犬と猫は仲良しになれるの?
犬と犬、猫と猫といった同種族での多頭飼いはあまり珍しくありません。最近は、犬と猫を一緒に飼いたいと考えている方も増えてきているようです。
違う種族だからこそ、「仲がいい関係になれるのか、そもそも合うのか合わないのか」など心配なことも多いと思います。
ここでは「犬と猫は仲良く一緒に暮らすことができるのか?」について注意すべきポイントをまとめました。犬と猫の同居を考えている方は、まずそれぞれの相性や習性を理解しておきましょう。
犬と猫の相性次第では仲良しになれる
犬と猫の仲良し画像をSNSで見たり、ラブラブのじゃれあっている動画などをyoutubeで見る機会が増えてきています。もう多頭飼いは「犬と犬」や「猫と猫」といった同種族ばかりではなく、「犬と猫」といった他種族同志のパターンも増えてきています。
犬と猫を一緒に飼って仲のいい写真や動画を撮ってみたいけど、そもそも仲良くなってくれるのかが心配になると思います。犬と猫が仲良く暮らせるのかは、端的に言うと相性次第です。
相性とは、犬と猫それぞれの種族としての習性、それぞれの個体の年齢や性格を指します。犬と猫は野生では一緒に暮らすことはないため、種族としての習性について正しく理解しておくことが仲良く同居するための大切なポイントだと言えます。
本来は習性の違う動物同士であることを理解しよう
犬と猫は人間にとって飼いやすい生き物ですが、それぞれ習性は大きく異なります。犬は群れを作り、上下関係を大切にする社会性の強い動物です。そのため、社交性が高く人との関係においては、とても構って欲しがるタイプです。
一方猫は、基本的に警戒心が強く心を許した相手とだけ緩やかな社会性を築く動物です。犬ほどは社交性は高くはなく、人との関係においては放っておいて欲しがるタイプです。
このように、犬と猫は習性が違う動物なのです。「構って欲しがる犬」と「放っておいて欲しがる猫」、犬には猫として猫には犬として、といった具合で逆の接し方をするとストレスもかかります。
また仲良く暮らすためにも、こういった基本の習性については理解しておきましょう。
テリトリーや活動時間の違いについても理解しておく
単独で犬や猫を飼っている時には気づきにくいのが、犬も猫もテリトリーに対する意識が強いということです。
単独で飼っていると「ここは自分のスペースだ」という主張を感じにくいものですが、多頭飼いになると先住ペットはテリトリーに対する意識を強く出してきがちです。
先住ペットと新入りペットがしばらく一緒に暮らすと、お互いのテリトリー意識もはっきりとしてきます。
また、犬は主に飼い主に合わせて活動することから昼間に、猫は主に早朝や夜に活動しがちです。活動時間、ライフサイクルが異なっているということも理解しておく必要があります。
テリトリー意識、活動時間といったことを踏まえると、特にこうした種族の違う動物を飼う場合は、同じ部屋にいるだけで仲良しだと言えます。
犬と猫が仲良しになれるかを決めるポイント
犬と猫は社会性や活動時間など基本的に習性が異なっているのに、なぜ仲良く暮らせることができるのでしょう?実は仲良く暮らせるかどうかにはいくつかポイントがあります。
具体的には「どんな性格がいいのか?」「お互いがいくつぐらいの時に出会うといいのか?」「先住ペットは何歳ぐらいまでなら大丈夫なのか?」といったポイントがあります。
以降でこれらポイントについて解説していきます。
犬と猫それぞれどんな性格がいいのか?
せっかちだったり、甘えん坊だったり、怖がりだったりと犬や猫にも性格があります。性格はもともとの個体としての性質の部分もありますが、飼い主と暮らしてきて後天的に育まれてきた部分もあります。
一般的に、犬も猫も先住ペットはおおらかでフレンドリーなタイプだと他の動物を受け入れやすいとされています。犬の場合はラブラドールやゴールデンレトリバーなどの大型犬やマルチーズパグなどがフレンドリーな性格とされています。
猫は清潔好きのため犬よりも神経質なタイプが多いですが、その中でもアメリカンショートヘアーやスコティッシュフォールドなどは穏やかと言われています。
性格はこうした先天的な要素と、飼い主と過ごした後天的な要素から作られるので、先住ペットの性格を把握した上で、新入りペットの性格を確認してマッチングできるか検討してください。
お互いがいくつぐらいの時に出会うといいのか?
犬も猫もコミュニケーションの方法を身につける時期があり、これを「社会化期」と言います。犬は3〜16週齢ごろ、猫は2〜9週齢ごろとされています。
そのため、子犬・子猫にあたるこの時期に同時に2匹を飼い始めると、仲良くなる可能性が高いと考えられます。
種族は異なっていても、お互いを仲間と思ってコミュニケーションをして一緒に成長することで、親密になりやすいのです。
ただし、同時に子犬と子猫を飼うというのはお世話の仕方も異なり、しかも初めてペットを飼う場合は苦労することが多いと思われます。
そのため先にどちらかを飼っておいて、しばらくしてから子犬か子猫を迎え入れるのが現実的だと言えます。その場合、先住ペットは成犬の方がおすすめと言われています。
犬は上下関係を大切にし、後から来た子猫を自分より下の立場として位置づけてお世話をすることがあるからです。
また先住ペットが成猫の場合は少し注意が必要です。性格にもよりますが、もともと猫は神経質なため無理に子犬を近づけて仲良くしようとすると、逆効果になりがちです。
先住ペットは何歳ぐらいまでなら大丈夫なのか?
犬も猫も年齢を重ねるごとに、新しい刺激に対して鈍感になっていきます。シニアと言われる年齢になると、子犬や子猫の機敏な動きや好奇心のある行動に対応しきれなくなります。
元気いっぱいの子犬や子猫がいる暮らしはシニア犬、シニア猫にとっては騒がしすぎるかもしれません。多頭飼いの目的に「仲良くさせたい」という要素が大きいならば、先住ペットがシニアの年齢時期だとしっかりと検討した方がいいでしょう。
またシニアになる前に迎え入れるとしても、年齢差も仲良くなれるポイントなので配慮しましょう。ペットには年齢差による相性もあります。お互い負担にならず仲良く行動できるという点で考えると、4~5歳差ぐらいがちょうどいいと思われます。
犬と猫を仲良く同居させる方法
犬と猫を同居させようとなったら、飼い主は犬も猫もそれぞれが快適に暮らせるように準備しておく必要があります。ストレスがかかりにくい環境を作りは、犬と猫を仲良くさせる重要なポイントです。
特に同居を始めたその日に、お互いを顔合わせさせたくなりますがいきなりはやめましょう。お互いに慣れるまで、新入りペットを別の部屋でケージに入れておきましょう。
家に新入りペットがいることを認識させて、慣れてきたらケージ越し初顔合わせをしましょう。そして、この後いよいよ本格的な同居を始めることができます。
それぞれの習性の違いや多頭飼いでの注意点など、これから説明する5つの「仲良くする方法」に沿って快適な同居を始めてください。
また保護犬、保護猫を迎え入れる場合はこれまで飼育されてきた環境について確認して、少しずつ先住ペットや新しい暮らしに慣れるようにしましょう。
犬と猫の習性に合った「落ち着ける場所」を用意する
犬と猫が仲良くなるには、それぞれが快適に過ごせる「落ち着ける場所」作りがとても大切です。犬は床を中心に生活をし、特に廊下などの狭い場所や玄関などの静かな場所を好みます。
一方、猫は床でも暮らしますが上下運動を好み高い場所でくつろぐ習性があります。キャットタワーや棚の上やクローゼットの上など家の中での様々な場所がリラックススペースになります。
犬と猫を飼う場合は、犬から追いかけられても大丈夫なように、猫に「逃げ場所」を確保しておくようにしましょう。特にお気に入りの高い場所にはクッションやファブリックを置いて、ここは安心なスペースだと猫にわからせるようにするといいでしょう。
また同居したての頃は、新入りペットはケージに入れて飼うようにしましょう。明確に仕切られたケージがあることで、先住ペットも新入りペットも安心できます。
食事やトイレは別々の場所に分けて設置する
ストレスがお互いに溜まらないようにするためだけではなく、健康面から考えても食事は別々の場所で落ち着いて食べられるようにしましょう。犬は一度で食事を完食することが多く、猫は少しずつ食べる習性があります。
犬は猫の残しているフードを食べることがよくあるので注意が必要です。こういった事が続くと、猫は毎日の食事が十分に摂れず栄養が不足し、犬は食べ過ぎでカロリーオーバーになりかねません。
飼い主は与えられたフード以外を食べないように場所づくりをする必要があります。例えば猫のフードは犬の手に届かない高い場所にする、食事の場所を別々の部屋にする、お互いケージに入れて食事する、といった方法が有効です。
また犬は雑食なため、猫のうんちや猫砂を食べてしまうことがあります。また落ち着いて排泄させるためにもトイレも別々の部屋に置くか、それぞれにケージを用意してその中にトイレを置くといいでしょう。
爪をケアする
犬も猫が仲良くなってじゃれ合ったときに、お互いの爪が伸びているともう一方が怪我をしてしまいます。また、ふとした拍子でケンカのようになった時は攻撃性が増しているので危険です。
特に眼球に傷がつくと失明のリスクもあります。また爪から雑菌が入って、傷口が化膿することもあります。こういったことにならないように、飼い主は犬と猫どちらともの爪のケアをしましょう。
爪を切ったあとはおやつをあげたり遊んだりして、爪切りが楽しいと印象付けることも大切です。なお、おやつをあげても遊んでもどうしても爪切りが苦手な子もいます。
そういった場合は、トリマーさんに頼むなどしてケアをするようにしましょう。飼い主もひっかかれて怪我をしにくくなり、安心して多頭飼いができます。
去勢手術を行う
犬や猫を単体で飼う際、去勢手術をするかしないかについて検討する必要があります。去勢手術にはリスクがつきものですが、発情ストレスからの解放や生殖器疾患リスクの回避などペットにとってのメリットがあります。
また多頭飼いの場合はお互いの関係を良好に築くために、去勢手術をした方が良いでしょう。特に先住ペットがオスの場合は縄張り意識がとても高く、今まで快適に暮らしていたテリトリーに未知の動物が侵入してくることでケンカになりがちです。
新入りペットがまだ幼くても容赦なく攻撃してきたり、受け入れようとしなくなります。手術可能な月齢になったら先住ペットから去勢手術をし、その後新しいペットを迎え入れるのがおすすめです。
新入りペットも手術が可能な月齢になったら同じく去勢手術をするとよいでしょう。
ストレスを発散させる
毎日の暮らしのなかで、犬も猫もストレスが溜まっていきます。飼い主は犬と猫に合った方法でストレスを発散させてあげましょう。犬は毎日の散歩やドッグランを充実させ、しっかりとした運動をすることでストレスが発散されます。
猫は上下運動のできるキャットタワーが必要です。また適宜ねこじゃらしなどで遊んあげるとよいでしょう。犬は飼い主の側に居たがり、猫はひとりになりたがったり飼い主に甘えたりと、飼い主とのコミュニケーションの取り方が違います。
猫は必要以上に構われるとストレスがかかるので注意しましょう。毎日声をかけてあげながら撫でたり、手からおやつをあげるなどのスキンシップでストレスを発散させましょう。
犬と猫に仲良しになってほしい時の注意点
いざ犬と猫の楽しい同居が始まったと思っても、日々さまざまなトラブルが発生するものです。ただ、そのトラブルの中には飼い主が無意識に引き起こしているものもあります。
そのひとつが、無理に犬と猫を仲良くさせようとすることです。犬も猫もお互いのリズムやペースがあり、活動のコアタイムも異なります。
飼い主が気まぐれで犬と猫を同じ場所で遊ばせようとしたり、先住ペットを新入りペットの入っているゲージに無理やり近づけたりすると、お互いにストレスがかかります。
こういったことが積み重なると、お互いを受け入れなくなることも起こります。ここでは飼い主が犬と猫を仲良くさせようとする前に、知っておくべときことをまとめました。
犬と猫のペースで関係を築けるよう見守る
犬は主に飼い主が活動する時間帯に合わせられることから主に昼間に活動し、縦型社会で上下関係を重んじます。一方、猫は早朝や夜に活動し、自分の時間を大切にします。
犬と猫は根本的に生き方や社会性が異なる生き物です。犬と猫を強引に仲良くさせようとすると、かえって上手くいきません。
また縄張り意識もあるため、どちらか一方がテリトリーに踏み入れるとそれだけでケンカにもなります。飼い主としては、犬と猫お互いの生活リズムやペースに任せるという心構えが必要です。
焦る気持ちもありますが、我慢してゆっくりと見守ることがポイントです。犬と猫が同じ部屋にいればそれだけで良いと考えるくらいのおおらかな気持ちで接しましょう。
犬と猫の狩猟本能や縄張り意識が強く現れる場合もある
犬も猫も動くものを追いかけて捉えるという狩猟本能があります。特に、犬は狩猟犬というジャンルがあるように狩猟本能が強い犬種が存在します。逃げる獲物を追いかけ、捕まえて自分のテリトリーに運ぼうとするのです。
狩猟犬の代表的な犬種に挙げられるのがラブラドール・レトリバーや柴犬です。ペットとして室内で飼われるようになっても狩猟本能のスイッチが入りやすいのが特徴です。
また、犬は「家全体」を猫は「自分のくつろげる場所」をテリトリーと考えます。テリトリーの意識の違いが原因で犬が猫のパーソナルスペースに侵入し、トラブルが発生することがあります。これは種族が違う動物が同居するうえでは、起こりうることです。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、同居し始めの頃はお互い別の部屋で隔離する方がよいでしょう。また飼い主が留守をすることもあるので、多頭飼いの場合はそれぞれにケージを用意しておくとケンカをすることもなく安心して外出できます。
犬と猫の相性が合わない場合は隔離して暮らす
犬と猫の仲の良さはそれぞれの性格の組み合わせ、つまり「相性」で決まります。相性が合わないとお互いどんどんストレスが溜まっていきます。どちらか一方でもストレスがかかっていると、同じ部屋で暮らしているだけで体調を崩しがちになります。
飼い主は犬も猫もデリケートだということを理解しておきましょう。相性が合わないなと思ったら、無理に改善しようとせずひとまず別の部屋で隔離するのがおすすめです。
過剰に我慢させるとストレスで食事を摂らなくなることもあるので注意が必要です。お互いの存在を臭いや声、気配で認識しつつリラックスしてきたら、ゲージ越しで顔合わせをやり直すなど時間をかけた方がよいでしょう。
お互いが安心できる距離を越えないように、無理をしないことが大切です。
まとめ
犬と猫が仲良く一緒に暮らすためには、それぞれの習性や性格を理解しておくことが大切です。先住ペットが犬か猫かどちらか、年齢差がどれくらいあるかなど組み合わせ次第で相性も変わってきます。
早く仲良くなって欲しいという飼い主の気持ちを抑えて、まずは犬も猫もどちらともが快適に暮らせる環境を作るようにしましょう。犬と猫のお互いがゆったりとリラックスして暮らしていれば、あとは時間をかけながらその距離感を少しずつ縮めていくようにしてください。
焦らずゆっくりと「人間のペース」ではなく「犬と猫のペース」で仲良く暮らすようにしましょう。