ペットシャンプーは使う原料でphが変わる
石鹸が目に入るとチクチクしみますよね?皆さん1度はご経験があると思います。
実は、肌にとてもやさしいことで知られる純植物性石鹸でも、目に入るとしみますが、なぜしみるかというと、目のph(酸性・アルカリ性)と違うからです。
目のphは7.5~8の弱酸性に対して、純植物性石鹸はph9.5~10.5の弱アルカリ性です。 異質なものが目に侵入すると、その情報を脳に伝達して痛みを与える生理が働くのです。
ちなみに、植物だけで作ると化学上(ばけがくじょう)は弱アルカリ性にしかなりません。
逆に、あなたが普段お使いのシャンプーやボディーソープが目に入ったとき、あまりしみないですよね?それは目のphに近い弱酸性の商品がほとんどだからです。
実は、ほとんどの商品が使用する石油系洗浄剤は、化学上弱酸性にしかなりません。
石油系ペットシャンプーと「シャンプーやけ」
ペットシャンプーも人間のシャンプーと同じ石油系洗浄剤を使った商品がほとんどですからペットに優しい印象を持ちますが、石油系洗浄剤には肌に浸透する厄介な問題があります。
シャンプーの後、全身を掻きむしったり、肌が真っ赤になったりしする原因の一つは、洗浄成分が薄いペットの肌に浸透してしまうからなのですが、特に目には注意が必要で、俗に言う「シャンプーやけ」という症状を起こすと大変です。
目に入ったシャンプーが一定の時間を経過すると現れる強い刺激を、俗に「シャンプーやけ」と言います。洗浄成分が粘膜に浸透して、涙が止まらなくなったり、強い刺激が続くので前足で搔き続け、爪で眼球に傷をつけたり狼爪が引っかかって眼球が破れた例などもあります。
こうなってしまったら水ですすぐ程度では収まりませんから、直ぐエリザベスカラーを装着して病院に行き、獣医さんの処置を受けることをお勧めします。
プロトリマーはシャンプーやけ対策として、顔周りのシャンプーを1番最後にします。
最後に洗えばシャンプーが長く目に触れる可能性は低くなりますし、洗ってる時に目に入ったとしても、最後の工程ですから直ぐにすすいで浸透する前に処理できるからです。
毎年300~400人のプロトリマーに聞き取り調査をすると9割の方がこの方法でしたから、
これは“石油系で浸透性のあるシャンプー”を使う場合の一般的なスキルのようですね。
純植物性石鹸ペットシャンプーは目にしみる
さて一方、純植物性石鹸のペットシャンプーですが、目に入ればチクチクしますが、肌への浸透性では石油系とは全く違う反応をします。
目に入ったらチクチクと刺激を与えますが、皮脂などの油分と反応するとグリセリンに変化して、肌に対する浸透性がなくなり、これは広く知られている石鹸の性質です。
でも、実際にワンちゃんの目にどんな影響があるのかは検証しなければわかりませんので、
延べ30,000頭のテストを行いましたが、このテストは、最初に顔周りを洗って漬け置きをするスタイルで実施しました。
なぜわざわざこんな洗い方をするのかというと、純植物石鹸のペットシャンプーには、コロイド粒子がたくさん入っていて、臭いの元の汚れに浸透してバラバラにして浮き上がらせる働きをしますから、浸透性が止まることを前提に、シャンプーが触れている時間を意図的に長くし、洗浄効果をあげたかったからです。
つまり、普通のトリマーさんの数倍もの長い時間、目にシャンプーが触れている状態でのテストでしたが、結果、ただの1頭も目のトラブルは起きず、純植物石鹸の浸透性が止まる性質を十分に確認する事ができました。
ちなみに、飼い主さんは、1番汚れて臭くなる顔周りの臭いを頻繁に嗅いでいますから、特にトリミングサロンでは、このスタイルで洗うのがベストですが、これは、純植物性石鹸シャンプーを使わない場合、採用すべきスキルではありません。
さて、顔まわりの汚れがひどかった子は最後にもう一度洗ってください。
コロイドの効果で、目ヤニは分解されて簡単に除去できますし、残っていた汚れも漬け置きの効果で浮き上がっていますから、サッと洗うだけで完璧に落とす事ができます。
実はこのとき、眼球に泡がくっつくことがよくありました。
でも、チクチクした刺激は目のphが弱酸性に戻ればおさまりますから、十分なお湯ですすぎをすれば全く問題なく、事実、たっぷりのお湯ですすいでやるだけで「シャンプーやけ」は1例もありませんでした。
さて、すすぎの時の注意点を1点。
すすぎの順番はふつう、「高い所から低いところ」頭から背中、腹から足へと流していきますが、すすいでいる途中で体をブルブルして目にシャンプーが入ることがあります。
そんな時は、最後にもう1度、目をすすいでphを戻してやれば安心ですよ。
ペットは我慢してくれています
「そろそろ汚れてきたから洗って!?」なんてワンちゃんに言われたことはありません。 そう、ペットをシャンプーするのは120%人間の都合なのに、ペットはじっと我慢してシャンプーが終わるのを待ってくれています。
ですから、シャンプーはワンちゃんのためだなんて言う前に、先ず私たちがシャンプーのダメージを軽減する努力をするべきだと思っています。
今回はその中の1つ、2つの原料グループのシャンプーそれぞれの特徴を理解して、ペットへのダメージを未然に防ぐお話をしましたが、シャンプーが与えるペットへの悪影響はまだまだたくさんあります。
今後も、ダメージとストレスを大幅に軽減する純植物性石鹸シャンプーを駆使した様々なスキルをご紹介したいと思います。
記事提供
Mt.WOOD 代表者:森山 聖児
16年の製造業サラリーマン経験を活かし、CDCペットシャンプーを開発・販売 独自の視点でペットケアスキルを提案し多くのプロトリマーに選ばれている