犬の散歩をする高齢者には健康な人が多い!?
アメリカから届いた調査結果
これまでに様々な研究によって、「犬と暮らす人は心臓病が少ない」「精神的に安定する」「長生きできる」などなど、犬が人間の健康に与えてくれる恩恵については、色々と取り上げられてきましたが、この度アメリカより、また新たな切り口の“犬の力”に関するレポートが届きました!
米マイアミ大学、イリノイ大学、ミズーリ大学の研究チームが行った調査により、「犬を飼っていて、一緒に散歩している高齢者(60代以上)」にみられる特徴を発表しました。
- 米で推奨されている身体活動「週150分以上」を満たしているか、それ以上を常に行っている。
- 肥満度を示すBMIが、米国基準で過体重とみなされる25未満である(つまりほぼ適正体重である)。
さらに、この調査では「犬を友人だと思う」など、犬との関係の深さをはかるアンケートも行っており、それによると「犬との関係が深く、親密である」と答えた人は、そうでないと答えた人よりも身体活動量が多く、特に歩行の時間が長い傾向が明らかになりました。
犬の散歩が絶対必須条件ではないけれど・・・
この研究者らは「高齢者の健康と犬の散歩に、因果関係があることを示すものではない」と注釈を入れています。
しかし、同時に、「高齢者に対して犬の飼育をすすめたり、すでに飼っている人により親密になれるようなプログラムを提供することが、結果的に高齢者の健康につながる可能性がある」ともつけ加えているところをみると、やはり犬が高齢者に及ぼす健康面での良い影響を認めざるを得ないようです。
高齢者が犬を飼うということ
以下、筆者の考えです。こんな見方もあるということで、お読みいただければ幸いです。
このレポートを読んで、身近なワン友さんたちの姿が思い浮かびました。
近所には、9才になる愛犬のコッカースパニエルと1日2回、30分ほどのお散歩を欠かさない80ン才のおじいちゃまがいらっしゃいます。
また、かつては、ポメラニアンとお散歩される90才のおじいちゃまともよくお散歩中に立ち話をしたものです。
おふたりに共通するのは、おしゃれであること、そして散歩で行き会った人、だれとでも気楽に言葉を交わされること。
犬とお散歩するから気持ちが若く健康なのか、健康だからお散歩できるのか、その辺の因果関係は、卵が先か鶏が先かといったところですが、元来、その人が持っている健康寿命を延ばすことは確かなようです。
犬は高齢者の孤立を救う?!
では、高齢者も積極的に犬を・・・とは簡単にいかないのが現実。
米の研究者らによる「高齢者に対し犬の飼育をすすめたり・・・」のコメントのところで「むむっ!!」と思われた方、おられることでしょう。
近年、我が国で問題になっているのがそのものズバリ高齢者の犬の飼育。
特に独居の場合、突然の入院、他界によって、犬が取り残されてしまうケース目につくようになってきました。
「真の愛犬家であるならトシを取ったら飼うべきではない」と言う人は多く、どれだけ心身の支え、健康に益するとしても、そのために飼うのは人間のエゴだ、という意見があります。
確かにその通り。
犬は健康器具ではないのですから。
一方的に我々がメリットを受け取れは良いと言うものではなく、犬もまた人間からの変わらぬ愛情、安定した生活を受けとる権利があります。
でも、と思うのです。
高齢者にとって一番の敵は、病気でも認知症でもない、「孤独」です。
孤独は不安を生み、不安はストレスとなって体と心を蝕みます。
家族同居であれ独居であれ、程度の差こそあれど、それは普遍のテーマかもしれません。
人は気にかける存在、愛情を傾ける存在があってこそ、自分の生を実感できるところがあります。
そして犬はその対象となり得ます。
大切な愛犬のためであれば、散歩にも行くし、その延長で人とも会話する。
そうすることで知り合いが増え、心身にハリが生まれる。
さらに、「健康で長生きしたい」という意欲が生まれるといった、好循環が期待できます。
自分が高齢者になった時のことを考えても、頭ごなしに「高齢者は犬を飼うべきではない」と一刀両断してしまうのは少し寂しい。
何か、ポジティブな方法はないでしょうか?
人&犬のシニア教室
現状ですでに起きている様々な問題への対処としても、高齢者と犬の暮らしをサポートするシステムが絶対的に必要です。
そんな前提でどんなことが考えられるか、ちょっと無い知恵を絞ってみました。
高齢者向けの犬の飼育教室
これから犬を飼いたい人と、飼い始めた・飼っている人向けの2コースを運営する。
前者のクラスでは、犬の選び方(子犬ではなくシニア犬、入手先など)、飼う上での基本的な知識、そして地域のサポーターとの関係づくり。
後者は、定期的なしつけ教室や愛犬とできるアクティビティー(お散歩やゲーム、旅行といったイベント)、犬との生活上の相談事など。
「定期的に」そして「サポーター」の存在
これらのコースで大切なことのひとつは「定期的に」ということ。
人と犬との生活に変化と楽しみを途切れず提供するだけでなく、人的つながりを作っていくため。
もうひとつは「サポーター」の育成。
福祉の側面から、その高齢者と犬の生活を見守り、親身に相談にのるサポーターは不可欠です。
地域の獣医や福祉関係者、自治体の担当者とのネットワーク、犬に関する知識、そしてコミュニケーション能力などが必須となるでしょう。
一般の犬飼育経験者がボランティアとなり、ボランティアどうしのつながりが、次に自分が高齢になった時に新たなサポートとして機能する、そんな連鎖が生まれるのが理想的です。
まとめ
米マイアミ大学、イリノイ大学、ミズーリ大学の研究チームが行った調査により、
- 犬と暮らし、犬と散歩に出かける60才以上の高齢者は活動量が多く、体重もまぁまぁ適正である
- 特に愛犬との関係を大切にする人ほど、運動面において健康的である
ということが分りました。
過去に例をみない高齢化社会に入り、世界中が日本のこれからを見守っているといいます。日本はモデルなき時代に突入したということです。
今は年金・医療保険の財源確保、介護福祉の問題が山積していますが、現実に起きていることに即して、小さな横つながりのシステムが少しずつできていくことが、実は将来的に大きなシステムとして機能しだす可能性があると思います。
先に挙げたのはあくまで素人考えなので、様々な立場の方からすれば多々、指摘はあるかと思います。ただ、そうした知恵を出し合うこともまた、大切なことではないかと思うのです。
現時点において高齢者と区分される目前の人々にだけ照準を当てるのではなく、確実にこれから年をとっていく様々な年代の人々と、同じ時代生きるペットなど、横に視野を広げた、お金だけではない数字だけでもない血の通った社会作りが、真に豊かな時代を作って行くのではないでしょうか。