パピーウォーカーについて 盲導犬ボランティア

パピーウォーカーについて 盲導犬ボランティア

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みなさん、一度はパピーウォーカーという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?このボランティアは世間で「お別れが辛そう」というイメージがつきまとっているように感じます。私の体験ではありますが、パピーウォーカーのボランティアについてご紹介したいと思います。

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盲導犬を育てるボランティア「パピーウォーカー」について

おすわり中の盲導犬

犬種

日本国産第一号の盲導犬はジャーマン・シェパードの"チャンピイ"でした。盲導犬の父と言われる塩屋賢一氏が、飼育法・指導法を試行錯誤の末に確立し誕生した盲導犬です。

現在では日本の盲導犬は従順・賢いという理由から、ラブラドール・レトリーバーが選ばれています。毛の色はイエロー、チョコ、黒とさまざまですが、チョコはなかなか生まれないそうです。イエローも茶からほぼ白と個体によって様々です。黒は文字通り真っ黒です。凛々しくて綺麗です。

盲導犬ボランティアの種類

盲導犬育成にかかわるボランティアにはいくつかの方法があります。

  • パピーウォーカー(仔犬の飼育)
  • キャリアチェンジ犬の引き取り
  • リタイア犬の引き取り

大きく分けてこの3つです。呼び名については盲導犬育成団体によって違いがあります。また団体によって育成の方法にも違いがあるようです。

私が子犬育成のパピーウォーカーのボランティアを申し込んだのは、公益財団法人アイメイト協会です。(以下アイメイト協会とします)アイメイト協会では盲導犬のことを「アイメイト」と呼んでいますが、ここではわかりやすく「盲導犬」と表記します。

アイメイト協会

アイメイト協会では育成ボランティアのことを

  • 繁殖奉仕
  • 飼育奉仕
  • 不適格犬奉仕
  • リタイア犬奉仕

この呼び名を使っています。繁殖奉仕とは、盲導犬に適した血統の犬を飼育するご家庭のことです。メスに妊娠できる兆候が出たらオスと交配させて妊娠へと繋げます。

その後、生まれた仔犬は2か月を母犬のもとで過ごし、一斉にアイメイト協会に引き上げられていきます。飼育奉仕とはいわゆるパピーウォーカーです。

不適格犬奉仕は、様々な事情で盲導犬に適さなかった犬を家庭犬として引き取って育てボランティアの事です。「不適格」と名がついていますが家庭犬としての資質は十分です。

何回か会いましたが穏やかで可愛い犬でした。リタイア犬奉仕は盲導犬を引退した犬を終生家庭犬として育てるボランティアです。私たちは飼育奉仕をすることになりました。

パピーウォーカー(飼育奉仕)をすることになったきっかけ

以前勤めていた職場に飼育奉仕をしている方がいました。そのことを知ったとき「ふ~ん」程度の感想しかありませんでした。そしてお決まりの、「仔犬ちゃんとお別れするとき寂しくないですか?」と率直な疑問を投げかけました。

その方は、「お仕事するためだから。人のためになると考えると悲しくならないものよ」とおしゃっていましたが、私は『そうかなあ?』とその時は思っていましたが、その方の発言には実は裏付けがあったのです。

パピーウォーカー(飼育奉仕)をしている方の体験

ある時、飼育奉仕についてその方と話す機会を得ました。するとこの方は意外なことを話し出したのです。

「にゃうさん(筆者)、もしあなたがこのお役目をすることになって、犬が不適格になっても絶対ひきとったらだめよ」

その時私は、飼育奉仕をすることを決めていませんし、仕事で手一杯だったので『犬を面倒みるなんて!』という心境でしたので、『一体何を言い出すんだこの人は?』と思いつつ話を聞くことにしました。

「1匹目に飼育奉仕をした犬がね、不適格になっちゃったの。アイメイト協会は不適格になったら一番最初に飼育奉仕をした家庭に連絡が来るのよ。私ね、『不適格』って言葉に妙に責任感じちゃって、引き取ることにしたの。そしたらその子ね、難病を発病しちゃって。大きな大学病院まで診察に行ったり大変だったのよ。亡くなったときもショックだったわ。だからうちはもう飼育奉仕しかしないって決めているの」

確かに『不適格』って重い言葉ですよね。その方は仕事ぶりもきっちりした方だったので、責任を感じてしまうのも納得できました。その方は今は飼育奉仕はやめて、不適格犬飼育奉仕をしています(笑)。

パピーウォーカー(飼育奉仕)を決意するまで

私は勤務していた職場を病気で退職し、療養生活に入りました。しばらく自宅で療養してある程度の健康を取り戻した時、自分の時間が割とあることに気が付きました。

『犬を飼ってみたいな』漠然と思っていましたが、犬の生涯を引き受けるほどの覚悟はないし、うちで犬を飼えるかどうかわからないし。そんなとき飼育奉仕のことを思い出したのでした。

アイメイト協会のホームページから飼育奉仕のことを調べ、電話をして問い合わせをして登録用のFAX用紙を送っていただきました。登録用紙には以下の項目を記載するように指定されていました。

  • 住所
  • 家族構成
  • 犬を室内飼育できるかどうか

正直「え?これだけ?」と拍子抜けするような簡単な項目でした。もっと難しい面接や細かい書類があるのかと思っていました。これは6年前のことですので、今は変わっているかもしれません。

特に重要だったのは「犬を室内飼育できる環境」だったようです。FAXの原本がないので今となっては記憶があいまいなのですが「留守がちでないこと」も条件にあったはずです。

パピーウォーカーとなる環境・条件について

準備完了

パピーウォーカー(飼育奉仕)の条件

以下はアイメイト協会から指定された条件です。

  • 家族全員犬が好き
  • 食費と簡単な健康管理費を負担できる
  • 他に犬猫を飼っていない
  • 奉仕の意味を理解している
  • 関係者のいろいろな方々のプライバシーがあるため、協会に戻ってきた犬の行き先を探ることをしない。

最後の条件以外は普通に犬を飼うのと同じです。以下は私の考える条件です。

ペット可の物件であること

大前提になりますが、念のため。ラブラドール・レトリーバーは大型犬ですので、大型犬不可の物件もNGとなります。

室内で飼育できる環境であること

生後2か月の仔犬がやってきます。混合ワクチンや狂犬病ワクチンが済むまでは、他の犬との接触は厳禁です。ほぼ室内で過ごすことになりますので、この点も絶対条件となります。

パピーウォーカーで守るべきこと

水遊び

食事について

ドッグフードはアイメイト協会から指定を受けたフードのみを与えます。生後5か月まではパピー用の指定フード、生後6か月目からは成犬用の指定フードとなります。

与える量は成長に応じて少しずつ増やしていきます。体重に応じたフードの量の表をもらえますので、犬の体重を計りながらグラム単位で増やしていきますので、デジタルの秤が必須です。

少しずつ増やして、最終的には1日の総量が300グラムになります。太らせないように、大きくさせ過ぎないようにとの注意を受けます。あまりに大きくなりすぎると使用者さんが扱いづらくなるためです。

水は飲み放題ですが、おやつは厳禁です。手から直接与えることも禁止です。回数は決まった時間に1日3回から2回、最終的には1回になるように調整していきます。

フードの調達

アイメイト協会から指定されたフードは市販されていますのでネット通販で購入しています。もちろんアイメイト協会から指定された業者さんからも安く買うことができるようですが、まだ利用したことがありません。

ペットショップの方に聞いたところ、パピー用のフードについては並行輸入と国内生産のものがあるようです。並行輸入のフードは船便で温度管理されていない船倉で長時間かけて運搬されるため、劣化してしまうものがあるそうなのです。「絶対に国内生産の物を買ってくださいね!!」と念を押されました。

体重について

できるだけ小ぶりに育てることを推奨されます。目安は成犬になったときに25キロ前後です。ラブラドールとしては小さめですよね。仔犬のうちは月に2キロペースで増えていきますが、8か月を超えたあたりから月に1キロに落ち着きます。

生後6か月あたりで「このペースで増えてしまったらどうしよう」とドキドキしたものです。そもそもフードの量が少なめですから、適切な運動をさせていれば体重過多になる心配はほぼありません。

注意点

ぬいぐるみで遊ぶ

  • おやつ、間食をさせない。人間の食べ物も与えない
  • 餌を手から与えない
  • ボール(フリスビー)遊びをしない
  • 自転車運動をしない
  • 絶対に逃がさない
  • 拾い食いさせない

注意点はこれだけです。意外と少ないですよね。この注意点さえ守ればほぼ家庭犬と変わりなく育てることができます。犬との生活でボールを投げて「ほーら、取って来い」ができないのは少し残念ですが、引っ張り遊びやおもちゃを隠して探す遊びなど、考えれば犬との遊びはたくさんありますから、ボールのことは忘れるようにしています。

パピーウォーカーとしての事前準備

1頭目の犬を飼育するにあたり、アイメイト協会から「飼育をお引き受けくださった方へ」という準備するものの案内が届きます。

食器

水用とフード用の各1つずつを用意します。新しいものを準備する必要はないと書いてありましたが、それぞれ買い求めました。

寝床となるもの

到着して疲れた

寝床を一か所決めバスタオルや毛布などを用意するように書いてあります。我が家では後述するケージを寝床(ハウス)と定め、ふわふわ毛布を敷き詰めました。

のちに犬用のベッドの存在を知り、そちらも購入することとなりました。犬は自分の身体がすっぽり埋まるものが好きなので、犬用ベッドはおススメです。

トイレ用品

決まった場所にトイレシーツを置いたり、庭にしたり、お風呂場にしたりと例示がありましたが、後述するケージがトイレ併設なので、そこにトイレトレーを設置しました。

引き紐

お散歩のときに使いますので、生後4か月までに調達できればOKです。首輪はアイメイト協会指定のものがありますので準備が不要でした。

小屋(ケージ、サークル、バリケンなど)

やむを得ず留守番をさせる時など用に指定されていましたが、我が家では寝床兼トイレ兼留守番用小屋として、かなり大きめのケージを購入しました。

ゴムブラシ

お手入れ用として推奨されていましたが、結局コレクターのように豚毛ブラシやらファーミネーターやらシリコン製のものやらを、ぞろぞろと買い集めてしまいました。成長過程や時期(換毛期など)で使うものが異なるのです。

パピーウォーカーとしての仔犬との生活

おもちゃで遊ぶ

ラブラドール・レトリーバー

さて、みなさんはラブラドール・レトリーバーという犬種についてどうのようなイメージをお持ちでしょうか?

盲導犬になる犬だから賢いとか穏やかとか優しいとか、いろいろなイメージをお持ちでしょうが、はっきり申し上げて、幼犬のラブラドール・レトリーバーは猛獣です。すごい暴れん坊です。家の備品や家そのものを破壊してくれる破壊王でもあります。

1頭目の犬をお預かりするとき、「盲導犬になる犬だからおとなしいし賢いですよね?」と指導員さんにお伺いしたら、「いやぁ~~?」と2人同時に首をかしげられてしまいました。

その時は意味が解らなかったのですが、すぐにわかることとなるのです。つまり、盲導犬候補の仔犬と言えども所詮犬は犬なのです。最初から盲導犬ではないのです。

犬のしつけ本やラブラドール・レトリーバーの特性を調べてがっつりしつけをしないと成犬になったときにかなりの暴れん坊になる可能性があります。この点はどの犬も一緒ですね。

吉報

「にゃうさん宅に仔犬をお願いしたくお電話しました」
アイメイト協会から連絡が入りました。FAXで申し込みをしてから半年以上が経過していました。

事情があり、仔犬と出会えるのは引き渡し可能日から1週間が経過してからとなってしまいました。この1週間、どんなに寂しい思いをしたことでしょう。今思えば可哀想なことをしてしまいました。

アイメイト協会からやってくる仔犬は、繁殖奉仕の家庭で2か月を過ごした後一斉に引き上げられてから我が家にやってきます。うちに来た子はしばらくアイメイト協会で待っていたのです。当時はそれを知らなかったので、ただただ仔犬との出会いを喜んでいました。

引き渡し

仔犬はアイメイト協会の車に乗せられてやってきます。引き揚げも同様アイメイト協会の方が来てくれます。連れてきてくれる指導員さんには申し訳ないのですが非常にありがたい制度です。

仔犬と出会う前に指導員さんから飼育についての説明を受けます。仔犬を飼育する際に必要なマニュアルのような冊子をいただき、注意点、首輪の装着方法、その場でできる質疑などをし、仔犬の飼育記録として用紙を渡されます。

もっと精密な日誌のようなものを想像していた私は拍子抜けしました。A3の用紙に、両面コピーされたものが二つ折りになったもの、それだけだったからです。

そこには犬の登録番号、生年月日、犬名、性別、色が記載されていました。そして引き渡し時の体重とフードの回数と量。ワクチン等の接種時期の記載と証明書の貼付欄があります。

裏面は飼育メモとして、引き渡し時に「こういう犬だったよ」と言う状況がわかるように記入をします。これも至極あっさりとした項目のシンプルなものです。

負担すべきもの

前述しましたが、ワクチン接種やフード、身の回りの世話に関わる費用は飼育奉仕の家庭の負担です。フィラリアの薬についてはアイメイト協会から支給されます。結構高いお薬らしいので助かっています。

狂犬病の予防接種も負担します。証明書が発行されますが、飼育奉仕家庭所有の犬ではなくアイメイト協会の犬ですので、獣医さんにお願いしてアイメイト協会の所有者で証明書を発行してもらいます。その証明書はアイメイト協会に送付し、その際の封筒も引き渡し時に預かっていますので袋に入れて投函するだけです。

パピーウォーカーに関するよくある質問

お散歩していて良く訊かれた質問などを書いてみます。

質問①「触ってもいいの?」

大人気

もちろん、たくさん触ってください!怖くなければ小さいお子さんや小学生の皆さんなど大歓迎です。

質問②「他の犬と遊んでもいいの?」

大丈夫です。ただこちらがワクチン未接種の仔犬だった場合は接触させることができません。また、ドッグランなども来ている犬が必ずしもワクチンを接種しているかどうかわからないため行けなくなりました。ヒート中はもちろん他の犬と同様外出禁止です。

質問③「いつまで育てるの?」

預かってから約1年ほどでお別れがきます。アイメイト協会の犬舎の収容の都合があり、1年半ほど我が家にいた犬もいました。

質問④どうしてその名前をつけたの?」

命名は繁殖奉仕のご家庭に任されています。アルファベットのAから順に、きょうだい犬の名前は全て同じイニシャルです。呼びかけやすく他の犬と重複しない珍しい名前が付きますので、最初は少し戸惑います。

質問⑤「スーパーとか一緒に入れるんでしょ?」

入れません。訓練されている犬ではないし、家庭犬の域を超えない仔犬です。いくら盲導犬候補の犬といえども、盲導犬と同等ではありません。

質問⑥「お利口な犬なんでしょ?」

お利口だし賢いです。たまにその賢さに振り回されることがあります。犬らしい無邪気な犬です。

質問⑦「吠えないんでしょ?」

吠えます。無駄吠えはあまりしませんが、吠えないということはありません。痛みがあったりビックリしたり、個体によって差はありますが声は出します。吠えない訓練をするわけじゃありません。

質問⑧「訓練しなきゃいけないんでしょ?」

基本的なしつけはしますが、いわゆる盲導犬になるための訓練はしませんしできません。数頭育ててみて「人間の話を聞く耳を持つ」ことが大事だと感じたので、やたらと話し掛けています。思ったより多くのことを理解する様です。

質問⑨「お別れは寂しいでしょ?」

そりゃもう!最初の犬のときは1週間くらいペットロス状態でしたとも!

パピーウォーカーとしての「しつけ」について

伏せている盲導犬

盲導犬になるとたくさんの指示語を聞き分けなければなりません。その指示語は全て英語です。ですから基本的なしつけコマンドはアイメイト協会に倣っています。うちで出すコマンドは

  • sit(座れ)
  • down(伏せ)
  • wait(待て)
  • come(こっちへ来い)
  • house(ケージに入れ)
  • no(ダメ、イケナイ)
  • good(いい子いい子)
  • onetwo(トイレの合図)

こんなところです。

勝手なコマンドを覚えさせて定着してしまっても後で困ると思ったので、うち専用のコマンドは日本語にしています。例えば

  • 手って(お手は基本的にしないです)
  • あんよ、あし(散歩から帰って来た時に脚を上げる時の合図)
  • とってきて、さがして(おもちゃを探すときの合図)
  • ねんね(寝なさい)
  • ごはん(うっかり発言すると興奮してしまうので注意が必要)

もっとあるかもしれませんが、こんな感じです。

破壊されたさまざまなもの

ラブラドール・レトリーバーの仔犬は幼獣です。様々なものを壊します。おもちゃは大体壊れます。気づくと家財道具に類が及んでいる時があります。そんな悲惨なものの数々をご紹介します。

障子

障子のあるサッシのそばにケージを設置していました。就寝時はケージに入れておくのですが、バキッバキバキと不穏な音が。障子紙はおろか桟ごと破壊されました(泣)。枠はかろうじて無事でしたが、廃棄処分となりました。

ブラインド

廃棄処分した障子の代わりにブラインドを設置しました。就寝時、またも不穏な音が。もう書かなくてもわかりますね。バキバキのベキベキです。これも撤去しました。

襖貫通

ちょっとだけほころんでいたところが気になったらしく、こそこそとカリカリガジガジ。自分が通れる穴をあけてしまいました。とりあえず厚紙を貼って補強しました。

ケージの縁

暇だったんでしょうね。出入り口付近のケージの縁をガジガジガジガジ。ささくれてしまって触ると痛いです。

子供の参考書

我が家ではケージの脇に机があり、書き物や勉強をするときはそこで行っていたのですが、いつしか受験生の子供の荷物置きと化しました。ラブラドールは7~8か月になるとケージから半身が出せるんです。

「狙われるから片付けなさい」という忠告を無視した結果、参考書数冊を狩られました。学校経由でしか購入できないものだったので非常に困りました。アイメイト協会からの小屋の説明に「屋根があったほうが安心です」とあったのはこういうことか!と痛感しました。

パピーウォーカーからの引き揚げとその後

生後9か月くらいまでは戦争のような日々ですが、しつけが入って言うことを聞いてくれるようになると、毎日がとても楽しくなります。できたらこのままうちの子になればいいのに、とさえ思うようになります。

飼育奉仕の家庭は犬が不適格になったら最初に引き取りの依頼が来ますので、「戻っても悪い子でいいからね。うちの子になりなさいね」と言い聞かせて過ごしてしまったりします。

引き揚げのお知らせ

引き揚げ2

引き揚げの1か月前くらいにアイメイト協会からハガキで通知が来ます。引き渡し時同様アイメイト協会の指導員さんが来てくれます。最初の犬の時は通知が来てから毎日泣いていました。

いっそ逃げたことにしてうちの子にしてしまおうかとも思いました。(逃がさないこと、の注意ってこのこと?)でも、別れることが分かっていて引き受けたお役目ですから、泣きはらした目でその日を迎えたのを覚えています。

引き揚げ後の面会

面会

アイメイト協会では引き揚げてから2か月は犬との面会が許されています。この2か月の間に指導員さんとの信頼関係を築き、基本的なしつけをして盲導犬としての資質を見るのだそうです。

だから頻繁な面会は避けるようには言われているのですが、この2か月の間に2回も会いに行ってしまいました。会ってみて犬の顔つきが変わっているのに気づきます。

うちにいた時のように接しようとすると「やだ、お母さん、先生がみてるからはずかしいよ」みたいな態度をとります。『なんだか卒業したみたいだな』と、ほっとしたような安心したような気持になったのを覚えています。

卒業試験の見学

卒業試験見学1

訓練が終わり、使用者さんと出会い、4週間の訓練を行います。歩行訓練の総仕上げが「銀座の和光の通りを歩く」ことです。この卒業試験には飼育奉仕家庭が招待されます。

ただし風上に立つこと厳禁、犬に近づくこと厳禁、ただ見守るのみの注意つきです。それでもいいんです。立派になった我が子の晴れ姿を見に行きたいと家族で見学に行きました。卒業式列席です。

私は「もしかしたら泣くかもしれない」と覚悟していましたが、そんなことは使用者さんの表情を見ていて吹っ飛びました。実に軽やかに晴れやかに、私たちの育てた犬と一緒に歩いてくれているのです。

「ああもうこの子は大丈夫だ」と立派に歩く姿を見守りました。本当に卒業式のようでした。

使用者さんのことは居住する都道府県以外の情報は知らされません。過去にトラブルがあったそうで、犬のその後を探ることも禁止されています。これまで2頭の犬を卒業させて、使用者さんの笑顔を見られて、とても満足しています。

パピーウォーカーを終えて犬とのお別れについて

受付

「盲導犬候補の仔犬を育てているんですよ」と言うとほとんどの方が「お別れが辛いでしょう?私はそんなのできないわ。ずっと一緒にいられる方がいいもの」とおっしゃいます。確かに可愛いわが子同然の犬と一緒にいられたら幸せであることには違いありません。

ここからは私の持論になりますので、お気を悪くされる方がおられるかもしれません。最初にお詫び申し上げます。

夫の実家で17年飼った犬がいました。雑種でしたが非常に賢い子で、舅の言うことを良くきき、可愛らしい綺麗な子でした。その子が老衰で亡くなったとき、舅は「次の犬はもう飼わない」と宣言しました。大の犬好きで犬からも好かれる人なのに、この犬が亡くなったことがショックだったのだろうと私たちは思いました。

けれどもそれだけではなかったのです。

犬を飼うということは、犬の一生を引き受けることです。仔犬から成犬、老犬になって看取るまでを覚悟しなければなりません。舅はそのとき60代後半でした。犬が一生を終えるまでに自分が、と考えてしまったのかもしれません。

私が「1年間だから試しにパピーウォーカーをやってみたい」と言った時に一番喜んだのが舅でした。お散歩できるようになったら、定期的にお散歩をしてくれたりブラッシングをしてくれたり、申し訳ないほど世話をしてくれました。

犬の一生は引き受けられないけど、こういう関わり方もありなんじゃないか?と思うようになりました。1頭目の犬と別れた時、かなりの日数悲しみに沈みました。生き別れでこんなに悲しいのなら、死に別れだとどれほどの悲しみだろうと、そこで初めて舅の気持ちを知りました。

私は「お別れが辛いでしょう?」と言われたときに「一生を面倒見られないヘタレなんです」と答えています。お別れは確かに辛いですが、死別とは比べ物になりません。どこかで生きていて使用者さんと楽しく毎日暮らしているのですから。

盲導犬になるとどこに行くのも一緒です。買い物も職場も電車もいつも一緒です。家庭犬ではなしえないことが盲導犬だとできるのです。信頼できる使用者さんといつも一緒であるということは、犬にとってどれほどの幸福でしょう。私は犬が幸福であることが一番だと思っています。

パピーウォーカーのボランティアを続けるということ

来たばかりの仔犬

「にゃうさん宅に仔犬をお願いしたくお電話しました」とアイメイト協会から連絡をいただいたのは2011年4月のことでした。申し込みをしてしばらく返事がなかったので、うちはかなり後回しなんじゃないかなと夫と話していました。

半ばあきらめていた、そんな時でした。被災地のボランティアに行く人や、救援物資を送る人がたくさんいた時期です。私たちにもなにかできるんじゃないか、と思っていた矢先でした。盲導犬を必要としている人は全国にいます。

視覚障害を持つ方で盲導犬を希望している方に対し盲導犬の数は圧倒的に不足しています。きっと被災地にも盲導犬を必要としている方がいるはずです。私たちにできるボランティアはこれだ、と思っています。間接的ではあるけれども誰かのお役に立てれば本望です。

現在を含めて4頭の犬と接してきました。一生でこんなに仔犬と関われるなんて、なかなかない経験です。犬と関わるようになり生活も変わりましたし癒しも貰っています。こんなに良いこと尽くしでいいのかと思うくらい、いろいろなことを犬から貰っています。

2011年から現在まで4頭の仔犬と出会い、3頭が巣立ち、うち2頭が盲導犬となりました。犬の引き揚げのあとは「早く仔犬が来ないかな」と待ち遠しくてたまりません。本当に楽しいボランティアです。

「1年なら試しに犬を飼ってみようかな」こんな動機でもいいと思うのです。ラブラドールの虜になること請け合いです。

ユーザーのコメント

  • 投稿者

    30代 女性 なーこ

    パピーウォーカーについては、1年が経ったら協会に返さなければならないという事くらいしか知りませんでしたので、実際に体験された方の話はすごく勉強になりました。
    驚いたのが、フードなどがこちら側の負担である事。子犬の生活に関わる全てを負担してくれるものだと思っていたのですが違うのですね。そして、ボール遊びが厳禁だというのも意外でした。誤って飲み込んじゃう子がいるからでしょうか。
    奉仕のためとはいえ、元気がありあまってる子犬だから家まで破壊される恐れ(笑)があるパピーウォーカー。もし迎えるとしたら、色々な覚悟も必要かもしれませんね。

    ずっと一緒に居た分巣立ちの時の別れが辛いけど、自分の元を離れて誰かのためにがんばってるんだと思うとやりがいのあるボランティアだと思います!
  • 投稿者

    20代 女性 なっちゃん

    パピーウォーカーになって子犬の時期を一緒に過ごす。子犬の時期なんて本当にやんちゃ盛りでかわいいです!一番かわいいです!

    でもボール遊びできない、おやつもあげれない…なんか寂しい気もしますが将来このわんちゃんが人を助けてくれるようになるためのお約束ですもんね!仕方ないのかもしれませんね!預かるのであれば、やっぱりお別れのことも考えなくてはならないですね。

    とんでもなく寂しいと思うので、覚悟の上でボランティアはしなくてはなりません…
  • 投稿者

    30代 女性 バッハママ

    記事を読んで、パピーウォーカーというボランティアがあることを知りました。
    たった1年ですが生半可な気持ちで引き受けることはできないし、お別れの日がくるなんて、寂しすぎます。
    でも、読み進むうちに何かお手伝いができないかと思うようになりました。第一に犬の幸せを考えることが大切だと感じました。
  • 投稿者

    20代 女性 yummy

    盲導犬の制度は、パピーウォーカーさんなどのボランティアで成り立っているんですね。確かに盲導犬に不適格となった犬の行先が無くては困ります。考えたことがありませんでしたが、盲導犬にすべての子がなれるわけではないんですものね。
    そして引退した犬も余生を幸せに過ごすことが出来ないと困ります。
    はじめて知った情報が多かったので、とても勉強になりました。犬と生きていくということに、このような関わり方もあるんだな、と。
    盲導犬などの介助犬に関しては、反対する人も中にはいるようですが、この記事を読む限り、育ての親が太鼓判を押すような働きっぷり、自信を持って幸せそうに仕事を遂行している光景からは犬の悲壮感などはみじんも感じられません。犬たちも天職とばかりに仕事に邁進しているのかもしれませんね。
  • 投稿者

    女性 モエナ

    パピーウォーカーに関してはテレビの特集などで観たことがありますが、私も実際にどんなものなのかよく分かっていませんでした。しかし、内容を知ってみると、実際に受け入れた方たちのことを尊敬します!また、不適格犬飼育奉仕をしている方も素晴らしいと思いました。盲導犬の育成といっても、まだまだ私たちが知らないことがたくさんあるようですね。ラブラドールの子犬時代はメチャクチャ可愛いのでつい甘やかしたくなりますが、この子たちは将来立派な仕事に就く準備段階なので、パピーウォーカーというお仕事をする場合は、可愛いということだけで甘やかしたらいけませんね。注意点に「ボール(フリスビー)遊びをしない」とあって、意外でしたが、これも盲導犬として働く場合は必要の無いことなんだと思いました。お仕事をする犬は小さい頃からキチンと訓練されることが重要なのですね。
  • 投稿者

    20代 女性 てとめる

    パピーウォーカーというボランティア団体があることをはじめて知りました。最後まで飼えないなんて少し寂しいな…なんて思いましたがボランティアをされる形にも色んな理由があるんですね。確かに以前、散歩をしていて仲良くなった方が『この子が居なくなったら子犬を飼うんじゃなくて保護施設から犬をもらってきて、その子を幸せにするようなことをしたいの。』と言っていたことがありました。わたしはまだパピーウォーカーというボランティアという形で犬と接することが出来るのか?と考えたらやはり寂しい気持ちや不適格と言われた時の気持ちに負けてしまいそうです。ボランティアというのは無償なのにとても大変なものなんだろうと感じますね。
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