので、足に触れた時に過剰反応する場合は獣医師に相談するのも良いでしょう。
対処法
- 無理にお手の練習はしない。
- まずは手を触れることに慣れさせる。
- ケガの可能性もあるため、過剰反応が見られる場合は獣医師に相談する。
お手のコマンドが統一されていない
愛犬がどうしてもお手を覚えない時、コマンドのバラつきが原因になっている可能性があります。
例えば、お母さんは「お手」と言いながら「右手」を出すのに、お父さんは「ハンド」と言いながら「左手」を出すなど、家族内でコマンドがバラつくと愛犬が混乱し、覚えられなかったというケースもあります。
家族内でコマンドや差し出す手などを話し合い、統一しましょう。また、イントネーションや声量なども合わせられると尚効果的です。
対処法
- 犬に呼びかける時に、差し出す手とコマンドを統一させる。
反抗期で言うことを聞かない
愛犬がある日突然お手をしなくなったという場合、反抗期が原因かもしれません。実は、犬にも人間同様「反抗期」「イヤイヤ期」なるものが存在します。
その時期や回数については、犬種や個体で差があるものの、一般的に第一次反抗期が生後6ヶ月~1歳頃、第二次反抗期が1歳半~2歳頃、第三期反抗期が2歳~3歳頃とされています。
愛犬がこれらの年齢に当てはまり、お手以外のコマンドも無視するようであれば反抗期かもしれません。
その場合、一時的なものであると考え、様子を見ましょう。強く叱ったり、無理強いしたりすると、更なる反発に繋がる可能性もありますので注意してください。
対処法
- 叱ったり、無理強いせずに様子を見る。
犬のお手のしつけに役立つ本
ほめていいコに!犬のしつけ&ハッピートレーニング
「ほめて教えるしつけの基本」が紹介されているしつけ本です。
犬の学習パターンや、しつけの鉄則などを分かりやすく解説されていますので、犬を初めてお迎えする場合は是非参考にしたい一冊です。
基本的なコマンドの基礎トレーニング方法も掲載されていますので、お手の練習にも上手く応用しましょう!
ザ・カリスマ ドッグトレーナー シーザー・ミランの犬と幸せ に暮らす方法55
カリスマドッグトレーナーとして世界的に有名な、シーザー・ミラン氏のガイドブック。
お手を教える手順そのものが解説されているわけではありませんが、飼い主さんにとっても愛犬にとっても正しく楽しいしつけトレーニングを行うための秘訣が詰まっています。
愛犬家なら一度は読んでおきたい一冊です。
犬にお手を教える際に参考になる動画をご紹介!
お手にも個性がある?犬のお手動画をご紹介します。
How to Teach the Give Paw Trick | Dog Training
ドッグトレーナーさんによる「お手」の解説動画です。
個人的に「Paw(ポー)」というコマンドの響きがとても魅力的です。
動画のようにおやつを上手く利用して、お手を練習するのもいいですね。
3 Ways to Teach your Dog How to Shake
海外で有名ドッグトレーナー、Zak George(ザック・ジョージ)のトレーニング動画です。
この動画ではおやつと、犬笛と同じ役割を持つ「クリッカー」を利用したトレーニングが紹介されています。
クリッカーは、通販などでも500円前後で販売されていますので、日々のトレーニングに取り入れてみるのもいいかもしれませんね。
まとめ
犬の「お手」についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
「お手」は数ある芸の中でも、比較的簡単に取り入れることができます。
筆者は、今まで5匹の犬と暮らした経験がありますが、「お手」は早い子で2,3日、遅い子でも1週間ほどでできるようになった記憶があります。
お手などのしつけや芸のトレーニングは、お互いに楽しく行うことができれば、愛犬にとって良い遊びや刺激に繋がることもありますので、ぜひ、焦らず気長に挑戦してみてくださいね。
しつけを愛犬と一緒に楽しく進められるサービス「こいぬすてっぷ」
愛犬と楽しく遊びながら、愛犬が理解しやすい方法でしつけができる「しつけ方ハンドブック」と、厳選されたおもちゃや日用品などの「グッズ」が、かわいいお楽しみギフトボックスのように毎月送られてくるサービスをご存知ですか?
「こいぬすてっぷ」のしつけ方ハンドブックは、獣医行動診療科の認定医監修のオリジナル本です。
月齢ごとに必要な内容がわかりやすく書かれています。
もちろん「おて」「おすわり」と言ったコマンドの教え方も、しっかり解説されていますよ。
また、一緒に入っているおもちゃは、月齢や犬種などを考慮して愛犬のために厳選されたもので、こちらも愛犬が毎回とっても喜ぶ!と大好評。
ご興味をお持ちの方はぜひ一度、問い合わせてみてはいかがでしょうか。